書評
解剖学カラーアトラス 第9版
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著者:
弦本敏行1
所属機関:
1長崎大学・肉眼解剖学
ページ範囲:P.1185 - P.1185
定番の『解剖学カラーアトラス』が第9版に改訂されました.前回から実に7年の歳月を経ての待望の改訂です.初版は1985年に出版されていますが,本書がこれまで一貫して評価されてきたのは,理想的な状態に剖出展開された解剖野の再現を,最高品質の写真画像で追求した点です.本書を構成する数々の精密な写真は,美しいグラフィックと比較しても,はるかに正確かつリアルに対象を描出しています.模式図やイラストで構成される多くの類似書とは一線を画する貴重な解剖学アトラスです.これらのリアリティあふれる写真画像の提供を可能にしたのは,高い技術を持つ独日両国の熟練した解剖学研究者たちと,対象物を忠実に再現するプロカメラマンとの,高いレベルにおける共同作業でしょう.
これらに加えて,この第9版では医学生の学習効率を高めるための多くの進化が確認されます.まず,目次を見て気付くのは,本書を構成する各章の順番が整理されていて,他の多くの解剖学の教科書との整合性が図られていることです.このことによって,実際の解剖学実習のための副読本としての利便性は一段と向上するでしょう.