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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科6巻4号

1971年04月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ—Secondary Bone Tumors

37.Lung cancer (metastatic)/38.Prostatic carcinoma (metastatic)

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.257 - P.260

症例45:42歳男.3カ月前より,左肩甲部の疼痛を生じ,その後まもなく,同部の腫脹に気づいた.疼痛と腫脹はしだいに増強し,るいそう,嗄声なども出現し,当院を受診した.受診後の胸部レ線,肩甲骨のbiopsyにて肺癌の骨転移と診断された(国立がんセンター).

視座

TNM分類の問題

著者: 青池勇雄

ページ範囲:P.261 - P.261

 TNM分類とは何であるか,あまり知られていない。TNM分類とは悪性腫瘍の程度を臨床的に分類するものであつて,その目的とするのは癌など悪性腫瘍の治療をしたあとで,抗癌剤やその他の治療法が有効であつたかどうかを判定するのに,治療開始時の癌の拡がりや程度が解つていないと,客観的に評価できないので,前もつて臨床的に分類しておこうとするものである.
 換言すると,癌について各国で行なう情報の交換や,資料の評価に当つて,癌を一定の規約の下に分類しておけば,その治療効果の判定に,客観性が得られるからというわけで,国際的な分類がなされるのである.それで,TはPrimary Tumorで各臓器の悪性腫瘍の大きさ,拡がりを示しており,NはRegional Nodusで局所的淋巴節の腫瘍があるか否か,あればその程度を表わし,MはMetastasisで遠隔部位の転移の有無,程度を示すもので,それぞれT,N,Mはその程度によつて,さらに,1,2,3,4……などを附けて,程度の位づけをしようとするのである.

論述

植え込み電極法の整形外科的応用—とくに麻痺性尖足に対する臨床応用を中心として

著者: 玉置哲也

ページ範囲:P.262 - P.268

はじめに
 銅と亜鉛とで作つた電気ピンセットを,カエルの筋肉または神経に触れると,その筋肉またはその神経の末梢の筋肉は収縮する.
 18世紀末にGalvaniによつて観察されたこの生体が電気によつて刺激され興奮するという現象は,逆に生体からも電気が発生していることを証明する手がかりともなり,近代の神経生理学の飛躍的な発展の礎ともなつた発見であつた.当然のことながら,この現象は臨床医学の領域にも広く応用が試みられてきており,電気刺激を与えて神経あるいは筋肉を興奮させるという面のみを考えても,現在すでに治療面に実用化されている方法も少なくない.その2,3をあげれば,低周波治療,超低湖波治療,平流療法,などがあり,さらに心臓ペースメーカー,徐細動装置などは,この生体の電気に対する被刺激性を人体の機能的な問題の解決に応用したものである.

ペルテス病の股関節造影

著者: 田村清

ページ範囲:P.269 - P.278

はじめに
 ペルテス病の治療に関しては1970年Legg,Calve,Perthesの発表以来安静臥床,牽引,装具によつて大腿骨頭の免荷を計る保存的療法と,種々の理念に基づく手術的療法が試みられてきた.各々の治療法の成果を文献的に比較検討してみても,また私達の病院において過去十数年間に加療し3年以上のFollow-upを行なつた33例の結果13)を検討してみても治療法によつて骨頭修復期間の長短には明らかな差異は認められず,Katz7)も述べるごとくペルテス病治療の目的は今後いかにして壊死骨頭の再生過程における変形を減少させるかに向うものと思われる.
 本疾患の病態生理に関しては1950年代以降のmicroangiographic studyを主とする幼弱骨端核および関節軟骨の研究がTrueta18),Mc Kibbin10などにより進められ10年前の教科書的記載とは一新された感である.Truetaはその大腿骨頭の発生史的研究においてintermediate phase(4〜7歳)の骨端栄養血管の特殊性に注目して,lateral epiphyseal vesselsの閉塞による本症の発症を唱えた.一方,実験的ペルテス病の研究もKemp9)は成犬,Salter15)は幼弱豚を用いてその関節内圧の亢進により大腿骨頭血行の途絶を招来する実験方法を採用して成果をあげてきた.Salterはさらに再血行形成に伴つた治癒過程として新生骨性骨端核が作られ,この部分が鋳型に対応してその形態を変える可塑性をもつことからbone of biological plasticityと呼称した.彼はまた壊死骨頭は物理学的に軟弱なものとして免荷を絶対のものとする従来の概念を否定し,ペルテス病の治癒過程において大腿骨頭を外転し臼蓋内に深く挿入して荷重するならば臼蓋は鋳型として働き骨頭の変形はきたさないことを実験的に示した.

