icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科6巻1号

1971年01月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ

31.Lymphosarcoma/32.Hodgkin's disease

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.1 - P.4

症例39:29歳,男.受診11ヵ月前より右大腿上部の疼痛をきたしたが,そのまま放置していた.その後,上腹部の腫瘤に気づき,某病院を受診,腎腫瘍の診断のもとに右腎摘出術を受けた.術後後腹膜に発生し,腎への浸潤を生じたリンパ肉腫と判明した.10日前より再び右大腿部の疼痛を生じ当院外来を受診した.受診時レ線像にて右大腿骨の異常陰影が見出され,その後のbiopsyにてリンパ肉腫の骨転移と診断された.
 骨転移部位の放射線治療にて一時疼痛は軽快,骨レ線像の改善も認められたが,リンパ節の腫大などを生じ,全身的化学療法を施行した.症状の軽快をみ,一時退院したが,右大腿骨骨幹部の病的骨折を生じ,再び入院.Küntscher釘による髄内固定術施行,全身的な化学療法などを行なったが,受診後2年4カ月で,全身衰弱,呼吸不全のため死亡した(国立がんセンター).

巻頭言

第44回日本整形外科学会総会の開催にあたって

著者: 藤本憲司

ページ範囲:P.5 - P.6

 ここ信州松本の地にあつては,今日,昭和46年元旦は,昨日の大雪とはうつて変つて,初日の出というにいかにもふさわしい朝日の光とともにあけた.白銀に輝く北アルプス連峰を眺めていると,日頃の俗念,俗塵が洗われる思いがして,いかにも気持がよい.しかし人間世界については,今年も,今日のようなさわやかな気分でいることは許されないであろう.学会についても同様なことがいえるのではなかろうか.
 近年,学園紛争から引き続いて,各医学会とも大なり小なり揺れ動いた.わが整形外科学会も,一昨年以来,専門医制度の論議に端を発して,学会のあり方,学術総会の運営法や評議員選出方法などに関して,主として若手会員から種々批判がなされた.学会という団体にも,歴史が古くなれば,一つの型ができあがるもので,その中には好ましくない慣習が生じたことも否定できない.学会運営の衝にあたるものは,建設的意見は謙虚に聞き,改革すべき点は卒直に改革して,学術の進歩発達に寄与するという学会本来の目的達成のために常に努力しなければならないと思う.

視座

生命の尊厳とは

著者: 天児民和

ページ範囲:P.7 - P.7

 何といつても最近の私に衝撃を与えたのは三島由紀夫の異常な死である.彼はある意味では確かに天才であつたと思うが惜しいことをしたものと思う.生命の尊厳ということをよくわれわれは口にする.たとえば昨年問題になつた心臓移植の場合,生命をどのように考えるかということで心臓移植はできるようになるだろうし,できなくなることもあり得る.最近も移植学会の時にその方面の権威のある諸先生にお目にかかつたが,心臓だけがやかましく問題になつて腎臓の場合はあまり問題にしないのはおかしいと思うし,生命の尊厳というものを今後われわれはどのように考えていつたらよいだろうと迷わざるをえない.
 現在方々の病院に脳外傷でいわゆる植物人間になつた患者が何人かいるはずである.そういう人達の生命は,どう考えたらよいだろうか.日本では死後の生活ということを考えている.これは仏教の影響であろうと思われるが非常にウェットな考えかたをする.臓器移植の場合に死体からこれを採取して保存するとしてもわが国ではなかなか容易にその立法化ができない.現在われわれは脳性麻痺に悩まされている.その治療法を開拓する必要があるし,一方Parkinson病に対するL-DOPAの効果をみるにつけても脳性麻痺の治療に絶望を感じるのはまだ早すぎると思うが,このような患者の予防についても考えなければならないし,極端な早生児,未熟児の問題についてもただ生かせばそれでよいと思うような簡単な考えでいる医師があるとするならば大いに疑問を感ずる.

