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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科7巻10号

1972年10月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 4

著者: 金子仁

ページ範囲:P.776 - P.779

4)脂肪腫
 脂肪腫(lipoma)は線維腫と共に,最も多く経験される軟部腫瘍である.
 良性を脂肪腫,悪性を脂肪肉腫と呼び,共に脂肪細胞の腫瘍化である.時に多発する.

視座

思い出すままに

著者: 天児民和

ページ範囲:P.781 - P.781

 整形外科学も細かく専門化してしまつた.40数年にわたつてこの学会に関係してきた私には,感慨深いものがあります.それだけに整形外科医が,1人で現在の整形外科学の全領域を消化してしまうことは,困難というよりも不可能になって来ました.昔は疾患の種類も少なかつたし,研究の領域も狭かつたために,学会でもどの演題に対しても発言しようと思えばできる状態でした.今日では,自分の専門領域から少しでもはずれると,討論さえも困難になつてきました.そのことはわれわれもよく承知していなければなりません.とくに義肢・補助器に関しては,最近biomechanicという新しい領域が開拓せられ,理工学者と医学者の接触がそこで起こつてきました.

論述

頸椎後縦靱帯骨化症手術症例の検討

著者: 圓尾宗司 ,   梁復興 ,   片岡治

ページ範囲:P.782 - P.793

はじめに
 頸椎後縦靱帯骨化症は,1960年月本が報告して以来,その病名,病因,発生率,レ線変化,治療法などについて数多くの報告がされて来たが,単一の手術法による手術症例の予後調査についての報告は少ない.ここに過去,4年間に施行した本症の10手術症例の予後調査の結果を詳述し,症例数は少ないが,臨床症状レ線所見と術後成績について検討を加えてみたい.

踝部骨折における足関節造影

著者: 斉藤進 ,   桜田允也

ページ範囲:P.794 - P.802

はじめに
 近年,交通事故,労働災害,スポーツ外傷の増加につれ,日常,踝部骨折に遭遇する機会は少なくない.踝部は荷重関節である足関節の構成にあずかるゆえ,わずかの解剖学的破綻も長く機能障害を残しやすく,その治療には適切な配慮が必要とされる.
 踝部骨折においては関節面の正確な適合をはかるとともに靱帯損傷の修復が必要で,解剖学的整復を行なうためにも,治療前の適確な診断と治療力針が必要である.この点から著者は踝部骨折の正確な病態を知るべく足関節造影を行なつているが,過去4年間に行なつた足関節造影からいささかの知見を得たのでここに報告する.

シンポジウム 膝の人工関節

人工膝関節に対する期待と問題点

著者: 河野左宙

ページ範囲:P.803 - P.807

 本稿で私は硬直膝関節に対する従来の各種中間挿入膜使用による膝関節形成術の成績を検討し,これらの方法で成しとげうる成果と,その経時的推移について私の経験の一端をのべてみたい.そしてそこにみられる問題点,とりわけ手術成果の確実性と持続性についての人工関節法との比較と期待について検討してみたい.そのほか人工関節置換法がどの点で従来の手術法より優位に立ちうるものか,および考えられる期待とその反面などについて触れてみたい.

骨腫瘍に対する人工膝関節の経験と無菌手術室について

著者: 長井淳 ,   山室隆夫 ,   伊藤鉄夫

ページ範囲:P.808 - P.816

 人工股関節手術が広く行われ,その勝れた結果が認められるようになるとともに,同じく体重負荷関節である膝についても,人工関節置換の試みがなされるようになつた.
 しかし,膝は機能面から見た構造の分析がまだ十分でなく,最大屈曲位より伸展していく時のGliding,Rocking,Rotationについての生理学的意義も十分理解されたとは言えない.また,回転の中心が移動する事に意義を見出してpolycentricな人工関節を設計する人や,これを単純化して蝶番型関節にする人などがあり,多くの人工膝関節が併用して用いられている状態である.更に関節自身が筋肉におおわれていないため,皮膚の縫合不全がおこると容易に人工関節に感染が波及する.一旦感染がおこると,その処置が非常に困難であること等が人工膝関節を一層困難なものにしている.

