書評
脳卒中の下肢装具 第4版—病態に対応した装具の選択法
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著者:
大串幹1
所属機関:
1兵庫県立リハビリテーション中央病院リハビリテーション科
ページ範囲:P.437 - P.437
医師として,装具処方を行うにあたっては,患者の状態に最も適していて,そして使い続けてもらえる装具の具体的イメージが浮かびあがってこなければならないと思っている.装具処方の経験がまだ浅い時は,可及的にbestをめざし,結局はbetterなところに落ち着つくのではあるが,先輩医師の処方をまねながら,装具の機能を知ること,患者の身体機能を評価すること,最も使用するシチュエーションに適しているかの検討などのプラクティスを繰り返し,経験値を増やしていくしかない.当時は,文献で数多くの装具があることは知っていても,実物を手に入れることは難しいので,金属支柱・ダブルクレンザックのSLBを基本として,自分なりに使いこなせるプラスチックAFOを1つか2つ持っていればよいとも先輩に諭された気がする.その後,新しい種類の装具を使う機会を一つひとつ得て,処方できる装具の種類が増えていったが,実のところそれが真にbetterな処方になっていたのかは常に疑問であった.
著者代表の渡邉英夫先生は評者の大学時代の恩師であった.装具療法については,整形外科・リハビリテーション医学で丸々1コマ分の講義があり,歩行サイクルと絡めるなどかなり難しい内容であったと記憶している.しかし同時に,装具や日常の道具を患者の状態に合わせるためのたくさんの「工夫」をされており,装具や道具はそれら単独では「もの」に過ぎないが,患者が装着し使うことで,患者の生活にとって不可欠なもの,身体や生活の一部になることが強く感じられた.評者は患者には今も「装具は装う道具です.眼鏡と同じように使っていただきたい」とお話ししている.