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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科59巻4号

2024年04月発行

雑誌目次

特集 脊椎関節炎SpAを理解する—疾患概念・診断基準・最新治療

緒言 フリーアクセス

著者: 門野夕峰

ページ範囲:P.333 - P.333

 この10年間で強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS),乾癬性関節炎(psoriatic arthritis:PsA)などの疾患を包括する脊椎関節炎(spondyloarthritis:SpA)という疾患群概念の認知度が高まってきた.SpAは付着部炎を主体とする全身性炎症性疾患であり,ASやPsA以外にもクローン病や潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患に伴う脊椎関節炎,クラミジア感染後などに生じる反応性関節炎,小児期に発症する若年性特発性関節炎なども含まれる.SpAでは,四肢や脊椎などの運動器の症状以外にも,ぶどう膜炎など眼症状,乾癬など皮膚症状,炎症性腸疾患など消化器症状を呈することが知られている.SpA全体で見ると多彩な症状を呈するが,個々の症例を見るとヘテロであるため確定診断を下すことは難しく,治療過程で診断の見直しが必要なこともある.診療科の枠組みを超えた横断的な診療連携を行うことで,適切な診療に繋がると考えられている.

 SpAの病態形成には免疫異常の基盤があると考えられており,遺伝的素因としてヒト白血球抗原HLA-B27遺伝子の関与が示唆されている.IL-23,IL-12,IL-17やTNFαなどの炎症性サイトカインが病態形成に関与していると考えられており,これらを標的とした生物学的製剤が治療に用いられている.マルチサイトカインを抑えるJAK阻害剤も臨床応用されるようになった.新規薬剤の開発に伴い,骨関節破壊や脊椎強直を抑制できる可能性が拡大し,不可逆的な機能障害を来さないように早期からの治療介入が推奨されている.

脊椎関節炎の概念

著者: 山村昌弘

ページ範囲:P.335 - P.340

脊椎関節炎(SpA)は付着部炎を共通する特徴とする慢性炎症性関節疾患群で,体軸性SpA(仙腸関節炎,脊椎炎)と末梢性SpA(関節滑膜炎,付着部炎,指趾炎)に大別される.体軸性SpAはX線基準を満たすものと満たさないもの(r-axSpA vs. nr-axSpA)に分類され,r-axSpAは強直性脊椎炎(AS)に相当する.末梢性SpAには乾癬性関節炎(PsA),炎症性腸疾患に伴うSpA,反応性関節炎に加え,分類不能型SpA(uSpA)が含まれる.SpAの発症・病態にはMHCクラスI分子(HLA-B27など)が関与し,付着部に生ずる生体力学的ストレスによる組織損傷に対して過剰な免疫応答が誘導され,骨破壊と骨新生を伴う関節障害が進行する.病態にはIL-23/IL-17経路とTNF-α誘導が重要である.

体軸性脊椎関節炎(axSpA)の疫学,病態

著者: 田村直人

ページ範囲:P.341 - P.345

体軸性脊椎関節炎は,付着部の炎症が起こり,部位としては仙腸関節が初発で必発である.そのほか,椎体炎,末梢関節炎に加え前部ぶどう膜炎,腸炎など関節外症状がみられる.HLA-B27との関連性が高く,一般人口におけるHLA-B27保有率が0.3%と低い日本人では稀である.主に10〜20歳台で発症する.日本人患者でのHLA-B27保有率は75%であった.炎症による骨びらんと脂肪組織による修復の後に骨新生がみられ,靱帯骨棘が生ずる.付着部局所の自然リンパ球から産生されるIL-17やTNF,骨髄から付着部に流入する間葉系幹細胞が分化し病態形成にかかわる.

体軸性脊椎関節炎(axSpA)の診断

著者: 多田久里守

ページ範囲:P.347 - P.352

体軸性脊椎関節炎には強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS)とX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(non radiographic axial spondyloarthritis:nr-axSpA)が含まれ,これらは一連の病態と考えられる.しかしその特徴には異なる部分もあり,それらを理解したうえで,臨床症状や画像所見から診断を行う.安易に分類基準を満たすことで診断をするのではなく,十分な鑑別除外診断を行うことも重要である.

