icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科7巻1号

1972年01月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ—Secondary Bone Tumors

55.Fibrosarcoma (invasive)/56.Rhabdomyosarcoma (invasive)

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.1 - P.4

症例63:1歳10ヵ月,男子.生後10ヵ月頃から左前腕中央部に軽度の腫脹があり,その後急速に腫瘤は増大し,ソフトボール大となる.
昭和39年3月12日当科初診,3月27日に橈骨の中枢側2/3とともに腫瘍塊を切除する.組織検査では線維肉腫であった.同年7月左前腕部に再発をきたし,肺転移も発見され抗癌剤投与するも効なく,同年12月15日死亡す(大阪市大).

巻頭言

第45回日本整形外科学会総会の開催に当って

著者: 高瀬武平

ページ範囲:P.5 - P.6

 昨年4月第44回日本整形外科学会総会で会長の指命をうけて,次回第45回総会は金沢市で開催することが承認された.学術総会は然るべき専門家に任して行ない,会長が全国どの地から選ばれても,運営に支障がないようになるべしという,前会長藤本憲司教授の考えには,全面的に賛成であり,そのように努力すべきであるが,残念ながら現状は未だその情勢に至つていない.そこで敢えて会長の勤務地を提案した.整形外科の歴史ははなはだ古いが,全国に普及したのは漸く戦後数年を経てからであり,今日まで地方都市でも開催された経緯を振り返つてみれば,地方における啓蒙の役割という一面もあつたのではなかろうかと感じている次第である。
 飜つて,わが整形外科学会も,近年の学園紛争に引き続いた各医学会の動揺を免がれることはできなく,一昨々年来,専門医制度に端を発して,学会のあり方,学術総会の運営方法,評議員選出方法などに関して論議が集中せられたが,会員の熱意と良識とによって,日本整形外科学会定款と評議員選出施行細則ならびに内規が決定せられ,昨年2月第1回の選挙による評議員が決定された.その結果昨年4月からは全会員承認による定款ならびに細則にしたがつて会務を運営してゆけることになつたことは誠に御同慶の至りであり,会長としてははなはだ幸いであつた.学会は今後すべてこのルールにしたがつて運営されることとなり,私も忠実に定款を守つて任期を全うしたいと念願している.細部にわたつていくつかの間題に出会うこともあろうが,これらはその都度話合いによつて解決されねばならない.

視座

学問の進歩に思う

著者: 片山良亮

ページ範囲:P.7 - P.7

 いい古された言葉ではあるが,学問の進歩というものは遅々としていながら,確実な足どりで進むものである.本年9月11,12日に東日本臨床整形外科学会が開催されたときに腰部椎間板ヘルニアの診断と治療および頸腕症候群が主題として取りあげられたが,それを聴いていて10年前と同じことを論じているような気がして,とり立てていうほどの進歩をしているとは思えなかった.しかし詳細に聴いていると,論ずるところが微に入り細にわたり,少しずつ進歩してきていることがうかがわれた.そこで私は,これが学問の進歩というものであろうと気付いた次第である.
 このような古い研究課題はすでに先人が知恵をしぼり切つたものであるから,そう,急に大きな進歩や発見のないのが当然である.しかし古い課題も反復して研究しているうちに新しい進歩があるはずである.それにしても旧態依然とした診断法や治療法から早く抜け出して,最近は新しい検査法や療法がどんどん発達しているのであるから,これらの上手な応用で画期的な進歩をみたいものである.

座談会

骨折の非観血的治療

著者: 森崎直木 ,   泉田重雄 ,   平川寛 ,   鈴木勝己

ページ範囲:P.8 - P.22

 森崎 どうもお忙しいところを,ことに平川先生はずい分遠方からわざわざおいでいただきまして木当に申しわけありません。今度の東日本臨床整形外科学会でちようど骨折の非観血的療法というのを主題の1つに出しましたが,今日はむずかしい学問的なことよりむしろ実地的なことで,話合つていただいたらというつもりなんです.

