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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科6巻7号

1971年07月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ—Secondary Bone Tumors

43.Rhabdomyosarcoma (metastatic)/44.Leiomyosarcoma (metastatic)

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.551 - P.554

症例51:25歳,男.昭和45年8月より右足背の腫瘤と自発痛を訴える.昭和46年1月には右側ヒラメ筋,腓腹筋内にも腫瘤を認め,同時に発熱したため2月下旬に入院した.3月8日右短拇趾伸筋より試験切除施行.4月中旬には右大腿骨内顆にも圧痛,硬結現われX線検査で右大腿骨内顆および脛骨近位端に骨吸収像を認め,4月21日右大腿中央にて切断する.5月19日両肺野に転移巣発見,6月14日現在生存している(慶大).

視座

骨接合術

著者: 天児民和

ページ範囲:P.555 - P.555

 本年の日本整形外科学会の最終のシンポジウムに骨折の手術的療法が選ばれた.これは大変意義深いものがある.なぜならばこの十数年来,骨折の治療が観血的療法に傾き,またその観血的療法も著しく変遷をしておるからである.それだけに次々と新しい技術が紹介され,また古い技術も刻々改善されているので,いずれがもつとも優れているか判断することは容易ではない.第2次世界大戦の勃発する直前に,Küntscherが髄内釘の技術を開発した.しかしその技術も年々改善され今日では骨髄のリーミングと閉鎖性術式にまで進歩し,本法の初期とは著しく変つてきた.それに並行して圧迫骨接合術が新しい技術として,わが国にも導入され,髄内釘に比して手術場の設備が比較的安くできるという利点もあり,また手術技術も多くの修錬を要しないという点から急速に広まつておる.このいずれが優れているのかそれは軽々しく論ずることはできない.Küntscherは3,000例を越える彼自身の経験によつて,かなり強い自信を持つておるようであるし,Müllerの圧迫骨接合術は,鏍子,金属板の製作業者と連絡を密にして,しばしば講習会を開催し,Müller自身も世界各国に出向いてこの方法の優秀性を説いておる.
 骨折治療にとつてもつとも大切なことは,骨折部を整復し,immobilizationを完璧にすることである.私も過去には偽関節は骨折片の間に介在する瘢痕組織を除去しないと治らないものと思つておつたが,瘢痕を残したままKüntscherの方法で閉鎖性に太い髄内釘を使用すると,骨折の癒合を妨げておつたと信じられていた瘢痕組織がいつの間にか骨化して,偽関節が癒合することを実際に経験した.

シンポジウム 四肢末梢血管障害

骨・関節・筋肉の血液循環とその障害

著者: 西尾篤人 ,   小林晶

ページ範囲:P.556 - P.564

I.骨・関節の血液循環
 骨は堅い緻密な組織であるが,豊富な血流を含む.血液の循環は骨や骨髄の機能保持に最も重要であるとともに,骨成長・骨形成はもちろん骨の傷害の治癒にも大切である.
 骨・関節の血液循環に関しては,分布している血管についての最初の研究はLexerによつて行なわれた.すなわち,骨の血管内に水銀乳剤を注入しレントゲン撮影により動脈の走行を明らかにした.その後,血管内に色素を注入しSpalteholz法によつて透明標本の作製,また組織の連続切片を作り血管の立体復構法による血管の追究や,血管内に合成樹脂を注入してかたまらせた後に組織を融解させて合成樹脂の血管の模型による研究が行なわれてきた.血管の微細な走行が明らかになつたのはBarclay(1951)のmicropaqueの血管内注入による研究で,その後にTruetaらにより動物ならびに人間の骨の精細な血管分布が明らかにされた.

四肢先天性血管奇形の診断と治療

著者: 東博彦 ,   伊藤維朗 ,   立石昭夫

ページ範囲:P.565 - P.577

はじめに
 四肢の先天性血管奇形は多種多様であり,たとえば皮膚に限局して生ずる血管腫のように四肢の循環障害とはまつたく関係のないものから,いわゆるKlippel-Weber症候群のように患肢のみならず時には全身の循環障害をもたらす可能性のある疾患までふくまれている.
 ここで取り扱う先天性血管奇形は,血管奇形とともに筋肉・骨・関節などにも変化が見られるものであり,四肢運動器の機能の面から見てもこれらの血管奇形の診断や治療は大切である.

四肢末梢血管障害の外科的治療

著者: 富重守

ページ範囲:P.579 - P.586

はじめに
 四肢末梢血管障害の治療については,本邦でも多数の先達による多くの業績と著書があり,今更述べるほどのものでもないと考えられる.血管外科の歴史は古いが,その成績は芳しいものてはなく,事実上目ざましい進展を遂げたのはここ10数年であると言つても過言ではない.しかもそのほとんどは外科医によつて再建修復の努力がなされてきたのが現状で,この点四肢外傷あるいは四肢の外科を取扱う整形外科医が血管外科への積極的取組みが足らなかったことは否めない事実で,今後は四肢の血管外科に対して,外科医とは異なつた観点より新たな努力が払わるべきだと考える.このような意味で従来,四肢血管障害にとられてきた外科的処置の基本と考え方を知ることは,ある程度意義あるものと考える.

