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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科7巻8号

1972年08月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 2

著者: 金子仁

ページ範囲:P.594 - P.597

2)線維肉腫(悪性度の比較的強い例)
 肉腫は,一般に,悪性度が強くなればなる程,異型性が強くなり,そのオリジンが分りにくくなる.線維肉腫も例外でない.ここに載せる肉眼像とそのX線像は阪市大の例で,早い時期に肺転移を来し,死亡した例である.
 組織像は東一病理で経験した例でやはり,早い時期に肺転移で死亡した,大腿部皮下に発生した20歳,女性の例である.

視座

人工関節のことども

著者: 片山良亮

ページ範囲:P.599 - P.600

 人工関節の研究は1924年オランダのBoeremaが犬の膝関節について人工関節の動物実験をおこなつたに始まる.しかし,その後は人工関節に関する文献がわれわれの目にふれなくなつていたところ,1938年にPhilip Wilesが不銹鋼で股関節の人工関節をつくり,同年Smith-Petersenがvitalliumでヒップカップを,さらに1942年にはAustin T. MooreとHarold Ray Bohlmanが股関節の人工骨頭を考案している.かくして股関節のmould arthroplastyは人工骨頭・カップ・人工関節の3方向に非常な勢で開発されてきた.しかし,人工骨頭とカップの著しい発達と,その普及化の旺盛に眩惑されたかのように,人工関節はその構造や資材面に多くの難問題を抱えていることと相俟つて,その開発機運は遅滞しているかの感があつた.
 かくするうちに,1955年膝関節の人工関節がB. Wallduisによつて臨床応用をみるにおよんで,膝関節の人工関節の抬頭をみるにいたり,その後は地道な発達をとげて今日に至つている.

論述

Love手術後愁訴再発例の検討

著者: 三原茂 ,   安達清治 ,   麻生英保

ページ範囲:P.601 - P.612

はじめに
 当科開設以来10年間における腰部椎間板障害の手術症例は237例で,手術法としてはほぼ半数の124例に対してLove法が行なわれている(第1表).この数字はLove法の有用性を物語るものであつても,各手術法の優劣を示すものではないことをあらかじめおことわりしておきたい.われわれは過去の経験と諸家の業績を参考として,開設以来本症に対する手術の基本的方針としてLove法を採用し,症例を重ねて来たために結果としてこのような件数になつたものと思われる.しかしながら次第に臨床経験を重ねるにつれ,Love法にもおのずから限界のあることを知るとともに,一方では手術適応の拡大と,本症の手術成績を一層向上させる意図のもとに前方固定術を採用し,現況では両術式がそれぞれの適応決定のもとにほぼ相半ばして実施されているのが実情である.
 しかし本稿では今日までわれわれが行なつて来たLove法の症例についての反省と検討を加えてみたいと思う.

上腕骨骨幹部骨折に対する逆行性髄内釘法

著者: 望月義紀 ,   平川寛 ,   渡貞雄 ,   河村圭了

ページ範囲:P.613 - P.619

はじめに
 上腕骨骨幹部骨折は,介達外力によるものもあるが,打撲・衝突などの直達外力によることが多い.また上腕骨の骨折型のうちラセン骨折のほとんどが,投球,腕相撲など介達外力によるとされ,直達外力に多い横骨折は,大腿骨・脛骨骨幹部骨折などとともに,成書には仮関節を形成しやすいといわれている.一方,上腕骨骨幹部の中・下1/3は,橈骨神経が骨に接しているという解剖学的な条件もあるところから,これを一次的にあるいは,二次的に損傷して橈骨神経麻痺を合併することもある.したがつて,本骨折は長管骨骨折のなかでは比較的頻度の低いものではあるが,その治療は,臨床上重要な意義をもつている.
 ところで,上腕骨骨幹部骨折の治療は,その骨折型により,保存的には直達牽引法をはじめHanging cast法の考案をみ,また手術的に,鋼線締結,螺子固定,plate固定,髄内釘法など種々な方法が行なわれている.

頸髄損傷の脊髄病理所見—主として前脊髄動脈系を中心として

著者: 新宮彦助 ,   嘉本崇也 ,   木村功 ,   那須吉郎 ,   隅坂修身 ,   金谷拓郎 ,   塩谷彰秀

ページ範囲:P.620 - P.627

 外傷性頸髄損傷において,損傷高位の根動脈や前脊髄動脈幹がどの程度損傷されているか,脊髄麻痺にこの動脈系がどのように関与しているか,脊髄損傷の麻痺の型や治療上問題となつている所であるが,私達は過去8年間に陳旧例を含めて約200例の脊髄損傷患者を加療した中で死亡した頸髄損傷例の剖検の機会をえたので,頸髄部の前脊髄動脈幹の態度を中心として検索した.

