特集 脊損患者への投与が始まった脊髄再生医療—脊髄損傷患者に希望が見えるか
緒言
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著者:
松山幸弘1
所属機関:
1浜松医科大学整形外科
ページ範囲:P.977 - P.977
脊髄損傷は,年間1000万人当たり40.2人が発症し,国内では年間約5,000人,新規脊髄損傷患者が発生している.また現患者数は約8万人(18歳以上)で,そのうち労災患者は約1.5〜2万人と報告されている.脊髄損傷の原因としては,交通事故,転落,転倒の順に多く,発症年齢は20歳と60歳の二峰性を示し,損傷高位は頚髄60%,胸腰髄40%と報告されている.また最近では,非骨傷性頚髄損傷が高齢者に多く,転倒による前額部打撲や過伸展受傷などの軽微な外傷で受傷することが多い.どの年代においても脊髄損傷を被ると,患者の精神的ダメージはもちろんのこと,社会的・経済的な損失は多大なものと勘案される.しかしながら,長年にわたり脊髄損傷に対する確定的治療法はなく,脊髄再生治療が期待されてきた.
急性期の脊髄損傷に関しては,多くの薬物治療が試されてきており,現在臨床治験を行っているものもある.脊髄損傷急性期の治療,亜急性期そして慢性期の治療体系は一連のものであり,それぞれの段階において治療ターゲットは異なり,そして連動させなければならない.現在いくつかの臨床治験が終了し,脊髄損傷治療に新たな方向性が出てきている.