論述

低濃度フェノール溶液による神経ブロック法(1)—臨床生理学的考察

著者: 高浜晶彦 ,   原武郎 ,   長尾竜郎 ,   和才嘉昭

ページ範囲:P.8 - P.16

緒論
 過度の筋緊張の亢進による痙性麻痺は,リハビリテーションを行なううえに,大きな障害となる.とくに下肢の痙縮は,移動・姿勢の保持などの日常生活動作に関係が深く,治療の妨げとなることが多い.痙縮の発現機序についての説明は,十分になされていないが,痙縮はγ細胞よりのインパルスが増加したために,筋紡錘発射が盛んとなり,Ia群線維を介して,α細胞の活動が刺激される結果,伸張反射が亢進するとされている1).このγ環の悪循環を遮断し,痙縮をコントロールするため,従来より神経2),筋3)または腱4)に対する手術療法,薬剤5)あるいは電流6)による神経の破壊など,種々の方法が試みられてきた.しかしながら,関節の不安定性,筋力の低下,知覚障害および,その他軟部組織の損傷などの合併症を伴わず,比較的長期間にわたつて効果が持続し,より選択的に,より正確に,非可逆性変化の少ない方法が追求されてきた.Maher7)らは,頑固な癌性疼痛に対して,5%フェノール・グリセリン溶液をくも膜下腔に注入し,永続性の鎮痛効果を得たと最初に報告した.しかし手技の繁雑,選択性の悪さ,中枢神経系および心血管系などへの副作用の多発などの理由により,フェノール溶液のくも膜下腔内注入は行なわれなくなつた8〜10).その後,Khalili11)の末梢神経への低濃度フェノール溶液による,選択的ブロック法に始まる多くの報告が見られ,手技の簡便さ,知覚および随意運動にほとんど障害を認めないこと,長期間持続していた筋群の痙縮の選択的除去,また高濃度フェノール溶液による運動神経や,他の軟部組織への浸潤が,低濃度フェノール溶液には比較的みられないことなど種々の利点が報告されてきた.われわれは,低濃度フェノール溶液による下肢の痙縮の管理を,経皮的に絶縁電極注射針を用いて神経を刺激し,目的とする部位の筋の収縮を電気的に分離・確認しながら選択的にブロックを神経叢,神経幹または運動点に行ない,それぞれの適応,特徴および効果を比較し,その臨床結果について報告する.

骨腫瘍とまぎらわしいX線像を呈する骨髄炎

著者: 伊藤雄康

ページ範囲:P.17 - P.22

はじめに
 種々の新しい抗生物質化学療法剤の開発,環境予防衛生の発達,栄養管理の向上等々により,古典的な強い全身反応—敗血症状,高熱,動脈血培養にて起因菌の検出—を伴う骨髄炎の例は今日においては激減の傾向にある.他方,全身症状は比較的緩やかで,倦怠感,易労感等の不定の愁訴にとどまり,局所症状も皮膚発赤,熱感,腫脹,圧痛—という古典的局所炎症徴候および症候がすべて揃うことはむしろ稀であり,この一部をのみ見出しうる様な非定型的な例が増加する傾向にある.
 この様な全体的傾向の中で,患者の側に注日してみると,前述の不定の初発症状に気づいていながらも,それをかなりの時間放置しておき,疼痛が激化したり,局所熱感—腫脹が明らかになつた時点で初めて医師を訪れる場合が多い.また医師の側からみてみると,患者にあまりこれといつた定型的所見がみつからない場合が多いため,単なる関節痛ないしは関節炎とか神経痛として軽く診断を下したり,患者がこどもの場合には成長期の骨端炎として処置を施したりする.またたまたま学童期,思春期の年齢で高熱—関節痛が認められた例にはリウマチ熱を疑つてステロイドの局注,あるいは全身投与を施したり,関節穿刺にて膿液を認めた場合は化膿性関節炎を疑つて抗生物質の投与をするため,基礎疾患の症状がかえられたり,一時にかくされたりして,正確な診断の時期がより遅れてしまう結果となる.しかし数週から数カ月の治療の試みにもかかわらず,臨床症状の改善がみられなかつたり,悪化したり,またX線上に骨の変化を示してきた時に初めて骨の疾患として新たに注目を受け,種々の姑息的治療に抵抗する疾患として,慢性骨髄炎と骨腫瘍が臨床医の頭に浮かび,その鑑別を強いられるのである.この様な長い臨床的経過をもつて骨腫瘍とまぎらわしいX線像を呈した骨髄炎の症例に関する診断上の問題点を若干提起してみたいと思う.

臨床病理講座

四肢軟部組織腫瘍の病理(1)—線維肉腫,線維性黄色腫

著者: 佐野量造

ページ範囲:P.23 - P.30

はじめに
 軟部組織腫瘍とはいかなる腫瘍であるかというと,病理学的には骨およびリンパ組織を除いた体軟部の間葉組織(mesenchymal tissue)から発生した腫瘍を総称している.
 この方面の外科病理学的研究は欧米では盛んであるが,本邦では臨床家のこの腫瘍に対する関心は比較的うすく,症例報告として扱われている程度で予後,治療を含めての系統的研究ははなはだ少ない.その原因の1つとして,たとえば横紋筋肉腫があるとする.それが下肢に生ずると整形外科,後腹膜に発生すると外科,び咽腔に出ると耳び科というように臨床の各科にまたがるためにこれを専門に取組むということが困難であることも原因しているであろう.しかし,軟部組織腫瘍全体としては四肢や軀幹に多く発生するので整形外科にはもつとも関係の深い腫瘍であり,とくに骨周辺の軟部組織腫瘍が二次的に骨に浸潤した場合,骨に原発した腫瘍との組織学的鑑別が是非必要となる.また,骨にも,体軟部に発生する肉腫,たとえば線維肉腫,血管肉腫,脂肪肉腫などが原発するのでこの方面の知識は今後益々,整形外科医に要求されるであろう.