足部疾患に対するShoe insert

著者: 渡辺英夫 ,   米満弘之

ページ範囲:P.628 - P.634

はじめに
 整形外科領域における足部の慢性柊痛を伴う疾患は,外反扁平足をはじめpainful heel syndrome,中足骨痛,種々の骨折およびその後遺症としての変形など,比較的多く遭遇するが,これらの非観血的治療については種々の困難さを感ずる事も少くない.装具療法を例にとってみても,その矯正能力,装着感,外観,耐久性,など考えてみると満足できるものは多くなかつたといえよう.なかでも足の縦軸弓隆低下を伴う外反扁平足は頻度の高い疾患であるが,これに対して従来より処方されていた足底挿板は,靴敷きにフェルトや革のパッドを張り,単に舟状骨部を持ち上げるものが大部分であった.これは靴を履いている時はある程度の効果があるとしても,靴を脱いだ時は使用できない欠点がある.また靴を履いている場合でも普通の靴ではquarter(側革)部が弱いので,アーチ保持の効果は甚だ疑わしいといえる.いつぽう長いcounter(月形)やThomas heelなどを持つた整形外科的靴にscaphoid padやcookieでarch supportをするのは,もちろん有効であるが,この作成は現在の所どこの病院ででも簡単にはできないし,作れるとしても製作コストも高く一般的ではない.

手術手技

関節リウマチ指関節のいわゆる早期滑膜切除術について

著者: 立沢喜和 ,   堀純市 ,   諸富武文

ページ範囲:P.635 - P.642

緒言
 近年,Hand Surgeryの発達とともにrheumatoid handに対しても膝関節などと同様に早期より滑膜切除術を中心とした観血的療法が加えられるようになり,幾多の報告がみられる4,8〜12).しかしながら,いわゆる早期滑膜切除術の意義,時期ならびに手技などに関する未解決の問題がなお残つている.
 今回,われわれは関節リウマチの比較的早期の指関節に対して滑膜切除術のみを施行した51症例について検討を加えるとともに,いわゆる早期滑膜切除術の主たる問題点についてわれわれの考え方で述べたい.

検査法

マイクロラジオグラフィーによる骨組織中のカルシウム塩の定量法

著者: 星野孝 ,   七村嘉文

ページ範囲:P.643 - P.651

はじめに
 物理学的方法による微量定量により,生物学的試料中のある物質の分布と定量についての情報獲得への途がひらけたのは最近のことではない.たとえば260ミリミクロンの波長における吸収帯を利用して紫外線顕微鏡により組織中の核酸の分布をしらべることが可能になつてからほぼ四半世紀が過ぎた.またX線吸収を利用して組織中の元素定量が可能であることをEngströmが示した1)2)3)4)5)のも大分以前のことである.ところがこのX線吸収によるカルシウム塩の微量定量が余りひろく行なわれなかつたのは,面倒な硬組織学的手技と,特殊なX線発生装置や高価な分析機器を必要とするからであろうか.また各種の操作の過程において入り込んでくる誤差もわれわれをなやます大きな障害である.従つてX線によるカルシウム塩の微量定量はややもすればわれわれ整形外科医の手におえない次元のものとしてうけとられてきた.

境界領域

Synergy(共同運動)

著者: 岩倉博光

ページ範囲:P.652 - P.658

はじめに
 共同運動とは,一つの能動的な運動やある程度コントロールされた運動に伴つておこる不随意運動であつて,これが元の運動と別の部位に同時におこるものである.
 この共同運動は,生理的なものであつてもよいし,病的な場合,すなわち神経疾患の考慮される時にも現れる.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(11)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   鳥山貞宜 ,   福田宏明

ページ範囲:P.659 - P.665

18歳女子の左下腿部痛
 A 患者は18歳女性,主訴は左下腿痛,生後5カ月の時から左下腿の彎曲に気付き東大病院を受診したが,経過を見ようということで,そのまま放置していました.学生時代に左下腿が太いのではないか,といわれたことがあるそうですが,45年の11月に100メートルくらい歩くと,左下腿に痛みが出るようになり,私共の外来を受診しました.
 初診時の所見は左下腿外側下中1/3に膨隆があり,圧痛,熱感などはありません.左下肢長はS. M. D.で約1cm短縮があり,全身変形,皮膚腫瘍,皮膚異常色素沈着はありません.血清カルシウム正常,アルカリフォスファターゼ正常,その他臨床検査には異常はありませんでした.

学会印象記

第3回先天股脱研究会印象記—股関節造影の問題点と限界

著者: 坂口亮

ページ範囲:P.666 - P.669

 第3回先天股脱研究会は,整形外科学会総会2日目の4月7日(金)の夜,井村慎一講師はじめ金沢大学の教室の方々のお世話で会合を持つことができた.学会2日目の晩は大てい同門会などが行なわれるが,それにもかかわらずなかなかの盛況で,参会者は優に100人を越したと思う.あらかじめ中心テーマは「股関節造影の問題点と限界」ときめられ,応募演題が14題もあつて立派なプログラムができた.
 ただ,3時間足らずの間に演説を巧く消化してその上討論を尽せるか,ということに幹事の方の非常な御苦心があつたと思う.結果としてまことに意義のある面白い会であつた.

