増大号特集 できる整形外科医になる! 臨床力UP,整形外科診療のコツとエッセンス
column
若手の整形外科医への提言
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著者:
田中康仁1
所属機関:
1奈良県立医科大学整形外科学教室
ページ範囲:P.593 - P.593
当たり前のことと思えるかもしれませんが,診療の極意は「患者さんの訴えに耳を傾ける」ということであります.医師として,ごく初歩の事柄でありますが,多くの若い先生方ができていないと感じます.術後に痛みやしびれを訴えられることがときにあります.これらのことは手術なので当然生じることですが,重要なことは普段と違う訴え方に注意を払い,異変に気づく努力をするということです.1例を挙げれば人工股関節置換術の術後5日目にまだ痛みを訴えているとか,足の術後に3日たっても下肢のしびれを訴えているとかであれば,何か異変が生じている可能性を念頭に置く必要があります.愁訴を受け流すのではなく,患者さんが声を上げて訴えているのですから,対応しなければトラブルの原因になりかねません.逆にしっかり対応すれば,たとえ何らかの異変が生じていても,むしろ患者さんとの信頼関係は深まることになります.特にすぐに行動に移すということが大切です.傷の状態のチェックやX線撮影,超音波精査,血液検査などはすぐに行えます.患者さんも訴えたことに何か対応してもらったと感じることで,気持ちを落ち着かせることができます.
次に大切なことは,その結果を患者さんに還元するということです.もちろん何か異常がある場合は当然ですが,明らかな異常がない場合でも十分説明して,痛みやしびれに対してはNSAIDsや神経障害性疼痛に対する薬剤を処方するなどの適切な対処が必要です.