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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科7巻7号

1972年07月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 1

著者: 金子仁

ページ範囲:P.490 - P.493

 1)線維性腫瘍
 線維性腫瘍は結合織細胞より発生した腫瘍であり,線維肉腫,隆起性皮膚線維肉腫,デスモイド,線維腫等がある.

視座

関節リウマチと骨コラーゲン

著者: 池田亀夫

ページ範囲:P.495 - P.495

 関節リウマチはいわゆる膠原病の範疇に入る全身結合織疾患で,その病変は関節のみならず,骨,筋肉,腱,血管などを侵す.結合織はコラーゲン,ムコ多糖,糖蛋白,エラスチン,レチクリンなどから構成される.関節リウマチにおいてこれらの構成要素がどのように障害され,変化するのかはリウマチの病態を知る上できわめて重要であるにも拘らず,未だ明確にされておらず,とくに人骨コラーゲンの生化学的研究はほとんどなされていない.
 骨は形成と吸収を繰り返し,その両者の平衡が負に傾いたときに骨萎縮ひいては骨破壊をおこす.関節リウマチにおける骨萎縮も同様の過程から生ずると考えられる.普通,骨萎縮は罹患関節周囲に初発するが,進行すると全身的におこる.教室管野らの研究によれば,この骨萎縮は単位体積あたりの骨質の減少であり,有機質,無機質の比率は正常の骨と変らず,いわゆる骨粗鬆症である.この骨萎縮はレ線像上老人性骨萎縮に類似するが,生化学的にみて同質であるのか,あるいは異質であるのか,問題である.

論述

AOI Compression plateの臨床応用—その2.Cross Plateによる股関節固定術について

著者: 山田勝久 ,   鈴木一太 ,   宝積豊 ,   永田覚三 ,   山野内忠雄 ,   林輝明 ,   大野正師 ,   奥山繁夫 ,   土屋恒篤

ページ範囲:P.496 - P.508

はじめに
 変形性股関節症に対して数多くの観血的治療法が試みられてきたが,本症の治療の最終目的が,完全な疼痛除去と良好な支持性であるとすれば,固定術こそ,最も確実な治療法であろう.この固定術の最大の欠点は関節の可動性が失われることであるが,このことが直ちに日常生活動作能力の低下につながるものではなく,疼痛がなくなり,支持性か改善されるので,術前より日常生活は容易になることが多い.ただこの固定術は決して易しい手術法とはいえず,この手術法が考案されてから一世紀近くになるにも拘らず一定した方式はいまだ確立されていない.古典的な固定術の合併症としては,骨癒合不全と長期間の外固定に伴う,膝関節の拘縮や血栓症などがあげられ,そのため確実な骨癒合と外固定期間の短縮をめざして多くの人々により,術式の改良が重ねられてきた.
 一方骨折に対する圧迫骨接合術の応用は最近特に注目を浴びているが,ただ単に骨片を固定するよりも骨の接触面に適度の圧迫力を加えた方が骨癒合が良好であることは,骨折にさき立ちKey(1932)にょり膝関節固定術の経験より述べられている.またこれらの事柄は組織学的にも,Krompecher(1935),Danis(1947),Schenk(1964)らにより裏付けられている.

膝のSpontaneous osteonecrosisに対する高位脛骨骨切り術の試み

著者: 腰野富久 ,   木下典治

ページ範囲:P.509 - P.518

緒言
 膝のspontaneous osteonecrosisはAhlbäckら(1968)1)2)Bauer(1970)5)BohneおよびMuheim(1970)14)らにより報告されて以来,次第に注目されてきたが,中高年者の膝疾患の中では比較的稀なものである.本疾患の特徴は,臨床的に膝内側部の激しい疼痛,レ線学的に離断性骨軟骨炎に類似したレ線像,strontiumによるscintigramでは病変部に異常に高い取り込みを呈すること,である1)2)5)6)14).とくにレ線像で大腿骨内顆の関節面に骨吸収像を認めるが(第1図),その部位が荷重面であること,罹患年齢が60歳前後に多いこと,などが離断性骨軟骨炎と異なる所見である1).また本疾患は,放置された場合に膝の内反変形が現われて,次第に悪化し高度の変形性膝関節症に移行するが14),このようなことは本疾患の治療に際し,重要な問題点となつてきている.われわれは本疾患と思われる23例を経験し,膝の内反変形をきたしたもののうち6例に,高位脛骨骨切り術を行ない良好な経過を得たので,その治療経験の概要を報告する.

膝関節周辺骨折の治療—特に手術的療法を中心に

著者: 脇田吉樹

ページ範囲:P.519 - P.527

はじめに
 膝関節を構成する大腿骨下端部,膝蓋骨,脛骨上端部などの骨折は交通外傷に起因するいわゆる"bumper fracture" "dashboad fracture"の増加に伴い,最近増加の傾向にある.
 膝関節周辺の骨折は
 1)膝関節の要求する高度の可動性と支持性という2つの異質の機能の回復を得らねばならない.
 2)側副靱帯,十字靱帯,半月板などの軟部組織の損傷を合併している場合が多い.
 などの理由より,治療上,膝関節に重大な機能障害を残すことがまれではない.当院にて入院加療を行なつた膝関節周辺骨折の症例を統計的に観察し,本骨折の治療法,特に手術的療法を中心に記載する.

腰部椎間板ヘルニアの特殊型と周辺疾患について

著者: 蓮江光男 ,   伊藤良三

ページ範囲:P.528 - P.535

 腰部椎間板ヘルニアの診断治療の体系は諸先輩の努力によりほぼ確立されたといつてよいであろう.しかし,その臨床症状が腰痛,坐骨神経痛というきわめてありふれた愁訴であることが多いので,同様な症状をひき起こす他の疾患との鑑別が常に問題となる.
 近年ややもすれば安易に腰部椎間板ヘルニアという診断を下すoverdiagnosisの傾向がみられるが,このような場合は別としても,明らかな椎間板ヘルニア様症状を呈しながら他の疾患であつたり,また逆に非典型的な経過を示す椎間板ヘルニア症例を見ることも決して稀ではない.このような場合には誤診を招かぬよう慎重な診断が要求されると共に,治療面でも臨機応変の処置が採られねばならない.

手術手技

脊髄腫瘍外科におけるMicrosurgery

著者: 辻陽雄

ページ範囲:P.537 - P.550

I.脊髄腫瘍外科とMicrosurgery
 1887年Horsleyにはじまる脊髄腫瘍の摘出が成功して以来,脊髄腫瘍の臨床症候学的知見もまた急速に解明され,1919年Dandyによるair myelographyにつづく各種の脊髄腔造影剤の開発,最近ではDjindjian,Doppmanなどによる選択的脊髄動脈撮影法の確立によつて,腫瘍の診断はより確実なものとなり,外科的治療にたいし有力な情報が与えられるようになつた.
 本邦における腫瘍摘出は1911年の三宅にはじまるが,当時は専ら神経学的診断によつて行なわれたことは言うまでもない.myelographyの導入によつてわが国でも本症の手術施行症例は急速にのび,1935年の前田,岩原の報告では全国例65例を数えているが手術は肉眼的なものであつた.したがつてその手術成績はとくに髄内腫瘍において芳ばしいものとは言い難かつた.

検査法

整形外科診療におけるASLO価の問題点(そのII)

著者: 池本和人 ,   園崎秀吉 ,   鈴木充 ,   松浦美喜雄 ,   鳥巣要道

ページ範囲:P.551 - P.558

I.はじめに
 ASLO価測定はリウマチ性疾患の鑑別診断に欠くことができない.周知のように血清中ASLO価は溶連菌感染に併ない上昇する.その正常上限値は成人125単位,小児250単位とされているが,整形外科外来においても,高ASLO価を示す小児にしばしば遭遇する.
 われわれはこうした小児の高ASLO価が必ずしも病的なものでなく,したがつて患者や家族に過度の心配を与えることのないよう配慮しなければならないことを数年来主張してきた1),2).しかし,溶連菌感染後の一定期間は,リウマチ熱,糸球体腎炎,紫斑病,小舞踏病など,一連の疾患を続発しやすい.この時期を後溶菌感染状態(post streptococcal state)と呼び,準病的状態と考える説もあり,溶連菌感染の診断は臨床上ますます重要な課題となつている.

