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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科59巻8号

2024年08月発行

雑誌目次

特集 脊損患者への投与が始まった脊髄再生医療—脊髄損傷患者に希望が見えるか

緒言 フリーアクセス

著者: 松山幸弘

ページ範囲:P.977 - P.977

 脊髄損傷は,年間1000万人当たり40.2人が発症し,国内では年間約5,000人,新規脊髄損傷患者が発生している.また現患者数は約8万人(18歳以上)で,そのうち労災患者は約1.5〜2万人と報告されている.脊髄損傷の原因としては,交通事故,転落,転倒の順に多く,発症年齢は20歳と60歳の二峰性を示し,損傷高位は頚髄60%,胸腰髄40%と報告されている.また最近では,非骨傷性頚髄損傷が高齢者に多く,転倒による前額部打撲や過伸展受傷などの軽微な外傷で受傷することが多い.どの年代においても脊髄損傷を被ると,患者の精神的ダメージはもちろんのこと,社会的・経済的な損失は多大なものと勘案される.しかしながら,長年にわたり脊髄損傷に対する確定的治療法はなく,脊髄再生治療が期待されてきた.

 急性期の脊髄損傷に関しては,多くの薬物治療が試されてきており,現在臨床治験を行っているものもある.脊髄損傷急性期の治療,亜急性期そして慢性期の治療体系は一連のものであり,それぞれの段階において治療ターゲットは異なり,そして連動させなければならない.現在いくつかの臨床治験が終了し,脊髄損傷治療に新たな方向性が出てきている.

HGF Journey from Bench to Clinical Trial—重度頚髄損傷に対する薬剤治療の挑戦

著者: 北村和也 ,   名越慈人 ,   岡野栄之 ,   中村雅也

ページ範囲:P.979 - P.988

霊長類を含んだ脊髄損傷モデルに対する肝細胞増殖因子(HGF)蛋白髄腔内投与の有効性を明らかとし,2014年より第Ⅰ/Ⅱ相試験(受傷後72時間で改良Frankel分類A/B1/B2を呈する頚髄損傷患者を対象,無作為化,二重盲検,プラセボ対照比較)を行った.安全性および下肢運動機能回復を有意に促進する効果が確認され,2020年から第Ⅲ相試験(HGF単群非盲検)を行った.HGFには単剤での治療効果のみならず,その後の細胞移植やリハビリテーションが開始される際に少しでも良好な脊髄環境を提供するpretreatmentとしての効果も期待される.

亜急性期,慢性期脊髄損傷に対する骨髄間葉系幹細胞移植の現状

著者: 廣田亮介 ,   佐々木祐典 ,   本望修 ,   山下敏彦

ページ範囲:P.989 - P.993

われわれは骨髄間葉系幹細胞(MSC)の経静脈的投与による脊髄損傷に対する良好な基礎研究結果を踏まえ,亜急性期の脊髄損傷患者に対し自家MSCを用いた医師主導治験を施行し,13症例中12症例で主要評価項目の改善を認めた.2018年6月に薬事承認申請を行い,同12月に再生医療等製品の製造販売の条件および期限付き承認を得て(製品名:ステミラック®注),実臨床での使用が開始されている.2019年5月より市販後使用成績調査が実施されており,2024年2月の時点で150例を超える症例に投与された.今後,当該再生医療等製品の有効性・安全性のさらなる詳細な解析を継続して行う.

iPS細胞を用いた脊髄再生医療

著者: 名越慈人 ,   岡野栄之 ,   中村雅也

ページ範囲:P.995 - P.999

脊髄損傷に対するiPS細胞由来神経前駆細胞を用いた移植治療の確立を目指し,基礎から臨床へと展開している.化学遺伝学の技術を駆使して細胞移植の回復機序を証明し,さらにシナプス形成の促進を図る遺伝子治療の有用性も明らかにしてきた.一方で慢性期の治療は細胞移植だけでなく,宿主の脊髄神経を活性化させるリハビリテーションの併用が極めて重要である.今後も基礎と臨床の両面からのアプローチが,脊髄再生医療の発展に必要である.

