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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科7巻9号

1972年09月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 3

著者: 金子仁

ページ範囲:P.690 - P.693

 3)線維腫およびデスモイド
 良性の線維性腫瘍といえば線維腫である.割合に多い腫瘍で,被膜を有し,硬度は硬く,割面は灰白色充実性である.よく見ると線維束が錯綜して"カラクサ模様"を呈する.これは後述する平滑筋腫に最も定型的に見られるが,線維腫にも類似した像が見られる.大きくなると腫瘍組織の一部が変性して小さいチステを形成することもある.
 組織学的には線維芽細胞よりなるが,一般に細胞成分が少なく,間質の膠原線維が多い,従ってワン・ギーソン染色で赤く,アザン・マロリー染色で青く染まる部分が多くなる.染色標本を肉眼で見て見当のつく場合も多い.

視座

「過保護」整形外科

著者: 飯野三郎

ページ範囲:P.695 - P.695

 近ごろ一般社会現象としての「過保護」が云々され,例えばその代表に,大学の入学・卒業にまで母親が幼稚園なみに付添つている光景がある.こうした子は,当然そのずつと幼少時から荒い風にも当てず,家庭教師やらお抱え医師による過保護の連続であるところに問題がある.すなわち,発育・成長という最も大切な人間形成期に,本来必須な適性刺戟を与えられていないということである。勢い,こうして世間に放り出されたモヤシのような青年は,忽ち蔽いかぶさる社会的洪水の物理的・身体的・精神的ストレスになぎ倒され,挫折して,人生の隅にかくれてしまうか,或いは逆説的な自己欺瞞の頽廃に身をゆだねざるを得ない.同じことが近ごろの医学の世界でも,例えば薬剤の過剰投与や誤・濫用の弊として日常現われている.この現象が我々の整形外科でも例外ではないことは,ことさら身にしみる思いがする.
 その最も卑近な例の1つとして,近ごろ大流行のAO副子を挙げざるを得ない。なるほど,生体無刺戟の材質金属を,強度要求に十分こたえるようにデザインし,骨折端に圧力を加え,外装固定の必要もなく即近関節を初めから可動にし,骨折部は「仮骨なき」一次的治癒を営む.話は一応尤もで,これでどこが悪いかということになる.

論述

一次性変形性股関節症について—特にそのレ線分類に関して

著者: 有冨寛

ページ範囲:P.696 - P.706

緒言
 股関節症は古来から知られていた疾患の一つで,Huhter(1759)によつてはじめて科学的に記載されたといわれる.そのうち一次性あるいは原発性変形性股関節症の明確なる臨床診断基準の設定は,過去幾多の研究にもかかわらず,なお困難であり,したがつてその病因も不明で治療法も確立されているわけではない.
 よつて現在の時点では一次性変形性股関節症を定義するとするならば,発熱,貧血などの全身症状を伴なわず股関節の疼痛,運動制限などの臨床症状があり,特有なレ線所見を認めるが,過去および現在に何ら原因と思われる疾患あるいは外傷などを見い出さない股関節症とせざるを得ない.この疾患に対し過去数々の治療法・手術が行なわれて来たが必ずしも常に満足すべき結果のみではなかつた.近年治療法特に手術法の種類が増加するとともに,その病因が不明であるが故に,治療法特に手術法の選択をより正確に行なうためにもこの疾患の臨床的,レ線的,病理的な再検討が必要となつて来た.

変形性股関節症に対するオマリー式筋解離術の成績

著者: 桐田良人 ,   宮崎和躬 ,   渡辺秀男 ,   林達雄 ,   山村紘 ,   広藤栄一

ページ範囲:P.707 - P.717

はじめに
 変形性股関節症に対する手術法には,従来より数多くの方法があり,現在比較的多く行なわれている方法は,Pauwelsの内反骨切り術に代表される各種の転子間骨切り術,Voss手術およびO'malley手術などの筋解離術,各種の関節形成術,関節固定術,および近年とみに脚光をあびて来た人工関節置換術などがある.
 私達の天理病院が,昭和41年4月1日に開設されて以来,46年3月末日までの5年間に行なつた変形性股関節症に対する手術例数は,164例,169関節で,その術式区分は,O'malley式筋解離術86例88関節,関節固定術はAOI十字プレートを使用した6例を含めて31例,各種の転子間骨切り術25例,Auflanc式関節形成術13例,Mackee式人工関節置換術7例,Chiari式水平骨盤骨切り術1例,Voss氏手術1例,若年者に施行した臼蓋形成術2例および若年者の臼蓋部の巨大嚢胞に対しての骨移植術1例である.