臨床経験

AOI Compression plateの臨床応用—その3.前腕骨骨幹部骨折に対する経験

著者: 鳥潟泰仁 ,   山田勝久 ,   永田覚三 ,   宝積豊 ,   小林昭 ,   山口智 ,   林輝明

ページ範囲:P.671 - P.677

はじめに
 前腕骨々幹部骨折は前腕の解剖学的,機能的特殊性より難治な骨折の一つとされ,観血的療法を必要とする場合が少なくない.とくに両前腕骨々折に対する観血的療法として,従来,Eggers plate,Küntscher髄内釘,Kirschner鋼線,rush pin等多種多様の固定材料を組み合わせた幾多の方法が諸家により考案されてきた.そのうちでも椀骨にEggers plate,尺骨にKüntscher髄内釘を使用する方法が比較的良いとされ,今日広く用いられているようであるが,固定性の強固さ,前腕回旋運動の維持という面で今一つ問題がある.
 1963年Müller一派により開発されたAO法は,近年,本邦においても杉本,宮城,棈松,角南らにより紹介され,その報告例も次第に増加しつつある現状である.われわれは第19回東日本整形外科学会シンポジウムにおいてdouble angled hip plateの使用経験を,第372回整形外科集談会東京地方会において十字plateの使用経験を報告した.

四肢の骨折,脱臼に伴う動脈損傷について

著者: 伊藤維朗 ,   東博彦 ,   立石昭夫 ,   曾我恭一

ページ範囲:P.678 - P.683

はじめに
 整形外科の日常診療において重篤な四肢循環障害に遭遇することは必ずしも稀ではないが,ほとんどは慢性経過をたどり,一刻を争う外科的処置を要するものは少ない.医原性疾患であるフォルクマン阻血性拘縮は病初において敏速な処置を要する循環障害であり,急性四肢循環障害の代表とされるが,通常,主要血管の再建手術を要する場合は稀である.
 他方,交通事故による外傷の重篤化や,労働災害,スポーツ外傷などの増加に伴い.かつては市民生活上稀であつた骨折や脱臼に併発する重要血管損傷の患者が目立つて来つつある.この様な症例では初期治療が適切かつ迅速でなければならない.損傷が鈍的で皮膚の破綻がないと,血管損傷の発見がおくれ,処置が充分でないままに時間が経過し急性循環障害を進行せしめ,末梢組織の窒息による阻血性拘縮を残したり,肢を失うなど,高度の機能障害を残す場合がある.われわれは昭和41年以降,東大整形外科において四肢の骨折または脱臼に伴う重要血管損傷の患者を8例経験したので報告し,その診断および治療上の問題点を指摘するとともに,現在の技術レベルにおいて採用すべき治療原則を定める一助として,若干の議論を展開する.

種々の奇形を合併した先天性両側性脛骨完全欠損症の1例

著者: 兼松英夫 ,   堀田道男 ,   所忠 ,   山路兼生

ページ範囲:P.684 - P.687

はじめに
 日常われわれ整形外科医が遭遇する種々の先天性奇形の中でも,四肢長管骨の先天性欠損症は比較的稀な疾患であり,しかも本症の特徴として長管骨欠損単独として見られることはむしろ少く,多くの場合その他の種々の奇形を随伴し,従つてそれだけに患者のADL障害も大きく,本症の治療法には今日なお多くの問題が残されている.
 先天性脛骨欠損症は1841年,Ottoが記載して以来諸家の報告を見るが,本邦においても,大正5年金子の報告以来過去44例の報告を数え,うち両側性でしかも完全欠損の症例は8例を数えるのみである.

筋組織病理図譜・8

Werdnig-Hoffmann病—幼弱性進行性脊髄性筋萎縮症

著者: 桜井実 ,   成沢邦明

ページ範囲:P.670 - P.670

 いわゆるfloppy babyという表現で筋力の低下を示す乳幼児の疾患はしばしば小児科から整形外科領域へ紹介されてくる。大きく大別して筋dystrophyのcongenital型か脊髄の疾患を考えさせられる.
 本症例は生後5カ月の男の乳児で,生後1カ月頃より運動量が少くなり次第に麻痺が進行して4カ月頃からほとんど身動きもできなくなった。EMGで多少動きの残っている前脛骨筋から4mV程度のgiant spikeが観察されたが,全く動かない部位のpotentialはsilentであった.血清のCPK,aldolase,LDHなど筋疾患を反映する検査のいずれにもひっかかりがない.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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