書評
医学英語論文 手トリ足トリ—いまさら聞けない論文の書きかた
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著者:
齋藤琢1
所属機関:
1東京大学大学院・整形外科学
ページ範囲:P.924 - P.925
このたび僭越ながら,『医学英語論文 手トリ足トリ いまさら聞けない論文の書きかた』(堀内圭輔先生 著)の書評を書く機会をいただいた.著者は慶應義塾大学のご出身であり,同大学整形外科で活躍されたのち,現在は防衛医科大学と慶應義塾大学の両方で後進の指導にあたっておられる.著者は留学先でADAM17など細胞外ドメインの切断プロテアーゼを研究し,帰国後も素晴らしい分子生物学研究をされていた.私はポスドクの頃に骨格形成や関節疾患においてNotchシグナルを扱っていたが,NotchとADAMの関係が深いことから,著者から遺伝子改変マウスをご供与いただき,さまざまなご指導をいただきながら共同研究を進める幸運に恵まれた.整形外科で分子生物学をたしなむ人は非常に限られている.著者は私より4学年先輩であり,整形外科医でありながら分子生物学に精通し,精力的に研究を続けておられる姿は,所属する医局こそ違えど常に励みであった.
英語論文の執筆に関する本は数多出版されているが,本書は単なるハウツー本ではない.もちろん論文の構成に関して第Ⅲ章で十分に説明されており,ここを読むだけでも論文とは何かが明確に理解でき,初めての人でも論文を書こうという気になるだろう.第Ⅱ章の様式に関する知識も秀逸である.たかが様式と思う若手もいるかもしれないが,私も査読をしていて,優れた研究内容がいい加減な様式で叙述された例をみたことはない.第Ⅳ章ではFigureの作成,画像データやReplicationの考え方が記載されているが,誰もが抱く疑問を取り入れつつ,非常にわかりやすく記載されている.