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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科6巻5号

1971年05月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ—Secondary Bone Tumor

39.Cancer of the breast (metastatic)/40.Gastric cancer (metastatic)

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.357 - P.360

症例47:51歳,女.入院6年前,某大学病院にて,左乳癌の診断で乳房切断術を受け,1カ月後に鎖骨下,頸部リンパ節の摘出を受けている.その後なんらの障害もなかったが,術後5年8カ月を経過した頃より,背痛,腰痛を生じ,疼痛はしだいに増強し,起立不能となり当院外科を受診した.受診時第11胸椎の圧潰扁平化像と,右腸骨部の圧潰像が認められた.副腎摘出術,ホルモン療法にて現在外来通院経過観察中である(国立がんセンター).

視座

卒後修練によせて

著者: 岩原寅猪

ページ範囲:P.361 - P.361

 卒後修練に事よせて私見を述べてみたい.あえて卒後訓練といわないで,一歩さがつて卒後修練とした気持を諒とされたい.
 よい医師となるには永いそして厳しい修練がぜひ必要である.医学界の,医界の現状をみるとそのことがよく分かる.

論述

7つの科による鞭打ち損傷患者の総合研究結果

著者: 杉本侃 ,   桂田菊嗣

ページ範囲:P.362 - P.369

はじめに
 鞭打ち損傷という名が診断名としてきわめて不適当であり,何ら病態を説明するものではなく単に受傷機転を示すに過ぎないことはもはや異論のないことであろう.しかもこの語はその内容がよくわからないままに途方もない誤解と恐怖を一般に植えつけており診断名とすることは絶対に避けるべきものと考える.しかしこの語が社会的にも医学的にも極めて広範囲に普及し無視し得ない状態にあることも事実である.したがつて,われわれの研究班はこの病名をそのまま採用しこの病名が何をあらわすかを徹底的に掘り下げることにした.本論文においてこの病名をそのまま題名として使用したのもそのような意味においてである.
 鞭打ち損傷が現在まで各人各様に解釈され一定の病態がつかめなかつた原因としてわれわれは次の三つを重視したい.

脊椎分離・辷り症における前方固定手術の検討

著者: 井上駿一 ,   尾崎賢太郎

ページ範囲:P.371 - P.400

 脊椎分離・辷り症に対する前方法術式は古くBurns2)(1933),Jenkins7)(1936),Mercer3)(1936)らによつて創められ,本邦でも岩原名誉教授(1942),島教授(1938),近藤名誉教授(1942)らによる濫鵤の時代がある.とくに辷り症に対して前方法術式のもつ合理性については古くから諸家の多くが認めるところであり,ただ手術侵襲の大きさ,予期された骨癒合の得られぬ事実,あるいは適応の問題に関しくりかえされる論議があり,ために現在まで前方術式はもつぱら理論上の優秀性のみが強調されている感が深い。
 筆者の教室では本症に対し恩師故鈴木次郎教授により創始せられた経腹膜的腰椎前方固定術を1956年以来発展させてきたのであるが,分離・辷り症に対する約15年間の成績の検討を行ない本法のもつ意義に関し検討を行なうことは,この分野での私どもに課せられた大きな使命と考えている.

脊椎分離・辷り症の治療に対する私見

著者: 森崎直木

ページ範囲:P.401 - P.414

はじめに
 本症が整形外科の領域で問題となるのは,そのほとんどが腰椎,ことに下部腰椎に発症して,腰痛や坐骨神経痛の原因の一つとなりうると考えられ,特有なX線所見を呈するからにほかならない.しかし腰痛などの愁訴をもつて来院する本症患者について,その愁訴や症状とX線所見との関連性を証明することは容易なことではない.したがつて本症の治療に際しては,この点に留意してかかる必要があり,すくなくとも安易に手術的療法に走るべきではない.以下本症の治療について日頃私の考えている二,三の点について述べる.ここにいう脊椎分離・辷り症とは腰椎の関節突起間部の分離症(spondylolysis)と,それに基づく辷り症(Newman:spondylolytic spondylolisthesis)を指し,いわゆるpseudospondylolisthesis(Junghans)15)など他の種類のものはこれを含まない.このような私の考えは,東京女子医大整形外科に来院した本症患者(第1表),および本学病院ドック入院者にみられた本症の診療経験によるものである.

