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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科6巻10号

1971年10月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ—Secondary Bone Tumors

49.Schwannoma (Invasive)/50.Glomus Tumor (lnvasive)

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.821 - P.824

症例57:12歳女子.昭和44年11月に家の中で転び,以来手足が動かなくなつた.昭和45年2月近医に入院.頸椎牽引療法により上肢は動くようになり下肢の麻痺もかなり回復したが歩けるようにはならなかつた.昭和45年12月退院自宅で安静にしていた.昭和46年3月頸椎腫瘍の疑いで当科に入院する.頸部はびまん性に腫脹しX線検査で第5,6,7頸椎椎体椎弓は破壊消失し,食道気管は著しく前方に圧排されている.上肢は殆んど麻痺はなく,下肢は運動知覚共に麻痺しているが,膀胱直腸障害はない.試験切除材料の光顕および電顕所見よりSchwannomaと診断された.(東医歯大)

視座

腰痛

著者: 青池勇雄

ページ範囲:P.825 - P.825

 腰痛をおこす疾患の種類は多いので,診断に際して誤診しないように慎重でなければならない.椎間板ヘルニア,Kantenabtrennung,不安定腰椎などを包含する椎間板障害にはdiscogenic lumbagoが起こり得ることが明らかにされている.不安定腰椎には脊椎関節などの関与も除外はできない.このような椎間板障害の病態が明らかにされて,実際多くの腰痛はこの部類に属するものである.しかし,問題はこのような腰痛がその患者の腰痛と同じであるかどうか,誤診していないかどうかが重要である.
 レ線像で何らかの病的所見が見つかると,つい,これに気を取られて,軽々しく腰痛の原因のように診断してしまい易い.脊椎分離症,脊椎披裂,移行椎などがそのようなものに挙げられる.

論述

慢性関節リウマチの経過と予後

著者: 塚本行男 ,   有富寛 ,   山本真

ページ範囲:P.826 - P.836

 慢性関節リウマチは頑固な難治性の疾患の代表的な存在であり,この疾患の経過や予後に触れるときOnce a rheumatoid,Always a rheumatoidという表現がしばしば用いられて来ている.
 しかし慢性関節リウマチ(以下RAと省略)の経過や予後に関する報告は意外に少なく,やや以前の実態を知るための詳細な記載としてはShort,Bauer1)らのものがほぼ唯一のものであろう.

変形性股関節症の疼痛について

著者: 横崎元男

ページ範囲:P.837 - P.844

はじめに
 昭和45年5月に日本整形外科学会会長藤本憲司教授のもとに,股関節症判定基準委員会が編成され,以来委員会が数回にわたり開かれ,昭和45年11月にはその判定基準(第3次案)が作られた.その目的は変形性股関節症に対する手術的治療法を術式別に比較検討するとともに,その治療成績を向上せしめることにあつた.著者もその委員を命ぜられ,疼痛の面より各術式の治療成績を検討する機会を与えられ,その大要を第44回日本整形外科学会において報告した。ただし疼痛について検討する場合には患者の訴えをそのまま評価採点するため,科学的根拠が不確実でありその信頼性についてはいささか乏しさを感じている.

膝関節重度靱帯損傷の治療成績の検討

著者: 今井望 ,   赤坂勁二郎 ,   宮原康員 ,   富士川恭輔 ,   関恒夫 ,   末安誠

ページ範囲:P.845 - P.854

はじめに
 骨の形態のみからいえばきわめて不安定な膝関節は,ほかの関節にみられない発達した軟部支持機構によって大きな負荷,衝撃に耐えうる安定性を保つている.しかし,一方この関節は長管状骨同士を連結する関節であるため下肢に加つた異常な外力はここに収斂されやすく,直達的,介達的に損傷をうける機会は少なくない.しかも,その構造の複雑さから関節に加わる外力の方向と量にしたがつて多彩な損傷像を呈する.ここに損傷像を正確に把握する診断法と,これを適確に治療する手技が必要となる.
 著者らのうち今井はかつて内側側副靱帯損傷について日整会誌37巻12号に,また十字靱帯損傷につき日整会誌42巻10号に記載してきたが,今回は膝関節軟部支持機構の損傷の中でも特にその障害の著しい靱帯複合損傷例について治療成績の検討を行なつた.

