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血友病性関節症の現状と課題
著者: 鈴木仁士1 酒井昭典1
所属機関: 1産業医科大学整形外科学
ページ範囲:P.828 - P.830
文献購入ページに移動血友病は最も代表的な先天性凝固異常症である.令和3年の厚生労働省委託事業の「血液凝固異常症全国調査」では血友病Aが5,124例,血友病Bが1,091例登録されている1).血友病Aでは第Ⅷ因子の活性が,血友病Bでは第Ⅸ因子の活性が低下〜欠乏するために,幼少期からさまざまな出血症状を来すのが特徴である.代表的な出血部位として皮下,筋肉内および関節内が挙げられる.凝固因子活性が<1%であるものを重症,1〜5%であるものを中等症,5%<であるものを軽症血友病という.
重症および中等症の血友病症例では関節内出血が繰り返されることで関節内の軟骨における細胞外マトリックス(プロテオグリカンなど)の変性を来し,関節軟骨が障害される.さらに関節内出血により関節内の滑膜炎が持続すると,炎症性サイトカインの影響で骨破壊も見られるようになり血友病性関節症に至ると考えられている.
現在は欠乏もしくは不足している凝固因子を定期的に製剤で補充する定期補充療法の普及により関節内出血や血友病性関節症を来す症例の数は減少傾向にあるものの,20代,30代以降になると血友病性関節症を来している症例も少なくない.血友病性関節症に関する治療や課題について本稿で概説する.
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