Muse細胞の脊髄再生への可能性

著者: 熊谷玄太郎 ,   石橋恭之

ページ範囲:P.1001 - P.1005

Multilineage-differentiating stress-enduring(Muse)細胞は,皮膚,脂肪,骨髄,末梢血などあらゆる臓器に存在し,多能性を有するためさまざまな細胞への分化が可能である.Muse細胞は,修復幹細胞の役割があり,各臓器に配給され,細胞置換による修復を行っており,再生医療への応用が期待されている.本稿では,マウス組織由来Muse細胞の樹立と脊髄損傷に対する投与効果,Muse細胞を用いた臨床治験について紹介する.

顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を用いた急性脊髄損傷の治療

著者: 國府田正雄 ,   古矢丈雄 ,   花岡英紀 ,   牧聡 ,   山崎正志

ページ範囲:P.1007 - P.1011

脊髄損傷に対する顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の有効性を明らかにするための検証的試験を医師主導治験にて実施した.主要評価項目ではG-CSF投与群とプラセボ群の間に有意な差はなかったが,サブ解析の結果高齢者においては麻痺回復促進効果が示唆された.

二次損傷を標的とした脊髄損傷治療薬の開発

著者: 角家健 ,   鈴木裕貴

ページ範囲:P.1013 - P.1017

脊髄損傷は損傷高位以下の麻痺を生じるが,損傷高位のわずかな違いが,その後に獲得できるADLに大きく影響するため,可及的に損傷高位を下げる方法が模索されてきた.特に,脊髄損傷は機械的損傷の一次損傷と,その後の生物学的反応による二次損傷で構成されるため,二次損傷の抑制が脊髄損傷急性期の主たる治療標的となる.本稿では,二次損傷の病態,筆者らが開発した,血液脳脊髄関門を標的とする,二次損傷抑制薬剤のスクリーニング方法と,同定された薬剤の実際の効果について概説する.

脊髄損傷急性期の処置で脊髄再生程度はどう変わるか?—主に外科的立場から

著者: 前田健

ページ範囲:P.1019 - P.1026

脊髄損傷の急性期には,血圧や血糖を含めた全身状態の管理と,損傷された脊椎/脊髄局所への適切な対応,および早期からのリハビリテーションが極めて重要であり,脊髄の再生医療を論ずる前提となる.外科的立場からすると,骨傷例に対しては受傷後できるだけ早期の局所安定化と脊髄の除圧が重要となる.一方,最も頻度の高い非骨傷性頚髄損傷については,手術適応やその時期に関する質の高いエビデンスが乏しく,強く推奨される対処法が未だ確立していない.脊髄損傷の早い段階ほど神経学的変化が大きな病質の特殊性に鑑み,retrospectiveな論文を評価する際には十分な注意が必要である.

脊髄損傷に対する再生医療後のリハビリテーション

著者: 緒方徹

ページ範囲:P.1027 - P.1030

脊髄損傷に対する細胞治療に引き続いて行われるリハビリテーションの重要性が増している.再生医療後のリハビリテーション手法に確立したものはないが,細胞治療の作用点を意識したうえで,運動学習の論理に基づき組み立てることが軸となる.今後,ロボットリハビリテーションなどとの融合も期待されるが,細胞治療のエビデンス確立も重要であり,臨床治験のプロトコル作成には注意を要する.再生医療の到来を受けて,脊髄損傷のリハビリテーション手法を改めて体系化し,施設間での差異を減らす標準化を進めることも今後の課題である.

視座

百聞は一見にしかず

著者: 工藤理史

ページ範囲:P.973 - P.973

 外科医である以上は手術手技にこだわりを持つのは至極当然なことだと思う.

