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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科59巻1号

2024年01月発行

雑誌目次

特集 はじめたい人と極めたい人のための 超音波ガイド下インターベンション

緒言 フリーアクセス

著者: 岩﨑博

ページ範囲:P.5 - P.5

 2017年に運動器エコーと出会い,脊椎エコーにはまってしまいました.脊椎脊髄疾患に対する超音波ガイド下インターベンション,その診断的治療としての有用性に魅せられました.

 現在,運動器エコーに関する書籍が次々と発刊されています.これらの良書を拝読していくうちに,「私が尊敬する先生方に,整形外科分野の超音波ガイド下インターベンションに関して執筆いただき,ひとつのまとまったものにしたい」という野望が生まれ,本特集を企画させていただきました.そのため,ご多忙な先生方に執筆依頼をさせていただきましたこと,心からお詫び申し上げるとともに,実現しましたことを喜び「にやにや」しております.

超音波ガイド下インターベンションの基本

著者: 片山裕貴 ,   宮武和馬

ページ範囲:P.7 - P.15

整形外科領域でエコーが注目されている.正確なインターべンションが行えるからである.しかし手技である以上はさまざまなピットフォールが存在する.本稿ではインターベンションの基本的な手技について解説する.

肩関節疾患に対する超音波ガイド下インターベンション

著者: 岩本航 ,   川副陽子

ページ範囲:P.17 - P.24

肩関節の診療を行ううえでエコーは有用なツールである.診断だけでなく,エコーガイド下でのインターベンションが行えることは,日常診療の質を大幅に向上させる.エコーを用いることにより,正確で安全な注射が行えるだけでなく,徐痛目的以外の画像診断やリハビリテーションなどにも活用できる.関節注射やその応用手技,肩周囲のhydro-release,神経ブロックなど,日常診療で有用な肩関節のエコーガイド下のインターベンションについて解説する.

肘への超音波ガイド下インターベンションの基礎と応用

著者: 宮武和馬 ,   藤澤隆弘 ,   草場洋平 ,   稲葉裕

ページ範囲:P.25 - P.31

肘関節の超音波ガイド下インターベンションは血管神経が豊富な領域であり,基本手技から応用まで多くのピットフォールが存在する.①内側上顆炎を代表する腱付着部障害においては,円回内筋や橈側手根屈筋などの解剖を理解する必要がある.実際の注射では内側前腕皮神経の走行も意識する.②オーバーヘッドスポーツを中心とした尺骨神経障害に対しては,paraneural sheathや血管を意識したハイドロリリースが重要である.さらに,応用的なインターベンションでは,③上腕二頭筋遠位付着部障害において,神経血管を避けつつ超音波ガイド下での注射を行うための工夫としてコブラテクニックを紹介する.最後に,④新しい超音波ガイド下手術—Percutaneous Ultrasonic Tenotomy—について解説し,外側上顆炎に対する超音波ガイド下での腱のdebridementが低侵襲かつ有用な治療法であることを述べる.これらをそれぞれ理解することで,肘の超音波ガイド下インターベンションにおいて広範な応用が可能となる.

手への超音波ガイド下インターベンションの基礎と応用

著者: 深澤真弓

ページ範囲:P.33 - P.38

手の組織はすべて体表から浅いところに存在するため,超音波診療との相性は抜群である.ガングリオンや関節滑膜炎,腱断裂や骨折などの診断に超音波が有用であることはいうまでもないが,超音波は診断だけにとどまらない.正確な診断的注射や,安全で精度の高い治療を行う際にこそ,超音波のさらなる威力が発揮できる.本稿では日常診療で遭遇する頻度の高い,母指CM関節症,手根管症候群,ドケルバン病や尺側手根伸筋腱腱鞘滑膜炎,バネ指を取り上げた.これら疾患に対する実践的な超音波ガイド下インターベンションについて解説する.

膝関節痛に対する超音波ガイド下インターベンションの基礎と応用

著者: 中瀬順介

ページ範囲:P.39 - P.44

膝関節痛に対する超音波ガイド下インターベンションを使いこなすためには,膝関節の超音波解剖を理解することと痛みがどの組織に由来しているかを考えることが重要である.膝関節痛に対する注射=膝関節内注射という時代は終わり,整形外科医が触診,身体所見と各種画像検査所見から病態を考察し,それぞれの病態に応じて超音波ガイド下インターベンションを組み合わせて治療する時代に突入している.