論述

足蹠と重心位置—とくに小児を中心に

著者: 月村泰治 ,   川村碩彬 ,   平沢弥一郎

ページ範囲:P.23 - P.34

 ひとが地球の重力の場で起立し,歩行し,その安定性を保持する場合,その保持にあずかる因子は,筋の自己受容調節,視覚からのfeed-back調節,および平衡調節などのいくつかの因子が考えられている.これらの諸調節は極めて巧妙に行なわれているために,正常人の場合,その制禦機構を意識しないし,起立,歩行などは極めて簡単な運動としか感じていない.しかし,各調節のどこかに破綻があつても,異常な状態を示し,不安定起立,起立不能,跛行,歩行不能などの状態を呈するようになる.また逆に表現型としての症状,状態より調節の異常を知ることは理論的には可能であり,ある程度の解明はなされているものもある.しかし客観的,定量的に把握することは,いままでに充分行なわれてはいないようである.
 剛体の場合,物体の安定は重心位置の安定化を計ることにより得られるが,ひとの場合もひとを一つの質点系とみなすとき,これの重心の測定が可能であれば,その安定性を定量化することも,ある程度可能であろう.

学童期先天性股関節脱臼治療の問題点

著者: 坂部泰彦 ,   藤井英夫

ページ範囲:P.35 - P.44

 乳幼児先天股脱に関しては早期治療法が確立され,その優れた成績は多数報告されている.一方成人の股関節症に対しても古くより種々の治療法が考察され,最近ではtotal hip prostesisで代表されるごとく,優れた素材の開発とともに今後の発達が期待されるところである.
 この間にあつて年長児の先天股脱はいわば治療上の谷間ともいうべき現状で幾多の難しい問題がある.すなわち年長児先天股脱は乳幼児期のごとく,臼蓋にせよ骨頭にせよ自然矯正の期待が薄く,またこれが二次性OAに直結した年代であるという前提条件がある.そのため一方では"先天股脱"としての治療が期待されると同時に単に"脱臼"という問題では治療し難い要素を含み,画一的な治療法が確立されない原因がある.かつ患者の将来を考える時,治療に多少の時間を要しても愁訴のない確実な治療を要請される年代でもあり,このような幾多の制約を受け問題を複雑ならしめている.乳幼児,学童,成人に大別して先天股脱の特性を簡単に分析してみると第1表のごとく表現されるのではなかろうか.

Burgessの下腿切断法の利点

著者: 加茂洋志 ,   原武郎 ,   里村知宣 ,   高浜晶彦

ページ範囲:P.45 - P.51

はじめに
 1964年,Burgessは,とくに末梢循環障害のための術直後義肢装着を行なう下腿切断法を発表したが(第1図),我々は,これを広く外傷その他の場合の下腿切断法にも応用しているので,ここにご紹介する.
 この術式の特徴は,後部の長い筋肉つき皮弁により,断端部の十分なる末梢循環を確保し,義肢に対しては,total contact socketの支持面を広くして円柱状の断端を作ることにある.

検査法

99mTcO4-による変形性股関節症の関節排導

著者: 田中清介 ,   山本潔 ,   長井淳 ,   伊藤鉄夫 ,   鳥塚莞爾 ,   浜木研

ページ範囲:P.53 - P.57

緒言
 変形性股関節症の病変の程度を把握し,また手術による症状改善の程度を知るために,成績判定基準の設定が必要とされ,しかもでき上がつた判定基準が全国統一のものとして使用されるべく,日本整形外科学会では委員会を設けて基準作成にあたらせた.その成果は第44回日本整形外科学会総会において第三次案として報告された18)21).疼痛,可動域,歩行能力およびADLがそれぞれ程度に応じて段階づけられ,その総和でもつて臨床成績を表現し,またレ線成績はレ線変化に応じて段階づけられている.しかし臨床成績とレ線成績との相関性は高いとはいえ,必ずしも対応しないことは日常よく経験するところである.変形性股関節症の病状を臨床成績とレ線成績のみで判定するのではなく,炎症の際の白血球数,血沈,CRP等の検査のように,何らかの補助検査によつて数量的に表現できれば,病状をより一層把握することができるのではなかろうか.
 種々の関節疾患の診断と予後判定に関節腔の排導動態の解析が少なからず役立つことは,新野ら19),松永ら13)のウログラフィンによる研究あるいはSharp17),中村ら15)16)のPSPによる研究で報告されている.また排導動態の追求に放射性同位元素(RI)を使うこころみはHollanderら8),Harris7),Davisonら3),松永ら13),古本ら5)の多くの研究者によつてなされている.しかし従来行なわれてきた研究はいずれもapproachの簡単な膝関節を対象としたものである.今回われわれは99mTcO4-を股関節腔に注入し,体外測定法により変形性股関節症における関節腔の排導動態をしらべ,木疾患の病状との相関性を追求した.

