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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科7巻5号

1972年05月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ—Tumors Conditions of Bone

63.Gaucher's disease/64.Hand-Schüller-Christian Disease

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.327 - P.330

 症例71:25歳.男子.昭和46年3月椅子から落ち,以後,右下肢痛を訴え,同年4月当科外来を受診した.右股関節部レントゲン写真にて,右大腿骨頸部骨折を発見した.以前ネフローゼにより,ステロイドを長期間用いていた事から,骨粗鬆症を考えた.しだいに内反股となり,同年8月観血的固定術と転子下外反骨切り術を行ない,同部の骨を病理に提出したところlipidosisとの回答を得たので,全身骨レ線検査を行ない,両側上腕骨,両側大腿骨に大小不同の骨透亮像を認めた.同年11月左上腕骨試験切除,昭和47年1月胸骨骨髄穿刺を行ない,Gaucher細胞を検出し,診断を確定した.

視座

椎弓切除の範囲

著者: 岩原寅猪

ページ範囲:P.331 - P.331

 脊髄に手術的操作を加えるにはまず椎管を開鑿しなければならない.例外的に前方路をとつて脊髄侵襲が加えられることもないではないが,一般には後方侵襲法がとられる.後方路による椎管の開鑿はすなわち椎弓切除術であり,椎弓切除は脊髄手術の前段階をなし前半を占めるものであり,椎弓切除術は脊髄外科における基本手術手技である.
 よく知られているように,30余個の脊椎は前方部では椎間板,後方部では椎間関節をもつて上下接合して脊柱を形づくり,大小長短の靱帯をもつて補強され,大小長短の筋腱をもつて支持されている.そうして,脊柱はよく体幹の中軸,支柱としての役目を果している,もし,ひとたびこの脊柱の構築に破綻を生ずることがあれば,脊柱の機能が損害されるであろうことは想像に難くない.

論述

幼若結合織(未分化間葉系細胞)の分化について—3H-thymidine autoradiographyによる関節軟骨の修復に関する研究

著者: 諸富武文 ,   榊田喜三郎 ,   井上四郎 ,   牧陽一

ページ範囲:P.332 - P.339

緒言
 関節軟骨が損傷された場合,その修復は困難であり,関節機能の回復に直接的な影響をもたらすことはわれわれ整形外科医にとつて日常臨床上しばしば経験するところである.
 この関節軟骨損傷の難治性に関してはすでにHippocratesの時代より知られており,ひとたび損傷された関節軟骨はそれ自体で再生,修復能をもたないというW. Hunter(1743)の記載は一般的な外科的通念として広くうけ入れられてきた.しかし軟骨の再生あるいは修復に関する研究は古来よりはなはだ多く,軟骨自体による再生,修復能の有無はもとより,軟骨周辺組織による修復機序についても幾多の説がなされ,今日まだ意見の一致をみない.周知のごとく,関節軟骨はその辺縁部を除いて血管を欠き,栄養補給路も明確でないため,損傷時の修復態度も特異な形をとることが考えられる.すなわち従来,関節軟骨の損傷裂隙部は滑膜あるいは軟骨下骨組織などの周辺組織に由来する幼若結合織によって一次的に補填,修復されることが認められているが,軟骨細胞自体の反応性増殖や再生の問題とともに,この幼若結合織のその後の運命については不明の点が多い.

骨折の非観血的治療の限界

著者: 星秀逸

ページ範囲:P.340 - P.349

はじめに
 往昔も現在も骨折の治療は非観血的に取り扱うということが理想である.しかし最近では非観血的に取り扱つても好結果が期待されるような症例に対しても不必要な観血的操作が採られている場合も少なくないようで,つぎつぎに開発された手術器具を安易に適応を選択せずに取り入れ,いろいろな合併症を惹きおこして,その後の治療に難渋することも再々である.
 もちろん,観血的治療を否定しているわけではない.十分な適応で確実な整復,固定により社会復帰が早められる症例であれば,慢然と非観血的操作に拘泥することなく,積極的に観血的治療を採用すべきであろう.

