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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科6巻9号

1971年09月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ—Secondary Bone Tumors

47.Desmoid (invasive)/48.Villonodular synovitis (invasive)

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.741 - P.744

症例55:5歳女子.数日前母親が右臀部の膨隆に気付き来院した.全身的に著変なく,右中臀筋部に弾性硬,境界不明瞭な超鶏卵大の腫瘤を触知し軽度の圧痛を認めた.腫瘤はごくわずかの可動性を認めたに過ぎないが,皮膚との癒着はなかつた.X線検査で骨に異状なく,剔出術を行なう.小児手拳大の腫瘤が大中臀筋の間から大転子にかつて存在し,周囲組織と密に癒着していて,一部で腸骨骨膜とも接していた.しかし骨への浸潤はなかった.術後約1年を経た頃から局所再発がみられ,初回手術の1年9ヵ月後に再手術を施行した.しかし第2回手術後1年9ヵ月の現在(第1回手術後3年半),再度局所再発が疑われ,右腸骨への浸潤も増強している(徳島大 整形).

視座

身体障害者の声

著者: 佐藤孝三

ページ範囲:P.745 - P.745

 病院の前庭を車椅子に乗つて散歩している患者に出あつた.「そろそろ退院が近づいておたのしみだね」というと「それがそうでもないのです.一頃は早く退院したくて仕方がなかつたのですが,退院が近づいたら将来が不安になつて毎日悩んでいます」という.「君は自宅で家業を手伝うから喰べる心配はないといつていたじやないか」というと「自分はその点で恵まれていると思いますが,毎日毎日の不自由さを考えると精神的に参つてしまいそうで不安です」という.「それは障害者が誰でも持つている不安で,それに打ち克つために身体のみならず精神もきたえなければいけないと皆がいつているだろう.とにかく頑張つてみることだね」
 ここまでは平凡な障害者との会話である.だが,そのあとに患者がつけ加えた次の言葉には考えさせられるものがあつた.「自分は比較的恵まれた環境にありながらも,やはり他の障害者と同じように,次第に社会から疎外されて日蔭者になつてゆくでしよう.

対談

—飯野三郎先生にきく—人間の複雑さ―未知の広さを知ろう

著者: 飯野三郎 ,   井上駿一

ページ範囲:P.746 - P.756

 井上 このたびは医学書院で,東北大学を本年ご退官になられた,飯野先生にお話をうかがうという座談会を企画されまして,私が聞き役ということでご指名を受けました.私夢にも思わなかつたことなので大変名誉なことと考えましたが,何しろ飯野先生は整形外科医として40年,東北大学のプロフェッサーとしての期間だけでも20何年…….
 飯野 22年ぐらいでしよう.足かけ23年になりますか.

論述

膝関節半月損傷の診断法の吟味

著者: 今井望

ページ範囲:P.757 - P.770

はじめに
 膝痛を訴えて整形外科を訪れて来る患者は多く,この中には半月損傷が疑われる場合が少なくない.この中から見落すことなく,誤まることなく半月損傷を確実に発見することは必ずしも容易なことではない.
 私はかつて半月全摘出術後の半月再生の状態を関節鏡視により追究し,再生半月の機能的意義を否定した.その根拠については日整会誌44巻5号に詳述したのでこれを参照されたい.ただ私はこれをもつて半月切除術そのものの意義を否定するのでは決してない.半月切除術は半月損傷にともなう障害を除きうる唯一の手段ともいうべきものである.ただ,かりそめにも誤診の下に正常な半月を摘出する軽卒さは許されるべきでなく,また可能ならば極力切除範囲を部分的に止めるなどの繊細な配慮が払われて欲しい.そのためにはいつそう厳密な診断法が要求される.

不適切な治療による難治性先天股脱の検討—とくに乳児期の治療について

著者: 山田勝久 ,   小川英一 ,   今村清彦 ,   吉田元久 ,   内田雅夫

ページ範囲:P.771 - P.783

はじめに
 先天股脱の治療成績は,早期に発見され,早期に治療されるようになつてから著しく向上した.特に最近では新生児に対してのvon Rosen法,乳児に対してのリーメン・ビューゲル法が普及してきたため,先天股脱の治療体系が確立されたかの観すら感じられるようになつてきた,しかし,それでも治療成績不良例はあとを絶たず,Hilgenreiner Bösch,今田,著者らのごとく早期に治療されたために惹きおこされた種々な障害も報告されている.これらの報告の多くは乳児の解剖学的弱点や自然改善力を無視した不適切な治療に障害の因を求めている.一般に成績不良例は先天因子のみ強調されがちであり,不適切な治療が原因であることに気づかないことが多い.たしかにTeratologische Luxationを頂点とする先天性難治因子の多い難治な脱臼は存在するが,そのようなものは比較的稀であり,多くの先天股脱は症例ごとに適切かつ繊細な治療を行なえば少なくとも重篤な障害は避けられると思われる.一般に難治性先天股脱と称するものを十分検討してみると,先天因子よりも人為的因子にその原因が求められるものがはなはだ多いことに驚くとともに反省させられた.この人為的ともいえる因子としては,多少重複するが次のようなものがあげられる.

