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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科6巻2号

1971年02月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ

33.Adamantinoma/34.Neurogenic sarcoma

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.87 - P.90

症例41:19歳男性.右下顎臼歯部の腫脹を主訴として来院.約1ヵ月前より同部の腫脹と飲食後に疼痛を自覚した.家族歴,既往歴には特記すべきことなし.局所所見として右下顎角部に無痛性,瀰漫性の膨隆がある.全身所見には特別異常はなく,臨床検査成績も正常範囲内である.
 エナメル上皮腫の診断のもとに右下顎骨半切除を行なった(東医歯大口腔病理).

視座

Mr. John Charnleyとの出合い

著者: 伊藤鉄夫

ページ範囲:P.91 - P.91

 5年前の春,私はシカゴのRay教授のクリニックを訪れた.ちようどその時Mr. Charnleyが英国から招かれてレジデントの教育をしておられた.短躯で活気に溢れた様子が如何にも印象的であつた.これが彼との最初の出合いであつた.彼は私が股関節外科に興味を持つていることを知り,英国の彼の病院を是非とも訪問するようすすめてくださつた.8月の終わり,米国の旅程を終えてロンドンに渡り,ホテルに到着すると,すでに彼からの手紙が届いており,来訪を待つている,宿舎の準備もあるという知らせを受けた.彼の病院をしらべるとWiganという小さな町の近くの田舎にあることがわかつた.翌日同伴の上羽君とロンドンを出発し,美しい緑の田園の風光を楽しみながら,かなり長い列車の旅をつづけ,Wiganの小さい町に降り立つた.ここからさらにバスに乗り,全くの田園の中を走り,人家のない三叉路に降ろされた.2人は教えられた田舎道を歩いた.途中に牧場もあり,心細い思いをしながら30〜40分程も歩いて行くうちに,ようやく病院らしい建物を発見することができた.平屋の長い病棟がいくつか並んでおり,広い畑と牧場に囲まれている.ここに彼の根拠Centre for Hip Surgeryがあつた.私はここですばらしい手術をみることができた.感染に対するきわめて周到な配慮,大胆かつ正確な技術によつて行なわれる全関節置換術に圧倒された.私はガラス張りの手術室に自分の顔をすりつけるようにして手術を見た.私の半年におよぶ外国旅行においてこれ程の強い印象を受けたことはなかつた.米国で児玉教授から彼を日本に招く計画を知らされ,その交渉を依頼されていたので,私はそのことを彼に告げた.彼はわれわれの希望を快諾した(結局,実現しなかつた).

論述

筋電図からみた肩運動について

著者: 菅原黎明 ,   佐藤孝三 ,   佐野精司 ,   森脇靖博 ,   玉井績 ,   峰岸孝年 ,   安藤和彦 ,   三瓶晴雄 ,   柴野紘一 ,   小寺昭宏 ,   岡村征一 ,   野口雄之 ,   宇田川康

ページ範囲:P.92 - P.101

緒言
 われわれの手は人間の歴史と文化を生み出し,それを支え,人類を繁栄へと導びいてきた.この繊細にして調和のとれた手の機能は,十分な運動域をもつ肩運動〔主として肩関節運動をいうが,肩甲骨,鎖骨運動もあわせ意味している〕と肘運動のコントロールによつて目的とする動作を行ない得るのである.とくに大きな運動域をもつ肩運動は複雑な動力システムと制動システムからなりたつている.肩運動における動態分析は古くより,解剖学的見地からの検索がなされているが,1944年にいたりInman, Saunders & Abbottらがはじめて筋群の活動動態を筋電図学的に検索することにより,Kinesiologyの研究に一大転機をもたらした.かように肩運動に関与する筋群の活動動態が筋電図学的に検索されるにおよんで,従来推測の域を出なかつた筋の機能が漸次明らかにされてきている.しかしながら肩運動の運動形態は多様であるために複雑な機能をもち,関与筋群の協調動態に関しては概念的に論じられているだけで,いまだ十分に解明されていない.とくに肩関節運動に重要な役割を占めると考えられている,いわゆるRotator-cuff-musclesの機能に関しては推察の域を出ていない.このような観点に立脚して,われわれは肩運動のパターンと筋電図とを16mm映画により同一フィルム上に同時記録することにより,肩運動に関与する筋群の協調動態を経時的に適確に分析しようと考えた.すなわちこの方法として筋内埋入型電極を用い,各筋の活動電位を8チャンネル誘導筋電計にて同時記録し,その際の筋電図と肩運動のパターンとを教室考案による2現象同時撮影装置を用いて16mm映写機にて同一フィルム上に同時記録し,両者の相関性をFilm-motion-analyzerを用いて比較検討した.