境界領域

完全横断脊髄修復の試み

著者: 相原坦道 ,   樋口紘 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.58 - P.67

緒言
 脊椎動物の脊髄切断実験は,多数の研究者によつて,古くから行なわれてきたが,脊椎動物のうちでも魚類や両棲類は,脊髄が完全に切断されても神経線維の再生がおこり,約3週間で切断部は完全に再建されることが観察されている20)
 しかし,動物が高等になるにつれて,とくに哺乳動物では,脊髄切断間隙に結合組織細胞や神経膠細胞による瘢痕組織が侵入増殖するために,損傷脊髄の修復はほとんど不可能であるというのが従来の定説であつた.

臨床経験

多発性骨変化を生じたGaucher病の1例

著者: 永楽謙五 ,   小泉正明 ,   吉田元久

ページ範囲:P.69 - P.74

緒言
 Gaucher病は1882年Gaucherによって原発性脾上皮腫lepithlioma delarateとして発表された.本邦においても内科,小児科領域においてはかなりの症例が報告されているが,整形外科領域においては報告は少なく,井上1),日岩2),望月3),中本4)等の報告をみるのみである.
 われわれは右膝関節痛を主訴として来院し,経過観察中に左上腕骨,右前腕骨等の病的骨折を起こした症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告したい.

膝関節内に発生せる血管腫の4症例について

著者: 平野彰三 ,   村田忠雄 ,   松井宣夫 ,   高田典彦

ページ範囲:P.75 - P.79

 膝関節滑液膜より発生する血管腫は,比較的稀であるが,我々は今回4症例を経験したので,いささかの考察を加えて報告する.

筋組織病理図譜・1

正常成人の筋組織

著者: 桜井実 ,   大竹喜玄

ページ範囲:P.52 - P.52

 通常の病理標本を作るような10%フォルマリン固定,パラフィン切片では収縮性蛋白である筋線維はその生体内の形と多少異なつた形態を示す.切截の方向は横断の方が診断価値があるが,第1図のように比較的好条件で切られたものでも線維内が密なものやmyofibril間に間隙のできているものが見られ,線維同士接近している所やその間に大きな裂隙ができてendomysiumがばらばらになることもある.線維がばらばらになる時はそれぞれが円形を示す.周囲には扁平な筋鞘核が10μの切片の場合数コ附着する.直径は40〜80μ.
 線維の方向に沿つて縦断された場合は第2図のごとく筋鞘核が細長く線維間に並ぶ.H-Eでコンデンサーを絞つて検鏡すると横紋が見える.直径の計測やそのばらつき具合,細胞浸潤などの観察には縦断は好ましくない.

整骨放談

小さくまとまり過ぎるな

著者: 天児民和

ページ範囲:P.68 - P.68

 私に「整骨放談」を書け,といつてすすめたのは岩原さんである.大体「整骨放談」なんていうテーマを考えたのも彼である.そこで岩原さんはどんなことを書いているのかと思つて調べてみた.そうすると「いつまでも小物ではない」というテーマで,整形外科学会が今日のように大きな学会に成長したことを述べ,ともに現在でもなお十分な大人扱いをせられていない面があると書いておる.
 われわれの学会は既に大きな学会になつたが,幸いに会員が非常に仲が良くて,良くまとまつた学会である.それだけにこの学会の中に閉じこもつて外に向かつての発言が少ないのではあるまいか.先日も外科,泌尿器科のご専門の方々と話をしていたら,「整形外科の方には全国的に共通な性格がある.それは自分の専門を非常に大切にする.それは良いことであるが,自分達の専門の中で"こんなことをしている"ということを外部に知つてもらおうとする努力がない」と忠告を受けた.確かにそんな面があるかな,と私も反省をする.そんなことを考えながら今年の癌治療学会に出席した.そこには3日間に多数の演題が集まつておつたが,整形外科の演題はたつた2つであつた.過去数年来,癌治療学会においても四肢腫瘍の演題は多い時には10数題に達しておつたが,急に減つてしまつたのは私にとつても大きなショックである.骨腫瘍はわれわれ専門の領域では,かなりつつ込んだ研究が行なわれ,出るべきものはも早出てしまつた,とも考えられるが,しかし未解決の問題がまだまだ山積している.大学の紛争その他も影響していると思うものの,整形外科学会にはかなりの演題が集まるのに,腫瘍という問題はわれわれだけでなくて同じように各種の腫瘍を研究している人達の前で,所信を述べ,批判を求めるのが,学問の壁につき当つた場合これを突破するのに一番良い方法ではないかと思う.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら