icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科7巻2号

1972年02月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ—Secondary Bone Tumors

57.Synovial sarcoma (invasive)/58.Solitary bone cyst

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.81 - P.84

 症例65:56歳,男子.昭和45年6月頃,左下腿内側部の腫瘤に気づき,某院で湿布,内服薬の投与を約2カ月続けたが,次第に増大し、同年8月初診時には鶏卵大の腫瘍を左下腿上内側部の腓腹筋内に触れた.
 腫瘍全剔出術を施行し,Co60の照射,抗癌剤の全身投与,気管支動脈注入療法を行なったが,肺転移のため昭和46年2月7日死亡した(順大).

視座

病院と図書

著者: 天児民和

ページ範囲:P.85 - P.85

 今,私は九州労災病院の院長をしている.院長自ら一番困ることは図書室の書物が少ないことである.われわれが十分満足できる程度に図書室を整備しようとすると莫大な費用が必要である.また図書はただ集めただけでは意味はない.これを十分に活用するための設備と人員が必要である.これを1病院で整備することは容易ではないし,少し勿体ない感じがする.随分古い話であるが昭和10年私はドイツのライプチヒの整形外科学教室で勉強していた.立派な図書室があるがそれでも世界各国の新らしい雑誌を全部備えているわけではない.それで何か図書室にない文献を探そうと思うと市立の図書館に行けばよいと教わつた.図書館に行つてみると医学部門があつてそこにはその方面に詳しい司書がいて何かと相談にのつてくれる.あの当時は未だ複写機等はなかつたが,こちらの希望を述べるとすぐに文献を探し出してくれた.そしてその書物を借りて帰ることもできた.
 このような組織を日本てももつと発達させる必要がある.日本の市立図書館は科学的な文献の蒐集が非常に遅れている.特に医学部門を整備している所は殆んどない.そこで今私のいる北九州市でもいくつかの公的病院がありそれぞれ小さな図書室をもつているが,そのいずれもが内容が貧弱で少し文献を調べようと思えば一々九大まで行かなければならない.それでは非常に不便なために病院は苦しい財政の中から多額の図書費を捻出する.専門司書をおくのもなかなか容易ではない.定員をやりくりして私の所では1名の司書をおいている.こんな苦労は市立図書館がよく整備できているなら必要でないことである.殊に今日のように複写が容易にできる時代は図書館さえ整備しているなら1つの病院が苦労をして図書室の整備をする必要はない.無駄が多くてしかも効果は挙らない.私は日本にも大学だけではなく大学のない都市にも医学図書の整備を訴えたい.

論述

先天性内反足の治療—Posteromedial releaseについて

著者: 金田清志 ,   松野誠夫 ,   富樫久夫

ページ範囲:P.86 - P.100

まえがき
 先天性内反足は生後早期より治療開始すれば大抵のものは順調な経過をたどるものである.われわれの先天性内反足に対する治療方針は第1表に示すごとくである.生後できるだけ早期にManipulationとStrappingを約1週間毎日行ない,その後はCorrective Castで内転内反の矯正を行なう.この矯正のできた時点(大体生後3ヵ月ごろ)でPosterior Releaseにて尖足の矯正を行なつている.
 Posterior Releaseの内容は第2表に示すごとくで,この他に必要に応じCalcaneofibular ligamentの切離も行なう.

AOIによる圧迫骨接合術の問題点

著者: 渡辺良 ,   岡正典 ,   笠原吉孝 ,   中根康雄 ,   宮田慶男

ページ範囲:P.101 - P.113

はじめに
 1958年スイスで結成された研究団体AO(Arbeitsgemeinschaft für Osteosynthese)によつて開発された器具類AOI(AO Instrumente)を用いて行なう圧迫骨接合術については,本邦においても杉本15),積松3)らによる臨床例に関する報告があり,また宮坂8)による基礎的研究も発表されているので,ここに改めてその詳細な紹介を繰り返す必要はないと思われる.
 既に知られているごとくAOIによる圧迫骨接合術の特色は,強力な圧迫プレートと,引き抜きの力に対して大きな抵抗を示す螺子類を中心としたAO-テクニックにより,安定した内固定が得られることであり,原則として術後の外固定を必要としない1).そのため早期よりの機能回復訓練が可能となり,通常骨癒合の完成する以前に関節可動域を正常範囲に迄回復させることが可能である.このため外固定を併用する従来の骨接合術に比し治療期間は著るしく短縮され,患者の社会復帰が早められることになる.しかしながらAOI圧迫骨接合術が真価を発揮するためには,必要な器械器具,内固定材料を十分に揃えておくこと,およびその手術手技に習熟することが必要であるのはいうまでもない(第1図).

座談会

骨腫瘍研究会(米子)の骨・軟部腫瘍症例検討会から(I)

著者: 青池勇雄 ,   赤星義彦 ,   荒井孝和 ,   石川栄世 ,   乾道夫 ,   牛込新一郎 ,   牛島宥 ,   遠城寺宗知 ,   大田仁史 ,   大野藤吾 ,   緒方孝俊 ,   蒲原宏 ,   川原一祐 ,   菊池昌弘 ,   北川敏夫 ,   三枝清純 ,   佐野量造 ,   佐藤富士夫 ,   下田忠和 ,   杉浦保夫 ,   高浜素秀 ,   高橋清之 ,   土屋正光 ,   堤隆 ,   成尾政圀 ,   中島輝之 ,   林活次 ,   林四郎 ,   東成昭 ,   檜沢一夫 ,   平岡保彦 ,   古屋光太郎 ,   福間久俊 ,   前山巌 ,   松野誠夫 ,   松森茂 ,   真鍋昌平 ,   丸山雄造 ,   村上克彦 ,   本強矢郁夫 ,   山田和彦 ,   安名主 ,   若松英吉

ページ範囲:P.115 - P.150

 前山(会長) 骨・軟部腫瘍症例検討会を始めさせていただきます.これは実は然るべき症例を出していただきましたが,その中の2〜3には資料が整つてないので,一般演題の方に廻していただいたりしたのもございますけれども,ほとんど大部分はこの症例検討会の中に取り入れましたので,かなり数が多くなりまして,司会の先生方は御苦労なさつたと思います.よろしくお願いいたします.
 それから応募されたところから60枚くらいのレントゲン写真と病理のプレパラートを用意していただきましてそれを私のところから50枚一組として整形の方に送つたわけなんですが,そのほかの力にも送ろうと実は思つておつたわけです.

装具・器械

関節全置換術における感染予防策—特に術者呼気排除装置について

著者: 長井淳 ,   伊藤鉄夫

ページ範囲:P.151 - P.155

はじめに
 最近,老人の股関節疾患に対する関節全置換術が広く行なわれ,その優れた結果が認められるとともに合併症についても十分な検討が必要となつて来た.合併症の内,最も注意しなければならないのは致死的となる可能性がある肺栓塞と,最終的には人工関節摘出術を必要とするdeep infectionの二つであると考えられる.人工股関節をセメントとともに体内に固定する方法は,大きい異物が体内に入るために,非常に感染を起こしやすく,かつ一旦感染を起こすと,全ての異物を除去してしまうまで,抗生物質を如何に大量に使用しても膿排出が止らない.従来の人工骨頭に較べ,固定性をよくするために骨セメントを用いると,①それが微細な海綿骨の網の目の間にまで浸透して生体と異物とが接する面積を飛躍的に拡大する事や,②骨セメントmonomerの細胞障害,③polymerに対するallergy反応(late reaction)および④polimerisation時の発熱等による人工関節周囲組織変性の結果,生体内に抵抗力の弱い個所が生じることなどが一般の手術より感染率を高める原因として考えられる.しかし,セメントによる固定性が良好なために,人工関節の完全無痛性が得られているのであって,セメントを用いない例より明らかに優れている(文献14).しかし,もし感染が起これば,手術は完全な失敗に終る.人工関節を除去しなければ創は治癒しない.

臨床経験

腓骨神経欠損に対する自家神経移植術

著者: 小谷勉 ,   豊島泰 ,   松田英雄 ,   鈴木隆 ,   岩見洋 ,   石崎嘉昭 ,   山野慶樹 ,   笹岡正雄 ,   森口富英 ,   浅田莞爾 ,   近藤正樹

ページ範囲:P.159 - P.164

はじめに
 膝関節部付近の腓骨神経損傷は末梢神経損傷の中でも,かなりの頻度でみられ,時には数cmにおよぶ欠損を有する場合もあるが,多くは一次的に端々縫合が可能である。しかし10cm以上におよぶ欠損があれば,種々の方法を試みても端々縫合は不可能で,多くは2次的に腱移行術などによる再建術がなされてきた.われわれはこのような症例に対して,腓骨神経の主たる機能である運動機能の回復を意図して,自家神経による神経幹移植および細小神経束移植(以下cable graft)を各1例に行なつたので,筋電図的検索と若干の考察を加えて報告する.

弾撥肩の1治験例

著者: 三谷晋一 ,   小川英一 ,   福沢玄英 ,   本田一成

ページ範囲:P.165 - P.169

はじめに
 弾撥股,弾撥肩甲骨の症例およびその発生機序については,しばしば報告されているが,弾撥肩に関しての報告は非常に稀である.
 われわれは最近,弾撥肩の一症例を経験し,手術所見より,その発生機序について,いささかの知見を得たので,文献的考察を加え報告したい.

学会印象記

S. I. C. O. T.国際委員会に出席して

著者: 天児民和

ページ範囲:P.156 - P.158

 S. I. C. O. T.(Société Internationale de Chirurgie Orthopédique et de Traumatologie)のnational delegateの会議がローマで開催せられました.それはイタリア整形,災害外科学会が11月8〜10日と3日間ローマ大学整形外科学教室で開かれるので,その前日S. I. C. O. T.の国際委員を開催するならはば,会場の世話その他を全部イタリア整形外科学会会長のProf. Monticelliが責任を持つて行なうという申し出があつたので,ローマで開かれることになりました.
 11月初めのローマは観光シーズンを少し外れ,ホテルも余り混雑していないようです.national delegateは全員イタリア整形外科学会のゲストとして迎えられましたし,私をはじめ数名の者は講演をするようにとも依頼を受けました.そこで私は11月4日ドイツ航空で北極回りでローマに参りました.ローマは私にとつて第3回目の訪問であります.

筋組織病理図譜・2

進行性脊髄性筋萎縮症

著者: 桜井実 ,   児玉茂美

ページ範囲:P.114 - P.114

 知覚異常を全く伴わない筋力低下,しかもそれが進行性である場合は脊髄の系統疾患と進行性筋ディストロフィー(PMD)などが大きな鑑別のグループとして考えられるが,筋の生検により診断が容易になる.
 この症例は33歳の女性で,約1年半前から知覚障害は全くないが両上肢の挙上が困難になり,第1図のように肩甲帯の筋萎縮が著明で肘の屈曲も不能となつて来た.症状は一見,facioscapulohumeral型のPMDに似ているが,CPK 30,LDH 250,GOT 8,GPT 2単位でいずれも筋肉代謝に関与する血清の酵素値は正常範囲である.EMGで上肢の障害筋から幅10msecを越えるgiant spikeが出現する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら