文献詳細
文献概要
Lecture
わが国の側弯症検診
著者: 黒木浩史1
所属機関: 1国立病院機構宮崎東病院整形外科
ページ範囲:P.1361 - P.1366
文献購入ページに移動脊柱側弯症は,学童期から思春期に好発する.そして成長とともに進行し,重症化すれば呼吸不全をはじめとする重篤な身体障害に至る.しかし軽症であっても精神面,運動機能への悪影響が指摘されており,子どもの健やかな成育上その対応は極めて重要である.多くの疾患同様,本症も,治療介入時期が予後を大きく左右するため,早期発見のための検診は診療の大きな柱となる.現に,われわれの実臨床でも検診の成果が確認できており,宮崎大学病院整形外科側弯症外来における特発性側弯症患者の初診時点での調査において,平均Cobb角は,検診経由群で有意に小さく,また装具療法の適応となるCobb角20〜50°の症例が約70%を占めていた1).
しかし宮崎県では,1981(昭和56)年度に開始された側弯症検診が,2013(平成25)年度のモアレ撮影装置の修理・製造の終了,2016(平成28)年度の運動器検診の導入などを契機に,2020(令和2)年度をもって打ち切りとなり,側弯症早期発見の大きな機会を失うこととなった.現在,このような理由で側弯症検診事業存続の危機が全国各地で起こっていると推測され,側弯症診療体系の根幹が揺らいでいる.
本稿では,側弯症学校検診の歴史,実情,問題点,そして展望について述べる.
参考文献
掲載誌情報