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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科7巻6号

1972年06月発行

雑誌目次

骨腫瘍カラーシリーズ—Tumors Conditions of Bone

65.Sarcoidosis/66.Ganglion

著者: 骨腫瘍委員会

ページ範囲:P.413 - P.416

 症例73:45歳.女子.4カ月前より両手指の腫脹と疼痛を生じ,某医で関節リウマチと診断され,約1カ月間治療を受けた.健康診断で偶然胸部X線像の異常陰影を指摘され,当院呼吸器科を訪れた.肺紋理の増強,縦隔陰影の拡大がみられたが,肺癌と思われる所見はなく,手指の腫脹がみられたので当科受診をすすめられて受診した.外来受診時,左示・中小指に腫脹がみられ,一部は小腫瘤状を呈していた.右示指にも同様の所見が認められたが,運動障害はなく,手指の可動性は良好であった.その他の異常所見は認められなかった.検査成績ではCRP(-),ASLO100u.,RA(-)で,赤沈値の促進もみられなかった.手指のX線像で,小斑点状の骨吸収像が多発性に認められた.腫瘤部の試験切除で,sarcoidosisであることが確認された.ステロイドの投与により,肺紋理は減少し,手指の腫脹は減退したが,約1年後の手指のX線像では殆んど変化はみられなかった.(国立がんセンター)

視座

Forestier病の古いレ線写真

著者: 青池勇雄

ページ範囲:P.417 - P.418

 古い話で恐縮であるが,昭和13年頃(1934),研究のために集めていた老人の脊柱のなかにすごい変形性脊椎症のような脊柱があつた.頸椎から腰椎まで全般にわたつて,椎体の前面にゴツゴツと骨棘ができており,レ線写真で広範囲に前縦靱帯が骨化しているものである.SchmorlとJunghansの有名な脊柱の病理の著書にこれと非常によく似た写真が載つていて,高度の変形性脊椎症として取り扱われていたので,そのようなものかと思つてそれ以上深く追求しないで終つた.
 この脊柱はあとで鋸で縦割りしたが,骨化部分が普通の大腿骨などの骨皮質よりも遙かに硬くて切るのに難儀した.

論述

頸髄損傷患者の現状と将来—全国労災病院の調査から

著者: 赤津隆

ページ範囲:P.419 - P.424

はじめに
 脊髄損傷患者に対するリハビリテーションの進歩は,1964年東京パラリンピック以前と現在では隔世の感がある.特に職業的リハビリテーションの整備は,多くの胸腰髄損傷患者の社会復帰を実現し,その生活および労働能力も十分社会に認められるようになつてきている.しかしながら一方では,病院におけるactiveなリハビリテーションについてゆくことのできない,きわめてactivityの低い頸髄損傷や高度の頭部外傷患者は,なんら対策もなく,後の保護施設も考慮されず病院に止まり,次第に増加しつつある.
 この傾向は,胸腰髄損傷患者の病院における回転が著しくなつた近年益々明らかとなり,頸髄損傷発生増加の傾向とも相まつて,頸髄損傷患者の占める率は次第に増加し,最近では看護にも影響するようになつてきている.

胞状軟部肉腫Alveolar soft-part sarcomaの微細構造—とくに細胞内の特殊顆粒について

著者: 竹嶋康弘 ,   福間久俊 ,   緒方孝俊 ,   後藤将

ページ範囲:P.425 - P.437

はじめに
 1952年,Christopherson2)らは,四肢,ことに大腿および下腿の筋肉内に好発し,組織形態上,いくつかの大型の多角細胞polyhedral cellsが細い血管腔と線維性結合織索によつてとりかこまれ,全体として偽腺腔構造organoid patternあるいは,胞巣状構造alveolar patternを呈する一群の軟部腫瘍を集録し,これらの組織形態学的特徴,発生部位および,臨床的には他臓器転移をきたす,生物学的性状から,これを胞状軟部肉腫Alveolar Soft-Part Sarcomaと命名した.一方,これらの腫瘍はまた,胞体内にしばしばエオジン好染性の顆粒を多数有することから,古く,悪性顆粒細胞性筋芽細胞腫malignant granular cell tumor(Ravich, Stout and Ravich19),1945., Ackerman and Phelps1),1946)あるいは,悪性傍神経節腫malignant tumors of nonchromaffin paraganglioma(Smetana and Scott23),1951)とも呼ばれ,その発生母地に関して,組織形態あるいは組織化学的な検索がいろいろとなされてきたが,筋原性とするもの,神経原性—ことにparagangliomaの悪性化したものとするもの,あるいは本腫瘍が組織形態上きわめて豊富な血管を有し,その周囲に腫瘍細胞の増殖が上皮様配列を示していることから,血管外膜に位置するpericyteより発生したHaemangiopericytomaとするもの24)など定説がなく,Christophersonの報告より20年を経た現在,なお,その組織起源は明らかにされていない.