 私は専門医を取得して脊椎脊髄外科を専門と決めてからは,PLIFにはじまり,内視鏡手術,腫瘍,脊柱変形矯正とほぼすべての分野に関して北から南まで日本全国,時には海外にも足を運び,数え切れないくらいさまざまな施設へ手術見学に訪問させていただいた.普段より解剖書や手術手技書を徹底的に読みあさるのは当然ながら,執刀医として壁にぶつかると,その領域での著名な先生の講演会に出向いたり学会場で話しかけたりしてメールアドレスを交換し,次の月には見学に行くということを繰り返していた.中には5回以上もしつこく見学に行かせていただいた施設もあり,今考えるとたぶん迷惑だったのでは?と思うが,得られた知識と経験は計り知れず,今の自分の脊椎外科医としての礎になっていることは間違いない.また,見学をきっかけに学会や研究会でも懇意にしていただき,時には講演会や共同研究に発展したこともあり,見識をさらに深めることにつながっていった.この場を借りてお世話になった皆様に感謝の意を表したいと思います.

論述

血友病患者における骨密度と血中ビタミンD濃度の現状について

著者: 鈴木仁士 ,   白山理恵 ,   藤谷晃亮 ,   田島貴文 ,   塚本学 ,   嵐智哉 ,   川﨑展 ,   酒井昭典

ページ範囲:P.1033 - P.1037

背景:血友病では骨量減少を認めると言われている.当院血友病症例の骨密度および骨代謝マーカーを明らかにする.対象と方法:15歳以上の血友病症例の腰椎,大腿骨頚部の骨密度を計測し,骨代謝マーカーと25-ヒドロキシビタミンD濃度を測定した.結果:腰椎もしくは大腿骨頚部の骨密度が年齢相当値より低い症例を25%の症例に認めた.骨代謝マーカーは基準値範囲内であったが,ビタミンD欠乏を68%の症例に認めた.まとめ:血友病患者は25%の症例で骨密度が年齢相当値より低く,ビタミンD欠乏が存在した.

最新基礎科学/知っておきたい

CDK8阻害薬と骨代謝

著者: 檜井栄一

ページ範囲:P.1040 - P.1043

はじめに

 骨組織では骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収が絶えず繰り返される「骨リモデリング」が営まれており,骨の形態や機能など骨恒常性が維持されている1).加齢・老化や閉経などにより両細胞のバランスが崩れ,骨吸収が骨形成を上回ると骨粗鬆症が生じる2).超高齢社会を迎えた本邦では,骨粗鬆症の推定患者数が1300万人と人口の1割を超え,ロコモティブシンドロームなどの運動器障害や骨折のリスクを上昇させることから,より有効な予防・治療法の確立が求められている.

 骨髄内の間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell:MSC)は,骨芽細胞や脂肪細胞などへと分化する能力を持つ幹細胞の一種であり,加齢や閉経によりMSCの骨芽細胞分化による骨形成能が減弱することが指摘されている3,4).また,MSCが破骨細胞の機能を制御することで,骨恒常性の維持に関与することも報告されているが,いずれも詳細な機序は明らかになっていない.

 サイクリン依存性キナーゼ(cyclin-dependent kinase:CDK)はセリン/スレオニンキナーゼの一種であり,細胞周期や転写調節を含めて,細胞内で多様な機能を担っている5).CDK8は転写関連CDKに属し,近年がん幹細胞などの幹細胞性の制御に関与していることが報告されている6).CDK8阻害薬が骨芽細胞や破骨細胞の機能を調節することが示されているが,MSCに発現するCDK8の骨恒常性に及ぼす役割とその基盤となるメカニズムは不明である7)

境界領域/知っておきたい

COPDと骨粗鬆症

著者: 塚本学 ,   鍋島貴行 ,   荒川大亮 ,   真野洋佑 ,   岡田祥明 ,   沖本信和 ,   酒井昭典

ページ範囲:P.1044 - P.1047

はじめに

 2018年,全国たばこ喫煙者率調査によると,成人男性の平均喫煙率は27.8%である.喫煙率が低下傾向にある60歳以上では21.3%だが,30〜50代では依然として35%前後を推移しており,最も喫煙率の高い40代では35.5%である.慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は,喫煙を主因とする中高年に発症する生活習慣病であり,喫煙者の15〜20%がCOPDを発症するとされ1),日本では40歳以上の人口の8.6%,約530万人がCOPDであると推定されている.COPD患者の肺組織像は主に肺胞隔壁の消失を伴う肺気腫である.COPDは骨粗鬆症の危険因子であり,COPD患者では骨粗鬆症の有病率や椎体骨折の発生率が高い2-4).肺気腫病変の占拠率は,胸椎の骨密度(bone mineral density:BMD)と負の相関があり5),COPD重症度もまた各部位のBMDと関連がある6).一方,COPDと骨折に関する疫学調査では,COPD患者におけるBMDに依存しない骨折リスクの上昇が指摘されており,骨質の劣化も示唆されている.モデル動物やヒトの骨生検での検証は遅れており,本質的な病態については解明されておらず,「生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイド2019年版」では,基礎研究による機序解明が必要であると言及されている7).本稿では,COPDが骨に及ぼす影響について,当教室で得られた知見も含め文献的に考察する.