体軸性脊椎関節炎(axSpA)の治療

著者: 浅井秀司 ,   鈴木望人 ,   岸本賢治 ,   今釜史郎

ページ範囲:P.353 - P.359

本邦では,2010年にTNF阻害薬が強直性脊椎炎に対して承認され,続いてIL-17阻害薬とJAK阻害薬が強直性脊椎炎およびX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎に対して承認された.これらの分子標的薬の登場により,体軸性脊椎関節炎患者の症状や炎症をコントロールできるようになった.一方で,体軸性脊椎関節炎において薬物治療による構造的破壊の進行抑制に関する十分なエビデンスはない.治療目標である「QOLを最大化する」ためには,薬物治療のみならず患者教育,運動などの非薬物治療も必要不可欠である.

乾癬性関節炎(PsA)の疫学,病態

著者: 和田琢

ページ範囲:P.361 - P.367

乾癬性関節炎(PsA)は,乾癬に関節炎を伴う炎症性筋骨格系疾患であり,機械的刺激のかかる付着部に炎症が惹起されるのが特徴である.PsAの病態はHLA-B27などの遺伝的要因とメカニカルストレスに代表される環境要因を背景に,近年治療ターゲットにもなっているIL-23,IL-17,TNFなどのサイトカインが関与し,炎症だけでなく,付着部骨棘や靱帯骨棘に代表される特徴的な骨新生を呈する.また,PsA患者は肥満やメタボリックシンドロームの頻度も高く,PsAの病態に関与することが考えられている.

乾癬性関節炎(PsA)の臨床症状と診断

著者: 森優 ,   泉山拓也 ,   大森遼子 ,   金淵龍一 ,   浅野善英 ,   相澤俊峰

ページ範囲:P.369 - P.375

乾癬性関節炎(psoriatic arthritis:PsA)は皮膚や末梢関節のみならず,脊椎にも影響を及ぼす炎症性疾患である.PsAは乾癬患者の10〜30%で報告され,多くの症例で乾癬が筋骨格系の症状に先行して発症している.PsAでは,一般的には付着部炎,爪病変,指趾炎などの関節外の症状を併発し,さらには心血管疾患,代謝疾患,精神疾患などの併存疾患を伴うこともある.乾癬の皮膚症状のみならず,長期にわたる炎症による運動器の構造的損傷や機能障害,そしてそれに伴う社会経済的影響を防ぐために,PsAの早期の診断と治療が極めて重要である.本疾患における治療選択肢の増加,特に疾患修飾性抗リウマチ薬(生物学的製剤や標的合成薬を含む)の登場は,皮膚および関節病変の治療に劇的な改善をもたらしている.本稿ではPsAの臨床症状と診断について概説する.

乾癬性関節炎(PsA)の治療

著者: 亀田秀人

ページ範囲:P.377 - P.381

乾癬性関節炎(psoriatic arthritis:PsA)の治療は罹患領域と重症度を勘案して,最小限の疾患活動性となるように治療薬を選択する.治療の原則は「個々の患者,個々の時点において,治療薬の有効性・安全性・費用負担のバランスが最善となるようにする」ことであるが,メトトレキサートなど安価な従来型合成抗リウマチ薬の有効率や有効領域が限定的であるため,生物学的製剤に代表される分子標的薬の必要性が高いのが現状である.さらには先行することが多い乾癬の皮膚病変に対する十分な全身的治療がPsAの発症予防につながる可能性も示唆されている.

反応性関節炎の診断と治療

著者: 首藤敏秀

ページ範囲:P.383 - P.390

反応性関節炎は,泌尿生殖器や腸管など関節以外の微生物感染症後に発症する無菌性,非化膿性の関節炎で,罹患関節からは微生物は培養同定されない.多くは急性発症で,典型例では先行感染の1〜4週間後に発症する.左右非対称性で下肢に多い少関節炎や付着部炎,指趾炎などを生じ,関節外症状として結膜炎・ぶどう膜炎,尿道炎,亀頭炎などを伴う.診断には先行感染を確認することが最も重要である.約50〜80%がHLA-B27を保有しているとされる.ほとんどの例は半年〜1年以内に寛解に至るため,まず対症療法が主体の治療となる.