軟骨腫および軟骨肉腫における核計測値と臨床像との関連

著者: 井村慎一 ,   田中重男

ページ範囲:P.438 - P.444

はじめに
 Lichtenstein, Jaffeら(1943)は軟骨腫および軟骨肉腫の判定に際し,軟骨腫は小型の核を有する単核細胞であるのに対し軟骨肉腫の核および細胞は不整であり,また単核あるいは多核の大きな細胞がみられると報告している.この判定基準はその後Morton(1947),O'Neal, Ackermann(1952),Dahlinら(1956,1964)数多くの研究者により支持されているが,一方,Geschiekter(1949),Coley(1952),Middlemiss(1964)は躯幹,四肢長管骨に発生する軟骨腫は手術後再発を繰り返し,臨床的に悪性経過を示すことから分化した軟骨肉腫との鑑別は困難であるとしている.また分化型軟骨肉腫は未分化型軟骨肉腫に比べ臨床経過が長く生存率も高い.かかる主観的な組織像の判定と臨床経過が一致しないことは病理学者の間でしばしば問題となるばかりでなく,その治療法の決定に際しきわめて重要なことである.
 さて腫瘍細胞を計測により客観的に腫瘍の悪性をあらわそうとする試みには,岡野(1953,1962,1963)の白血病,Atkin(1964)の子宮頸部癌,油川(1967)の骨巨細胞腫,御園生ら(1968)の腔塗抹標本による研究がある.

遅発性尺骨神経麻痺と神経造影

著者: 細川昌俊 ,   石下峻一郎 ,   小林信男

ページ範囲:P.445 - P.457

 末梢神経造影は決して新しい検査法ではなく,すでに1932年斉藤の臨床報告を見るが,手技の繁雑さの割にその臨床的価値があまり認められず,また,造影剤による副作用が懸念されてか,日常の検査法として広く常用されるまでには至らなかつた.しかし造影剤の改良も進み,1960年代に入り本邦において再び神経造影がとりあげられ,1966年兪は動物実験ならびに臨床応用例を報告しその安全性を確認し,1967年中城は神経造影像を臨床的に分類しその実用性を述べ,神経造影の意義が再評価されるようになつた.
 一方,遅発性尺骨神経麻痺は1878年Panasの報告以来多くの報告があり,その原因疾患として肘関節周辺の骨折による変形を始めとして,変形性関節症,関節遊離体,瘢痕性絞扼,習慣性尺骨神経脱臼,ガングリオン,いわゆるcubital tunnel入口での圧迫などが挙げられている.しかしながら,遅発性尺骨神経麻痺の原因は画一的には論じられず,いろいろな要素が関与していると考えられる症例も少なくない.

手術手技

有茎皮弁の実際—軀幹部に作る皮弁の大きさの限界

著者: 鬼塚卓弥

ページ範囲:P.459 - P.467

はじめに
 編集部より依頼されたテーマは,"有茎皮弁の実際"というものであるが,一言で有茎皮弁といつても,その範囲はきわめて広く,きめられた紙数で論ずることはできない.したがつて,今回は,整形外科や手の外科,頭頸部外科などでしばしば用いられる軀幹部の有茎皮弁について述べてみたい.
 一般に,有茎皮弁の移植にあたつては,手術目的に沿つた皮弁の作製部位,デザイン,移動法,手術技術など,いろいろな問題点を細心に考慮して手術にあたらなければならない.しかし,皮弁を作る位置がわかつたとしても,そのデザインが悪ければ,まずその出発点で皮弁の壊死をおこし,その後の治療にそごをきたす.したがつて,なにはともあれ,最初に安全な皮弁を作製することがもつとも大切なことということができるが,成書にも文献にも,この点について解明したものがみられない.通常は,皮弁の幅と長さの比が1:2なら安全であろうといわれてはいるが,皮弁を作る部位,皮弁の大きさなどによつて安全でない場合が多くある.特に皮弁が大きくなるにつれて,これらの比率が適応できなくなり,皮膚および皮下組織血管,ならびにそれらの血管への供給,排出血管の位置,大きさ,血流なども影響して,思わぬところで皮弁の壊死をおこすことがある.そこで,今回は軀幹部に作つたいろいろな皮弁を集め,安全な皮弁についての原則を作り得たので,これを紹介したいと思う.