座談会

骨腫瘍研究会(鹿児島)の骨・軟部腫瘍症例検討会から

著者: 阿部光俊 ,   池沢康郎 ,   石川栄世 ,   井上駿一 ,   井上善夫 ,   入久己 ,   上羽康夫 ,   牛込新一郎 ,   遠城寺宗知 ,   緒方孝俊 ,   桶田理喜 ,   小野村敏信 ,   小原惟道 ,   小山田喜敬 ,   賀古建次 ,   金子仁 ,   北川敏夫 ,   佐野貞彦 ,   佐野量造 ,   芝田仁 ,   柴田大法 ,   高瀬武平 ,   高浜素秀 ,   田熊清彦 ,   竹嶋康弘 ,   鳥山貞宜 ,   新野正憲 ,   西川英樹 ,   本田英義 ,   古屋光太郎 ,   保利喜英 ,   前田幸徳 ,   前山巌 ,   真鍋昌平 ,   松井宣夫 ,   松野誠夫 ,   本強矢郁夫 ,   森田正之

ページ範囲:P.31 - P.66

 前山(司会) これから骨・軟部腫瘍の症例検討会を始めさせていただきます.今回は特に軟部腫瘍の症例も併せて検討しようということになりましたので,いくつかの軟部腫瘍と思われる症例の供覧もございます.各出題者からはそれぞれ60枚に及ぶ多数の組織切片と,レントゲン写真のスライドや焼付写真をご提出していただき大変ご迷惑をかけましたが快くご協力いただき誠に有難うございました.これらの資料を主として全国各大学の整形外科にこれを発送してご検討いただき,そこからまたその大学の病理学教室に回して別々にアンケートを出していただくというような手順をとりましたので,診断をお願いしたところがどうしても限定される結果となり,直接資料をご覧になれなかつた方々には大変申し訳なく存じております.
 アンケートをいただきましたところは整形関係から39ヵ所,放射線から3ヵ所,それに病理から16ヵ所,合計58ヵ所でございます.それぞれの症例の診断の集計はその症例の説明や検討がすんだ後にスライドでご報告いたします.この会は症例検討会でございますから,楽な気持でどういうことでも結構でございますから大いにdiscussionを展開してほしいと存じます.

検査法

関節鏡診断の進歩

著者: 渡辺正毅

ページ範囲:P.67 - P.74

I.関節鏡診断学の進歩の段階
 内視鏡診断の条件としては
 1)目的の体腔,管内に挿入することができる
 2)内部を見ることができる
 3)診断に必要な範囲の観察ができる
 4)鏡像の解釈の基準が明らかにされている
 5)記録(写真撮影)ができる
 6)必要な付属器械(生検パンチなど)を備えている
などがあげられる.しかし,内視鏡の進歩は,大別して2段階に分けることができる.すなわち,まず内部を見ることができることが第1段階であり,これは主としてhard wareに属し,さらに診断に実用できる内視鏡であることが第2段階で,これを達成するためにはsoft wareの占める役割が大きい.第1段階の単に内部が見えるだけの内視鏡の開発は,文字通り第2段階の内視鏡開発のための足がかりである.

学会印象記

第5回The Scoliosis Research Societyに出席して

著者: 大木勲

ページ範囲:P.75 - P.76

はじめに
 第5回のThe Scoliosis Research Societyの総会は1970年9月10〜12日までの3日間Torontoで開かれました.今回は前回に引き続きDr. John E. Hall(Toronto)が会長でToronto市郊外のInn on the Parkを中心に開かれました.
 私はちようどBaylor大(Houston)整形外科に留学中で,Dr. Paul R. Harringtonとともにこの学会に参加する機会がありましたので,この学会で受けた印象の一部を記してみたいと思います.

臨床経験

肩鎖関節造影法について

著者: 岩田清二 ,   桜田允也

ページ範囲:P.77 - P.81

 解剖学的に鎖骨外側端関節は外下方に向き,それに対向する肩峰の関節面に騎乗するような構造になつており,肩鎖関節が外方あるいは上方からの外力によつて脱臼しやすくなつている.したがつて整復もやさしいが,整復位の保持は非常に難しくなつてくる.ゆえに今日までに多くの非観血的あるいは観血的治療法が考えられ,行なわれてきているが,その選択にとまどうことがしばしばである,これは関節周囲組織の損傷状態が十分把握できないために起こるものと思われる.また,実地診療に際して臨床所見とレ線所見が一致せず,肩鎖関節脱臼の有無の診断に迷うことが少なくない.この点を解決する一助として,われわれは肩鎖関節造影法を行なつており,いささかの知見を得たので,そのあらましを述べる.
 検査対象としては肩鎖関節脱臼,鎖骨外側端骨折と診断された,あるいはそれらが疑われた患者に対し関節造影を行なつている.

上腕三頭筋拘縮の1例

著者: 前野耕作 ,   井上禎三 ,   杉安浩一郎

ページ範囲:P.82 - P.85

 われわれは最近,原因不明な上腕三頭筋拘縮の1症例を経験し,その手術を施行していささかの知見を得たので,若干の考按を加えて報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら