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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科7巻3号

1972年03月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ—Secondary Bone Tumors

59.Aneurysmal bone cyst/60.Fibrous Dysplasia (1.Monostotic)

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.171 - P.174

 症例67:4歳,女子.約1年前より,軽度の左足部痛と跛行を来たし,次第に,左腓骨外顆部の腫脹と局所の熱感を伴ってきたので昭和37年8月,当科外来を受診した.左足部のレントゲン写真で踵骨の広汎な骨吸収像と変形がみとめられ,昭和38年1月入院.入院時の血沈は1時間値5mm,2時間値18mm,血清アルカリフォスファターゼ値9.7μ(Bodansky)と正常域にあったが,踵骨穿刺により,約30ccの血性滲出液の排出をみ,そのアルカリフォスファターゼ植は15.6μと上昇していた.動脈瘤性骨嚢腫の診断で同年1月,病巣掻爬と保存骨の骨移植術を行なった.踵骨骨皮質は薄く,指頭で軽く圧しても容易に陥凹する.内腔は大きな空洞をなし,暗赤色の血性滲出液の貯留と,ごく少最の線維肉芽様組織が採取された.

視座

全人工股関節の発展

著者: 伊藤鉄夫

ページ範囲:P.175 - P.175

 関節形成術には癒着防止膜が用いられるが,1938年6月,Smith-Petersenは股関節形成術に中間挿入物として最初に金属cup(chrome-cobalt合金-Vitallium)を用いた.この手術は画期的な意義をもつているが,成績はまだ十分満足すべきものではなかつた.これに引き続いて,当然のことではあるが,骨頭を全部金属で置換する方法が考えられた.人工骨頭を本格的に臨床に応用したのはMooreとBohlmanである.最初の1例は1942年に報告され,翌年J. Bone and Joint Surg.,25:688,1943にMetal Hip Joint. A Case Reportとして発表された.この例は大腿骨上端の巨細胞腫で,はじめに腫瘍切際と骨移植を行なったが,再発を来たしたためchrome-cobalt骨頭を使用して成功した.Judet兄弟がacrylic prosthesisの使用を開始したのは,1946年で,ずつと後のことである.Mooreのself-locking Prosthesisは優秀で,大腿骨頸部内側骨折に対して盛んに用いられるようになつた.

論述

Ring股関節全置換術の経験

著者: 桜井修

ページ範囲:P.176 - P.183

はじめに
 疾病または外傷によつて破壊された股関節の再建にあたつて,疼痛の除去,支持性の獲得,可動性の増強の三点が主眼になることはよく知られている.
 股関節全置換術は,この三つの問題点を一気に解決する魔法の杖のように,最近著しく注目を浴びてきた手術である.

骨折の治療—特に下肢の関節周辺骨折について

著者: 星子亘 ,   高木克公 ,   大平修 ,   岡隆 ,   本田五男

ページ範囲:P.184 - P.193

はじめに
 最近の骨折治療の進歩は目覚ましいものがあり,とくに骨幹部骨折について髄内釘法,圧迫接合法などにその感を深くする.一方骨幹端部の骨折治療についても特殊の内固定材料が開発され,使用されて治療成績は向上しつつある.
 骨折の治療を行なうに当つて,安静固定の期間と関節拘縮の度合にわれわれは常に悩まされているが,関節周辺骨折の場合はこのことは一層重大となる.骨癒合と関節運動とを考えた場合,第一義的には前者が優先することは確かであるが関節拘縮の障害も最小限に留めたいものである.このように考えると強力な髄内固定法や圧迫内副子法は,骨折部を不動に保つて骨癒合前から関節運動を許す企図もあるようである.

スポーツによるAcute anterior tibial syndromeについて

著者: 吉野槇一 ,   神沼誠一 ,   村井俊彦 ,   東博彦

ページ範囲:P.194 - P.198

はじめに
 Anterior tibial syndromeは良く知られた症候群であり,文献上の記載はしばしばみるが,実際に経験するのはまれである.今回われわれはスポーツによる本症候群を2症例経験したので,若干の文献的考察を加え,発生機序,診断,鑑別診断および治療などに関して述べる.

手術手技

脊柱側彎症に対するHarrington法

著者: 大木勲

ページ範囲:P.199 - P.208

はじめに
 脊柱側彎症は単に外見上の背中の変形のみならず,彎曲が高度になるにしたがつて著しい肺機能障害を惹起したり,腰痛の原因にもなつたりするため,昔から種々の治療法が考案されて来たしかし,決して満足な治療法がなかつたため,"cancer of orthopaedics"ともいわれたことがあつた.
 1911年はじめてHibbs1)により後方固定術が行なわれて,治療法も一段と進歩したが,変形を矯正する十分な方法はなかつた.

座談会

骨腫瘍研究会(米子)の骨・軟部腫瘍症例検討会から(II)

著者: 赤星義彦 ,   荒井孝和 ,   石川栄世 ,   石田俊武 ,   牛込新一郎 ,   牛島宥 ,   内原栄輝 ,   大沢欣式 ,   大西義久 ,   遠城寺宗知 ,   柿本伸一 ,   菊池昌弘 ,   佐野量造 ,   佐藤利行 ,   篠原典夫 ,   芝田仁 ,   柴田大法 ,   高橋清之 ,   竹嶋康弘 ,   土肥千里 ,   中島輝之 ,   長嶺信夫 ,   花岡英弥 ,   林英夫 ,   檜沢一夫 ,   広瀬保 ,   古屋光太郎 ,   前山巖 ,   松井宣夫 ,   松野誠夫 ,   松森茂 ,   矢川寛一

ページ範囲:P.209 - P.232

 症例10(供覧4)
 16歳,男.
 主訴:左前腕部腫脹.
 家族歴,既往歴:特記事項なし.
 現病歴:昭和44年1月頃左前腕部の腫脹に気づいたが,日常生活には全く支障がないので放置していた.ところがその後次第に腫れが増強してきたので,昭和45年10月21日当科に入院した.
 現症:全身所見に著変なし.局所的には左前腕中央部,ことに尺側が紡錘形に腫脹して静脈怒張を認め,当該部に不動性,弾性硬,境界明瞭な腫瘤を触知した.皮膚と腫瘤との癒着はなかつたが,軽度の圧痛と内側前腕皮神経領域の知覚鈍麻を認めた.

学会印象記

第2回バイオメカニズム・シンポジウムをふりかえつて

著者: 山内裕雄

ページ範囲:P.233 - P.235

はじめに
 第1回のシンポジウムについては,本誌5巻,10号にご紹介したが,第2回も場所は同じく南伊豆国民休暇村にて,昭和46年11月25,26,27日の3日間にわたつて行なわれた.
 今回の協賛には,リハビリテーション学会のほか,日本整形外科学会,日本手の外科学会も新たに加わつたためか,かなり整形外科を中心とするM側の出席が多いようであつたが,会の規模は前年とほぼ同じであり,演題数22,持ち時間30分と,前回と大差なかつた.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(9)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   山内裕雄 ,   藤原稔 ,   金子仁

ページ範囲:P.236 - P.241

11歳男子の右股関節部痛
 A:11歳の男子です.主訴は右股関節部の痛みのみです.昨年の春頃から時々疼痛がありましたが,本年5月頃疼痛が一番強くなりました.しかし初診時(昭和46年6月14日)には殆んど疼痛はありませんでした.クイズ的になりますが,これだけの病歴と単純X線写真(第1図)より診断を考えていただきたいと思います.
 C:いかがでしようか.このX-P像では.D先生。

筋組織病理図譜・3

進行性筋dystrophy症—Duchenne型 その1

著者: 桜井実 ,   保坂武雄

ページ範囲:P.242 - P.242

 筋力の低下を来たす疾患の中で学令期前に転び易い症状に始り,やがて起立動作が第1図のようないわゆる攣登性起立を示す場合は本疾患が先ず疑われる.腰殿部,大腿部などの筋力低下により脊柱の特有な前彎が見られ,またしばしば腓腹筋の肥大を伴う.原則的には伴性劣性遺伝により男子に発症する.血清のCPK,aldolase,LDH,GOT,GPTの上昇が認められる.EMGは低電位,干渉波が特徴.
 この症例は10歳で,その後筋萎縮が進行し臥床したままになつた.筋標本は前脛骨筋中央部より採取したもので第2図に見られるように直径の大小不揃いが最も特徴的で,大方のものが細くなる一方,逆に非常に太い線維が出現する.筋鞘核の中心移動を示すものが沢山見られ,筋線維の間隙に結合織が増殖し,所により脂肪組織が入り込んで来る.細胞浸潤は認められない.

臨床経験

スポーツによる脊髄外傷について

著者: 城所靖郎

ページ範囲:P.243 - P.248

はじめに
 スポーツ災害は外傷性あるいは障害性疾患にしても,交通災害,産業災害に比較すると一般に軽微なものが多い.慶大整形外科におけるスポーツ災害の対全外来患者比は7〜9%であり,外傷性疾患の骨折,捻挫,打撲等が上位を占める.これらの多くは適切な治療によりスポーツ生活への復帰が可能であるが,特に予後が重篤で生命に危険のある脊髄損傷特に頸髄損傷をみる場合がある.
 頚椎および脊髄の外傷は前者は0.6%,後者は0.1%とその占める比率は非常に低く,スポーツ外傷特有のpatternはないが交通災害,産業災害と同様に予後は重篤で死に直結する場合さえある.頚椎部のみの外傷は脊椎全体の外傷の内約40%で,頸椎外傷中約60%に頸髄損傷の併発をみる.脊髄損傷は交通災害,産業災害の両者によるものが過半数を占め,スポーツ災害によるものは約10%である。発症した疾患への適切な治療は他の外傷性疾患と同様に大切であるが,予防への考慮が充分になされなければならない.

野球による棘上,棘下筋麻痺

著者: 靹田幸徳 ,   小久保勝弘

ページ範囲:P.249 - P.253

はじめに
 近年スポーツが盛んとなるとともに,技術の向上,手技の変遷さらに練習の強化に伴つて,これらスポーツによる外傷や障害も増加し,同時に従来と趣きを異にする障害が現われてきている.ことに肩関節を駆使するスポーツにおいても,その関節の適応域を趣えるような過度の運動が強制されることによる肩関節障害が起こつていて,これをBadgley1)はscapular syndromeと呼び肩関節部および肩甲帯部の疼痛と異和感を訴えることが特徴であると述べている.このような障害はスポーツの継続,さらにはこれら障害の治療という点から重大な問題となつている.
 これら肩関節障害の1つとして利き腕側棘下筋の単独萎縮について林原2),靹田3),五味淵4)らにより報告されている.しかし,これらは症例数も少なく,その発生機序に関しても未だ解明されておらず,したがつて治療法も確立されていない.著者らは肩関節を駆使する各種スポーツ選手の肩につき調査を行ない,利き腕側棘上,棘下筋萎縮が予想以上に多くみられたので,これらにっき検討を行ない,さらに発生原因と考えられる肩甲上神経について解剖学的検索を行ない若干の知見を得たので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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