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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科59巻9号

2024年09月発行

雑誌目次

特集 変形性関節症に対するBiologics

緒言 フリーアクセス

著者: 齋藤琢

ページ範囲:P.1071 - P.1071

 今から10年前,「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法,薬機法)と「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(再生医療等安全性確保法,安確法)の2つの法律が施行された(岡田 潔先生の項を参照).薬機法によって再生医療等製品というカテゴリーが定められ,承認を受けた製品も徐々に出てきた.一方,安確法下では,多血小板血漿(platelet-rich plasma:PRP)や間葉系幹細胞などを用いた,いわゆるbiologics治療について新たな規制が設けられ,保存療法と手術療法の間のアンメットニーズが大きい変形性関節症(osteoarthritis:OA)などを対象に広がりをみせている.

 筆者はOAの分子病態の研究をライフワークとして取り組んできたが,その縁で8年前から培養自家脂肪由来幹細胞を用いた治療の臨床と基礎研究にも取り組んできた.当初は疑わしさでいっぱいであったが,患者の経過や臨床成績(山神良太先生の項を参照)を目の当たりにし,考えは一変した.筆者の研究室では作用機序の解明にも取り組んでいるが,本治療が滑膜の構造的改変を介してOAの病態を修飾することも明らかになりつつある.しかしながら,PRPや幹細胞治療の効果には個人差が大きく,OAの病態の多くが未解明なこともあって,適応についてはいまだ議論の余地がある.自由診療であるため,高額な治療費もしばしば話題となる.また治験のような厳格なデザインでの大規模臨床研究が実施されていないことへの批判の声も多いが,再生医療等製品には非常に高い安全性基準が設定されており,結果として細胞製品はいずれも自由診療での一般的な金額をはるかに上回る価格帯となっているため,OAのようなcommon diseaseに関して再生医療等製品は医療経済的に現実的なカテゴリーではなくなっている.自由診療としての素地が用意され,保険収載というインセンティブが期待できない状況に鑑みると,事態はそう単純ではないことは理解できよう.

整形外科領域のBiologicsに関する法規制とレジストリ

著者: 岡田潔

ページ範囲:P.1073 - P.1081

整形外科領域のbiologicsは,特に骨・軟骨・神経再生の分野で新たな活用が期待されている.しかし,その実践にあたっては,各種の法規制が存在し,それを正確に理解することが活用の推進につながると考えられる.また,再生医療の効率的な開発・評価のためにはデータの集約が重要であり,レジストリの仕組みなどの活用が有効と考えられる.本稿では,薬機法や再生医療等安全性確保法などの再生医療に関係する各種法律や,日本再生医療学会が運用する再生医療に関するレジストリについて説明する.

多血小板血漿(PRP)療法の歴史と臨床応用

著者: 中嶋亮介 ,   齋田良知 ,   本間康弘 ,   馬場智規 ,   石島旨章

ページ範囲:P.1083 - P.1087

多血小板血漿(PRP)療法は,末梢血由来の血小板を多く含んだ血漿を局所に投与する治療法である.成長因子を豊富に含むため組織修復作用と抗炎症作用の可能性が期待され,皮膚科領域の難治性皮膚潰瘍に対しては保険収載されている.運動器では,スポーツ外傷や変形性関節症に用いる機会が増えているが,自由診療の範疇である.治療選択肢となるか否かは,適応と限界の見極めも含めたエビデンスの集積が必要であり,本稿では,膝と股関節の変形性関節症への臨床経験を紹介する.

