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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科6巻8号

1971年08月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ—Secondary Bone Tumors

45.Alveolar sarcoma (metastatic)/46.Osteosarcoma (metastatic)

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.643 - P.646

症例53:22歳男子.受診8カ月前より右大腿部の腫脹に気づいていたが,症状なく,そのまま放置していた.受診4日前に約20ccの血痰あり,当院内科を受診し肺の転移性腫瘍と診断された.入院後右大腿部の腫瘍切除術,術後リニアック6000rads照射,肺の転移巣に対しては全身的な化学療法を行なつた.腫瘍切除術後9カ月目に後頭部に腫瘤が出現し,ついで右上腕骨,恥骨にも転移巣の出現が認められた.放射線療法,化学療法にも拘らず,肺の転移巣はしだいに増悪し,入院後1年7カ月で死亡した(国立がんセンター).

視座

大腿骨骨頭のcollapse

著者: 伊藤鉄夫

ページ範囲:P.647 - P.647

 大腿骨頸部内側骨折の治療は長年にわたる研究にもかかわらず,未だ十分な成績をあげることができない,このことが人工骨頭や人工関節の開発を促進した.これは,長い間,人類の夢であつたが,その夢がようやく現実のものとなつた.片山名誉教授の股関節形成術の歴史(本誌第6巻第6号)を読んでみると,過去において先輩達が如何にこの夢を追つて努力してきたかを知ることができる.しかし,人工関節の出現にもかかわらず,一方では頸部内側骨折の基礎的研究や治療の本道である整復固定の研究は依然としてたゆみなく続けられている.頸部内側骨折においては何故に骨頭のcollapseがおこるのか,またこれを防止することはできないのか,という疑問を持つことは意義のないことであろうか.人工骨頭置換術のさいに摘出された骨頭標本の組織像をみると,全例において骨頭の大部分が早期に阻血性壊死に陥つており,骨頭靱帯動脈からの血液供給は殆んど期待されない.それ故,治療は,事実上,自家骨頭移植である.自家骨移植では,椎体固定に用いられた移植骨にもみられるように,多少のcollapseがおこるのが通例である.

論述

血管移植の諸問題

著者: 井口潔

ページ範囲:P.648 - P.653

 腎,肝などの臓器移植の場合の血管内膜と宿主間の反応は拒絶反応の第1ステップという見方もあり興味がもたれている.しかし,血管移植それ自体は,臨床面では合成血管と自家静脈移植によつて一応の臨床成績を挙げることができている.しかし,血管閉塞性疾患の血管移植は,退院時には一応の開存率が得られても遠隔時には開存率が低下する場合もあり,静脈移植一般については未解決の問題が少なくない.このような血管移植の諸問題について述べてみよう.

同種腱移植の臨床例

著者: 堀木篤 ,   前野岳敏 ,   江川常一 ,   土井照夫

ページ範囲:P.655 - P.663

緒言
 同種腱移植の歴史は,1916年Rehn12)の動物実験での報告にはじまる.そののち多くの研究がなされた結果,移植腱は処理方法などの条件による多少の差はあつても,排除されることなく徐々に宿主側細胞によつて置換され,新しい腱構造をとることが知られた.また免疫学的にも腱は抗原性の少ない組織とされ,移植を行なう場合ほとんど問題がないとされている.このように幾多の動物実験の報告により同種腱移植の可能性が確かめられてきたが,臨床的には1959年Peacock8)の報告が最初と考えられる.これは癒着の問題が関与しているためで,移植腱は周囲と癒着することなく滑動性を保つていなければならず,同種腱ではこれがより強く生じると予測されるためである.Peacock以後,臨床的な報告はIselin7)(1963),Herzog5)(1965),Peacockl11)(1967)らの報告を散見する程度で多用されているとは言い難い.
 著者は犬を用いてCialit溶液に保存した同種腱移植実験を行ない,その修復過程を観察した結果,Cialit保存同種腱は周囲組織に対する影響が少なく,修復過程も円滑に行なわれ,癒着も少ないことを認めた6).臨床には昭和39年以来,28例43腱に使用している.Cialitを用いた理由は(1)蛋白の変性が少なく,したがつて腱組織を破壊することが少ない点.(2)殺菌作用が確実なこと.(3)保存方法が簡便なことである.昭和43年からはCialitとよく似た水銀製剤であるMersoninを使用して,15例24腱の同種腱移植を経験した.Cialit保存腱については第10回手の外科学会で発表したが,今回はそれらも含めて報告する.

先天性四肢欠損の発生について—先天性四肢切断を中心として

著者: 木野義武

ページ範囲:P.664 - P.674

緒言
 指肢にみられる輪状の"くびれ"から遠位部の欠損にいたる一連の先天異常は,constriction ring,annular groove,annular defect,fetal amputation,intrauterine amputation,fetal amputation with constriction ringなどの名称で呼ばれてはいるが,種々の高位での種々の程度の絞扼輪を伴う末梢部形成不全奇形の総称である.Kohler(1962)はamputationという言葉はむしろ外力による機械的切断を思わしめるのでその名称は妥当ではなく"transverse defects"の名称がよいと述べている.
 本症の病因が内因性のものか,外因性のものかについては古来多くの議論がなされており,病因論の歴史的変遷はきわめて興味深いものがある.