炎症性腸疾患に伴う脊椎関節炎

著者: 冨田哲也

ページ範囲:P.391 - P.395

脊椎関節炎(SpA)は関節外症状として腸炎症を合併することが知られている.また炎症性腸疾患(IBD)の腸管外症状として関節炎が合併することは以前から知られている事実である.近年IBDとSpAの共通の病態として,IL-23/IL-17 pathwayが注目されている.末梢性関節炎や体軸性関節炎が合併するが,その実態や治療方針は明確ではなく臨床現場では手探りな状況である.積極的な骨・関節専門医と消化器専門医による横断的診療連携によるエビデンスの構築が重要である.

掌蹠膿疱症性骨関節炎の診断と治療

著者: 辻成佳

ページ範囲:P.397 - P.402

「掌蹠膿疱症性骨関節炎(PAO)診療の手引き2022」と同時期に,2022年9月に日本皮膚科学会掌蹠膿疱症診療の手引き策定委員会は「掌蹠膿疱症診療の手引き2022」を発表した.この「PAO診療の手引き2022」には,早期診断と早期治療を目指して42年ぶりに改訂された「改訂PAO診断ガイダンス2022(改訂Sonozaki基準)」が含まれており,またPPP(掌蹠膿疱症)診療の手引きでは,PPPの定義と診断基準が明確に示された.PAOおよびPPPの診断と治療に関する指針が同時期に示されたことで,これらの疾患に対する適切な診療が期待される.本稿では,改訂Sonozaki基準を中心に,PAOの診断および治療について詳しく解説する.

視座

運動は治療のひとつ

著者: 平岡弘二

ページ範囲:P.329 - P.329

 運動の医学の中での役割は徐々に大きくなっている.WHOは,成人の身体活動が総死亡率,循環器疾患死亡率の低下,がん,2型糖尿病発症の予防などにつながる可能性を示唆している.成人の場合,中強度の有酸素性の身体活動を少なくとも週に150〜300分,または高強度の身体活動を少なくとも75〜100分行うか,または週全体で中強度の活動と高強度の活動の組み合わせによる同等の量を行うと,実質的な健康上の利益が得られるとしている.このように,一般的には運動は疾患の発症予防として必要とされることが多い.

 一方,整形外科領域ではサルコペニア,骨粗鬆症,各種術後の機能回復など,運動は治療として必須であり,その主な役割は,患者さんのquality of life(QOL)の向上である.また近年,がん治療においては運動によるがん進行の抑制メカニズムの研究が進んでおり,運動をすることで筋肉から分泌されるマイオカインなどの生理活性物質ががん細胞に影響し,増殖や浸潤転移の抑制に働いている可能性が考えられるようになってきた.

Lecture

思春期特発性側弯症の診断と治療戦略

著者: 髙橋淳

ページ範囲:P.405 - P.412

 思春期特発性側弯症の患者さんは9割が女子であり,患者さんが自分の娘だったらこんな治療をしたいと考えながら治療法を開発してきた.本稿では,信州大学医学部運動機能学教室の思春期特発性側弯症に対する診断と治療戦略を述べる.

骨の成熟と老化を科学する—組織特異的なコラーゲンが誘導される意義

著者: 斎藤充

ページ範囲:P.413 - P.424

はじめに

 ヒトの骨,腱,靱帯といった運動器が支える組織は,全身性因子,局所因子の影響を受け,新陳代謝(リモデリング)を営み,生体の要求に応じた変化をとげる.ヒトの平均寿命は90歳を超える勢いであり超高齢社会が到来しており,組織の成熟や老化の過程を理解することは,加齢に伴い発生する疾患の予防や治療を考えるうえで重要である.

