特集 脊椎関節炎SpAを理解する—疾患概念・診断基準・最新治療
緒言
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著者:
門野夕峰1
所属機関:
1埼玉医科大学整形外科
ページ範囲:P.333 - P.333
この10年間で強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS),乾癬性関節炎(psoriatic arthritis:PsA)などの疾患を包括する脊椎関節炎(spondyloarthritis:SpA)という疾患群概念の認知度が高まってきた.SpAは付着部炎を主体とする全身性炎症性疾患であり,ASやPsA以外にもクローン病や潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患に伴う脊椎関節炎,クラミジア感染後などに生じる反応性関節炎,小児期に発症する若年性特発性関節炎なども含まれる.SpAでは,四肢や脊椎などの運動器の症状以外にも,ぶどう膜炎など眼症状,乾癬など皮膚症状,炎症性腸疾患など消化器症状を呈することが知られている.SpA全体で見ると多彩な症状を呈するが,個々の症例を見るとヘテロであるため確定診断を下すことは難しく,治療過程で診断の見直しが必要なこともある.診療科の枠組みを超えた横断的な診療連携を行うことで,適切な診療に繋がると考えられている.
SpAの病態形成には免疫異常の基盤があると考えられており,遺伝的素因としてヒト白血球抗原HLA-B27遺伝子の関与が示唆されている.IL-23,IL-12,IL-17やTNFαなどの炎症性サイトカインが病態形成に関与していると考えられており,これらを標的とした生物学的製剤が治療に用いられている.マルチサイトカインを抑えるJAK阻害剤も臨床応用されるようになった.新規薬剤の開発に伴い,骨関節破壊や脊椎強直を抑制できる可能性が拡大し,不可逆的な機能障害を来さないように早期からの治療介入が推奨されている.