血清尿酸値の疫学的研究

著者: 西岡久寿樹 ,   御巫清允 ,   川島真人 ,   林泰子 ,   北村元仕

ページ範囲:P.855 - P.862

はじめに
 痛風が日本においてまれな疾患でなくなつてから十数年以上になろうとしている.
 臨床上の特徴が激痛をともなう超急性関節炎症(御巫)であり,その70%近くが,𧿹趾基関節にその初回発作を有している1)

検査法

頸部空気脊髄腔造影法

著者: 小田清彦 ,   服部奨

ページ範囲:P.863 - P.870

 1918年Dandy1)が気脳写中に上位頸髄腔の像を観察して以来,1921年Wideröeが空気脊髄腔造影法により腫瘍を発見し,しかもそれを手術的に証明し,さらに空気が腫瘍による狭窄部を通過する際疼痛が起こることを記載し,1934年Coggeshall and von Storchは脊髄腔馬尾神経部の像を観察し,1937年Scott and Youngは腰部椎間板ヘルニア像を発表し,1941年,本邦においても近藤名誉教授10)が脊髄腔馬尾神経部病変診断に利用したことを報告し,1942年Munro and Elkins3)は空気脊髄腔造影法に脊髄液圧を考慮した二針法を利用するなど,古くから知られ,いろいろと改良されてきたが,コントラストの不鮮明さによる診断的価値の疑問や,技術面に問題があり,さらに強い頭痛などのために従来から広く利用され一般化された検査方法ではないが,最近のように各種脊椎,脊髄性疾患を対象として脊髄腔造影法施行例数,手術例数が飛躍的に増加し,いろいろの陽性剤が使用される現在において,その後期障害としての腰痛の報告も多く,特に油性造影剤によるOleomの形成などを見る例も報告され,造影剤使用に関してはその濫用を警告する人が多い.

境界領域

低蛋白血症

著者: 野崎幸久

ページ範囲:P.871 - P.879

はじめに
 低蛋白血症とは血漿蛋白質濃度が正常値以下に低下した病態を呼んでいる.血漿蛋白質濃度の異常は,体内の蛋白質代謝に何かの障害があることを示すもので,蛋白代謝異常のもっとも端的な指標の一つといえよう.
 血漿蛋白質は各種の蛋白成分からなっていて,一般にはアルブミン,グロブリン,フィブリノーゲンの分画に分けられる.この中でアルブミンが血漿蛋白質の約半量をしめているので,従来から低蛋白血症は低アルブミン血症とほぼ同義語として用いられてきた.たとえグロブリンの増加があつても,同時にアルブミンの低下があれば,これにおおわれて低蛋白血症としてあらわれることが多い.また血漿フィブリノーゲンは,正常の場合には血漿総蛋白量の6.5%で1),蛋白不足だけの障害では著しい変化がない.したがつてその測定は特殊の場合(妊娠時のフィブリン欠乏,先天性フィブリノーゲン欠乏症)のほかは臨床的意義がほとんどないという人もある2)

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(8)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   古屋光太郎

ページ範囲:P.881 - P.884

 A:患者は62歳の女性で左下腿外側の腫瘤を主訴としています.この腫瘤は約25年前より存在しており漸次増大して約10年前からは大体現在の大きさ(10×16cm)となつています.昭和45年4月に腫瘤下部の熱感と疼痛を訴え来院しました.その時は対症療法で炎症症状は治り,手術をすすめましたが都合が悪いとのことで放置していました。昭和46年2月に再度tumorの下部に鈍痛発現し,受診しました.腫瘍部は発赤,色素沈着なく,静脈の怒張も認められません.
 触診しますと表面平滑で皮膚との癒着なく弾性硬であり,境界は鮮明ですが移動性はありませんでした(第1図).

臨床経験

両側性先天性橈骨頭後方脱臼の1例

著者: 山本竜二 ,   高木俊男 ,   片山雅宏 ,   下島治 ,   黄河清

ページ範囲:P.885 - P.889

 先天性橈骨頭脱臼は比較的まれな疾患であるが,ことにほかの奇型を合併しない両側性のものはさらにまれなものとされる.われわれは最近この1例を経験し,肘関節の運動性の回復を目的として橈骨頭切除術を行なつたので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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