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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科8巻1号

1973年01月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 7—横紋筋肉腫 2

著者: 金子仁

ページ範囲:P.2 - P.5

 横紋筋肉腫を組織学的に診断するには,腫瘍細胞内に横紋を見出すのが最も確実である.しかし正常の横紋でも僅かの変性で消失する.まして肉腫細胞内の横紋が発見されるのは稀である.横紋筋肉腫は横紋筋から発生する場合が多いので,横紋のある細胞を認めても直ちに横紋筋肉腫とはいえない.ウッカリすると腫瘍細胞ではなく,周囲の変性または再生した横紋筋を見ているかも知れないからである.
 今回は正常横紋筋の染色態度を主として掲載する.グリコーゲンを富有し,格子線維が多いのが特長の一つでもある.また,胎児横紋筋も並べて出したが,これらは横紋筋肉腫の組織像に似ている.原型として把握して戴きたい.

巻頭言

第46回日本整形外科学会総会の開催に当つて

著者: 河邨文一郎

ページ範囲:P.7 - P.8

 このたび,第46回日本整形外科学会々長に選挙され,責任の重大さをひしひしと感じている.田代義徳先生以来の輝かしい伝統を新らしい時代の息吹きに順応させ,活かしてゆくことは,やり甲斐のあることではあるが,まことに容易ならぬ仕事である.
 最近の大学紛争は大多数の医学会にも波及し,なかには学術総会までが流会になる学会すら生ずる有様である.幸いにしてわが整形外科学会は,歴代会長らの涙ぐましい御努力と会員諸賢の良識とによつてその様な事態は避けられてきたが,学会の体質の改善は急務と云わざるをえない.私自身,ここ数年間,学会の理事として,あの変革の嵐におしもまれつづけた.また昨年度は高瀬武平会長のもとで副会長として補佐役をつとめ微力を傾けたが,一言にして云うならば,私たちはこの紛争の教訓を学会の改革に活かしてゆかねばならない,ということである.

視座

時の流れ—1980年のある日の随想

著者: 児玉俊夫

ページ範囲:P.9 - P.9

 ☆1960年代の終りより1970年代の始めは日本のみならず世界的の流動期だつた.医学部から発火した大学斗争,医局制度,学会のあり方の批判等は数年を経ずして一応鎮静した.しかし,それが一般国民に与えた影響は大きかつた.1972年になつて,引きつづいての公害裁判で,企業側が惨敗するとは,その数年前に誰が予想したろうか.これは裁判という形のあるものなので,その結末が明白となるのだが,医学教育,卒後研修,学会のあり方,さらに医療制度等についても静かな変化が進んでいたのだつた.
 ☆テーマをしぼつてのグループの発達により,日本の医学も国際的に認められるようになってきた.1970年頃は,それらのグループも診療とその予後の追跡という臨床的のものであつたが,その中に見出された問題点から発展した研究が実つてきたからである.

論述

われわれの後方侵襲による椎体固定術(山口変法)の吟味

著者: 山口義臣 ,   石名田洋一 ,   土方貞久 ,   中山喬司 ,   宗近靖 ,   山口雅成

ページ範囲:P.10 - P.20

いとぐち
 椎間板ヘルニアの脱出髄核摘出にとどまるLove法は,現在広く愛用されているが,術後の不安定椎間による腰痛発生という後遺症に対しては,的確な手術法であるとはいい難い.また,前方固定術は椎間板症に対しては,椎間固定という目的は一応達するものの,固定と同時に後方に脱出した髄核や神経根との関係を確認することは困難である.
 脱出髄核を摘出し,同時に後方侵襲により椎体固定を行なつて来たClowardの方法は理想的ではあるが,その手術手技の困難さの為にその普及が阻まれて来た.

大腿骨転子部内反骨切り術の工夫

著者: 西尾篤人 ,   杉岡洋一

ページ範囲:P.21 - P.29

 股関節が何らかの原因で亜脱臼を生じた場合,骨頭の変形により関節面の不適合を生じた場合,病巣の位置関係から荷重面の変更が必要な場合などに転子部の骨切り術を行なつて関節面の整合をはかり荷重面や荷重方向を変更することは有効な治療手段として愛用されている.
 特に日常頻繁に遭遇する先天性股関節亜脱臼に対して荷重面積の増加と関節面適合の改善が得られるため,転子部内反骨切り術は好んで用いられる方法である.

肘関節部骨折に対するレ線診断法の一考察

著者: 兼光智 ,   坂木直樹 ,   渡辺雄 ,   松本直樹 ,   宇宿勝博

ページ範囲:P.30 - P.35

 小児期の肘関節部の骨折は小児骨折の中でも頻度が高く,他部の骨折と異なり重篤な循環障害や神経損傷を合併する上に,機能障害や変形治癒骨折,遅発性尺骨神経麻痺などの後遺症を惹起せしめるという治療上種々の問題を含んでいる.
 これらの合併症および後遺症を予測することは,上腕骨々頭以外の骨端核の発現をみない年齢であるために,はなはだ困難なものがある.

