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文献詳細

雑誌文献

臨床整形外科6巻9号

1971年09月発行

文献概要

視座

身体障害者の声

著者: 佐藤孝三1

所属機関: 1日本大学医学部整形外科学教室

ページ範囲:P.745 - P.745

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 病院の前庭を車椅子に乗つて散歩している患者に出あつた.「そろそろ退院が近づいておたのしみだね」というと「それがそうでもないのです.一頃は早く退院したくて仕方がなかつたのですが,退院が近づいたら将来が不安になつて毎日悩んでいます」という.「君は自宅で家業を手伝うから喰べる心配はないといつていたじやないか」というと「自分はその点で恵まれていると思いますが,毎日毎日の不自由さを考えると精神的に参つてしまいそうで不安です」という.「それは障害者が誰でも持つている不安で,それに打ち克つために身体のみならず精神もきたえなければいけないと皆がいつているだろう.とにかく頑張つてみることだね」
 ここまでは平凡な障害者との会話である.だが,そのあとに患者がつけ加えた次の言葉には考えさせられるものがあつた.「自分は比較的恵まれた環境にありながらも,やはり他の障害者と同じように,次第に社会から疎外されて日蔭者になつてゆくでしよう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1286

印刷版ISSN:0557-0433

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