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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科7巻4号

1972年04月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ—Tumors Conditions of Bone

61.Fibrous dysplasia (2.Polystotic)/62.Eosinophilic granuloma

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.255 - P.258

 症例69:20歳,男子.昭和41年より44年にかけて右上顎骨骨腫瘍の診断で3回の手術を受けている.昭和44年2月頃より右大腿の倦怠感を生じ,7月31日北大整形外科を受診した.X線撮影中に転倒し,fibrous dysplasia,病的骨折の診断で直ちに入院,病巣掻爬,骨移植と骨接合術を受けている.その後経過観察中であったが,患者の転居によりその後の経過追跡のため,昭和46年9月3日当院を訪れた.
 来院時,右大腿骨の骨癒合は良好で,病巣も硬化像を呈し,ほぼ治癒の状態と思われた.左大腿骨,左上腕骨,右上顎骨等の病巣はすでに知られていたが,患者の希望もあり,左大腿骨の病巣掻爬と冷凍保存骨移植を施行した.骨皮質の一部は菲薄化し,骨髄腔はfibrous dysplasiaに特有の白色乃至灰白色のざらざらした線維性骨組織で満たされていた.(国立がんセンター整形)

視座

疾患の変貌について

著者: 佐藤孝三

ページ範囲:P.259 - P.259

 整形外科医にとつてきわめて重要な疾患であつたポリオは,予防ワクチンの完成によつてほとんど消滅した.国民病といわれた結核も激減して,近年は脊椎カリエスや結核性関節炎をみることがずつと少なくなつた.予防医学の進歩が国民の福祉に大きく貢献し,臨床医師であるわれわれの治療面での負担がいちじるしく軽減された例である.
 抗生物質や化学療法の進歩は,感染性疾患の死亡率を激減させ,その病像と経過を大きく変化させた反面,むずかしい耐性菌の問題を提起するにいたつた.ステロイド剤は素晴らしい効果をあらわすが,常用すれば副作用がつよく,整形外科的にはオステオポロージスや無腐性骨壊死をひきおこす.

座談会

股関節の全置換術をめぐつて

著者: 片山良亮 ,   長井淳 ,   渡辺良 ,   桜井修 ,   長屋郁郎 ,   前沢伯彦 ,   鳥巣岳彦

ページ範囲:P.260 - P.283

 司会 それでは,私,最初にとでも申しますか,緒言のようなことを一言述べさせていただきます.

論述

股関節内肝油注入法によるペルテス病の治療経験

著者: 辻成人 ,   大橋光伸

ページ範囲:P.284 - P.292

はしがき
 ペルテス病の経過がきわめて遷延性で,かつその治療方法が多種多様なことは衆知のところである.保存的,手術的に種々の治療方法が考案されているが,いずれも決定的なものではない.これは,現在ペルテス病の原因として,大腿骨頭部の軟骨骨化障害を伴う体質素因性論や,外傷などに由来する血行障害説あるいは関節滑液膜炎との関連性などのきわめて多元的病因論が主張されており,いまだ決定的なものがないことからも理解できる.
 さらにペルテス病の予後は,骨頭変形による将来の変形性股関節症発生の頻度が比較的に高く,諸家2,5,17,18)の報告でも約20〜60%といわれている.その経過も諸家2,5,6,7)により多少の差は認められるものの,いずれもきわめて長期間を要し,これは患児のみならず,父兄にとつて並々ならぬ苦痛を強いていることは否定できない.このように小児股関節疾患としては,先天股脱とともに臨床的な意義が大きい.

Elastofibroma dorsiについて

著者: 遠城寺宗知 ,   坂江清弘

ページ範囲:P.293 - P.300

はじめに
 弾性線維腫(Elastofibroma)は1959年Järvi and Saxén8)によつて始めて記載された特異な腫瘍状病変で,増殖した境界不鮮明な線維組織より成り,組織学的に膠原線維束とともに均質好酸性の線維状あるいは球状物質を有し,該物質が弾性線維と同一の染色性および消化性を示すものである.文献上1,2の例外を除いて,すべて背部肩甲下部に生じており,普通病名にdorsiが付記される.
 Järvi and saxënの提唱につづきstemmermann and Stout 196212),Delvaux and Lester 19654),Marston and Jonës 196511),Barr 19661)らの報告があるが,これらの記載に基づきEnjoji and Kikuchi5)は鹿児島大学において病理組織検査された外科的材料を再検査して1例の同病変を見出し,1968年本邦第1例として報告した.それ以後も報告が相次ぎ,2)3)7)10)14)15)16) Järvi,Saxén,Hopsu-Havu,Wartiovaara and Vaissalo 19689)が諸外国の当時までの報告例および知りえたものに氏らの自家例13例を加えて42例の確認例をえている.私どもも鹿児島大学において,前記報告例のほかに1970年までに2例6),その後さらに4例を経験し,わが国では安田ら197017)と田中ら197113)が各1例あてを報告している.