異なるキットで作製した多血小板血漿(PRP)の作用機序の検討

著者: 内山綾香 ,   豊田恵利子 ,   濱橋恒介 ,   和才志帆 ,   大村はるか ,   玉木美夕 ,   小川真 ,   田中竜実 ,   岸達也 ,   渡辺雅彦 ,   佐藤正人

ページ範囲:P.1089 - P.1094

変形性膝関節症に対する保存療法の選択肢として,多血小板血漿(PRP)療法が注目されている.PRPは分離機器ごとに成分組成が異なることが知られている.セルエイド® Pタイプ(ジェイ・エム・エス社)では赤血球と白血球をほぼ含まずtransforming growth factorβ(TGFβ)が豊富なPRPが作製され,軟骨組織保護に有効な可能性がある.自己タンパク質溶液分離キット(Zimmer Biomet社)は白血球が多くinterleukin 1 receptor antagonist(IL1RA)が豊富なPRPが作製され,高い抗炎症効果をもつ可能性がある.したがって,分離機器ごとにPRPの作用機序は異なることが予想され,症状に応じた選択を柔軟に考える必要がある.

変形性膝関節症に対するAPS療法の臨床成績

著者: 桑沢綾乃 ,   仁平高太郎

ページ範囲:P.1095 - P.1100

変形性膝関節症(膝OA)に対するAPS療法は海外では2〜3年の効果が期待できるとの報告があるが,日本人に対する中長期の有効性は未解明のままである.そこで当院のAPS療法3年以上経過例を対象に,KL分類の重症度別に中期臨床成績を調査した.KOOSを用いたOMERACT-OARSI基準の有効率は,KL2では3年経過しても5割以上を維持し,効果の持続期間も長かった.しかし,KL3では3年,KL4では1年で有効率は低下した.3年経過時に手術に至った症例の割合は,KL3が2割,KL4は4.5割であった.APS療法は,変形が軽度であれば症状改善期間も長く有効な治療だが,重症化に伴い改善期間は短くなる.

変形性膝関節症に対する滑膜由来幹細胞注射の基礎と臨床

著者: 関矢一郎

ページ範囲:P.1101 - P.1106

変形性膝関節症の保存療法には限界があり,新たな治療法の開発が求められている.滑膜由来の間葉系幹細胞(滑膜幹細胞)は,軟骨分化能が高く,関節内投与後に滑膜に生着し,潤滑・抗炎症・軟骨基質産生に関与する遺伝子の発現を増加させる.自家滑膜幹細胞の関節注射による前向き臨床研究では,注射後30週間で軟骨厚さが増加し,膝痛や機能の改善も認められた.滑膜のエコー下採取による低侵襲化を可能にし,現在,二重盲検試験を実施している.滑膜幹細胞注射が,変形性膝関節症の新たな治療選択肢となることを期待している.

脂肪組織由来培養間葉系幹細胞(ASC)と間質血管細胞群(SVF)の臨床成績の比較

著者: 尾辻正樹 ,   中村憲正

ページ範囲:P.1107 - P.1113

変形性関節症(OA)は進行性の疾患であり,薬物療法や理学療法などの保存療法にて効果が得られない場合,手術治療が選択されている.しかし,再生医療等安全性確保法の施行以来,細胞治療などのバイオセラピーが自由診療ベースで展開されている.幹細胞治療の選択肢として,非培養型の間質血管細胞群(SVF)と,採取組織から分離された幹細胞のみを培養し使用する培養幹細胞治療がある.両者の治療方法,および治療成績の比較を行った.

脂肪由来幹細胞の臨床成績

著者: 傍島聰 ,   岩畔英樹 ,   原田雄輔

ページ範囲:P.1115 - P.1120

脂肪由来幹細胞(以下,脂肪幹細胞)を用いた変形性関節症治療は,温存療法,手術療法に並ぶ第三の選択肢として広がりをみせている.脂肪幹細胞はその製造方法によってフレッシュ細胞と培養細胞に大別される.それぞれ異なる特徴を有しており,いずれも変形性関節症に対して有意な改善効果を認めている.また,それぞれの特徴を活かして使い分けることにより,患者に合わせた治療戦略を構築することが可能である.既存の温存療法とこれらのバイオロジクス治療を組み合わせた「積極的温存療法」により,より効果的な治療につながることが期待される.