圧迫プレート法の基礎

著者: 杉本侃

ページ範囲:P.102 - P.109

はじめに
 骨折の治療にはじめて観血的な方法がとられたのはすでに前世紀のことである.これはしかし消毒法の発見以前のことであり歴史的な興味をひくのみで,近代医学の立場からいえば,今世紀の始めに象牙を内副子として使用したドイツの外科医Fritz Koenigをまずあげるのが妥当であろう.彼はのちに骨折の観血的手術の体系づけを試み1932年には成書Operative Chirurgie der Knochenbrücheを発表している.ほぼ同時代にLambotteは金属の内副子を使用しプレートや螺子によつて骨折の治療を試みた.ここに今日われわれが骨折の手術に使用するほとんどすべての器具の原型をみることができる.しかしこのように骨折を手術によつて治療する試みは当時にあつてはあくまでも例外的であつて,大勢は保存的治療が主流であり,なかでもギプス固定がその中心でどのように整復してどんなふうにギプスを巻くかが骨折治療の中心的な問題であつた.この時代においてはたとえ手術によつて骨折を整復固定しても結局は例外なくギプス固定を付加するのが普通であり,観血的治療は保存的治療の補助的手段にすぎなかつた.ギプスのない整形外科はないという言葉があるがまさにそのとおりでギプスなしの骨折治療はほとんど考えられないことであつた.

低濃度フェノール溶液による神経ブロック法(2)—筋電図学的考察

著者: 高浜晶彦 ,   原武郎 ,   和才嘉昭

ページ範囲:P.110 - P.118

緒論
 脊髄損傷,脳血管障害などに伴つた下肢の痙性麻痺に対して,その主な痙性筋の支配神経を電気的に分離選択し,ブロックを施行すると,確実かつ簡便であり,また低濃度フェノール溶液による神経ブロックは,リハビリテーションの場において,しばしば問題となる痙性に対する有効な手段であると報告した1)
 低濃度フェノール溶液による神経ブロックが選択的であり,運動神経の損傷を合併するか否かについて,現在では意見が分かれている2〜4).痙性除去に対するフェノールの作用機序を筋電図学的に考察するとともに,痙性に対する考え方につき述べ,各神経線維の損傷度合についても知ろうとした.

末梢神経同種移植の現況

著者: 諸富武文 ,   平沢泰介

ページ範囲:P.119 - P.130

はじめに
 神経損傷とそれによる四肢の麻痺については古くより大きな関心が寄せられており,四肢の機能回復のためには薬物療法,理学的療法,リハビリテーションなど種々な非観血療法とともに,末梢神経縫合法および神経移植法の実験とその臨床経験などに関して過去に幾多の業績が発表されている.本稿では非観血的療法はしばらく置き,観血的療法についてその現況を述べることとする.
 さて,損傷を受けた神経がその断端を寄せ合わせることができる場合には,以前から種々の縫合法が開発されているが,諸富ら(1967)36,38,39)によつて開発されたシリコンチューブを用いての神経縫合法および最近研究の進んでいるmicrosurgeryによるfunicular suture法(伊藤ら)22)などによつてほぼ満足な結果をうることが可能となつた.しかしながら,その欠損が大きい場合には断端近接法として,関節屈曲法,神経遊離可動化法,神経移行術,骨短縮法などが用いられ,さらに近接法が困難な場合には種々の神経移植法が試みられてきた.

手術手技

脛骨のReed Osteotomy

著者: 鈴木良平

ページ範囲:P.131 - P.137

はじめに
 先天性内反足やその他の奇形,ポリオのように麻痺性疾患などには,下腿の捻転または回旋変形を伴うことが多い.このような変形に対する矯正法として種々の骨切り術が発表されている.それぞれ特徴はあるが,このような中にあつて手技が簡単で骨癒合の速やかなreed osteotomyは,かなり以前に発表されているにもかかわらず,わが国では津山が積極的に行なつている以外,ほとんど発表されていないようである,"recd"とは「葦」の意であり,弾性に富んだ葦をねじるように,骨の連続性を保つたまま捻転が可能であるところから,reed osteotomyの名が生まれたものであろう.
 以下著者の行なつている本手術の術式を紹介するとともに,自験例について述べ,若干の考察を加えたい.