 また,ヒトに類似した疾患モデルを確立し,診断法や治療法を確立することが必要となる.研究費の問題などで大型動物の使用は困難ではあるが,骨の研究においては,長管骨がリモデリングせずに生涯成長し続ける齧歯類(マウス,ラット)と,常にリモデリングを営むサル,イヌ,家兎とでは,根本的な差があることを認識すべきである.齧歯類のデータは論文化されても,必ずしもヒト骨疾患にあてはめることができない.特にリモデリングの過程で骨量,骨質(構造,材質)を変化させる薬剤の影響については,齧歯類の成果はヒトへの効果として当てはめることは必ずしもできないのである(図1)1,2)

 骨密度以外の骨強度因子として「骨質」の概念が提唱された当時は,「構造学的な骨質」のみがクローズアップされた3,4).骨強度は骨密度と骨質に依存するとされたが,患者診療において,骨吸収が抑制され骨密度が上昇し,構造学的な骨質が改善しても骨折リスクが低減しない症例も経験する.さらに,多施設前向き介入研究でも骨質劣化型骨粗鬆症(osteoporo-malacia)では,骨吸収抑制薬により骨吸収マーカーの値が低下し骨密度が増加しても骨折リスクが高いことが明らかにされている5)

 こうした事実は,骨ミネラル成分,骨構造とは独立した機序で,骨強度を規定する骨の質を規定する「材質学的な骨質因子」の重要性を物語っている(図2)6-9).特に骨の主要なコラーゲンは細胞外基質の主要な構成成分であり,コラーゲンの質的な異常(主に翻訳後修飾)が,不十分な石灰化(類骨様)であったり,酸化ストレスの亢進による過剰老化を来していると,骨折リスクを高めることがエビデンスとして示されている.

 本稿では,同じ1型コラーゲンを主たる構成成分とする腱や靱帯と骨との相違点について述べる.さらに「酸化ストレスに起因する骨質劣化=コラーゲン過剰老化4,6)」とは異なる「ビタミンD欠乏型骨質劣化型骨粗鬆症(骨軟化症型)」について,ヒト骨分析,および10〜90歳までの日本人5,518人の世界初となるエビデンスを紹介する9)

最新基礎科学/知っておきたい

人工知能技術の進化と画像診断における応用

著者: 木戸尚治

ページ範囲:P.426 - P.429

はじめに

 人工知能(artificial intelligence:AI)の画像診断への応用は,医療の質の向上と効率化に大きく貢献している.現在の第3次AIブームでは,深層学習がその中心となっているが,深層学習は画像認識能力に優れており,医用画像診断では画像分類,画像検出,画像領域抽出などにおいて様々な手法が提案され,さらには画像生成の利用などにも応用範囲が広がっている.このようなAI技術の進展は,診断,治療計画の策定,そして予後予測に革新をもたらしている.

 また,現在着目されているAI技術の1つに自然言語処理(natural language processing:NLP)がある.NLPは画像診断レポートの作成支援による画像診断医の負担軽減や,電子カルテ情報の解析による患者の病歴や治療経過の把握などの個別化された治療計画の策定に貢献することが期待されている.

臨床経験

改良型大阪医大式側弯装具に対する患者アンケート調査

著者: 重松英樹 ,   川崎佐智子 ,   池尻正樹 ,   撫井貴弘 ,   田中康仁

ページ範囲:P.431 - P.434

背景:改良型大阪医大式(OMC)側弯装具のアンケート調査を実施した.方法:装具の①重さ,②着脱,③肌トラブル,④着用時間について調査した.結果:①,③,④に関して,以前のOMC装具と比較して明らかな変化はなかった.②に関して,改良によりすべての患児が自分で着脱ができていた.まとめ:装具重量の軽量化を図ったが,患児の実感に変化はなかった.改良型OMCによる肌トラブルは全体として有意な減少を示さず,骨盤周囲に多く認めた.すべての患児で着脱が自分で可能であった.

書評

感染対策60のQ&A フリーアクセス

著者: 伊東直哉

ページ範囲:P.404 - P.404

 坂本史衣先生といえば,言わずと知れた「感染管理のプロフェッショナル」です.感染症業界の人ならば,まずその名を知らない人はいないのではないでしょうか? 知らなかったらモグリです.「感染管理ならば,感染症内科医もやっているでしょ? 専門でしょ?」と,思われるかもしれませんが,チッチッチ,それは違うのです.あくまでもわれわれ感染症内科医は,感染症「診療」の専門家であって,「感染管理」の専門家ではないのです(一部に両方に深い見識と経験を持つ稀有な存在もいますが).坂本先生は,学会活動や多くの著書を通じて,長きにわたって日本の感染管理を牽引されてきました.私自身も,実際に坂本先生の講演や著書で感染管理を学んできた熱心なファンの一人です.そのような師匠的存在の坂本先生の著書の書評を書かせていただくことはとても光栄なことで,とてもとても嬉しいことなのです.

 さて,『感染対策60のQ&A』ですが,『感染対策40の鉄則』よりもさらに読みやすく進化しており,感染管理の実務担当者の新たなバイブル本の一つになると確信しています.

—臨床・研究で活用できる!—QOL評価マニュアル フリーアクセス

著者: 友滝愛

ページ範囲:P.435 - P.435

 Quality of Life(QOL)の評価に関心を持ったときに,ぶちあたる壁があるとすれば,主に,「そもそも『QOLを測る』ってどういうこと?」「どんな調査項目で何を測れるのか?」「QOL測定の計量心理学的な評価って何?」ではないでしょうか.本書は,「臨床・研究で活用できる!」ことに主眼を置いて,この3つの観点がカバーされています.目次に記載されている尺度を数えると,その数46!に上り,「QOL評価を臨床や研究で取り入れたい」と思ったときに,最初に手に取る一冊として最適です.

 本書の特長の1つは,上記「どんな調査項目で何を測れるのか?」への答えとして,実際の調査票のサンプルを見ることができる点です.編者の「序」でも述べられていますが,これだけの尺度を取り上げるに当たり,著作権の問題などをクリアしていく作業は非常に大変だったであろうことが,容易に想像できます.本来であれば,活用したい人が(まだ実際に活用するかはわからないけれど)自ら取り寄せるなど,さまざまな作業を要します.また,実際に尺度を使うときには,「尺度が開発された論文の原典を調べる」「スコアリングの方法を確認する」「使用許諾について確認する」といった作業も必要ですが,本書では尺度の使い方とともに,充実した引用文献が提示されています.私たちは本書を通して,本来自分たちでやるべき労力が大幅にカットされる!という恩恵にあずかることができます.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.330 - P.331

欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.332 - P.332

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.437 - P.438

あとがき フリーアクセス

著者: 松山幸弘

ページ範囲:P.442 - P.442

脊椎関節炎の疾患概念は重要!!

 今回は,整形外科医のわれわれが時に診断に苦慮する脊椎関節炎の特集を門野夕峰先生が企画してくださった.整形外科専攻医にはぜひ知っていただきたい疾患概念である.

 脊椎関節炎は付着部炎を共通する特徴とする慢性炎症性関節疾患群で,体軸性関節炎と末梢性関節炎に大別される.体軸性で有名なものは強直性脊椎炎があり,また末梢性では乾癬性関節炎,炎症性腸疾患に伴う関節炎,反応性関節炎がある.関節炎の発症・病態は,靱帯付着部に生ずる生体力学的ストレスによる組織損傷に対する過剰な免疫応答が誘導され,骨破壊と骨新生を伴う関節障害が進行する.病態にはIL-23/IL-17経路とTNF-誘導が重要とされている.したがって,本邦では2010年にTNF阻害薬が強直性脊椎炎に対して承認され,続いてIL-17阻害薬とJAK阻害薬が強直性脊椎炎およびX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎に対して承認された.これらの分子標的薬の登場により,体軸性脊椎関節炎患者の症状や炎症をコントロールできるようになった.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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