痙性まひの治療—痙縮の除去について

著者: 広島和夫 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.784 - P.791

はじめに
 脳および脊髄病変にもとづいて出現する,四肢・躯幹筋の痙縮は,単に機能障害をまねくばかりでなく,関節拘縮や変形の原因となり,また,リハビリテーションをすすめていくうえにも,大きな妨げとなる.このγ線維の過緊張を主因とする痙縮を除去する目的で種々の治療が行なわれてきたが,軽症例はともかく,強い痙縮を有する症例では,決して満足できる成果をあげていない.
 著者らは,痙性まひ患者に,硬膜内および硬膜外腔フェノール注入により,痙縮を軽減させ,重症例には,Bischofの脊髄切開術により痙縮を完全に消失させることができた症例を経験した.自験例にもとづいて従来の方法を検討するとともに,痙縮を効果的にコントロールする方法について述べる.

検査法

胸腰移行部椎間板造影法

著者: 河野通隆

ページ範囲:P.792 - P.799

はじめに
 1948年Lindblomによりはじめて臨床的に応用された椎間板造影法はわが国にも導入され,爾来幾多の曲折を経て椎間板基因性疾患を椎間板症と一括呼称せしめるまでに発展した.一方では椎間板造影法の進歩・発展にしたがい椎間板穿刺の罪悪も多く論じられているが,いまだなお椎間板症の病態の究明・治療法の選択に椎間板造影法の占めている位置は大きい.
 腰部椎間板症の発症部位頻度は下位腰椎間で多く,Love法・さらに進んで椎体固定術の処方は目常茶飯のごとくに行なわれている.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(7)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   古屋光太郎

ページ範囲:P.800 - P.806

症 例1**
 A:症例は45歳の女子です.左側のpoplitealの腫瘍です.主訴は膝関節の屈曲困難です.1年半くらい前から左側のpoplitealの腫瘍に気づいておりまして,半年くらい前から正坐が不可能になつております(第1図).
 それで1970年2月10日に某医でextirpationを受けようとしたのですが,arteria poplitealisに非常にくつついておりmalignant tumorの疑いで手術不可能だというので,大学に送つてこられました.その時probeも行なつていないようです.

臨床経験

大腿骨転子部骨折の治療について

著者: 上平用 ,   古瀬清夫

ページ範囲:P.807 - P.813

はじめに
 転子部骨折とは,大腿骨頸部関節嚢外部から,小転子の約5cm末梢部位までの骨折を意味している.しかも骨折部特に内側骨皮質部(cortical buttress)が粉砕され不安定となりやすいので,内反変形治癒の傾向が強いこと,大腿骨頸部内側骨折(以下内側骨折と略す)にくらべ高齢者に発生し,長期臥床をよぎなくされ合併症を併発,不幸な転帰をとりがちなことなど,世界的に老齢人口がますます増加することと相まつて,治療上問題の多い骨折の一つである.
 著者らは転子部骨折の治療成績を,おもにレ線学的に調査し,内固定法に関しいささかの知見を得たので報告する.

先天性環軸椎癒合症について—特にIrreguläre Segmentationについて

著者: 本田恵 ,   双木実 ,   土沢正雄 ,   半田詔一 ,   足沢国男

ページ範囲:P.814 - P.819

はじめに
 上位頸椎における奇形は多種多様であり,多くの人によつて報告されている.すなわちKlippel-Feil Syndrome,Os Odonoideum,Atlasassimilation,脊椎披裂1〜4)などがある.しかし,環椎と軸椎間の癒合,奇形に関しての報告は多くない.
 1930年,Cave5)は2個の骨標本を引用し,初めてその実体を確認し,環軸椎の癒合は,分節異常によるものであろうと報告した.また,Dwight, Elliot Smith6)らの文献を調査し,環軸椎癒合症の大要を分類した.その後,McRae7),Bohlig8),Homkomp9),Schmidt10)らの報告がある.最近,TorklusとGehle1)(1970)は本症を,Atanto-Axial Fusionと,Irreguläre Segmentationにわけて発表している.また,本邦では1971年,教室の土沢11)らが本症を初めて報告したが,更にわれわれは,本症と思われる5例を経験したので,土沢らの症例を含め全6例について,その成因および臨床像について文献的考察を加え報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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