脂肪由来幹細胞の関節内投与による変形性膝関節症の治療成績と成績に関連する画像所見

著者: 山神良太

ページ範囲:P.1121 - P.1127

変形性膝関節症(膝OA)に対する間葉系幹細胞の関節内投与が注目されている.われわれは2019年に整形外科領域の細胞治療に特化したお茶の水セルクリニックを設立し,変形性関節症などに対して自己脂肪由来間葉系幹細胞(ASC)の関節内投与を行ってきた.そのうち内反型膝OAに対して行ったASC関節内投与後の治療成績に影響を与える投与前のMRI所見について調査したところ,患者の膝OAの重症度のほかに,大腿骨内側顆の骨髄内病変(BML)のサイズや内側半月逸脱の程度が関連していた.

脂肪組織由来細胞の作用機序

著者: 蒲地正宗 ,   松下雄彦 ,   松本知之 ,   傍島聰 ,   黒田良祐

ページ範囲:P.1129 - P.1133

近年,再生医療の発展は目覚ましく,臨床応用に向けて研究・開発が行われている.体性幹細胞を利用した細胞療法はその有効性から特に注目されている.さまざまな細胞源があるが侵襲が小さく簡便であること,細胞数が多く含まれるという点から脂肪組織由来細胞は国内外で広く使用されている.整形外科分野においては変形性膝関節症に対して臨床応用されているが,脂肪組織由来細胞の関節症に対する作用機序については未だ不明な点も多い.本稿では変形性膝関節症に対する関節内投与の作用機序を中心に文献的エビデンスも踏まえて概説する.

視座

整形外科領域の職業被曝と患者被曝について考える

著者: 出村諭

ページ範囲:P.1067 - P.1067

 整形外科医療において放射線検査は欠かせないものであり,診断から治療まで幅広く使用されている.また整形外科領域での低侵襲治療の発展に伴い,放射線を併用した手技も増加傾向にある.一方,放射線被曝に伴う手指の皮膚障害や発がん,白内障の発生など,負の影響も以前より報告されており,近年,患者側・医療者側双方の関心も高まってきている.放射線被曝は,職業被曝,医療(患者)被曝,公衆被曝の3つに分類されており,われわれ整形外科医がコントロールできるのは前二者である.

 職業被曝は,医療従事者の年間の線量限度が定められている.しかしフィルムバッジのついた体幹に比べて,整形外科医は手指の被曝が多い不均衡被曝となっているとの報告がある.その中でも術中X線透視を多く使用する整形外科外傷分野,神経根ブロックや脊髄造影などの診断に加え,近年増加している経皮的椎弓根スクリュー挿入や経皮的椎体形成術,側方椎体間固定術などを行う脊椎外科分野の職業被曝は大きいとされている.まずは防護具着用の徹底を基本に,術中透視を使用する際はone shot照射とすること,パルス線量の調整,照射野を絞ること,透視装置の管球と立ち位置の対応などが整形外科医に求められる.

最新基礎科学/知っておきたい

多遺伝子リスクスコア(PRS)

著者: 岩見卓朗 ,   寺尾知可史

ページ範囲:P.1136 - P.1140

はじめに

 遺伝子変異には一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP),欠失,挿入,マイクロサテライト,コピーナンバーバリエーションなどさまざまな種類が存在するが,遺伝子解析で最も用いられているのはSNPである.SNPとは周辺配列が同じであるものの,1カ所の塩基が異なる変異であり,一般集団において1%以上の頻度で起こる比較的頻度の高い変異である(図1).

 疾患や形質とSNPとの関連を網羅的に調べ,疾患感受性遺伝子領域の同定を主目的としたゲノムワイド関連解析(genome-wide association study:GWAS)が2000年代から盛んに行われるようになり,これまでに数多くの疾患感受性領域が同定されてきた.近年では,GWASにおいて得られた各SNPの統計量を用いた遺伝統計学的解析(post GWAS解析)が行われており,多遺伝子リスクスコア(polygenic risk score:PRS)が疾患の予防や個別化医療において,GWASの結果を実臨床応用する鍵として注目されている.本稿では,PRSの概要,構築手法,実臨床応用への展望について触れたい.

