icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科7巻11号

1972年11月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 5—脂肪肉腫

著者: 金子仁

ページ範囲:P.868 - P.871

 脂肪肉腫は軟部組織の中ではかなり数多く認められる腫瘍で,割合に中年層に多い.もちろん転移するが,一般に多くはない.
 多中心性発育を示すことも多い.この様な場合はLiposarcomatosisと呼ぶ.肉眼的に帯黄灰白色で著明な粘液変性を示すことがある.

視座

骨肉腫の治療

著者: 伊丹康人

ページ範囲:P.873 - P.873

 骨原発性悪性腫瘍,とくに骨肉腫の根治的治療法としては,早期切断が唯一無二のものとして,常用されてきたことは今さら申すまでもないことである.また,いかに早期に切断しても,すべてが肺転移で死亡し,原発巣の再発はほとんどないという事実を見せつけられるにつれ,その原因を切断時の血行転移にあるとして,double tourniquetによる術式が推奨されたのも遠い昔ではない.
 しかし,早期切断における5年生存率はLichtensteinの5%からPlatt24%のごとく,報告者によりかなりの幅があるとはいえ,Locksinの集計のごとく,過去30年間の生存率は全く改善されていない.報告者による5年生存率の幅の問題は,誌面の関係からさておくとしても,従来の早期切断という考え方では,生存率の改善は到底得られるものではない.

論述

慢性関節リウマチにおける酸性ムコ多糖分布について

著者: 新名正由 ,   生越英二

ページ範囲:P.874 - P.886

はじめに
 慢性関節リウマチ(以下RAと略す)は,一つの独立疾患であることに異論はないが,それはあくまで臨床概念であり,病因的にも病態生理学的にもいまだ決定的な因子は明らかにされていない.1950年,Klempererは膠原病を"結合織の汎発性の変性,特にその細胞外成分の異常を特徴とする急性および慢性の疾患"と定義し,RAもその一つに数えているが,免疫学の進歩とともに,RAに関する病因的研究も免疫学的側面よりの検討が主流となり,現在自己免疫疾患の一つに数えられている.しかしながら病理学的に明らかにされている滑膜組織における細胞および血管増殖,フィブリノイド変性,肉芽組織の形成などの変化と免疫反応がどのように対応するのか,免疫反応が単に疾患の慢性化に関与しているだけにすぎないのか,全く未知といつても過言ではない.

ペルテス病の治療—Abduction Brace(Bobechko)の使用

著者: 武部恭一 ,   藤井英夫

ページ範囲:P.887 - P.895

はじめに
 ペルテス病治療の問題点は治療期間の短縮と骨頭変形防止の2点である.諸家により治療期間の短縮を主目的に種々の観血的治療が行われたが,著明な治療期間の短縮はみられず,最近では骨頭変形を最少限度に押さえ,二次的股関節症発生の予防をはかることが最大の問題となつている.
 今迄ペルテス病の保存的治療として免荷療法が広く行なわれてきたが,最近Petrie11),Salter13)14)21)などは早期より荷重を許可する外転歩行療法を発表し注目を浴びている.

閉経後骨粗鬆症—その原因についてのわれわれの考察

著者: ,   宮崎淳弘

ページ範囲:P.896 - P.903

緒言
 この論文は閉経後骨粗鬆症の病態生理に対する過去10年間におけるわれわれの考え方の推移を総括したものである.われわれの考えはきわめて限定された観点に立つている.すなわち,この疾患の特徴である骨消耗の直接的原因が解剖学的にどこに局在しているかに的をしぼつている.
 この10年間の科学の進歩は,このことについての物の考え方を大いに変えさせたが,ある意味では,この問題についての研究ならびに他の骨骼疾患に対する研究方法についても深い影響をおよぼし得るものであると考える.

植え込み電極法の整形外科的応用—とくに麻痺性尖足に対する臨床応用と電気生理学的観察

著者: 山根友二郎

ページ範囲:P.904 - P.912

はじめに
 脳卒中,脳外傷など高位中枢神経障害に基因する片麻痺患者は下肢の麻痺性痙性尖足を起す.患者はこのため歩行に困難を感じるが,従来,これに対し種々の保存的,外科的治療がなされてきた.たとえば,患側のマッサージ,Braceの使用,痙性に対しPhenol Block,Neurectomy,Myotomy,Tenotomy,麻痺筋に対しTendon Transferあるいは足関節のArthrodesisなどである.これらは,それぞれ一長一短があるが,1960年Liberson5)らは,次のような奇抜なアイデアによる治療法(Functional Therapy)を考案した.つまり,彼らはM. tib. ant. のMotor Pointを表面電極を用いて歩行のSwing Phaseに電気刺激することにより,尖足を矯正し歩行を容易ならしめようと試みた.1968年11月以来,米国のRancho Los Amigos Hospitalにおいて植え込み可能な電気刺激装置を考案し,片麻痺患者の歩行の改善のために深腓骨神経刺激に応用されてきた(以後これをImplantと略す).これについての基礎的問題は,1971年玉置9)が報告した.

骨損傷の循環血液におよぼす影響について

著者: 高木直 ,   桜田允也

ページ範囲:P.913 - P.917

はじめに
 最近,交通事故や,産業に伴う事故の発生頻度は高く,惹起される骨損傷も種々様々であり,その損傷程度と全身状態の正確な把握は,しばしば困難である.第2次大戦後,ショックに対する研究が長足の進歩をとげた結果,出血は全身状態悪化の重要因子であることが結論づけられた.そして,ショックの概念が,主要臓器を含む全末梢組織の血液灌流不全であることが明らかである以上,血液量不足を知るのに,中心静脈圧や右心房圧の測定は有効であるが,循環血液量および,心拍出量の測定も,全身状態に対して,正確な指標となり得る.今回,われわれは,循環血液量の経時的変動を知り,局所および全身状態の動向を知る一助とした.

境界領域

サリドマイド胎芽病と他疾患との鑑別診断について

著者: 木田盈四郎

ページ範囲:P.919 - P.929

緒言
 サリドマイド(N-フタリル・グルタミン酸イミド)は,わが国では1956年頃から試用されたが,西ドイツでグルネンタール社が先に開発していたので,その特許権を尊重し,同社との技術提携で生産された.グ社では「コンテルガン」を1957年10月1日に発売し,わが国では大日本製薬が「イソミン」を1958年1月20日から製造販売した.この薬は,不眠症,手術前および緊張不安状態の鎮静に効能があり,妊婦,小児にも安全無害であると宣伝された.次いで1960年8月同剤を含む,胃酸過多,胃炎,消化性潰瘍治療剤プロバンMがやはり同社から市販された.サリドマイドを含有する薬剤は,約15種製造許可が出されて,その内9種が市販されたといわれている.
 1961年11月27日,グ社は西ドイツ国内の薬剤を回収し,わが国では,1962年5月17日「イソミン」「プロバンM」の出荷を一時中止したが,その種の薬剤の回収は同年9月13日からであつた.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(13)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   立石昭夫

ページ範囲:P.931 - P.935

7歳男子の右下腿腫瘤
 A 今日は軟部腫瘍の症例です.7歳の男の子です.主訴は右下腿の腫瘤です.45年3月9日学校で,nausea vomitingがあつた.39℃の発熱でそのまま学校から救急病院に入院しております.救急病院では白血球を数えて16,800ということで,chemotherapyをやつております.これは咽頭炎だつたようです.
 2日後の11日に右の下腿の腫瘤に気付いております.そうしてさらに2日後にbiopsyをやつて,その結果malignancyの疑が強いということで,当科の外来へ紹介され,19日に外来受診,即日入院しております.

臨床経験

多発性骨髄脂肪腫症について

著者: 伊藤恵康 ,   小山明 ,   宮本建 ,   淵上寛治 ,   青木善昭

ページ範囲:P.936 - P.941

はじめに
 骨原発の脂肪腫は従来より症例が少ないが骨に多発する脂肪腫は更に稀である.本邦においては,文献上,九州大学増田23)の例と,骨腫瘍検討会において供覧された例の計2例に加え,東北大学瀬野24)による,昭和45年8月の骨腫瘍研究会における2例の発表がある.
 海外では,筆者の渉猟し得た範囲では報告例は見られない.

Marinesco-Sjögren症候群について—5例の症例報告

著者: 清水万喜生 ,   高松鶴吉 ,   佐竹孝之 ,   安藤忠

ページ範囲:P.942 - P.948

 Marinesco-Sjögren症候群とは小脳性失調症,先天性白内障,精神身体の発達遅滞を主徴とする小児の遺伝性疾患であり,1931年Marinesco,DraganescoおよびVasiliuが,4例を報告したのが最初である.この報告はその後ほとんどかえりみられず,1950年にSjögrenがスエーデンにおいて14例の同様な症状を有する症例を報告するにいたつて,始めて諸家の注目が集まるようになつた.その後Richard,Alter,Mullerなどにより相ついで報告され,今日まで,その報告例は数十例におよんでおり,本邦でも藤井らを始めとし,主に神経科領域で十数例の報告がみられる.
 近年,肢体不自由児施設では,小児の神経系疾患を取りあつかう機会が増え,整形外科医の立場からもこれらの疾患群を治療の対象とするようになつてきているが,大ざつぱに脳性麻痺と片づけられやすい小児の中枢神経系異常群の中に,本疾患のごとく厳密に脳性麻痺と区別すべき疾患群が存在しており.これらに対しては小児科学との境界領域疾患として正しい知識とそれにもとつく診断が要求されよう.

軽微な機転により四肢麻痺を来たした頸椎後縦靱帯骨化症の症例

著者: 竹田毅 ,   有馬亨

ページ範囲:P.949 - P.953

はじめに
 頸椎の後縦靱帯に石灰化あるいは骨化を認める疾患については,1960年,月本13)が「脊髄圧迫症候を呈した頸椎椎管内仮骨の剖検例」と題して,第1例を報告し,寺山14,15)が,この疾患と既知の脊椎の変性疾患,即ち,強直性脊椎関節炎,いわゆるForestier病,変形性脊椎症などとの相違点を指摘すると共に「頸椎後縦靱帯骨化症」という病名を提唱した.その後本症については諸家により種々の角度から研究がなされ.報告例も多数にのぼり既に稀な疾患ではなくなつている.しかし本症の患者が外傷を誘因として.突然四肢麻痺を来たした報告例は,比較的少ない.著者は最近,本症の老人が軽微な外傷を契機に,突然四肢麻痺を来たした症例を経験したので報告する.

筋組織病理図譜・11

Myotonic dystrophy

著者: 桜井実 ,   黒沢大陸

ページ範囲:P.918 - P.918

 筋の機能は収縮能力だけではなく随意的に弛緩させることができなければ,運動を司るのに十分とはいえない.握つた拳を円滑に開けないのを拮抗筋である伸筋群の筋力低下のためと判断してmyotonicな状態を見落す恐れがある.第1図は24歳の男子で家族的に発症し,握手したきり仲々手放せない程症状が著明であつた症例で,標本は前腕の屈筋群の一部である.軽度の直径の大小不同,筋鞘核の中心へ移動する傾向が見られる.このようにH-Eでは余り変化が目立たないが,第2図のコハク酸脱水素酵素(SDH)染色で筋線維内のミトコンドリアの偏在が認められる.次は48歳の女性で起立困難など全身筋力低下の愁訴が主体であつたが手指の運動の緩慢なことも気付かれていた.前脛骨筋の生検により第3図に示すようなはなはだしい核の増加,中心核,所によるリンパ球浸潤,貪食細胞が発見された.血清CPKの軽度上昇の他,EMG上針の刺入時の持続的電位発射,白内障などの所見があり,病歴を調べると以前はもつと筋の緊張が強く,家族的に類似の症状を示す者がいることから,myotonic dystophyと診断され,しかもその進行した状態と考えられる.第4図はSDHで,著しい筋線維内の崩壊を表現している.このような内部構造の変化により筋の収縮のみでなく弛緩も障害されるものと想像される.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら