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骨髄間葉系幹細胞を用いた脊髄損傷治療の基礎と臨床
著者: 廣田亮介12 佐々木祐典2 本望修2 山下敏彦1
所属機関: 1札幌医科大学医学部整形外科学講座 2札幌医科大学医学部附属フロンティア医学研究所神経再生医療学部門
ページ範囲:P.308 - P.311
文献購入ページに移動脊髄損傷は四肢麻痺,膀胱直腸障害,呼吸障害,自律神経障害,脊髄障害性疼痛など多彩な症状が出現し,重篤で永続的な脊椎外傷疾患である.本邦では,脊髄損傷患者の年間新規発生数は5,000〜6,000人であり,総数は20万人と,多くの患者が後遺症に苦しんでいる.これまでは受傷時年齢は20歳前後と60歳前後に二極化したピーク分布であったが,近年では高齢者の平地転倒による受傷が増加している1,2).健常者が予期せぬ事故により受傷後から生涯を通して重度の障害を抱え,重いハンディキャップを背負うこととなり,その社会的損失は甚大である.
われわれは1990年代より脊髄損傷,脳梗塞,多発性硬化症,認知症など,多くの中枢神経疾患に対してさまざまな細胞を用いた再生医療の基礎研究を行ってきた.その中で,骨髄中に含まれる間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell:MSC)の経静脈的投与による良好な治療効果を多数報告してきた.特に,実験的脊髄損傷に関しては,ラットの急性期〜亜急性期の重度脊髄損傷(圧挫)モデルに対して,MSCの経静脈的投与を行い,有意な運動機能の回復を認めた.さらに,慢性期脊髄損傷(圧挫)モデルに対するMSC移植についても,運動機能が改善することを確認している3-8).
これらの研究結果に基づき,2014-2017年に,亜急性期脊髄損傷患者に対する自家MSCの静脈内投与の医師主導治験を行い,2018年12月に厚生労働省から「脊髄損傷の治療に用いる自己骨髄間葉系幹細胞」(治験薬識別コード:STR01)について,「条件及び期限付承認」を取得した(製品名:ステミラック®注,ニプロ).薬事承認され薬価が定められており,高額療養費制度を含む公的医療保険が適用されたため,患者負担は最小限に抑えられる.2019年5月より脊髄損傷患者の受け入れを開始し,2019年7月から再生医療等製品「ステミラック®注」を実臨床で使用開始している.本稿ではわれわれの基礎および臨床研究について述べ,さらに「ステミラック®注」が持つ再生医療等製品としての特徴について解説する.
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