書評
死亡直前と看取りのエビデンス 第2版
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著者:
田上恵太12
所属機関:
1やまと在宅診療所登米
2東北大学大学院・緩和医療学
ページ範囲:P.323 - P.323
2023年8月より,仙台市から北に約100km離れた地方都市にある,やまと在宅診療所登米で院長としての任務が始まりました.同僚の若手医師だけでなく,診療所の看護師や診療アシスタント,在宅訪問管理栄養士,そして同地域の緩和ケアや終末期ケアにかかわる医療・福祉従事者の仲間たちと共に,この土地で「最期までよく生きるを支える」ためにどのような学びが相互に必要かを考えるようになりました.困難に感じることを聞いてみると,亡くなりゆく方々をどのように看ていけばよいかが不安(時には怖いとの声も)との声が多く,まずは診療所内で『死亡直前と看取りのエビデンス 第2版』の共有を始めてみました.実臨床での肌実感をエビデンスで裏付けしている,まさにEBM(Evidence-Based Medicine)に沿った内容でもあり,医師や看護師など医療者たちにも強くお薦めできる内容であると感じています.
病院看取りが主流になっていた昨今の社会情勢の影響か,これまでに死亡前の兆候を目にしたご家族やスタッフは少なく,不安や恐怖を感じることが多いです.しかし,本書でまず初めに述べられているように,多くの兆候はあらかじめ想定することが可能で,ご家族やスタッフとも事前に共有することができます.そして本書には,このような兆候がなぜ生じるのかをEBMに沿って解説されているだけでなく,緊張が高まる臨死期のコミュニケーションの工夫まで触れられており,医療者だけでなく,その他の関係者にとっても心強いリソースとなります.