整形外科領域における輸血

著者: 藤原慎一郎

ページ範囲:P.1048 - P.1050

赤血球輸血の適応となる基準(トリガー値)

 赤血球輸血は貧血(出血)に伴う組織への酸素供給を改善させる手段として周術期医療に欠かせない支持療法である.しかし,赤血球製剤を含む血液製剤は人の血液から作りだされる製剤であり,血液製剤は限りある医療資源であることや輸血のリスクを完全に排除できないことから,適切な使用が望まれている.

 適切な輸血が実施されているかを判断する具体的な指標として,血中ヘモグロビン(Hb)濃度によるトリガー値(この値を下回ったら輸血を実施する)が設定されている.このトリガー値の設定に関して,以前より2つの異なる輸血戦略がとられてきた.1つは自由輸血(liberal transfusion)と称しトリガー値をHb 9〜10g/dLとした,閾値をゆるめた輸血戦略であり,もう1つは制限輸血(restrictive transfusion)と称しトリガー値Hb 7〜8g/dLと閾値を低く制限した輸血戦略である(図1).

臨床経験

大腿骨近位部骨折患者における術後せん妄に対するアロマセラピーの有効性

著者: 喜多晃司 ,   岩倉英理子 ,   海野宏至 ,   渡邉健斗 ,   長谷川貴栄 ,   佐藤昌良 ,   森本政司 ,   湏藤啓広

ページ範囲:P.1053 - P.1058

目的:大腿骨近位部骨折患者における術後せん妄は重要な課題である.近年,せん妄に対してアロマセラピーが有効であると報告されている.本研究では大腿骨近位部骨折患者における術後せん妄に対するアロマセラピーの有効性を検討した.対象と方法:2022年8月〜2023年6月に手術を行った大腿骨近位部骨折症例100例を対象とし術後せん妄発生率を評価した.結果:アロマセラピー群で術後せん妄発生率,薬剤使用率が有意に低下していた.まとめ:アロマセラピーは術後せん妄発生率を低下させ,安全,簡便に行うことができ,新たな予防法となる可能性がある.

書評

クリニカル・クエスチョンで考える外傷整形外科ケーススタディ フリーアクセス

著者: 善家雄吉

ページ範囲:P.1039 - P.1039

 著者の土田芳彦先生は整形外傷界で知らない人はいない著名な先生です.私自身は15年以上前より数多くのセミナーや学会で教えを乞うてきました.実際に一緒に働いたことはありませんが,尊敬する先生の代表格です.先生の知的好奇心は際限なく,常に最良の医療を行うために尽力されてこられました.近年はオンラインセミナーの開催に注力され,数多くの会を自ら主催し,事前・事後検討を重要視した「教育」を展開されています.

 2021年1月から1年間,北大整形外科後期レジデントを対象にした外傷整形外科のウェブカンファレンスが行われました.これは症例を通して若手の疑問に答えるという形式でしたが,私も時間が許せばオンラインで聴講していました.好評だったことにより,その後「症例と文献に学ぶ外傷整形外科」というオンラインセミナーとして再編されました.このセミナーは,本書の執筆者である佐藤和生,佐藤亮,髙田大輔,伊澤雄太の4人の先生たちが「提示症例」に対して解説プレゼンを行い,土田先生がコメントするというとても教育効果の高い素晴らしい企画でした.その内容はオンラインサロンでも討論され,多くの先生が勉強されたことと思います.