臨床病理講座

四肢軟部組織腫瘍の病理(2)—脂肪肉腫,血管肉腫

著者: 佐野量造

ページ範囲:P.138 - P.145

III.脂肪肉腫
 脂肪肉腫は国立がんセンター8年間における筆者らの集計では横紋筋肉腫とともに軟部の肉腫のうちでもっとも多くを占めている.若年者には少なく,高年者に多い.大腿および後腹膜が好発部位である.筆者らの経験した21例の脂肪肉腫では躯幹5例でもつとも多く,ついで大腿,手肢,後腹膜の順であった.
 平均年齢は47歳で,性別については男女比が1対2で女性に多くみられた.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(1)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   鳥山貞宜

ページ範囲:P.147 - P.150

 「骨腫瘍—これはなんでしよう」は第5巻第10号(第37回)をもつて最終回とし,今号からは「四肢腫瘍—これはなんでしよう」とタイトルを改め連載を続けます.在京の骨腫瘍研究同好の先生方を中心に,毎月1回開かれている骨腫瘍症例検討会を取材し,その一部を誌上に再録しておりますが,第2巻第6号以来,回を重ねて内容も次第に高度になり,最近では供覧される症例も骨腫瘍から軟部腫瘍にまで広がつてきています.これは整形外科医にとつて比較的新しい分野であり,未知の領域ですので積極的に取材掲載し,また病理のシェーマ,統計,文献なども適宜とり入れ,分かりやすく解説していきたいと思います.ご意見,ご希望をおよせください.

臨床経験

腰部椎間板ヘルニアにおける経棘突起脊椎静脈叢造影法の経験—とくに椎間静脈造影像について

著者: 柴崎啓一 ,   鷲谷澄夫 ,   河原宏 ,   原保 ,   浜野恭之

ページ範囲:P.151 - P.157

 腰部椎間板ヘルニアの診断に際して重要な補助診断法としてミエログラフィー,デイスコグラフィーが行なわれている.
 前者は脊椎管内病変局在の指標として,又,後者は椎間板変性度の指標としてその価植は高い.

膝関節に発生した滑液膜肉腫の1例

著者: 佐藤太一郎 ,   神谷武 ,   家田浩男 ,   二村雄次

ページ範囲:P.158 - P.162

はじめに
 滑液膜肉腫は比較的稀な疾患であり,臨床上,直ちに悪性と感じられない点で先人の苦労がしのばれる疾患である.われわれもこの1例を経験したので報告し,本症が膝関節に発生したものについて文献的考察を加える.

関節リウマチに及ぼすGold Chlorophyllinの効果—実験的ならびに臨床的研究

著者: 松元司 ,   工藤尚

ページ範囲:P.163 - P.168

緒言
 関節リウマチの病因に関しては多くの報告がなされているが,まだ定説はない.しかしながら近年免疫学の進歩により,関節リウマチの病気の経過中において自己抗原抗体反応が大きな場を占めていることが明らかにされてきた.一方1927年Lande,Pick等の発表以来金塩剤が本疾患の治療に用いられ,わが国においてもその有効なことが確かめられている.しかしながらその副作用も大きな問題となつているのも事実である.
 そこでわれわれは抗原抗体反応を抑制し,かつ関節リウマチに有効な新しい金製剤を求めていた.最近,春日井の協力を得て,第1図のごとき構造を有する一種のキレート化合物である,金クロロフィリンを作製し,実験的,臨床的に検討を加えたので報告する.

膝関節前方脱臼による膝窩動脈断裂の1例

著者: 橋本廉平 ,   田島達也 ,   内山淳

ページ範囲:P.169 - P.172

はじめに
 膝関節脱臼や脛骨近位端部骨折は比較的高率に膝窩動脈損傷を招き,しかもそれは高率に遠位部の壊死を招くことがわかつている.その原因は膝窩動脈は上縁は内転筋腱弓で,下縁はヒラメ筋,腓腹筋により固定されている上に,周囲の軟部組織が少ないため,鈍力による血管損傷を生じやすいこと,また側副血行が十分でないという解剖学的特徴によると考えられていた.われわれは最近膝関節前方脱臼による膝窩動脈断裂の一例を経験し,その例では,動脈吻合術が成功しなかつたにもかかわらず,下腿を救い得たのでその理由について考察を加えてみた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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