Tanner-Whitehouse & Healy法による骨年齢の判定について—杉浦・中沢法との比較検討

著者: 川島真人 ,   南条文昭 ,   佐倉朔 ,   太田伸一郎

ページ範囲:P.350 - P.358

緒言
 1896年,Rankeによる骨核のX線学的検討以来多くの人々により骨核成熟の形態学的変化と年齢との関係が論じられてきた.なかでも手骨の骨成熟に関する研究は,長期にわたつて多数の骨核の様々な成熟過程が容易に観察されるという利点もあつて,もっともよくおしすすめられてきた.
 歴史的には1907年Pryorに始まり,1937年Toddの骨端核9段階評価基準,さらにこれを基軸としたGreulich & Pyle法(1950年)は現在でも広く採用されている.1954年,AchesonはこのGreulich & Pyle法に,さらに客観性をもたせるため,骨点数(maturity score)による評価基準を設け,骨点数の総和による骨年齢の判定を試みた.

Radiation myelopathyの3例

著者: 鈴木信正 ,   吉沢英造 ,   森川征彦 ,   田中幸房

ページ範囲:P.359 - P.367

いとぐち
 近年,悪性腫瘍に対する放射線治療の進歩により,患者の生存期間が長くなるに伴つて,その副作用として,放射線脊髄症(radiation myelopathy)が増加しつつある.この疾患は,悪性腫瘍に対して行なわれる放射線照射後遅れて発症し,慢性で,しかも進行性の脊髄マヒ症状を呈するものである.1941年Ahlbomによつて初めて報告されて以来,国外では100例以上,国内でも10数例の報告があるが,本邦整形外科領域における本疾患に対する認識は,まだ十分とはいえない.その臨床的診断は必ずしも容易でなく,ともすれば原疾患の脊椎,脊髄転移と考えたり,変形性脊椎症や脊髄腫瘍と誤られがちである.原発腫瘍の脊髄,またはその周囲への転移あるいは浸潤と考え,すでに放射線によつて障害を受けている部位へ,さらに放射線の再照射を行ない,患者にとつて,悲惨な結果に終ることすらある.本疾患の本態を理解し,適切な対策がとられることが望まれる.われわれは最近,本症と考えられる3症例を経験したので,文献的考案を加えるとともに,その本態について述べてみたい.

手術手技

遊離植皮術とその適応

著者: 難波雄哉

ページ範囲:P.368 - P.373

はじめに
 遊離植皮術は外科領域におけるもっとも一般的な手術の一つで,その適用範囲や対象は多岐にわたつているが,ここでは,どのような場合に,どのような遊劇植皮を行なうべきかという遊離植皮の適用決定について,われわれの経験的知識を加味してのべる.
 本文は編集部のもとめにより,第14回日本形成外科学会総会における教育講演をまとめたものであるが,紙数の関係から内容はかなり要約したものとなり,一部の項目については省略した.

境界領域

整形外科に必要な脳波の知識

著者: 喜多村孝一 ,   朝倉哲彦

ページ範囲:P.374 - P.384

はじめに
 整形外科の領域では,従来,筋電図の活用が重んじられ,脳波に対する関心は比較的うすい傾向があつた.対象となる疾患の構成から当然のことであつたといえよう.しかし,近年では,頸部外傷が,同時に脳外傷とくに脳幹損傷を伴なうことが多いと指摘され,にわかに脳波に対する関心も高まつてきたようである.
 本稿では,整形外科医に必要な脳波の知識を述べることになつているが,すでに数多くの脳波書が刊行,流布されており,それらを通読された方も多いに違いない.しかし,多忙な診療のために,脳波専門書をひもとく余暇のない方々もあろうと考えられ,ここには,そのような読者のために,臨床脳波に関するごく一般的,基本的事項を記述し,向後の診療に役立てていただきたいと思う.