境界領域/知っておきたい

腱障害に対する新しい治療Percutaneous Ultrasonic Tenotomy(TENEX)

著者: 面谷透

ページ範囲:P.1142 - P.1145

はじめに

 腱障害は外来で診療する機会が多い疾患のひとつであるが,治療方針に苦慮することは少なくない.特に,経過が長かったり,トリアムシノロン注射が一時的には奏効するもののその後症状が悪化したりする症例に対しては,治療手段が限られ得る.

 Percutaneous ultrasonic tenotomyとは,白内障手術で使用される超音波乳化吸引術の原理をもとに開発された機器を用いて,超音波ガイド下で腱の処置を行う治療法である1,2).Percutaneous ultrasonic tenotomy専用の機器であるTENEX®(TENEX HEALTH INC.)のハンドピースの先端の径は16G針とおおむね同等であり,2つの主要部品からなる.内側の金属部分は,超音波エネルギーを装置先端の半円状の焦点ゾーン(1mm以下)に照射しながら急速に前後に振動し,変性した腱組織を乳化する.外側の金属部分は筒状になっており,乳化された組織を吸引する3)(図1).

 今回,トリアムシノロン注射歴を有する難治性の上腕骨外側上顆炎に対してpercutaneous ultrasonic tenotomyを施行し,良好な成績が得られた症例について報告する.

臨床経験

スクリュー付きケージを用いた頚椎前方除圧固定後のケージ沈下の特徴

著者: 彌冨将 ,   辻崇 ,   海苔聡 ,   池田大樹 ,   加藤雅敬 ,   藤田貴也 ,   森岡秀夫

ページ範囲:P.1147 - P.1153

背景:頚椎前方除圧固定術(ACDF)においてプレートの併用が不要なスクリュー付きケージが普及しているが,ケージ沈下(CS)の問題も指摘されている.対象と方法:スクリュー付きケージを用いたACDF28症例35椎間を対象とし,CSの有無を術後3カ月と6カ月で調査した.結果:2mm以上のCSは3カ月で40%,6カ月で67%の椎間に認められ,CSは固定椎間の下位椎体で有意に多く発生した.またCSを認めた18%で症状の再燃または増悪を認めた.まとめ:CSは比較的高頻度に発生し,固定椎間の下位椎体への沈下が多く,臨床成績への関連も示唆された.

第1肋骨疲労骨折に対する体外衝撃波治療の治療経験

著者: 杉山卓郎 ,   村上秀孝 ,   河野幸治 ,   野口幸志

ページ範囲:P.1155 - P.1159

第1肋骨疲労骨折は上肢を酷使するスポーツで発生し,保存療法では長期のスポーツ制限が必要となるケースがある.体外衝撃波治療(ESWT)は本邦において難治性の足底筋膜炎にのみ保険適用とされているが,国際体外衝撃波学会の適応基準において偽関節,筋腱付着部障害,疲労骨折は標準的適応となっている.われわれは第1肋骨疲労骨折6例にESWTを施行し,良好な結果を得た.ESWTの試行回数は平均4.3回で,疼痛の改善を認め,全例がスポーツに復帰した.現時点では合併症の出現なく経過しているが,今後も長期的なフォローアップの必要性がある.

書評

クリニカル・クエスチョンで考える外傷整形外科ケーススタディ フリーアクセス

著者: 最上敦彦

ページ範囲:P.1135 - P.1135

 編者の土田芳彦先生は,小生の旧来の友人であり,ともに還暦を過ぎた同級生であり,そしてともに外傷整形外科の分野で戦ってきた戦友である.「土田芳彦」といえば,言わずと知れた日本を代表する外傷整形外科医である.とりわけマイクロサージェリーを駆使した重度四肢外傷治療の先駆者で,その知的戦略は『重度四肢外傷の標準的治療—Japan Strategy』(南江堂)として2017年に出版され,今や日本の重度四肢外傷治療のバイブルとして多くの外傷整形外科医の手元に置かれていることであろう.