先天股脱に対する減捻内反骨切り術,臼蓋形成術の治療成績

著者: 赤星義彦 ,   森英吾

ページ範囲:P.675 - P.692

いとぐち
 先天股脱の治療法は幾多の歴史的変遷を経て,解剖学的治癒を得るためには新生児期治療を行なうべきであるとの結論に集約され,その成績も1960年代に入つてからVon Rosen, Barlowらによつて立証された感がある.本邦でも新生児検診治療が行なわれてはいるが,現時点では社会医療機構における俗路と啓蒙普及が不十分なため依然として乳児期治療例がもつとも多く,2次的変形や整復障害を伴う遺残性亜脱臼は少なからずみられる.
 このような難治性先天股脱をいかに取扱うべきかは難しい課題であるが,従来報告されてきた減捻内反骨切り術,臼蓋形成術による補正手術の近隔成績を過信して,あまりにも適応を拡大して安易に手術的治療が行なわれている傾向も否定できない.

腰椎カリエスにおける所属リンパ系の動態—リンパ系造影法による吟味

著者: 宮下冨士弥 ,   河野通隆

ページ範囲:P.693 - P.701

はじめに
 炎症(ことに慢性炎症)や悪性腫瘍の外科にとつて,リンパ系の存在はきわめて関心の深いものである.すなわちリンパ系は,単なる異物に対してのbarrierとしての存在から,さらに抗原抗体反応ひいてはdisseminationなど提起される問題は山積みされているのであり,その全貌が明らかにされるまでにはなおいくたの歳月を必要とするのであろうと思われる.炎症には所属リンパ節の腫脹をともない,悪性腫瘍では転移しやすい.したがつて手術にあたつては廓清が必要であるといつた漠然とした臨床.上の解釈は乗り越えられるべきであつて,リンパ節の示すfine regulationを追求すべく,今回慢性炎症ことに特異性炎の一ジャンルとして腰椎カリエスをとりあげ,direct lymphographyの採用によりおもに生体におけるdynamic lymphatic flowの面からこれらの点を追求してみた.

検査法

系統的骨疾患の鑑別診断

著者: 真角昭吾

ページ範囲:P.702 - P.716

はじめに
 ひとくちに系統的骨疾患といつても先天性遺伝性のもの,代謝性骨疾患,内分泌障害による骨変化,腫瘍的性格を帯びたもの,臓器異常による二次的なものなど多様な病因に基づくsystemic,general,multipleの骨変化の総称であるから,鑑別診断は必らずしも容易ではなく,また比較的稀な疾患も数多く含まれているので診断に習熟する機会も少ないことと思う.ここでは日常遭遇することの多い骨疾患のX線所見を中心として診断の要領をまとめてみたい.特異な病像から臨床所見,X線所見のみで診断可能な症例もあるが,これらの所見がscreeningとしての意味しかなく,生化学,内分泌機能,遺伝性,組織検査など総合判断を必要とする症例も少なくない.的をしぼつた一定の診断手順をふみ,いろいろな検査結果を吟味して,鑑別の範囲を狭めていくことが大切である.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(6)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   金子仁

ページ範囲:P.717 - P.722

 A:患者は26歳の男子です.左大腿中央部に巨大腫瘤がみとめられます.昭和44年の初めごろ,左大腿部を打ち,その後だんだん腫れて来たということです.それで,ある開業医のところで肉離れといわれ,マッサージなどのような治療を1カ月半くらいやりましたが当然のことに,よくならないでだんだん大きくなつて来た,それで訪れて来たというわけです.
 それで他に検査所見としては,この段階では全然異常なかつたわけです(第1,2図).

臨床経験

硬膜内外に連続性に存在した脊髄ノイリノームの1例

著者: 龍順之助 ,   本部悠正 ,   小出建一 ,   中村彰男 ,   峰岸孝年

ページ範囲:P.723 - P.726

 脊髄腫瘍は今日では数々の報告がなされており,その臨床,診断,治療に関する知見はほとんど言いつくされた感があるが,個々の症例においてはなお興味ある所見を呈するものが少なくない.最近,腫瘍が硬膜の内外に連続性に存在し,かつ定型的なBrown-Sequard症候を呈した脊髄ノイリノームの1例を経験したので報告する.

脊髄に発生したMultiple meningiomaについて

著者: 藤原誠 ,   片岡治

ページ範囲:P.727 - P.731

 わが国の脊髄腫瘍の集計(有沢1)による)によると,meningiomaは真性脊髄腫瘍1090例のうち116例(10.6%)を占め,neurinomaについで多い腫瘍であるが,この集計の中にはmultiple meningiomaはみいだされず,その後の文献の中に松井ら2)の報告の頭蓋内および脊髄に発生した1例をみいだすのみである.われわれは脊髄に発生したmultiple meningiomaの1例を経験したが,わが国における類症の詳細な記載を見ないのでここに報告する.

習慣性顎関節脱臼の1治験例

著者: 西辻知生 ,   小田裕胤

ページ範囲:P.732 - P.734

 われわれは,習慣性顎関節脱臼の患者をまれな観血的治療により治癒せしめたので,多少の文献的考察を加え報告する.

稀有なる筋性斜頸の1症例

著者: 加川渉 ,   高岸直大 ,   山田元久 ,   本多澈 ,   佐田博巳 ,   渡辺甲作 ,   岡田徹也

ページ範囲:P.735 - P.738

 先天性の斜頸は大多数が筋性斜頸であり,胸鎖乳突筋の腫瘤について起こつた筋拘縮によることは周知の通りである.しかしこのたび私達は筋性斜頸でありながら,全く異なつた頸部の筋拘縮が原因と考えられる1症例に遭遇し,治療する機会を得たので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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