膝人工関節の経験

著者: 片山良亮

ページ範囲:P.817 - P.823

 膝人工関節の歴史は古い.1924年オランダのBoeremaが犬について動物実験をおこなつたのが最初で,一応の成功を収めている.その後,膝関節に関する文献には見るべきものはなかつたが,その間1934年にはMoore, A. T.とBohlman, H. T.は股関節の人工骨頭を,1938年にはSmith-PetersenがVitalliumカップを,また同年Wiles, Ph.は股関節の人工関節を考案して股関節のmould arthroplastyは著しい進歩を遂げている.
 しかし1953年になつてスェーデンのWalldius, B. Schiers, L. G. 橋倉氏らによつて膝関節の人工関節がようやく臨床応用をみるにいたる.また1954年にはMoeys, E. J.も動物実験をおこなつている.

Shiers型人工膝関節の経験

著者: 鳥巣岳彦 ,   里村知宣

ページ範囲:P.824 - P.829

はじめに
 膝関節の高度の可動障害に対して,古くから用いられた術式は関節の固定と関節形成術であつた.特に膝関節形成術に関しては,九大整形外科は過去においては伝統的な地位を占めていた.即ち創設者住田教授がPayrの術式をさらに改善し,すばらしい成績を挙げたし,神中教授は河野教授と組んでJK膜を創案し,幾多の優れた業績を発表している.また天児教授もその伝統を受け,神中,住田両術式を巧みに利用して,良い成績を発表している.しかしこれらの対象になつた患者は抗生物質の未開発の時代に多発した淋病性関節炎による関節強直,また急性化膿性関節炎による強直,その他であつて,それらがこの手術の最も効果を発揮し得るものであつた.
 このような手術には次の条件が必要である.まず膝関節を動かす筋肉,特に四頭筋に瘢痕がなく,大腿骨との問の癒着がないことが必要である.第2に関節面の破壊が高度のものは,この術式は用いられない.骨性強直は必ずしも悪条件ではなく,筋肉の癒着がない場合には骨性強直でも好成績を収めている.

Hingeを使わない人工膝関節置換術

著者: 山本純己 ,   児玉俊夫

ページ範囲:P.830 - P.837

はじめに
 膝関節は人体でもつとも大きな関節である.それと同時に膝関節は人間の日常生活にとつてもつとも大切な関節であるということもできよう.
 膝関節をおかす疾患は多い.そのうちでも慢性関節リウマチ患者の膝は私たちを悩ます問題点が多い.進行した関節リウマチ患者では,関節面は破壊,変形をおこし,その結果運動制限と疼痛が生じてくる.このように破壊された関節を再建しようとする関節形成術は少なくとも100年前から外科医にとつて一つの大きな課題となり幾多の試みがなされてきた.

潤滑技術よりみた関節

著者: 笹田直

ページ範囲:P.838 - P.844

はじめに
 関節はいうまでもなく生体骨格の二部分を円滑に摩擦運動させる継手である.一方機械の軸受は摩擦運動する機械の二固体部分を結合する継手である.両者外観上異なつてはいるが,その幾何学的構造のみに着目して関節を一種の軸受と見なすことができる.それならば軸受の分野で知られた潤滑技術工学的取扱いが生体関節に適用することが可能であるか,この問題をここに論じたいと思うのである.

検査法

自律神経機能検査法

著者: 筒井末春

ページ範囲:P.845 - P.852

はじめに
 自律神経機能検査法は従来より各種考案されているが,今日でも単一な検査法のみで複雑な個体の自律神経機能を正確に把握することは困難で,いくつかの検査法を組合わせて臨床的に自律神経緊張状態を把握する方向にある.
 今回は従来より行なわれている各種自律神経機能検査法を一通り紹介し,そのうちで近年比較的普及しつつある興味ある二,三の検査につき,私どもの研究成績をおりまぜながら具体的な実施方法を解説してみることにする.

臨床経験

経腹膜的前方直達手術により完治せしめえた直腸に難治性瘻孔を有する4歳児仙椎カリエスの1例

著者: 堀井文千代 ,   大塚嘉則 ,   井上駿一

ページ範囲:P.854 - P.860

 昭和29年より現在までの教室における脊椎カリエス入院患者数は35名であり,内21名が手術施行例である.カリエス患者の全入院患者に対する比率は昭和30年以降減少をしめし平均0.72%であるが,最近やや増加の傾向がみられる(第1表).また入院患者の年齢別分布は40歳代にピークが存在している(第2表).罹患部位では腰椎がもつとも多く,次いで胸椎,頸椎,胸腰椎,腰仙椎の順であり,仙椎はもつとも少ない(第3表).教室で施行した手術を術式別にみると,21例中胸椎カリエスにて施行した後方固定術1例を除き他の20例はすべて病巣直達手術であり,その内の65%の13例に骨移植術が行われており,昭和37年以降は全例に骨移植術が行われている(第4表).

2ヵ所にわたる腎癌骨転移巣に観血的治療を行なつた1例

著者: 田熊清彦 ,   三上崇 ,   小笠原兵衛 ,   山路兼生 ,   所忠 ,   富田真寿生 ,   船橋建司 ,   鈴木庸之

ページ範囲:P.861 - P.865

はじめに
 骨の悪性腫瘍の中で,癌の骨転移はかなり多いものである1).従来ともすれば癌の骨転移をもつて末期的徴候とされ,もはや積極的な治療を行なうに値しないものとしてあきらめられる傾向があつた.しかし近年,放射線治療,薬物療法あるいは内分泌療法の発展とともに,骨転移巣に観血的治療を行なうことによりかなりの効果が期待でき,このような積極的な治療法がBremner & Jelliffe2),赤星3),前山4)らにより提唱されている.
 今回私達は腎癌が上腕骨および大腿骨へ転移した症例に,その2ヵ所にわたる転移巣と原発巣に対し手術を行ない発症後5年,術後2年7ヵ月を経過し,苦痛もなく生存している症例を経験したので報告する.

筋組織病理図譜・10

脊髄損傷による麻痺筋

著者: 桜井実 ,   黒沢大陸 ,   柴田尚一

ページ範囲:P.853 - P.853

 脊髄の横断により支配下の随意運動は不可能となるが,前角細胞の2次ニューロンが生きていればしばらく経つてからその反射弓が興奮して痙性麻痺の状態に移行する.しかし前角細胞も障害を受ければその支配領域は弛緩性麻痺のままである.従つて症例ごとにその部位と受傷後の時間によつて筋の病態は極めて複雑である.第1図に示したコハク酸脱水素酵素染色でみられるtarget fiberはいわゆる末梢神経切断でみられるもので(6月号,458頁).この症例は20歳男子の大腿中広筋,胸椎12の脱臼の受傷後約4ヵ月目の標本である.弛緩性麻痺はこの後も継続すると判断される.第2図は29歳の前経骨筋,胸椎12の骨折後8ヵ月目で弛緩性麻痺.大小不同の萎縮は部分的にdystrophyに類似し,さらに第3図に示したコハク酸脱水素酵素染色標本で,筋線維内の破壊,ミトコンドリアの偏在などdystrophyや多発性筋炎でみられる所見と非常に似ている.筋原性,神経原性の分類による萎縮の様相に疑問を提示する症例である.
 第4図は筋鞘核の円形化,内部への移動が特徴的である.これは30歳男子,頸椎6〜7の脱臼により全四肢の痙性麻痺と疼痛のため歩行不能となつておよそ2年を経た症例.大殿筋の一部であるが,筋活動が円滑でない状態の標本である.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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