検査法

酸性ムコ多糖体の分離同定法—とくに二次元電気泳動法を中心に

著者: 新名正由 ,   畑隆一郎

ページ範囲:P.415 - P.423

はじめに
 整形外科領域における疾患の病態把握,診断,治療法の開発に,最近生化学的手法が盛んに用いられるようになつてきている.とくに骨系統疾患,悪性腫瘍,リュウマチ様関節炎および変形性関節症などの難治性疾患において病態把握の有力な手段と考えられる.
 整形外科医が対象とする,骨,軟骨,腱などの組織中の有機成分は,主として線維性,タンパク質であるコラーゲンと,一般に基質(礎質)とよばれている糖蛋白複合体より構成されている.糖タンパク複合体の大部分は多糖鎖に酸性基(硫酸基,カルボキシル基)を有する酸性ムコ多糖タンパク複合体(PPC)でしめられる.

境界領域

DMP(進行性筋ジストロフィー)保因者の状態

著者: 杉田秀夫

ページ範囲:P.425 - P.431

はじめに
 進行性筋ジストロフィー症(DMP)は19世紀なかばに初めて記載された遺伝学的にも臨床的にもheterogenousな疾患である.1959年Chung, Mortonは約800例の本症患者の遺伝様式,臨床症状の詳細な分析を行ない遺伝学的立場からの分類が確立されたわけである.また最近World Federation of Neurology(W. F. N.)により詳しい分類が発表されている.
 本症の遺伝学的研究は単に学問的興味だけでなく本症患者の予後,患者家族内における新しい発病者の予測,さらに最近では酵素化学的テクニックを応用することにより本症の保因者の発見と同時に優生学的な問題へと発展してきている,著者は本問題に関する総説をすでに別誌で発表しているが1〜3),本稿では進行性筋ジストロフィー症,特にDuchenne型の保因者に関する最近の進歩の概要について述べることにする.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(3)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   金子仁

ページ範囲:P.433 - P.438

 A:この症例は9歳の男です.
 生来なんら病気するところがありませんが,昭和45年3月,転落により右の尺骨を折り治癒しています.今年の7月,体操をやつた後に腰部重圧痛を訴えましたが,学校生活には特に支障はなかつたようです.

臨床経験

骨関節結核として誤診療されていた先天性皮膚瘻の2例

著者: 末沢慶紀 ,   梅沢文彦

ページ範囲:P.439 - P.444

はじめに
 ここ20数年間の抗結核剤の発達普及とともに骨関節結核は激減しすでに姿を消しつつある疾患となつた.しかるに数こそ少ないが,依然骨関節結核は厳然として存在し,結核治療の発展がわざわいしてか,その病態がかえつて把握しにくいものとなつた面がある.
 脊椎カリエスとして長期間誤診療されていた先天性皮膚瘻の2例を得たので反省例として報告する.

観血的整復を要した示指PIP関節掌側脱臼の1症例

著者: 福沢玄英 ,   黒川一

ページ範囲:P.445 - P.448

 日常の診療において,手指関節の外傷性脱臼にはしばしば遭遇する.その多くは徒手整復が可能であるが,中には徒手整復不能で,観血的整復を必要とするものがある.
 観血的整復を要する手指MP関節背側脱臼については,Kaplanの報告以来注目され,その報告は時々散見されるようになり,われわれも数症例を経験しているが.最近徒手整復不能で,観血的整復を要した示指PIP関節掌側脱臼の1症例を経験したので追加報告し,併せて若干の文献的考察を加えたい.

両前腕,両下腿切断者と幻肢

著者: 大塚哲也

ページ範囲:P.449 - P.452

 一般に四肢切断者(離断者を含む)は,その断端部に,すでに失われた四肢が,まだ残存しているような幻覚にとらわれることが少なくなく,これが義肢装着や日常生活に与える影響も大である.四肢切断者の幻想肢(以下幻肢と略す)は,身体像とともに幻肢痛の形で現われる感覚の面をも具備しており,body imageの投影と見なされる1〜6)
 大塚は幻肢の型と利用価植を(第1図,第1表)のように分類したが,多肢欠損若ではbody imageとしての幻肢を,なんらかの形で積極的に利用しようとする傾向がとくに強く,同時にまたfeed-back機構としても使用しようとする傾向が窺われる5)

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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