臨床経験

骨切り術による大腿骨頭壊死の治療

著者: 上野良三 ,   船内正恒 ,   原田稔 ,   松本直彦 ,   長鶴義隆

ページ範囲:P.470 - P.476

いとぐち
 大腿骨頭無腐性壊死は,2次性のものを除いて中年の男性に好発し,その半数近くは両側性である。本疾患は,両側に対する治療法の選択や,いかにして治療期間を短縮するかといつた多くの困難な問題を残している.
 老齢の患者に対する人工関節置換術あるいは,人工骨頭置換術の優秀性に関して異論はないが,若年者に対して人工骨頭置換術の適用を拡大することには問題があろう.一方,骨頭壊死に股関節固定術を行なうことは,技術的に困難であるばかりでなく,反対側股関節の可動性を保存しうる可能性がなければならない.大腿骨骨切り術は,術後一定の免荷期間を必要とするが,入院期間が短く,機能的予後が良好で,Merle d'Aubignéの報告以来,広く用いられている.年齢的な制限もなく適用となる症例が多い.その他,壊死組織の切除,骨移植を提唱するものもある.青,壮年で可動性を保存した治療が必要な場合には骨切り術が考慮されるが,術式や適用などについて意見の一致をみていない.

膝関節に発生せる樹枝状脂肪腫の1例

著者: 石川斉 ,   広畑和志

ページ範囲:P.477 - P.480

 膝関節の脂肪組織の病的変化のうち樹枝状脂肪腫は極めて稀な疾患であり,本邦での報告例は著者らの知る範囲ではこれまでに2例があるのみである.著者らは最近,頻回の関節水腫を来し,多くの病院で診断のつかぬまま転々としていた症例に関節切開を行ない腫瘍を発見,これを剔出し肉眼的,組織的に樹枝状脂肪腫と判明したのでここに報告する.

Myotonic dystrophyの症例追加

著者: 安藤正 ,   高橋定雄 ,   伊藤孝夫 ,   伊藤祥弘

ページ範囲:P.481 - P.487

はじめに
 Myotonic dystrophyはThomsen病に類似する筋強直症状に加えて,筋萎縮,内分泌障害など多彩な臨床症状を有する比較的まれな遺伝性疾患である.その発生や病態にはなお不明な点が多く近年注目されている.
 当院でも昭和37年の第291回整形外科集談会東京地方会において,南条がその詳細につき報告したが,その後さらに4症例を経験したので追加報告する.

筋病理組織図譜・6

末梢神経損傷(切断)

著者: 桜井実 ,   黒沢大陸

ページ範囲:P.458 - P.458

 筋の神経支配が剥脱されると随意性収縮がなくなり萎縮が進行して行く.第1図は成人,腕神経叢損傷45日後の上腕二頭筋で臨床的に筋力は零でEMGでもfibrillationが認められた部分である.正常筋に比べて直径が一様に細くなり筋鞘核が増加し,かつ円形化し,第2図の強拡大では核の筋線維内への移動が観察される.
 H-E染色で内部構造の変化は認め難いが,コハク酸脱水素酵素染色で特異な円形の酵素活性脱落が発見される(第3,4図).これはすべての症例に出現する訳ではないがtarget fiberと称せられdenervationの際出現する特有の変化である.この症例では赤筋線維にのみ変化が認められる.注意深くH-E標本をみると第2図の中央のような変化が辛うじて捉えられることもある.第5図のようにphosphorylase活性も欠如していることからtargetの内部はsarcoplasmではなくmyofibrilの変性したものと思われる.脱神経により一般に酵素活性は低下し,さらに萎縮が進行する.第6図は腓骨神経切断後4ヵ月の前脛骨筋で,筋線維は細くなりところどころ食細胞が古い萎縮線維を取り巻き,間質の結合織が増殖してきている.

整骨放談

人類は化石になる

著者: 岩原寅猪

ページ範囲:P.468 - P.468

 人類は化石になる.千年の後か万年の後か,それは知らない.
 日本人の平均寿命が50歳から70歳に延びた.まだまだ延びるだろう.梅毒が,結核が激減し,面疔が,丹毒がなくなつた.近いうちにがんも治せるようになるだろう.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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