筋病理組織図譜・5

進行性筋dystrophy症—Facioscapulohumeral型

著者: 桜井実 ,   黒沢大陸

ページ範囲:P.385 - P.385

 本疾患は口を尖らせたような特有な顔貌,頸から肩にかけて,さらに上腕の著しい筋萎縮が特徴的で(第1図),腕組みをさせると肩甲骨が鳥の羽のようにとび出してくる(第2図).
 この症例は28歳であるが10年前にdystrophyと診断されて以来少しずつ筋萎縮が進行し,最近は上肢の挙上ができなくなり,躯幹の前後屈も困難になつて来た.しかし上下肢の末梢側の筋力は比較的強く握力はかなりある.EMGは萎縮筋でlow voltageを示し,血清のCPKなどの上昇はない.

臨床経験

広範に骨を侵した股関節色素性絨毛結節性滑膜炎の症例

著者: 長澤正彦 ,   小山明 ,   宮本建 ,   伊藤恵康 ,   久保井二郎 ,   石井良章

ページ範囲:P.386 - P.392

 股関節に発生した色素性絨毛結節性滑膜炎Pigmented Villonodular Synovitis(以下PVSと略す)は,臨床症状,レ線所見ともに,通常膝関節に見られるものと趣きを異にし,特異な像を呈する点で注目される.われわれは最近広汎に骨を侵した股関節PVSの1例を経験したので,若干の文献的考察を加え本症の特徴について述べる.

骨形成不全症の18例について

著者: 佐々木鉄人 ,   福原啓之

ページ範囲:P.393 - P.401

はじめに
 骨形成不全症は易骨折性,青色鞏膜,難聴などを主徴とする特異な系統疾患である,比較的稀に出現するが,本邦では1878年1)三浦らの報告以来,少数報告例がしばしばみられる.多症例を調査しての報告は1942年竹林2)の21例があり,最近では1964年加倉井3)が62例について行なっている.しかし依然この疾患の本態は不明であり,治療法も満足すべき効果をあげていない.今回,著者らは北大整形外科,国立西札幌病院整形外科に来院した18症例について追跡調査し,その臨床所見および整形外科的治療法を検討して多少の知見を得た.

Intrameniscal lunulaeの1例

著者: 岡田征彦 ,   大谷宏明

ページ範囲:P.402 - P.406

 メニスクス内骨化の症例は,1931年Wollenbergが初めて発表してより諸外国のものも含めてわずか25例を探し得たにすぎず稀なものである.その内でもintrameniscal lunulaeの症例は更に少なく,1921年Pearson8)がmeniscusに発生した種子骨をlunulaeと命名して以来7症例が発表されたにすぎない(第1表).
 われわれも最近このintrameniscal lunulaeと思われるもので関節遊離体を合併した1症例を経験したので報告する.

変形性膝関節症に対するムコ多糖多硫酸エステルの関節内注入療法

著者: 藤本憲司 ,   上野良三

ページ範囲:P.407 - P.411

はじめに
 変形性関節症は膝関節に最も多発する.かつて信州大学整形外科で行なつた住民調査1)によると,40歳以上の農村男女1,114名中,臨床症状を有する本症が25.7%見出された.すなおち40歳以上では,4人に1人は膝関節症の症状を有するという結果をえた.外国においても,膝関節が第一の好発部位であることに変わりはない,例えばMohing2),によれば,膝関節症は全関節症の26.8%を占めて第1位であり,第2位の股関節の7.3%をはるかにひきはなしている.
 さて本症の治療は,主として疼痛に対するものであるが,近年,内反または外反膝変形の強いものに対して,脛骨高位骨切り術(Bauerら3),その他)などの手術的療法が行なわれるようになつたが,大多数の症例に対しては保存的療法が指示される.保存的療法としては,温熱、運動療法などの物理療法が大切であることはもちろんであるが,膝関節は薬物の関節内注入療法がよく行なわれる部位である.そしてHollander4)の報告以来、副腎皮質ステロイド剤の間接内注入は,鎮痛ならびに貯留関節液の減少に著効を奏することが一般的に認められ、広く行われているが、いささか乱用気味であることは否定できない。ステロイド剤の関節内注入は内服とちがい,全身的副作用の心配はまずないが,長期間つづけると関節軟骨の変性を促進し,骨萎縮を引き起こし、さらには骨壊死を生じることもあるという.従つて長く本療法をつづけることは避けるべきであろう.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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