脊索腫(Chordoma)5例—とくに電子顕微鏡による微細構造について

著者: 竹嶋康弘 ,   福間久俊 ,   緒方孝俊 ,   後藤将 ,   中野政雄

ページ範囲:P.279 - P.295

はじめに
 脊索腫は胎生期脊索(chorda dorsalis)の遺残組織から発生する腫瘍で,頭蓋底部と仙尾骨がその好発部位である.本邦では,1923年,太田(東大)36)が脊椎のホルマリン貯蔵標本から発見した第2頸椎脊索腫の報告が最初であり,この後,著者らの渉猟したかぎりでは,耳鼻科,眼科,外科および整形外科領域で1970年までに80余例の報告がみられるが,著者らもここ数年間に,仙尾骨発症4例,頸椎発症1例の脊索腫を経験し,治療する機会を得た.うち3例の手術症例には,術中,電子顕微鏡観察用の生検材料を得ることができ,腫瘍組織の微細形態学的観察を行なつたので,本症例の臨床経過に併せて,その特徴を記述してみたい.

境界領域

四肢のリンパ系—レントゲン解剖,各種疾患のリンパ造影ならびにリンパ循環障害時における代償機構について

著者: 秋貞雅祥

ページ範囲:P.297 - P.308

はじめに
 本邦はリンパ系の研究において世界に冠たる業績が多い.
 リンパ造影(以下“リ”と略す)は1929年京大船岡省五1)によつて試みられ,臨床上1933年名大斎藤真2)により最初Lipiodol乳剤(Lómbre)を,ついでThorotrastが使用された.その後Kinmonthが1954年直接リンパ管に注入してリンパ浮腫に応用して以来ふたたび急激に臨床家に用いられるようになつてきた.

脊椎外科とリンパ系

著者: 宮下冨士弥 ,   江口環禧 ,   河野通隆

ページ範囲:P.309 - P.317

はじめに
 脊椎疾患の手術にあたつて前方からのapproachの機会が増えているが,後腹膜腔や後縦隔における脈管系の存在が,手術野の展開や操作の継続のさまたげとなることが多く,ときに大出血を招くことがあろう.したがつてその解剖を熟知せねばならない.と同時に血管造影法の普遍化とあいまつて,脈管系は脊椎外科の単なる障害物としての立場を越えて,むしろ疾患に重要な役割を演ずる存在として把握されはじめている.しかしながら,同じく脈管系の一翼であるリンパ系に対する関心は,少なくとも脊椎外科領域においてはかなり低いといわねばならない.しかし,悪性腫瘍,カリエス,骨折などではとりわけリンパ系の示す動態を把握せねばならぬであろうし,同時に手術侵襲のうえでも等閑視してはならぬ存在であると思われる.その意味からここにretroperitoneal direct lymphographyを用いて,リンパ系の解剖および脊椎疾患に附随した変化に関する若干の知見を報告する.

手術手技

胸腰移行部椎体に対する前方侵襲法について

著者: 大谷清

ページ範囲:P.318 - P.326

はじめに
 胸腰移行部は横隔膜を介して胸腔と腹腔にまたがり,全脊柱の中でも局所解剖学的に錨雑な部位である.一方,背柱の生理的彎曲の移行部であるのみならず,胸椎と腰椎の構築上および生理的機能上の移行部でもあり,当該部に荷せられた負荷は大である.それだけに胸腰移行部に惹起される疾患も稀有とはいえず,最近,頻発の一途をたどる椎体骨折や脱臼骨折を始めとして椎間板症,脊椎カリエスなどがそれてある.
 しかし,これらの疾患に対して積極的手術療法が加えられるようになつたのも比較的最近で,その歴史は浅い.本邦では脊椎カリエス例に対する笠井ら(1954),松本ら(1957)の,外国では同じく脊椎カリエスに対してNissenら(1956),Hodgsonら(1956)の椎体侵襲の報告をもつて嚆矢とする.その後も脊椎外科の進歩はめざましく,Crafoordら(1958)は胸腰移行部椎間板ヘルニアに対して開胸前方進入の経験を発表している.Roaf(1958)は脊椎カリエスに刻して胸膜外進入椎体侵襲の経験を報じ,池田(1966)は胸腰移行部に対して横隔膜をはさんで胸膜外,腹膜外進入法を発表した.宮者も池田の方法に準じ,胸腰移行部椎体侵襲を経験した.以来現在まで,その自験例は50を越すにおよび,侵襲法にもいささか改善,改良を加え,今日におよんだ.

臨床病理講座

四肢軟部組織腫瘍の病理(4)—滑膜の腫瘍

著者: 佐野量造

ページ範囲:P.327 - P.334

VII.滑膜の腫瘍
 1.良性の滑膜腫瘍
 関節腔,腱鞘,関節周囲の粘液嚢に生ずる良性の腫瘍には,血管腫,脂肪腫,軟骨腫などあるが,線維性黄色腫に属するものがもつとも多い.この腫瘍は良性滑膜腫(benign synovioma),黄色腫(xanthoma),黄色腫性肉芽腫(xanthomatous granuloma),腱鞘の巨細胞腫(giant Cell tumor of the tendon sheath)および色素沈着性絨毛滑膜炎(pigmented villonodular synovitis)等,いろいろの名称でよばれているが,病理学的には先に述べた組織球性細胞に由来する線維性黄色腫(fibrous xanthoma)と同じものである.
 好発部位は膝,股関節および手足の関節にも生ずる.比較的若年者に多く,男性に多い.

臨床経験

Riemenbügel様装具による新生児先天股脱治療の試み

著者: 鈴木良平 ,   佐藤信也

ページ範囲:P.335 - P.340

 Ortolaniのclick signやBarlow,山室の方法などを利用して,新生児期に先天股脱が容易に発見されるようになつたことは大きな進歩である.この時期の治療としてはvon Rosen,Barlow,Frejkaの装具がよく用いられている.
 10数年来,著者らは乳児先天股脱に対して,PavlikのRiemenbügelを用いているが,新生児に対してもこのような装具が用いられないであろうかと考えた.つまり厳重な固定を行なわず,向脱臼性の股関節伸展運動のみを制限してjoint laxityの消失を待ち,固定性の脱臼に進展するのを防止することを意図するものである.しかし乳児用のRiemenbügelは材料の点で新生児の皮膚には危険であるし,新生児には重すぎて固定用装具となつてしまうおそれがある.

Mckee-Farrar型人工股関節の経験

著者: 鳥巣岳彦 ,   安田博行 ,   原晃 ,   佐藤護彦 ,   野村茂治 ,   脇田吉樹 ,   小林邦雄 ,   中島啓雄 ,   大江浩

ページ範囲:P.341 - P.349

はじめに
 洋の東西を問わず破壊された関節を何らかの方法で再建し痛みなく動かせるものにできないものかと考えるのは外科医の昔からの夢である.股関節形成術の発達は1827年John Bartonが偽関節が疼痛なく動くことにヒントを得て人為的に偽関節を作ろうと試みたことに始まると言われる14).そして1865年Listerの制腐手術の創案を契機として数々の目覚しい業績が誕生した.しかし偽関節による関節形成術は肘,膝関節である程度の成功を得ているが,股関節では大腿骨頚部の吸収が起こり可動良好なる場合は支持性が悪く,歩容が悪く,また実用性はなくむしろ関節強直(良性肢位の)の方が好評であつた.Smith-Petersenのcup arthroplastyも大腿骨頚部の骨吸収に対する明確な答は出ていない.そこで関節全置換術が考えられるようになったが,その一つが最近のMckee-Farrar型の人工股関節である.金属の関節頭と臼蓋を有しこれを骨セメントで固定するこの方法には多々問題点もあろうが7)無痛性で支持性が良くしかも動くという3本柱でよく臨床経験に耐え,良い成功率を収めていることは事実である.
 Mckee型の今日の様な型の人工関節が生まれるまでにはおおよそ20年の実験と臨床経験とが繰返されているのであつて1940年に描いたモデルが10年後の1950年やつと実用化されているのである.1956年より骨頭にはThompson型が用いられる様になつたがその頃の手術成功率は53%であつたという.失敗例の多くがprosthesisの"ゆるみ"によるものであつたため,その頃より盛んに研究され出した骨セメントを巧みに取入れて1960年より骨セメントによる固定が行なわれるようになつたのである.これにより成功率は一段と向上し骨頭の大きさに二,三の改良を経て現在に至つているのである4,9〜11)

抗生物質注射による坐骨神経麻痺—神経剥離術の効果

著者: 野村進 ,   細川外喜男 ,   吉村光生

ページ範囲:P.350 - P.355

はじめに
 薬物注射による末梢神経麻痺は従来より椀骨神経の症例が多いが,殿筋注射による坐骨神経麻痺の報告は比較的少なく,またこれに対し手術的治療を行なつた症例もあまり多くないようである.われわれは抗生物質注射による3例の坐骨神経麻痺に対し,神経剥離術を行ないその成績を調査した結果,全例に完全な機能回復が得られたので,この経験をもとに若干の考察を加えて報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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