大腿骨骨折に対する骨髄内固定法と内副子法の併用について

著者: 宮城成圭 ,   金沢知基 ,   宮崎守正 ,   箕田政人 ,   海江田康光

ページ範囲:P.718 - P.724

いとぐち
 骨髄内固定法に対するKüntscher9,10)の一貫した考え方は,本法により強固にして完全な固定を行なうことにある.その手段としてreamingを行ない,大口径の骨髄釘を用いるが,この原則に従って行なわれた大腿骨々折でも,遷延治癒ないし偽関節は跡を断たない.
 大腿骨はその構造よりして中央3分の1部をのぞけばたとえreamingを行なっても骨髄腔と釘の口径を一致させることはできず,ことに骨萎縮の強い症例や,粉砕あるいは欠損のある場合の完全な固定は困難なことがある.ことに骨髄内固定法の欠点の1つとして挙げられるものに,本法では回転力の固定が弱い点にある.例えばAllen1)がbiomechanicalな面より検討し,13mm口径の骨髄釘を用いると,屈橈力に対しては正常骨の半分の力があるが,捻転力に対しては,はるかに弱いことを指摘している.

骨片骨折観血的整復時における接着剤の使用経験

著者: 山田道 ,   河合尚志

ページ範囲:P.725 - P.734

はじめに
 われわれの救急病院に送られてくる骨折の過半数は下腿骨折である.その中で骨片骨折はほとんどがバイクによる交通事故で多くの場合,開放性である.このような症例の治療に関しては最初の処置,軟部組織の修復,骨折に対する治療法の選択その他問題点が多い.特に骨折を観血的に治療する場合,整復と固定の可能性に対する判断が難しい,事実骨片が1〜2個の場合は何とかなるにしても3個以上の骨片をまとめるとなると技術的に著しく困難なことが多い.
 接着剤を用いて骨片を接着した最初の症例は術中とり出した4個の骨片をscrew,あるいはwireを用いてまとめようと考慮したが成功おぼつかなく,やむなくcyanoacrylate系接着剤aron alpha Aを用いて骨片を接着し,1個の骨片にまとめ整復操作後,内固定を行ない良好な経過をたどったので,その後も追試を行なった.症例数は4例にすぎないが,接着剤使用に対する一応のめどがついたので報告する.

五十肩の治療成績について

著者: 岡部芳博 ,   高岸直人 ,   加川渉 ,   山田元久 ,   奥田哲章 ,   鳴戸聡雄 ,   葉山泉

ページ範囲:P.735 - P.740

緒言
 1872年Duplayにより初めて"Periarthritis"という言葉が肩関節について使用され,これは比較的穏やかな症状を呈するstiff and painful shoulderについて用いられた.そして彼はこれをsuperior humeral jointおよびsubacromial bursaの病変によるものだと信じていた.Baer(1907),Painter(1907)などはsubacromial bursaの石灰沈着を認めこれがその病因と考えた.またCodman(1934)はrotator cuffの断裂および腱炎に注目した.そしてここで彼は‘the frozen shoulder’について言及し最初これをadhesive subacromlal bursitisとみなしていたが実際には証明できずrotator cuffのTendinitisとみなした.一方Bera(1910〜11),Pasteur(1932),Meyer(1928),Gilcreest(1934),Schrager(1938),Lippmann(1943),Beyer(1947)らは上腕二頭筋長頭腱に注目しこの退行変性,部分断裂および腱鞘炎を発生原因とした.

手術手技

膝蓋骨骨折の手術的療法

著者: 桜田允也

ページ範囲:P.741 - P.747

はじめに
 膝蓋骨骨折で離開のない症例は保存的に治療し,離開のある時は,中枢骨片は大腿四頭筋の筋力が大きいために非観血的に整復固定することは困難で,観血的治療の適応とされている.
 保存的治療としては,離開を起させぬように膝関節伸展位に大腿上端部以下ギプス固定を行なう.関節血腫のある時は穿刺を行なう.ギプスが乾燥すれば歩行を許し,約3〜4週でギプスをシャーレとし,自動運動,機能訓練を主とする後療法を行なう.その予後は普通きわめて良好である.

