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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科58巻11号

2023年11月発行

文献概要

Lecture

わが国の側弯症検診

著者: 黒木浩史1

所属機関: 1国立病院機構宮崎東病院整形外科

ページ範囲:P.1361 - P.1366

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はじめに

 脊柱側弯症は,学童期から思春期に好発する.そして成長とともに進行し,重症化すれば呼吸不全をはじめとする重篤な身体障害に至る.しかし軽症であっても精神面,運動機能への悪影響が指摘されており,子どもの健やかな成育上その対応は極めて重要である.多くの疾患同様,本症も,治療介入時期が予後を大きく左右するため,早期発見のための検診は診療の大きな柱となる.現に,われわれの実臨床でも検診の成果が確認できており,宮崎大学病院整形外科側弯症外来における特発性側弯症患者の初診時点での調査において,平均Cobb角は,検診経由群で有意に小さく,また装具療法の適応となるCobb角20〜50°の症例が約70%を占めていた1)

 しかし宮崎県では,1981(昭和56)年度に開始された側弯症検診が,2013(平成25)年度のモアレ撮影装置の修理・製造の終了,2016(平成28)年度の運動器検診の導入などを契機に,2020(令和2)年度をもって打ち切りとなり,側弯症早期発見の大きな機会を失うこととなった.現在,このような理由で側弯症検診事業存続の危機が全国各地で起こっていると推測され,側弯症診療体系の根幹が揺らいでいる.

 本稿では,側弯症学校検診の歴史,実情,問題点,そして展望について述べる.

参考文献

1) 黒木浩史,猪俣尚規,永井琢哉・他.宮崎県における側弯症専門外来の診療状況とその変遷.J Spine Res 2016;7(11):1605-8.
2) 田島直也,黒木浩史.脊柱側弯症検診とその課題.脊柱変形2007;22(1):24-30.
3) 松本守雄,渡辺航太,八木 満・他.側弯症検診事業の現状と課題.整形外科2019;70(6):697-701.
4) 黒木浩史.世界の側弯症学校検診:歴史的背景と昨今の情勢.J Spine Res 2023;14(11)印刷中.
5) 三澤晶子,本郷道生,工藤大輔・他.脊柱側弯症における運動器検診とモアレ法検診の比較—教育委員会との協力の重要性.日整会誌2020;94(3):S1035.
6) 厚生労働省.成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針.2021年https://www.mhlw.go.jp/content/000735844.pdf(2023年8月8日アクセス)
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8) Ishikawa Y, Kokabu T, Yamada K, et al. Prediction of Cobb angle using deep learning algorithm with three-dimensional depth sensor considering the influence of garment in idiopathic scoliosis. J Clin Med 2023;12(2):499. doi:10.3390/jcm12020499.
9) Weinstein SL, Dolan LA, Wright JG, et al. Effects of bracing in adolescents with idiopathic scoliosis. N Engl J Med 2013;369(16):1512-21.
10) Oetgen ME, Heyer JH, Kelly SM. Scoliosis screening. J Am Acad Orthop Surg 2021;29(9):370-9.
11) Yan B, Lu X, Nie G, et al. China urgently needs a nationwide scoliosis screening system. Acta Paediatr 2020;109(11):2416-7.
12) Lein GA. Screening for adolescent idiopathic scoliosis:a literature review. Pediatric Traumatology, Orthopaedics and Reconstructive Surgery 2022;10(3):309-20.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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