 今回,この重度四肢外傷とは別に,一般整形外科外傷を対象にした本書『クリニカル・クエスチョンで考える外傷整形外科ケーススタディ』が刊行された.本書は新型コロナウイルス感染症が広がる2022年初頭の3ヶ月間,土田先生のコーディネートで開催されたwebセミナー「症例と文献に学ぶ外傷整形外科」の内容を基に構成されている.上・下肢全般52項目にわたる外傷を,4人の新進気鋭の整形外科外傷医 佐藤和生先生,佐藤亮先生,髙田大輔先生,伊澤雄太先生が分担執筆している.いずれも土田先生がセンター長を務める湘南鎌倉総合病院・札幌東徳洲会病院の外傷センターで直接指導を受けた,まさに「愛弟子」である.

こどもの入院管理ゴールデンルール フリーアクセス

著者: 児玉和彦

ページ範囲:P.1161 - P.1161

 本書を編集・執筆された3人の医師とは長い付き合いであり,さまざまな薫陶を受けた.先生方の過去の名言と,本書におけるそれぞれのイチオシルールと共に,この良書『こどもの入院管理ゴールデンルール』を紹介したい.

がん患者の皮膚障害アトラス フリーアクセス

著者: 山崎直也

ページ範囲:P.1163 - P.1163

 本書を一目見て虜になりました.大変な驚きでした.需要がありながら今までに無かった本当に欲しかった一冊です.

 がん患者にはがんそのものの進行によって起こる皮膚症状と,各種治療によって起こる皮膚障害があります.かつて,いわゆる抗がん薬治療で患者さんが良く知っていて恐れている副作用といえば,脱毛と悪心嘔吐がその代表でした.ところが21世紀になって,分子標的薬が次々に登場し,2010年代には免疫チェックポイント阻害薬の進歩によって免疫療法がはっきりとがん治療の太い柱になるに従い,がん薬物療法の副作用は様変わりし,皮膚障害は,その代表的なものの一つとして注目されるようになりました.しかし,各種臓器がんの治療医は皮膚障害の診断治療にまで手が回りませんし,逆に皮膚科医が日進月歩の多くの新規抗がん薬の皮膚障害マネジメントを的確に行うことは大変困難であるといわざるを得ませんでした.本書はその問題を一気に解決してくれる一冊です.

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.1068 - P.1069

欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.1070 - P.1070

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.1165 - P.1165

あとがき フリーアクセス

著者: 山本卓明

ページ範囲:P.1168 - P.1168

 5月に福岡で開催された日整会と前後して,5名のJOA-AOAトラベリングフェローを当大学でもお迎えしました.新進気鋭のアメリカ整形外科医と,カンファレンス,オペ,歓迎会などをともにしました.教室員一同とてもよい刺激を受け,また貴重な国際経験となりました.その際,アテンドの中心となってくれたのが,当科で後期研修2年目を行っている,外国で医師免許を取得(医学部授業や試験を含めすべて英語)した医師です.かつて企業に就職し,一念発起し医師になる決意をし,海外での医師資格取得を見事に実現させた努力の人です.とても整形外科2年目とは思えないほど精力的に役目を果たし,生き生きとしてまさに水を得た魚でした.フェローとも全く不自由なく会話し,改めてその英語力にも感じ入りました.「適材適所」という言葉が頭をよぎりました.

 関連病院の医師に,自分のペースをとても大事にするあまり,プラスアルファの仕事(例えば,外来患者が多い,ナースなどから不在医師のカバー依頼,連続した急患など)に対して,ストレスを感じてしまう医師がいました.自ら新しい病院に赴任し,そこでは外来から病棟中心の勤務形態になったようです.先日,その病院の理事長とお話したところ,「当院では全く問題なく,とても丁寧にそしてきちんと仕事をしていただいており,周りからの信頼も厚く本当に助かっております」と深謝されました.「適材適所」が再びよぎりました.4月に新教室員を迎え3カ月が経ち,それぞれの個性が見えてきた時期です.必ず適材適所があるという観点で,よい面をしっかりと伸ばしてあげる指導を心掛けたいと感じております.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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