icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科6巻11号

1971年11月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ—Secondary Bone Tumors

51.Lipoma (invasive)/52.Fibromatosis (invasive)

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.891 - P.894

 症例59:2歳5カ月,女児.生後7カ月の頃,家人が右大腿上部の母指頭大の腫瘤に気付いている.10カ月の頃より急速に腫瘤が増大して来たので,某病院を受診し,腫瘤の摘出術を受けた.術後間もなく再び腫瘤を生じ,それが次第に増大したので2歳5カ月時に当院を訪れた,外来時右大腿の強度の腫大と,破行が軽度に認められた.右大腿上部に弾性硬の腫瘤を触れ,皮膚の静脈怒張も認められたが,局所熱感,発赤はなく,鼠径リンパ節の腫大も触れなかつた.X線像では右大腿骨の骨皮質の圧痕像がみられた.試験切除の結果脂肪腫と診断し,腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は薄い結合織の被膜に被われ,周囲との境界は明瞭で,筋層内に存在していたが,骨組織への浸潤はみられなかつた.重量は350g,結節状を示す黄色の腫瘍であつた.術後6カ月を経て,腫瘍の再発もなく,歩容も全く正常となつていた.(国立がんセンター)

視座

脊髄損傷における脊柱再建

著者: 岩原寅猪

ページ範囲:P.895 - P.895

 鈍力による脊髄損傷は常に脊柱の損傷を伴つている.それだけに,この種の脊髄損傷においては,損傷脊柱の復元再建が治療対策の中において大きな地位を占める.
 医学が進み,いろいろの診断法ができた今日においても,外傷性脊髄麻痺が脊髄の圧迫によるものか,挫傷によるものかの鑑別のできないことは,35年昔と少しも変らない.Allen(1911)の手術が十分理論的根拠を持ちながら,今日においてもなお実用できないのはこのことによつている.

論述

頸髄腫瘍の手術経験

著者: 鈴木良平 ,   渡辺真 ,   井上和郎

ページ範囲:P.896 - P.905

はじめに
 脊髄腫瘍は発生頻度の比較的少ない疾患であり,そのうちで頸髄腫瘍は20〜25%を占めるといわれている.過去10年間に著者らは福島医大整形外科において32例の脊髄腫瘍を経験したが,そのうち頸髄腫瘍は半数に近い14例であつた.脊髄腫瘍そのものは悪性のものはわずかであるが,頸髄部の腫瘍はたとえ良性であつても他の部の腫瘍と異なり,生命に影響を及ぼすことが比較的多いので,早期診断と正しい治療がとくに要求される.著者らの14例のうち5例は不幸にして死の転帰をとつた.はなはだ芳しからざる成績であるが,自験例を述べると共に2,3の問題点をさぐつて反省の資料としたい.

骨軟化症の治療経過

著者: 石川斉 ,   広畑和志

ページ範囲:P.906 - P.920

はじめに
 骨軟化症はいわゆる"osteoid"の石灰化障害を主体とする代謝性骨疾患であるが,他の代謝性骨疾患と同様にその定型的症状を呈するまでに不定の愁訴を訴えることが多い.すなわち,筋肉の易疲労感,いわゆる骨痛,硬直感などの症状を訴え,慢性関節リウマチ,変形性関節症,神経症などと診断されることも稀ではない.近頃では腹部外科手術,とりわけ胃切除後に続発する骨軟化症症例も外国文献では次第に数を増してきている.その他種々の原因による骨軟化症例えばFanconi症候群や低燐血症などに見られる腎性のもの,肝障害や,steatorrhcaにみられるもの,最も多くみられる栄養性ビタミンD欠乏性骨軟化症などもその診断に当つては細心の注意を向けなければならない.

検査法

Two needle oxygen myelography

著者: 諸岡正明

ページ範囲:P.921 - P.928

はじめに
 脊椎管内の疾患に対する診断および高位決定には,あくまでも臨床的,神経学的検索が大切であることは言をまたない.しかし,それだけでは正確な診断が下せないことは,われわれが常に経験するところで,単純レ線写真のみによる罹患部位の高位決定は誤診のもとであると述べる人もある.
 その補助的診断法として油性の,または水溶性の造影剤によるmyelography,discography,動静脈造影,筋電図等が用いられているが,どれも決定的な検査法とはいい難い.

境界領域

消化管手術後の骨病変

著者: 松木久 ,   武藤輝一 ,   佐藤厳 ,   榎本一彦 ,   新田洋 ,   庭山昌明

ページ範囲:P.929 - P.938

まえがき
 近年,消化管手術後障害の一つとして骨の病変,とりわけ胃切除後にあらわれる骨軟化症が注目されてきている.この合併症は,Malabsorption Syndromeの一環として,Caの吸収障害に起因するとされているが,その実態はいまだ十分把握されているとはいい難い.
 代謝性骨疾患の研究の歴史は,1858年Heinrich Müllerが臨床骨学Klinische Osteologieとしてその基礎を築いたことに始まるが,消化管手術後の骨病変の研究は,1941年Sarasin37)の胃切除後骨軟化症例の報告をもつて嚆矢とする.その後約20年間は,わずか数例の症例報告をみるにすぎないが3,23,34),1960年以降,英,仏,豪などより相次いで多数の症例が報告され,最近Thompsonら44)はヨーロッパにおける骨軟化症の原因の第一位は胃切除であるとさえ極言している.

カンファレンス

脳性麻痺の股関節をめぐつて—第10回西日本肢体不自由児施設脳性麻痺研究会より

著者: 高松鶴吉 ,   佐竹孝之 ,   宮本正紘 ,   安藤忠 ,   寺沢幸一 ,   国定寛之 ,   武田哲明 ,   大川義照 ,   近藤晴彦 ,   柴田玄彦 ,   松尾隆 ,   多田俊作 ,   堀川竜一

ページ範囲:P.939 - P.950

 司会 脳性麻痺(以下CPと略)の股関節をめぐるさまざまな問題を本日はテーマにとりあげてみたいと考えます.この問題がまことに複雑であることはご存知のとおりですが,討論の都合上一応整理させて頂いて,1)脱臼その他骨性変化.2)股関節変形に問題となる腸腰筋の処理.3)最後に時間があれば,すでに脱臼しているCP股の治療,と大体三つの主要テーマにわけて,話し合いをすすめていきたいと考えております.

臨床経験

小児における圧迫骨接合術の応用

著者: 山口雅成 ,   村上宝久 ,   熊谷進 ,   松賢次郎

ページ範囲:P.951 - P.959

いとぐち
 創外固定法は,骨折手術の歴史のうえで,その初期,優秀な不銹金属の未だ得られなかつた時期に好んで用いられた.体内に挿入する金属を可及的少なく,可及的短期間に限定せんとする理念より出発したもので,Lambotte Ombredannef,Leveuf,前田(昭5)等の考案がある.
 不銹鋼の開発と,その医学への応用が進むにつれ,利用頻度が減少したのは,それまでの方法の固定効果や金属異物の反応などの問題から,当然のことと思われる.しかし,Charnley(1948)3),Francillon(1955)7),Müller(1957,1971)15)等の示すごとく,適応によつては大きな効果を挙げていることも報告されている.

新しいthermovisionの整形外科的疾患への応用

著者: 岡本連三 ,   鈴木勝己 ,   高橋定雄

ページ範囲:P.960 - P.965

はじめに
 古来,熱は炎症の四徴(rubor,calor,tumor,dolor)の一つであり,局所循環および組織代謝の指標として認められて来た.医学と体温測定の間には長い歴史があり深い関係がある.体温測定には一般に水銀温度計が用いられ,関節内の関節周囲温測定にはthermocoupleが用いられた(1949年Horuvath & Hollander1)).皮膚温測定にはサーミスター皮膚温度計が用いられて来たが,近年皮膚表面の温度分布を写真または影像で表現するthermographyが開発され臨床に応用されるようになつた.
 thermographyはわが国には,1964年渥美ら2)により紹介された.われわれはそのような装置の一つで,最近新しく開発されたAGA thermovisionを使用する機会を得たので,整形外科的疾患への応用を試みた.

外傷性膝関節脱臼について

著者: 武部恭一 ,   高原伸雄 ,   松井英互 ,   大森明夫 ,   井上禎三

ページ範囲:P.966 - P.972

 膝関節は,前方は大腿四頭筋腱,膝蓋靱帯,側方は内外側々副靱帯,後方は関節包,膝窩靱帯,hamstring,腓腹筋等に包まれ,内部では前後十字靱帯により前後への移動を制限されており,また半月により脛骨と人腿骨の安定性,適合性を保たれているため,極めて安定した関節である.そのため外傷性膝関節脱臼はまれであり,本邦ではあまり報告例は見られない.われわれは最近本症例の5例を経験したのでその経過を報告し,若干の考察を加える.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら