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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科7巻12号

1972年12月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 6—横紋筋肉腫 1

著者: 金子仁

ページ範囲:P.956 - P.959

 横紋筋肉腫は軟部腫瘍の中で決して少いものではない.横紋筋芽細胞より発生する悪性腫瘍である.通常,良性腫瘍は無い.あっても腫瘍というよりは組織奇形というべきものである.
 横紋筋肉腫の組織に関しては,元日本医大教授木村哲二博士が最も詳細に研究している.これから述べる組織像も木村教授のうけ売りが大部分である.

視座

支持組織の分化に対する力学的刺激の影響

著者: 伊藤鉄夫

ページ範囲:P.961 - P.961

 Pauwelsは1960年に支持組織の分化に対する力学的影響について新しい学説を発表した(Eine neue Theorie über den Einfluss mechanischer Reize auf die Differenzierung der Stützgewebe. Z. Anat, Entw. Gesch.,121:478-515,1960).
 これによると,Rouxが考えたような支持組織に対する特異的力学的刺激というものは存在しない.即ち,Druckは骨形成,Zugは結合織形成,AbscherungはDruckまたはZugと共に作用して軟骨形成というような特異の力学的刺激というものは存在しない.これら3種の刺激は未熟の中胚葉細胞に対して本質的には同じ非特異的刺激として作用するものである.Pauwelsによれば,中胚葉組織の分化に特異的に作用する力学的刺激はDehnung(伸張)とhydrostatischer Druck(流体静力学的圧)である.

論述

Myelomeningoceleと整形外科的問題

著者: 山根友二郎

ページ範囲:P.962 - P.972

はじめに
 Myelomenigoceleをもつて生れた患児における神経麻痺による脊椎,股関節,膝関節,足関節等の脱臼や変形の問題はワクチンの普及により減少したポリオに代つて新しい整形外科的問題として大きくクローズアツプされてきつつある.それは麻酔学の進歩と手術手技の改善及びAfter careの改善により,本症に対して早期に手術が施され,患児の生き伸びる率が大きくなつたことに他ならない.
 さてMyelomeningoceleの定義は病理学と臨床とでは相違がある.病理学では第1図のごとく分類される.臨床的には,脊椎披裂とMeningesのCystic distensionがあるがSpinal cordの病理学的変化がないものをMeningoceleといい通常,神経症状を伴わない.一方,脊椎披裂とMeningesのCystic distensionに加え,Spinal cordの病理学的変化を伴い通常,神経症状を伴うものをMyelomeningoceleという.従つて第1図のB,C,Dは総称してMyelomeningoceleといわれる.

胸腰移行部における損傷脊柱の再建について

著者: 大谷清

ページ範囲:P.973 - P.985

はじめに
 脊柱は体の中軸である.椎骨,椎間板,関節突起,脊椎周囲諸靱帯,傍脊柱筋群を一括する脊柱は一つの機能単位を構成し,鞏固性,弾力性,橈屈性を具備するとともに中枢神経組織である脳を支え,脊髄を包容保護する.さらには,内臓諸臓器を支持する体幹筋の起始,附着部でもあり生理的彎曲を形成し,生理学的,構築学的に支持性,安定性が確保されている.それだけに広汎,多彩な負荷と障害を被りやすい.
 脊柱の損傷は上述重要機能の破綻を招来する.すなわち,脊柱の支持性を喪失し,脊髄にたいする保護機能は損われ脊髄損傷の発生,加重を招く.脊髄は中枢神経組織であるだけに損傷脊髄の再生,回復はきわめて望み薄い.脊髄の損傷を最少限度にくい止め.損傷脊柱の支持性,安定性の再建,脊髄保護機能の再獲得により二次的合併症,後遺症を未然に防止し,治療することに損傷脊柱再建の意図がある.

関節鏡視からみたChorda cavi articularis genu(Mayeda)について

著者: 渡辺正毅 ,   武田栄 ,   池内宏 ,   榊原壌

ページ範囲:P.986 - P.991

まえおき
 膝関節腔内をしらべると,いろいろの部位に索状体をみることがある.この問題をとりあげて最初に詳細な研究を発表したのは前田友助博士で(第1,2図),1918年のことである1).しかし,これら索状体は繊細なものが多く,関節切開に際しても見のがされ易く,したがつて長年にわたり一般の注意をひくに至らなかつた.
 1940年に飯野三郎博士は,成人屍膝関節における関節鏡的研究を発表し2),その中で日本人膝関節腔の内壁に特種な滑膜ヒダをみるものが多いことを指摘しこれをBandと呼びならわすこととした.そしてこのBandの辺縁に接近した部に孔状欠損があり,その結果辺縁部が索状に見えるものが存在すること,それが前田博士のChorda cavi articularis genuの第1種(I. Art)に属するものであるとした.

討論

四肢軟部腫瘍症例検討

著者: 青池勇雄 ,   荒井孝和 ,   石川栄世 ,   伊藤惣一郎 ,   牛島宥 ,   遠城寺宗知 ,   小川勝士 ,   小山田喜敬 ,   小林勝 ,   佐藤富士夫 ,   下田晶久 ,   高橋清之 ,   竹嶋康弘 ,   土屋正光 ,   長嶺信夫 ,   古屋光太郎 ,   松原藤継 ,   山下広 ,   赤星義彦 ,   猪狩忠 ,   石田俊武 ,   岩崎宏 ,   恵下綾子 ,   大西義久 ,   荻原義郎 ,   柿本伸一 ,   佐々木鉄人 ,   佐野量造 ,   下田忠和 ,   高浜素秀 ,   近沢良 ,   中島啓雅 ,   林活次 ,   細田宏 ,   矢川寛一 ,   山脇慎也 ,   足沢國男 ,   石井清一 ,   依田有八郎 ,   牛込新一郎 ,   檜沢一夫 ,   岡田行生 ,   奥野宏直 ,   後藤守 ,   佐藤利宏 ,   柴田大法 ,   田島達也 ,   高山勝 ,   堤啓 ,   中島輝之 ,   福間久俊 ,   前山巌 ,   安田寛基 ,   渡辺騏七郎

ページ範囲:P.993 - P.1022

 症例1
 患者:17歳男子
 主訴:右前腕背側尺側の軟部腫瘍.

装具・器械

ペルテス病の装具

著者: 渡辺英夫 ,   米満弘之

ページ範囲:P.1023 - P.1031

はじめに
 ペルテス病は1909年Waldenström,1910年Legg,Calvé,Perthesが個々に報告して以来,その治療法は観血的なものや非観血的なものが多数行われている.非観血的治療の中の装具治療を例にとつてみても種々雑多で,万人が一致してその効果を認めているものはなく,それぞれの病院や施設によつて著しく異つた装具が処方されている.
 我々は従来よりペルテス病に使われて来た装具の主なものをふりかえり,文献的に病態を考察すると共に,好ましいと考えられる条件を備えたペルテス病装具を作成し,使用中であるので紹介する.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(14)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   鳥山貞宜

ページ範囲:P.1034 - P.1037

27歳男性の右足背痛
 A 患者は27歳男性,主訴は右足背の腫脹と疼痛です.現病歴は昭和44年春頃より右足背部が膨隆して,表面に色素沈着がありました.軽い圧痛があり,44年7月某大学にて試験切除を行ないましたが組織検査では異常なかつたそうです.45年8月再度膨隆が出現し,同大学にて試験切除を行ない組織検査をしましたが,その時の検経結果も分からなかつたそうです.
 46年12月再ひ痛くなり,47年当科を受診いたしました.血液検査やX線検査の結果,入院してProbe-opeということになりまして,5月18日に入院いたしました.検査データは異常ありません.

臨床経験

股関節疾患に伴う膝変形の研究

著者: 新野徳 ,   金川雅洋

ページ範囲:P.1038 - P.1046

 先天性股関節脱臼,ペルテス病等の股関節疾患には,臼蓋および大腿骨骨頭の変形,前捻角,頸体角の変化等の骨格変形と共に,腰仙帯筋ならびに大腿筋群の萎縮がみられる.これらの変化をもつ股関節疾患の症例には,しばしば膝反張,膝外反等の膝関節の変形がみられる.このような股関節疾患に随伴する膝変形についての報告は極めて少く,僅かに上野が解剖学的,力学的に考察を行つているにすぎない.特に,筋動力学的立場より考察が行われた報告はみられなかつた.
 今回,我々は股関節疾患に伴う膝変形の発生機序を解明するため,腰仙帯ならびに大腿,下腿筋について筋電図学的検索を行つたので報告する.

Acrosyndactyly

著者: 村上隆一 ,   矢部裕 ,   山根宏夫

ページ範囲:P.1047 - P.1055

 指趾の奇形の中で,合指症は比較的高頻度に存在する.1944年Bunnellは,末梢部は癒合し中枢部が離開する合指症をAcrosyndactylismと命名したが,この形の合指症は日常比較的稀にしか遭遇せず,私達の調査し得た限りでは,本邦において未だまとまつた報告をみない.
 私達は最近,6例のAcrosyndactylyを経験したので,その成因と治療に関して若干の考察を加えて報告する.

悪性変化を示した多発性外骨腫の1例

著者: 塩沢博 ,   松井宣夫 ,   宜保晴彦 ,   川瀬幹雄

ページ範囲:P.1056 - P.1059

 最近我々は家族性にみられた多発性外骨腫に伴つて,右恥骨部に発生した,37歳女子の二次性軟骨肉腫の一治験例を経験したので,その大要を報告し併せて若干の文献的考察につき述べる.

筋組織病理図譜・12【最終回】

脊髄灰白髄炎(Poliomyelitis)

著者: 桜井実

ページ範囲:P.992 - P.992

 近年はワクチンの投与により新しい発生は少ないかと思われるが10歳代以上の年齢層にはポリオの後遺症による運動障害や骨格の変形を愁訴とする患者が残つている.症例は19歳の男子で3歳頃の罹患後放置されていたが麻痺性側彎症に対し後方脊椎固定術を受け,また一側の尖足に対し矯正保持装具の処方を受けた.手術の際背筋の一部を調べて見ると第1図のごとく間質に線維化があり,その周辺には中心核を持つ線維が見られる.この部分のコハク酸脱水素酵素(SDH)の活性が不規則に低下している(第2図).
 他方筋力「G」を示す前脛骨筋においては第3図に見られるように萎縮した線細は細胞群と思われる位著しく細くなり,太い筋線維の間に挾み込まれている.この図に見られる太い線維は直径がおよそ200μに及び所々に中心核を有する.これは代償的な筋作動が長期間続いたために肥大したものと思われ,第4図に示したSDH染色による内部構造の検索では正常筋と違いがない.従つて機能不全の筋で見られる中心核とは出現機序が異るものと考えられる.

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基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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