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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科6巻12号

1971年12月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ—Secondary Bone Tumors

53.Epidermal cyst (invasive)/54.Hemangioma (invasive)

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.975 - P.978

症例61:22歳,女性.44年3月脱水機に右中指尖端をはさみ,切創を受けたが,間もなく治癒した.1年2ヵ月後に同指尖端がものに当ると疼痛があるのに気づき,当科受診.昭和45年6月30日線維性の腫瘍組織を剔出し,骨片を充填した.(慶大)

視座

上位頸椎損傷の特徴

著者: 池田亀夫

ページ範囲:P.979 - P.979

 最近,交通災害の激増に伴い,上位頸椎損傷は増加の傾向にある.
 従来,上位頸椎損傷は一般に稀なものと考えられ,頭部(脳)と脊椎(脊髄)の移行部という特殊条件もあつて,下位頸椎損傷に比較して実験的,臨床的研究や報告は極めて少ない.死亡率は正確なことはいえないが,昔は90〜50%という高率な報告がみられたが,その後漸減し,昨今では4〜10%といわれている.

論述

関節滑液膜の構造と機能—正常滑膜および関節リウマチにおける変化と役割

著者: 山本真

ページ範囲:P.980 - P.991

はじめに
 関節構成物の1つである関節滑液膜(以下滑膜と略す)は光顕レベルの組織学的には簡単な組織のようにみえる.しかしこの単純な膜が関節の機能また疾患にとつて甚だ重要な役割を果していることは多くの研究によつて次第に明らかになつてきた.この滑膜に関する知識は,特に組織培養,電子顕微鏡,螢光抗体法,radioisotopeの利用などの技術と化学的dataを結びつけて近年飛躍的に大きなものとなつた.このめざましい進歩の段階において,私が九州大学整形外科で協同研究者とともに行なつた仕事は本当に微々たる役を果しているにすぎない.そこで私達の仕事を加えながら滑膜の構造と機能という観点から最近の多くの研究をとりまとめてみることにした.日頃疾患の治療にとりくんでいられる方々にも,関節という器官の本質的理解,疾患の解明に多少とも役立てば幸甚である.

骨軟化症におけるmyopathyの症状とその電顕像

著者: 広畑和志 ,   石川斉

ページ範囲:P.992 - P.1001

はじめに
 最近に至つて整形外科領域においてもいわゆるmyopathyに対する認識が高まり,その分類の必要性が強調されている,しかし本邦では臨床的に症例を具体的にとり挙げて病理組織所見などの裏付けをもつて論じた報告はほとんど見当らない,著者は今回,骨軟化症におけるmyopathyについて記述するが,この2症例の臨床症状や治療経過については石川および著者等により既に報告されたものである(臨床整形外科第6巻第11号).既述したごとく骨軟化症ではレ線に骨格の変形が未だ現れない初期においてしばしば筋原性または神経原性筋疾患と誤診され易い種々の臨床症状が現れているものである.
 そこで著者は今回前述の2例の大殿筋,中殿筋に対してそれぞれ筋生検を施行して興味ある微細構造の変化を認めたので臨床症状,臨床検査所見などを参考にしながら骨軟化症における筋肉の系統的変化と臨床的意義について考察したい.

乳児筋性斜頸治療法の検討

著者: 峰岸孝年 ,   和地建市 ,   菅原幸子

ページ範囲:P.1002 - P.1010

はじめに
 従来,乳児筋性斜頸の治療は保存的療法が主であり,病変進行時期の生後1ヵ月までは愛護的に取扱い,その後は自然治ゆを促進させる意味でマッサージ,徒手矯正を行なうとともに,家庭においても二次的変形の防止策として種々の方法を用い,矯正位に保持することが常識的治療法であり広く一般に普及している.
 しかしながら近年,きわめて愛護的に取扱うべきはずの生後2〜3週の早期乳児に対するmanuelle tenotomie(その後manual myotomyと改名)の報告が篠田ら(1968)11),笠井ら(1970)6),によつてなされた.さらに篠田ら(1969,1970)12,13)は50例の乳児筋性斜頸を無処置のまま詳細に経過を観察し,88%自然治ゆを営んだと報告,ひきつづき第43回日本整形外科学会総会にてマッサージは有害無意味と報告14)した.

幻肢痛とその背景

著者: 大塚哲也

ページ範囲:P.1011 - P.1017

はじめに
 一般に四肢切断者(離断者を含む)は,その断端部にすでに失われた四肢が,まだ残存しているような幻覚にとらわれることが少なくなく,これが義肢装着や日常生活に与える影響も大である.四肢切断者の幻想肢(以下幻肢と略す)は,身体像とともに幻肢痛の形で現われる感覚の面をも具備しており,body imageの投影と見なされる1〜4)
 幻肢の型と利用価値について,大塚1〜4)は第1図,第1表のように分類をこころみた.多肢欠損者ではbody imageとしての幻肢を,なんらかの形で積極的に利用する傾向がとくに強く,同時にまたfeed-back機構としても利用する傾向が窺われる3,4)

検査法

脊髄動脈造影法—選択的脊髄動脈造影法の手技を中心として

著者: 柴崎啓一

ページ範囲:P.1018 - P.1028

いとぐち
 現在,各種脳疾患については血管造影法が診断および治療の極めて有力な補助手段となつている.これに対して脊髄血管造影法は脊髄の血管分布の特異性が大きな障害となり,未だその手技が一般化されておらず,臨床的価値もごく一部の疾患を除いては評価されていない.
 しかしながら,脊髄疾患の中にはその原因を循環障害に求められながらも,病態を明らかにされていない疾患も少なくない.脊髄のarterio-venous malformationもその一つであり,これら疾患に対して脊髄動脈造影法は,未だ得られた知見は少ないが,試みられてしかるべき検査法と考えられる.