対談

脊椎外科ひとすじに

著者: 近藤鋭矢 ,   小谷勉

ページ範囲:P.559 - P.566

脊椎外科に取組む
 小谷 4,5年前に先生との対談の企画があつたのですが,突然先生が顔面神経痛におかかりになつて,それで取りやめになりましたと記憶していますが….
 近藤 あれは昭和42年の10月頃でしたね.

学会印象記

国際パラプレジア学会に出席して

著者: 手束昭胤

ページ範囲:P.567 - P.572

 私は1971年10月5,6,7日の3日間,ボストンにおいて開催された国際パラプレジア学会(会長;Dr. H. S. Talbot)に教室の井形高明講師と共に出席する機会を得た.
 この学会の正式の名称はJoint Meeting of the International Medical Society of Paraplegia and 18th Spinal Cord Injury Conference of the Department of Medicine and Surgery of the United States Veterans Administrationである.学会の行なわれたのはボストン市内のHarvard Medical Complexの中にあるBoston Children's HospitalのJimmy Fund Building Auditoriumであつた.ここは市内といつてもDown Townより地下鉄で30分位行くと,非常に静かな,ひなびた小駅に着き,ここより歩いて数分のところであつた.

臨床経験

脊椎分離症・辷り症に対するLangenskiöld法およびその変法の手術成績

著者: 山本竜二 ,   片山国昭 ,   高田一彦 ,   片山雅宏 ,   下島治 ,   黄河清 ,   矢橋健一

ページ範囲:P.573 - P.583

はじめに
 脊椎分離症・辷り症に対する観血的手術法については従来から多くの考案がなされているが,そのいずれも一長一短があり,第43回日本整形外科学会総会の協同研究において,岩原名誉教授1)は脊椎分離症・辷り症の成因はもとより治療法もまだ確立されたとは言い難いと結ばれているが,現状は全くその通りであると思う.
 われわれは昭和43年5月より東急病院および矢橋整形外科病院を訪れた脊椎分離・辷り症に保存的療法を行ない,症状の改善の芳しくなかつた69例に後方固定術の一方法であるBesa2)およびLangenskiöld3)の考案による棘突起間後方固定術と,われわれの考案によるその変法を行ない,術後6ヵ月以上を経過した55例の成績について検討したので報告する.

Ehlers-Danlos症候群の1例

著者: 檜山建宇 ,   井上昌二 ,   佐々木佳郎

ページ範囲:P.584 - P.591

はじめに
 Ehlers-Danlos症候群は,1901年Ehlers,1908年Danlosにより発表された皮膚の過弾力性,関節の過可動性,皮下出血,皮膚の軟属腫に似た偽腫瘍などを合併する中胚葉性組織の先天性発育不全にもとづく一連の症候群であり,1936年,Roncheseは本症候群のうち,1)皮膚,血管の脆弱性,2)皮膚の過弾力性,3)関節の過可動性を挙げ,これらを3症候とした.
 最近,われわれはRoncheseの3症候をそなえ,幾つかの骨関節の変形を合併した本症候群の1例を経験したので,その臨床経過,光学顕微鏡的所見,電子顕微鏡的所見などについて文献的考察を加えて報告する.

筋組織病理図譜・7

多発性筋炎

著者: 桜井実 ,   三浦幸雄

ページ範囲:P.536 - P.536

 筋力低下,四肢筋の運動痛,圧痛があり,筋萎縮が比較的急速に進行する場合,上記疾患が疑われる.初期に発熱を伴うこともある.
 ここに提示する症例は3ヵ月前から発症した27歳の女性で,臨床的にはるいそう著しく殿部の筋痛を訴え筋力も低下し握力は左右とも1.0kgしかない.EMGで上腕二頭筋,前脛骨筋において低電位,干渉波が見られる.CPK, 1315,Aldolase, 59,LDH, 2430,GOT, 79単位といずれも上昇しており,進行性筋dystrophyとの鑑別が必要となつたが,赤沈値1時間71,2時間107mm,γ-globulin28.9%と炎症の存在が疑われた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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