文献詳細
文献概要
最新基礎科学/知っておきたい
有限要素解析の基礎と臨床応用
著者: 東藤貢1
所属機関: 1九州大学応用力学研究所生命エネルギー工学分野
ページ範囲:P.208 - P.213
文献購入ページに移動正常な骨・関節の形状や構造は,日常生活や運動に関係する生体内の力学環境に適応するように構築されている.しかし,骨粗鬆症や変形性関節症などによる骨構造・形状の変化,剛性が異なるインプラントの挿入,転倒や衝突による過度な外力の作用,スポーツの過度な練習による繰り返し負荷の作用等により正常な力学状態が破綻すると,病状の進展や新たな疾患の発症を誘発することが懸念される.したがって,骨・関節の力に対する応答特性を定性的・定量的に把握し,疾患との関係を理解することが重要であるが,複雑な形状と構造を有する骨・関節の力学的挙動を知ることは容易ではない.
一方,工業的に設計・製造された機械や構造物の力学的挙動を調べるための学術体系として変形体力学があり,コンピュータ技術の目覚ましい発展と有限要素法(finite element method:FEM)のような数値解析手法の開発により,変形体力学に基づく有限要素解析法(finite element analysis:FEA)は工業界において必要不可欠な存在となっている.FEAを実施することで外力が作用する複雑な構造体の内部での力学状態(応力やひずみの分布状態)を知ることができるために,整形外科の分野においても骨・関節の力学状態を調べるための研究用ツールとして,早くから注目されてきた.現在では,臨床用CT画像を利用して実構造に近い形状と力学特性を持つ骨・関節の3次元数値モデルを構築し,FEAを実施することが可能となっている1).
本稿では,骨の力学解析に必要不可欠な変形体力学の基礎とCT画像を利用した有限要素法(CT-FEM)の概要を述べた後に,主に骨折を模擬した解析例を紹介する.
参考文献
掲載誌情報