非特異的腰痛の運動療法[Web動画付]第2版—病態をフローチャートで鑑別できる フリーアクセス

著者: 東裕一

ページ範囲:P.1051 - P.1051

 腰痛および体幹機能障害は,理学療法士が臨床において頻繁に直面する課題の一つである.理学療法士の特殊性は人の運動を扱うことにある.そのため上肢の障害に対する肩甲骨の位置の修正,下肢の障害に対する理想的な荷重の回復および初動の力源という意味でも,腰部骨盤帯もしくは体幹に対する運動療法は基本となることが多い.腰部に対する運動療法は,疾患にかかわらず,ADLの拡大に向けた理学療法の根幹になると言える.

 本書では,腰部骨盤帯に関して,構造と機能および評価から解説されている.そのため,書名にある非特異的腰痛だけではなく,多くの腰部疾患および体幹機能についての基本事項が記載されている.宮本重範氏の教えが生かされ,現在では「医療面接」と言われることも多い「問診」および「視診」を重視しながら,自動運動時の痛みの発現もしくは制限からフローチャート(アルゴリズム)が展開されている.医療面接の経験が少ない理学療法士にとっては,「問診」の項目が参考になるであろう.

運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学 第2版—徒手療法がわかるWeb動画付 フリーアクセス

著者: 小野志操

ページ範囲:P.1061 - P.1061

 本書の編集である工藤慎太郎先生,執筆者の一人である森田竜治先生と私は同門であり,臨床・研究・教育の第一線でご活躍されておられるお二人は,共に後輩でありながら尊敬する理学療法士です.

 好評であった初版を一層進化させた本書では,疾患ごとに症例に生じた症状について,その発生要因や評価するべきポイントを,解剖学的視点からわかりやすく詳細に解説されています.臨床で運動器疾患を診ている理学療法士や作業療法士の多くが悩む「どの組織を治療ターゲットにするべきか?」,そして「どう治していくべきか?」を明確にするためには,解剖学的視点から病態を考察していくという「臨床的思考過程」が欠かせません.

INFORMATION

第9回 SKJRC SEMINAR フリーアクセス

ページ範囲:P.1030 - P.1030

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.974 - P.975

欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.976 - P.976

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.1063 - P.1063

あとがき フリーアクセス

著者: 仁木久照

ページ範囲:P.1066 - P.1066

 2024(令和6)年5月23〜26日に第97回日本整形外科学会学術総会が福岡で開催されました.現地参加者が7,700名を超え,大変盛況な総会となりました.オンデマンド配信はあるものの,やはり現地参加による生のディスカッションはWebでは得られないものと感じました.この4年間,制限のある中での学会開催でしたが,これでほぼもとに戻ったと言えるのでしょうか.そうした中でも,オンデマンド配信やSDGsに沿った弁当の配布方法,華美でないイベントなど,COVID-19以前とは変わったことも多々あります.おそらくCOVID-19がなくても,いずれは成るべくしてなったのかもしれません.総会の方向性は,他の関連学会にも影響します.数年後には100回を迎える日整会総会も次の50年,100年でどのように進化・深化を遂げていくのでしょうか.とても楽しみです.

 今号では,視座は昭和大学の工藤理史先生にお願いし「百聞は一見にしかず」というテーマで述べていただきました.特集は「脊損患者への投与が始まった脊髄再生医療—脊髄損傷患者に希望が見えるか—」で,松山幸弘先生にご企画いただきました.肝細胞増殖因子,骨髄間葉系細胞,iPS細胞,Muse細胞,顆粒球刺激因子(G-CSF)による脊髄再生医療を中心に,脊髄損傷治療薬,外科的手術,リハビリテーションまで幅広く脊髄再生医療について特集を組んでいただきました.論述では鈴木仁士先生に「血友病患者における骨密度と血中ビタミンD濃度の現状について」述べていただきます.最新基礎科学/知っておきたいでは「CDK8阻害薬と骨代謝」について檜井栄一先生にご紹介いただきます.境界領域/知っておきたいでは塚本 学先生に「COPDと骨粗鬆症」,藤原慎一郎先生に「整形外科領域における輸血」についてご紹介いただきました.その他,臨床経験を加え,幅広く最新の医療について学ぶことができると思います.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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