足部・足関節疾患への超音波ガイド下インターベンションの基礎と応用

著者: 笹原潤

ページ範囲:P.45 - P.51

超音波は,画像診断ツールの1つとして有用なだけでなく,治療や確定診断のための注射のガイドとしても有用である.また,薬液を注射するだけでなく,超音波ガイド下での手術も行われるようになってきており,近年注目を集めている.本稿では,足根管ガングリオンや足底腱膜炎,捻挫後遺残性疼痛に対する超音波ガイド下注射と,足関節内遊離体やアキレス腱付着部障害に対する超音波ガイド下手術について,実際の症例を提示して解説する.

頚部の超音波ガイド下インターベンション

著者: 新堀博展

ページ範囲:P.53 - P.60

超音波ガイド下神経ブロックは優れた手技であり,臨床の場に急速に普及してきている.特に頚部は有用性が高い.神経根ブロックは椎体高位の同定と針先をどこに位置させるかがポイントである.従来のように透視下に放散痛を得る必要はない.椎間関節は関節面にプローブを合わせることで,高位の同定と穿刺が容易になる.また,星状神経節や上頚神経節を超音波で確認することで,従来のランドマーク法よりも,より目的に即した頚部交感神経ブロックが可能となる.

腰背部インターベンション

著者: 前田学 ,   永野龍生 ,   前田奈々

ページ範囲:P.61 - P.67

超音波診断装置の技術的進歩は,近年著しい.解像度の進歩は,今まで体表からみることができなかった脊髄を含めた脊柱管や神経根を観察可能にした.また,低速の血流を捉えるsuperb micro-vascular imaging(SMI)の技術は,造影剤を使わず薬液の流れの描出を可能にした.これらの技術を組み合わせることで,透視でしかできないと思われていた脊椎周囲のインターベンションを可能にした.本稿では,腰部硬膜外ブロック,腰部神経根ブロック,腰椎椎間関節ブロックに限定してその手技を中心に解説する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年1月末まで)。

殿部・鼠径部への超音波ガイド下インターベンションの基礎と応用

著者: 髙田知史

ページ範囲:P.69 - P.75

殿部痛の原因は主に第5腰椎神経根(L5),第1仙骨神経根(S1)の障害に起因する頻度が高く,鼠径部痛は変形性関節症や股関節インピンジメント(FAI)などの股関節内が疼痛の原因となっている頻度が高い.それが故に腰椎,股関節に画像上異常所見がないと原因不明とされ鎮痛薬の内服のみで経過をみられ,痛みが改善しないことが多い.しかしエコーを使用し末梢神経に着目すること,末梢神経やその周囲組織を対象としエコー下インターベンションを行うことで,症状改善を得られることは多い.

筋損傷へのインターベンション

著者: 和田誠

ページ範囲:P.77 - P.82

超音波診断装置の進歩により肉離れ(筋損傷)の治療が大きく変わりつつある.リアルタイムに軟部組織の詳細評価ができ,超音波ガイド下にピンポイントに行えるインターベンションが可能となった.肉離れの急性期に行う多血小板血漿(PRP)注入と,肉離れの治癒は進んでいるが神経の癒着で機能不全に陥っている選手に対するハイドロリリースを紹介する.

腱障害に対するステロイドを使用しない超音波ガイド下インターベンション

著者: 面谷透

ページ範囲:P.83 - P.90

腱障害は一般的な病態であり,従来はステロイド注射が一般的であったが,これには腱への損傷リスクが伴う.最近では,プロロセラピー,スクレーピング,動注治療,percutaneous ultrasonic tenotomy(TENEX)など,新しい非ステロイド治療法が開発され,有効な結果が報告されている.これらの治療は腱障害の治療法として新たな可能性を示している.

上下肢の手術のためのエコーガイド下末梢神経ブロック

著者: 石田岳

ページ範囲:P.91 - P.99

麻酔科医の立場から,自家麻酔に利用可能なエコーガイド下末梢神経ブロックのうち,腕神経叢ブロック腋窩アプローチ,坐骨神経ブロック,大腿神経ブロックを解説します.この3つのブロックを覚えると,上肢であれば肘から下,下肢であれば膝から下の手術に対応できます.初学者の先生にもわかりやすく説明しますので,頑張って勉強しましょう.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年1月末まで)。

視座

患者立脚型評価における,タッチ効果の重要性

著者: 松本嘉寛

ページ範囲:P.1 - P.1

 「手術後のX線は完璧なんだけどなー」

 外来で思わず首をかしげてしまうご経験をお持ちの先生方も多いのではないでしょうか.