検査法

牽引下における股関節のX線診断

著者: 東博彦 ,   伊藤維朗 ,   田川宏

ページ範囲:P.748 - P.752

はじめに
 脊柱や関節のX線像でときにガス陰影がみられ関節軟骨面がうつし出されることがある.
 この現象は古くより気づかれており,真空現象(vacuum phenomenon)としてよく知られている,もつともしばしばみられるのは幼児の肩関節であるが,このほか股,膝関節や椎間板,恥骨結合などでもみられている1〜4)

対談

自然の営みに学ぶ

著者: 河野左宙 ,   山本真

ページ範囲:P.753 - P.760

 山本 日本整形外科学会の重鎮であります河野名誉教授の対談のお相手をさしていただきますことは,たいへん光栄に存じます.たぶん私が「臨床整形外科」の読者の代表にえらばれましたのは同じ九州大学の整形外科で学んだ大先輩と若輩の対談もいいだろうということではないかと想像しております.
 私が九大整形外科に入局いたしましたのは昭和27年でして,河野先生はすでに鳥取大学から,新潟大学に赴任された翌年ですので,直接御指導をいただいたことはないわけでございますが,JK膜のKの字が河野先生の頭文字であると聞かされまして,あこがれに似た尊敬の念を強く抱いたことをよく覚えております.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(12)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   烏山貞宜

ページ範囲:P.761 - P.764

36歳男子の右下腿痛
 A 患者は36歳の男子で,職業はタクシーの運転手,主訴は右の下腿の疼痛です.
 既往歴は10年前,Tonsillektomieをやつた以外に特別なことはありません.

臨床経験

Osteitis Pubisについて

著者: 原田寛 ,   広畑和志

ページ範囲:P.766 - P.773

はじめに
 恥骨結合周辺の激痛を主訴とするosteitis pubisに関しては,Elliotson(1827)の記載に始り,Leguer & Rochet(1923)に続いてEdwin Beer(1924)が最初の英文報告を行なつた.以来,本疾患は主として泌尿器科領域において報告され,特にretropubic prostatectomy(Millin 1949)の紹介以後,急激に増加した.しかしながら,Kleinberg(1942)はこれと全く同様の症候のある女性例を報告し,産婦人科領域においてもPearlman(1952)以来,かなり報告されており,正常分娩の後にも起こり得る合併症と考えられる.更に,明らかな外傷由来の症例や,全く原因不明のものなどを含めて,今日では一つの独立疾患として扱われるようになつた.
 一方,本疾患の病因に関しては,炎症説,外傷説,血管運動神経障害説,その他の仮説があり,しかもこれらの2つ以上が同時に要因をなしたと思われる症例が多い.本疾患が比較的稀であること,ならびに自然治癒の傾向が強いことなどから,病理学的にも未だ決論が得られていない.本疾患の定義もまた曖昧な点がある.これらのことから当然治療法に関しても決定的なものが見られない.

筋組織病理図譜・9

結節性動脈周囲炎

著者: 桜井実

ページ範囲:P.765 - P.765

 激しい筋肉の運動痛,圧痛があり,かつ筋萎縮を伴う疾患として多発性筋炎(7月号,536頁)が先ず考えられるが,類似の膠原病として上記標題の疾患が知られている.激しい筋肉痛を訴えることが特徴的で,陳旧性になるとリウマチ反応が陰性となつても疼痛のみが残ることがある.第1図に示したものは50歳男子でがんこな腰痛があり他覚的所見に乏しいため詐病とも思われたが,筋生検を行なって見た所,筋膜内血管周囲の細胞浸潤と閉塞が認められた.第2図は45歳の女性で全身の筋肉痛を訴え,リウマチ反応は陽性であるがCPKは正常範囲にあり,前脛骨筋中の小動脈の炎症,肥厚,閉塞および周囲の筋線維の萎縮,中心核などが見られた.急性の初期炎症に引き続いて陳旧性に移行した所見と思われる.筋線維の変化は血管の炎症を示す周囲以外に著変がないが,この症例では第3図のコハク酸脱水素酵素活性の染色の態度に見られるように色の淡い,いわゆる白筋線維の萎縮が著明で血行障害による変化かと思われる.
 動脈周囲炎は多発性血管炎ともいわれ,静脈にも変化が起こるとされている.第4図に示したものは長期間筋肉の疼痛を訴え,萎縮が著しい35歳の女性の下腿筋の一部で,小動脈周囲の細胞浸潤,間質結合織の増殖の他に筋線維間隙に存在する毛細血管の甚だしい肥厚があり,陳旧化したものの変化と考えられる.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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