境界領域

発達神経学の知識

著者: 小宮和彦

ページ範囲:P.1029 - P.1038

はじめに
 小児神経学は,小児の神経疾患の診断,治療を扱うが,発達神経学は,その主要の部分をしめる.
 小児の神経系の発達を考える場合,その機能的面,生化学的面,形態学的面など,様々の側面からみることができる.この中で,診断,とくに発達程度の診断と脳損傷の診断に関する事項について,いくつかの項目について述べることにする.

阻血肢の血流再開後における代謝性変化

著者: 繁冨頼雄 ,   左利厚生 ,   石川敏三

ページ範囲:P.1039 - P.1043

はじめに
 下肢など大きい部位が長時間阻血されると,tourniquet shock,declamping shock,crush syndromeといわれる全身障害をひきおこすことはよく知られている.その本態は未だ不明の点があるが,血流再開後におこる代謝性acidosis,高K血症,循環血液量減少,末梢循環障害が重要な病態生理学的変化としてあげられている1).われわれは整形外科手術で広く行なわれている四肢の阻血1.5〜2時間後におこる全身血の血液化学的変化を臨床例について検討し,従来主に動物について報告されている長時間阻血後の血流再開時の変化と質的に同じ変化が短時間出現することを確かめ,その意義と対策について考察した.

整骨放談

「整骨師」

著者: 飯野三郎

ページ範囲:P.1044 - P.1044

 本誌に「整骨放談」という欄があるから,お前何か書かないかと,編集の岩原先生の話である.きけば,ずつと前にご自分が一度書かれたきりで,その後何年も空いたままだという.先生の次なら大いに光栄と一応は承諾はしたものの「整骨放談」の「整骨」という文字にちよつと引つかかつた.しかし考えてみると何でもないことだ.「整形外科」は"Bone and Joint Surgery"で,BoneもJointも骨が主構成部分であり,その機能を整えることが「整形外科」であつてみれば,これを「整骨」とおきかえてもおかしくないということになる.
 理くつはそれでよいが,私の本心のどこかにやはり坦懐でないところが残つているようだ.これは,あながち私が長くいた東北地方だけではないと思うが,日本特有の「整骨師」の文字や音のひびきが脳裡にしみついているためだろう.学生がポリクリのとき,Anamneseで「……整骨医に行き,治療をうけまして……」などというと,すぐいきり立つて「君,整骨医という医師が日本の医療法にあるのかね」と目クジラを立てるのが常だった.患者がポリクリの予診で「セイコツに行つた」とか,時にはほんとに「セイコツ医に行つて……」とかいつたのを学生はそのまま用紙に書いたり,口に出したりして,小生の餌食になるのである.

カンファレンス

先天性股関節脱臼の問題点

著者: 先天股脱研究会 ,   坂口亮

ページ範囲:P.1046 - P.1051

 先天股脱研究会は,最も実際的の問題で普通の学会では時間に追われて論議し切れぬことを,学会形式でなくじつくり語り合うために発足したものである.
 今回は猛暑の8月7日(土),東大医学部中央図書館の講堂で,約120人の方の参加を得て行なわれた,論議が散漫にならぬよう多くの問題の中から下記の二つの主題を設けた.

臨床経験

Pseudosarcomatous fasciitisについて

著者: 武智秀夫 ,   渡辺唯志 ,   壇浦生日

ページ範囲:P.1052 - P.1057

はじめに
 線維原性の軟部組織,腫瘍の分類には多くの問題がある.またこれらの中には真正腫瘍でないものもある.
 われわれは,最近pseudosarcomatous fasciitisを3例経験したので,症例を示しながら本症の概要について紹介する.

脊椎分離症に対し我々の行なつた観血的療法にっいて

著者: 清水正章 ,   浜崎

ページ範囲:P.1058 - P.1066

まえがき
 脊椎分離症に対する観血的療法については数多くの報告があり,その方法にも脊椎前方,側方,後方固定術,分離部骨移植術,分離椎弓摘出術等がある.しかし,これら従来の手術法には合併症,固定期間,手術侵襲等に幾分問題をなげかけており手術方法についても術者の考えによりいろいろな方法がとられているのが現状である.一方これまでの報告をみると脊椎分離症と辷り症(仮性辷りは含まない)の治療方針は同一に扱われている傾向にあるが,分離症と辷りは解剖学的にも異なつており分離症があつて放置すれば必ず辷りに移行するものでもなく,多くは辷りを確認した時点で椎弓分離を認めたものであろう.八木(1958)は分離症患者をレ線的に追究し最高11年間で1例の辷り移行もみなかつたと報告しているが,Hammond(1957),Woolsey(1954)らは椎体の辷りの進行は20歳位までに殆んど停止すると述べている.分離症から辷りに移行するのは分離椎弓の動揺によりfacet jointのinstability高度となり更に椎間板に影響を及ぼした結果であり発痛機序は辷りの場合,facet jointも関与しているもののむしろdiscogenicなものが多いかも知れない.すなわち分離症と辷り症はその解削学的な違いからしても当然発痛因子も同一ではなかろうし,観血的治療も別の観点から考える必要があると思われる.以上のことからわれわれは今回,脊椎分離症に対する観血的療法について述べてみたい.

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基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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