腰痛と装具療法

著者: 大井淑雄

ページ範囲:P.301 - P.308

はじめに
 腰痛を主訴として整形外科のクリニックをおとずれる患者はかなり多く,これはわれわれの日常経験するところである.なかには整形外科以外の領域の疾患であることもあつて,腰痛をおこす疾患はきわめて多種多様である.
 腰痛を主訴として来院した患者の診断が確定し保存的療法そして手術的療法へと治療のコースが進められるなかで装具による治療はどのようにして用いられ,またどのような効果があるのか,また装具を長期間使用して弊害はないものであろうか,そのような問題について臨床上の経験などから考察を加え,また反省してみたいというのが本論文の目的である.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(10)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   立石昭夫 ,   金子仁

ページ範囲:P.309 - P.313

5歳女児の左大腿部痛
 A 患者は5歳の幼稚園に行つている女の子です.主訴は左大腿部痛ということです.経過は今年の5月26日に遠足に行きまして,ころんで膝を打つて,その後左膝のいたみが発生しております。続いて左大腿部痛が出て来まして,この当時膝とか大腿部に腫張とか局所熱感は認められませんでした.
 それ以後近所の医者を3軒ほどあつち,こつち転々としておりますけれども,どこでも膝の方を主として診て,まつたくOBだということで,そのままにしていた.そうして6月29日に最後に整形外科医のところで,どうも骨に異常があるのでないか,ということで当科へ紹介されまして,6月30日に当科の外来を受診しております.その時の写真がこれです(第1図).

筋組織病理図譜・4

進行性筋dystrophy症—Duchenne型 その2

著者: 桜井実 ,   大竹喜玄

ページ範囲:P.314 - P.314

 この疾患の組織学的特徴は筋線郡の大小不揃いがまず第一にあげられるが,強拡大にして線維内をよく見るとパラフィン切片でも内部構造の破壊を観察することがある.これを酵素組織化学的に染色するとその様相が明瞭となる.症例は10歳男子で,図は左から筋原線維を黒く染め出すATPase(第1図),中央が筋漿(原形質)に活性が局在するphosphorylase(青紫色)(第2図),右が筋漿内に点在するmitochondriaのコハク酸脱水素酵素の活性を染色したもので(青)(第3図)いずれも上段に正常筋を対比してある.
 この症例ではほとんどの線維に破壊像がみられたが,症例によつては大小不同のみが見られるもの,あるいは部分的に破壊のみられるものなど多様にわたる.

臨床経験

大理石骨病の1例—ことにその硬組織学的所見について

著者: 星野孝 ,   龍順之助 ,   山田尚武 ,   友保洋三 ,   中村彰男

ページ範囲:P.315 - P.319

 大理石骨病は1904年Albers-Schonberg1)が広汎な骨硬化をきたす1独立疾患として報告して以来,数々の報告があるが,比較的稀な疾患とされ,欧米では数百例,本邦では山際ら2)によれば1914年藤木の報告以来1965年までに152例の報告があり,その後も数例の報告がある.しかしその成因,病態については確たる説はない.
 われわれは腰痛を主訴として来院した27歳の男性の本症例につき,その骨組織を主としてマイクロラジオグラフイーで検索する機会を得たので,その所見より本症の病態を考察したい.

胸骨結合脱臼の1症例

著者: 小林信男

ページ範囲:P.320 - P.324

緒言
 胸骨の外傷は比較的まれであり,その骨折の頻度は,全骨折の0.1〜0.2%程度とされていた.しかし,最近自動車文明の発達に伴い,交通災害の一つとして,増加の傾向にあり,今後も一層頻度を増すと考えられる.
 従来,胸骨骨折の好発部位として,胸骨結合があげられており,骨折時の転位は定型的とされている.胸骨結合の90%は関節あるいは半関節と見なされることから,このような外傷はむしろ脱臼と呼ぶべきものが多いと考えられる.しかし本邦において,胸骨結合脱臼という報告は見られない.我々は胸骨結合に骨折と言うよりは,脱臼と呼ぶべき所見のある1例を経験し,観血的治療により治癒せしめたので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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