Lecture

外傷性頚部症候群の長期予後と頚椎MRI所見に関する縦断的研究

著者: 大門憲史 ,   渡辺航太 ,   松本守雄

ページ範囲:P.101 - P.106

はじめに

 外傷性頚部症候群(whiplash-associated disorders:WAD)は,一般には,交通事故,特に追突事故時の急激な加減速に起因する頚部の過伸展と過屈曲による同部の軟部組織(筋,靱帯,椎間板,血管,神経)の損傷とされており,頚部痛や上肢痛のみならず,頭痛,耳鳴り,吐き気など多彩な症状を呈し得る1).2021年度の自賠責保険請求のうち,頚部の軽度の傷害に区分される傷病名の割合は全体の約27%であり2),今日においても,WADは交通事故傷害の重要な位置を占めている.

 われわれが日常診療で遭遇する,いわゆる“むち打ち損傷”は,1995年に発表されたQuebec Task Forceの臨床分類3)におけるWADのGradeⅠおよびⅡに該当する.Matsumotoら4)は頚椎に関連した症状のない健常群と急性期WAD群の頚椎MRI所見を比較した結果,両群間に頚椎変性所見の差はみられなかったことを報告している(初回研究).Quebec Task Forceの臨床分類や上記の報告などを踏まえると,急性期WADのGradeⅠおよびⅡに関しては,MRIなどの一般画像検査では特徴的所見はないということはコンセンサスが得られている.

 一方で,WADの病態が筋や靱帯,椎間板などの頚椎軟部組織の損傷であることを考えると,健常群とWAD群のMRI所見の差が長期経過後に生じてくる可能性はあるか,という疑問が生じる.WAD受傷後の長期経過に関する報告は散見され,Bunketorpら5)は108例のWAD患者の17年後の症状を調査し,55%で頚部痛などの残存する症状がみられたと報告している.また,Rookerら6)は22例のWAD患者を30年間フォローした結果,30年時の頚椎関連の症状は15年時と比較し,改善していたことを報告している.しかしながら,これらの研究は質問票をもとに行われた長期の縦断的研究であり,MRIなど画像検査を用いた縦断的研究は,われわれの渉猟し得た限りでは行われていない.

 われわれは,初回研究に引き続き,受傷10年後および20年後に同一の対象者に対してMRI撮影と診察を行い,WAD患者の長期経過後の症状および頚椎MRI所見の変化について明らかにした7,8).本稿では,われわれの行った縦断的研究に基づき,WADが受傷後長期経過後に及ぼす症状の変化と頚椎MRI所見の変化について概説する9)

境界領域/知っておきたい

Coolief疼痛管理用高周波システム

著者: 池内昌彦

ページ範囲:P.110 - P.112

はじめに

 変形性膝関節症(膝OA)の新しい治療として,Coolief疼痛管理用高周波システム(アバノス・メディカル・ジャパン・インク)が2023年6月1日に保険収載された.本システムは,冷却ラジオ波(radiofrequency:RF)治療を行う治療機器である.本稿ではRF治療の原理とCoolief疼痛管理用高周波システムを利用した膝OAの痛み治療の概要を解説する.

症例報告

観血的整復を要した小指MP関節掌側亜脱臼の1例

著者: 三好英昭 ,   西庄武彦

ページ範囲:P.113 - P.117

交通外傷により左小指MP関節掌側亜脱臼を生じた1例を経験した.47歳女性.受傷当日の単純X線検査では診断し得ず,後日CT検査で亜脱臼が判明した.徒手整復は不可能で,受傷日から1週間後に観血的整復を行った.術中所見より,断裂した橈側側副靱帯の断端が主たる整復阻害因子であったと考えられた.当傷病は手術治療を必要とする場合が多く,初期診断を誤らないことが重要である.

書評

—入職1年目から現場で活かせる!—こころが動く医療コミュニケーション読本 フリーアクセス

著者: 石川ひろの

ページ範囲:P.109 - P.109

 この20年ほどの間に,日本の医療者教育においても,コミュニケーションは医療者が身につけるべきコンピテンシー(能力)の一つとして広く認識されるようになってきた.客観的臨床能力試験(OSCE)の導入などと相まって,コミュニケーションは教育可能,評価可能な能力としてとらえられるようになるとともに,そこでは特にスキルの教育に焦点が当てられてきた.時に「マクドナルド化」と揶揄されながらも,学生だけでなく教育に携わる医療者の意識を大きく変え,全体としての医療者のコミュニケーション能力を底上げしてきたことは間違いないだろう.一方で,卒後のコミュニケーション教育は,それほど系統立って行われてはおらず,それぞれの現場に依存しているのが現状である.本書は,学部教育の先のコミュニケーションについて,何をどう学んだらよいかの手がかりになる一冊である.

 本書は,臨床心理士でもある著者による「週刊医学界新聞」の連載「こころが動く医療コミュニケーション」に大幅な加筆,書き下ろしを加えてまとめられたものである.「入職1年目から現場で活かせる」ような場面やトピックを取り上げ,基本的かつ実践的なコミュニケーションのスキルがバランスよく紹介されている.患者さんとのコミュニケーションだけでなく,医療者同士のコミュニケーションも含め,コミュニケーション研究のエビデンスに基づくスキルや対処方法が具体例とともにわかりやすくまとめられているという点で,まさに明日から使える実践書と言える.

問題解決型救急初期診療 第3版 フリーアクセス

著者: 薬師寺泰匡

ページ範囲:P.119 - P.119

 救急外来では,迅速かつ正確に患者の病態を把握して,緊急性が高い場合には即時介入し,生命予後を左右するような疾患の除外をし,さらにはその場で行わねばならない処置を的確に行う必要があります.毎日がこれの繰り返し.しかし,患者さんは千差万別.同じ疾患でも,全く異なる症状でやってくることも多々あるので,毎日やみくもに働いているだけでは救急対応の能力は磨かれません.緊急性の判断や,除外診断を適切に行うには,膨大な時間と経験が必要になります.もちろん,不適切な修行は時間の無駄ですし,何をしてよいか悩んでいる時間すらリスクになるのが救急外来です.われわれには道しるべが必要なのです.

 初期臨床研修は,研修医一人当たりかなりの数の救急車対応をする病院で学ばせてもらいました.が,当然最初は進むべき道がわかりません.途方に暮れる研修医に道を照らしてくれたのが,この『問題解決型救急初期診療』でした.まず行うべきことは当然網羅されており,症候から入る構成になっているので,実際の診療時と同じ思考過程をたどることができます.26の症状に始まり,外傷や熱傷,中毒,ショック,蘇生など救急医が専門とする分野,そして精神科救急までまとめられていますから,大部分の救急患者はこの一冊があれば対応可能で,少なくとも何をしていいのかわからないという状況には決してならないことが約束されています.確かな救急外来の道しるべ.これは救急外来のバイブルです.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.2 - P.3

欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.4 - P.4

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.121 - P.121

あとがき フリーアクセス

著者: 仁木久照

ページ範囲:P.124 - P.124

 「ブラック・ジャック」の新作を,生成AIを使って制作するプロジェクトが完了したというニュースを目にしました.ストーリーや新キャラクターのデザインは生成AIとやり取りし,そこで出てきたアイデアからクリエーターたちが手を加えて制作を進めたとのことです.新作がとても楽しみです.一方で,このプロジェクトには「AIが人間の『創造性のサポート』に貢献できるのか,その可能性と課題を探る」という「研究」の側面もあったようです.結果として,「AIは無難なアイデアが多いので,『攻める姿勢』はまだ弱いと感じた.ただ,タイトルや人工臓器の名称のアイデアを提案したのには驚き,AIと人間が切磋琢磨してタッグを組んでいけば面白いと思えるような作品が出てくると思った」,「誰もがAIとコラボしてAIのよさを引き出せる,自分を高められるかというとそうではないと感じた」,「AIが生成したものをただ受け入れるだけではなく,生成された内容に対して人間が創造性を高めて反応していかないといかせないと思った」,「今のAIは苦労しなくてもそれなりのものは生成できるし,それだけでも楽しいが,魂を込められるかどうかは,最後は人間次第と感じた」などの意見が出たようです.

 AIが人類の知性を超えても当面は半導体などのハードウェアを自ら作ることはできず,人間を必要とするとされています.つまり,互いに支え合う「相利共生」の時代はしばらく続くのでしょう.AIの想像を超える急速な進歩に関するニュースばかりが目立つ今日この頃,なんとなく安堵したニュースでした.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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