末梢循環障害における自律神経外科—高圧酸素療法の応用

著者: 久山健

ページ範囲:P.587 - P.596

緒言
 昭和41年1月末京都大学に高圧医学研究装置の新設(第1図a,b,第2図a,b)が決定した時,一般の人々(医学研究者を含めて)にとつて耳なれぬ高圧酸素療法という問題を世間と一般医家の人々により正しく理解してもらうために取り上げねばならなかつた.その後多くの人々の協力により高圧酸素療法患者名簿には3年間余りで200余名の患者氏名が残つた(第1表).
 その1/3が末梢循環障害と関連した疾患であつた.筆者は既成診療部門分類にとらわれず現在完成した医療手段で治らぬ不治疾患に高圧酸素療法は試みるべきものという考えである.その意味で切断以外に社会に復帰する方法がないという状態に追いこまれた難治性潰瘍患者を切断する前に本法を試みることに努力した.当室は中央診療部門7部門の1つとしてすべての診療分野の患者に対するサービスの目的で設置されているので種々の血行障害患者が含まれている.主題の自律神経外科とは少しはずれるが,シンポジウム・末梢循環障害中で高圧酸素療法の効果の紹介を目的としよう.当室は自律神経外科領域研究者の木村忠司教授を室長にしているので自律神経関係患者がかなりの比率をしめている.なお筆者は高圧医学現象説明に自律神経学理を用いたのである.その意味で自律神経外科に重点をおいて論を進めたい.

論述

変形性膝関節症に対する高位脛骨骨切り術の問題点

著者: 腰野富久

ページ範囲:P.597 - P.606

はじめに
 変形性膝関節症の治療に関しては,ステロイドの関節内注入や消炎剤の投与など主として保存的療法が広く行なわれており,比較的軽度のものにはこれら保存的療法がかなりの効果を示しているようである14).しかしながら最近では,JacksonおよびWaugh9)(1961)を嚆矢とし,高齢者の変形性膝関節症の外科的治療として,膝の内反および外反を骨切り術により矯正する方法が行なわれてきている.なかでもHigh Tibial Osteotomyの種々なる方法が紹介され2〜8,10,13,15,16),諸家の成績もかなりよく,将来ますます広く行なわれるように思われる.
 変形矯正のための骨切り部位として,脛骨近位部,とりわけ,脛骨粗面直上の部位が選ばれる理由は,膝蓋靱帯の附着部より近位で骨切り術を行なえば,大腿四頭筋の牽引力が作用し,骨切り部が安定すること,同時に内側側副靱帯など強大な靱帯により囲まれているため,骨片が転位し難いこと,また,metaphysisはその豊富な海綿骨により,diaphysisより骨癒合が速かであることなどがあげられる2).また,骨切り術を大腿骨で行なつても変形は矯正されるが,術式の難しいこと,固定の長いこと,術後の拘縮など脛骨より不利な点が多い.

膝関節症に対する脛骨高位骨切り術

著者: 土井照夫 ,   七川歓次 ,   小野啓郎 ,   小杉豊冶 ,   山本利美雄 ,   吉野良平

ページ範囲:P.607 - P.613

はじめに
 変形膝関節症は成人期以後の関節疾患のなかで,もつとも一般的なものであり,ことに,畳の上での生活習慣をもつ日本においては老人の生活力に直結する重要な問題の1つである.しかし,その本態ならびに成因に関しては,現在なお不明の点が多く,また治療上困難な問題が少なくない.
 膝関節症のなかには,その経過のうちに症状の改善を示すものがかなり認められる.小松原らは1年10ヵ月から3年10ヵ月の追跡調査で37%に改善例を認めている.しかし,過半数の症例が不変または悪化を示し,長期にわたつて膝の痛みに耐えながら日常生活を送つているものが多い.

境界領域

乳癌転移例に対する外科的ホルモン療法

著者: 阿部令彦

ページ範囲:P.614 - P.626

 乳癌に対する内分泌療法は,ホルモンの投与や,内分泌機能の廃絶による内分泌環境の変化をある種の癌の治療に応用するという考え方に立脚する.すなわちSchinzinger(1889)が進行乳癌に対する卵巣別除の奏効する可能性を指摘したのに始まり,Beatson(1896)の臨床的追試で実証されたことに由来しているが,現在臨床上癌の内分泌療法が実際に行なわれている対象は,おもにホルモン依存性癌といわれる乳癌と前立腺癌とである.しかも,その根治手術の適応のない進行症例に行なわれるのが原則である.
 乳癌伝移例に対する外科的ホルモン療法には,卵巣剔除,副腎剔除,下垂体剔除などがある.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(5)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   阿部光俊

ページ範囲:P.627 - P.631

炎症か腫瘍か
 A:この方は,33歳の男性です.1昨年5月に重いものを持ち上げたときに,急に左大腿が痛くなり,多少熱感があつたそうです.その後,痛みはだんだん強くなり,38度前後の熱がでて,近所の病院へ行き,chemotherapyをうけて痛みは落着きました.それから5ヵ月経って再び同じような発作があり,局所の熱感や39度の発熱があつたのですが,このときもchemotherapyで割に簡単になおりました.その後も2回同じようなことがあつて,その都度chemotherapyで痛みはなくなつたのですが,しかし,腫脹が次第に強くなつてきて,昨年11月東大を受診しました.
 局所所見では右大腿部が紡錘状に腫脹していますが,皮膚はほぼ正常で,発赤,色素沈着,静脈怒張などはなく,多少の熱感があります.触診では大腿骨白身が骨幹部で太くなつている感じで圧痛が少しあります.搏動,波動などはありません.

臨床経験

虫様筋が原因となつたと考えられる手根管症候群の1例

著者: 松崎昭夫 ,   光安元夫

ページ範囲:P.633 - P.636

 手根管症候群という病名は現在では整形外科医にとつて珍しいものでなく,最近の報告はその原因が興味ある例,または多数症例の統計的観察についてなされている.われわれも非常にまれな原因によると思われる症例を経験したので若干の考察を加えて報告する.

Chopart関節脱臼骨折の1治験例

著者: 檜山建宇 ,   井上昌二

ページ範囲:P.637 - P.641

 最近私達は,まれなChopart関節脱臼骨折の1症例を経験したので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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