膝内障に対するPes Anserinus移行術の経験

著者: 伊藤恵康 ,   小山明 ,   高橋惇 ,   長沢正彦 ,   久保井二郎 ,   宮本建

ページ範囲:P.36 - P.42

はじめに
 膝関節は,屈伸運動に加えてscrew-home movementといわれる回旋運動が行われる事により,動的,静的な安定性を得ている事は衆知の事実である.しかしながら,従来より行われている手術によつて,一度靱帯損傷を受けた膝関節に対し,十分な可動域を持ちつつ,十分な安定性を与える事は困難な場合も少なくなかつた.この原因の一つには,前後左右への安定性に加えて,十分なscrew-home movementの再獲得の困難さが挙げられよう.
 最近われわれは,Slocumの回旋不安定性(Rotatory instability19))の概念と,それに対する鵞足移行術(Pes anserinus transplantation,以下PATと略記する)を知り,興味を持つたので,症例を選び,7例に手術を行い,いささかの知見を得たので報告する.

Functional Long Leg Brace(U. C. L. A.)の経験

著者: 村田秀雄 ,   沢村誠志 ,   中島咲哉 ,   郷田英機

ページ範囲:P.43 - P.51

はじめに
 弛緩性麻痺により一側下肢の支持性が失われた場合,歩行の手段として膝固定装置付の長下肢装具が普通用いられている.この装具は安定性の獲得には優れているが,歩容が不自然であり,立ち坐りに際し固定装置を操作するわずらわしさがある.一方大腿義足でも同様に,以前は膝固定式が常用されていたが吸着式ソケットの普及と共に我が国でも膝遊動歩行が一般化しつつある.この膝遊動歩行が単に歩容の面のみでなく,エネルギー消費の面でも優れていることは周知の通りである.1956年来U. C. L. A.では大腿義足歩行の原理を応用して膝固定をすることなく安定した歩行が得られる長下肢装具の開発が進められ,1963年にFunctional long leg brace(U. C. L. A.)として発表された1).私達はこの装具を9名の患者に試み好結果を得たのでその経験を報告する.

手術手技

肩鎖関節脱臼の手術的療法—Dewar法変法を中心として

著者: 小林昭 ,   土屋弘吉

ページ範囲:P.52 - P.61

はじめに
 肩鎖関節脱臼の特徴は,他の関節の脱臼と異なり,整復は極めて容易であるが,その整復位保持が非常に困難な点であろう.したがつて亜脱臼に対しては保存的治療で充分であつても,烏口鎖骨靱帯の断裂を伴ういわゆる完全脱臼では,特殊な場合を除いて,観血的に整復するのが望ましいと思われる.ところがその手術法は数多くあつても未だこれといつた決定的な方法は見当らない.われわれは昭和43年より本症に対してDewar6)の変法を用いて手術を行つてきたので,本法を中心に観血的療法を比較検討してみたい.

検査法

整形外科領域におけるScanning Electron Microscopyの応用—I.関節滑膜

著者: 井上一

ページ範囲:P.62 - P.70

はじめに
 一般に,生物組織の表面あるいはその実質における立体微細構造の研究は,そのレプリカをとって観察したりあるいは連続薄片標本を作製して観察し,構造模型を作り出すことによって行なわれている.しかし,多くの時間と労力を要するにかかわらず,十分な検索をなしえないことが多い.ところが,最近の走査型電子顕微鏡Scanning Electron Microscopy(以後SEMと略す)の医学生物領域への導入は18,19),そうした立体構造観察における方法論的限界を一挙に解決しつつある.特に,整形外科領域においては,関節組織などの立体構築の観察は,その生理的機能の理解ばかりでなく,臨床的な疾患の病態解明に秀れた方法となってきている.著者らは,SEMを用いて主として関節組織の研究を行なつてきたが,その結果をI.関節滑膜,II.関節軟骨,III.メニスクス,IV.腱および腱鞘,V.脊椎々間板の5項目に分け,これまでの切片標本などの報告と比較検討しながら紹介する.

境界領域

リウマチ性疾患のホルモン療法

著者: 熊谷朗

ページ範囲:P.71 - P.77

 リウマチ性疾患といつた臨床的概念は整形外科と内科で大分の異なりがある.整形外科領域では慢性関節リウマチを中心とする疾患群をのべ,むしろ全身性エリテストーデスなどは除外されている.内科ではその病因,病態論より膠原病(全身の炎症性結合織疾患)を中心に考えられておるが,最近の内科書では急性リウマチ熱は膠原病よりはずして溶連菌感染症の内に入れられ感染症として取りあつかわれていることなどが一つの異つた点といえよう.
 以上述べたように結合織をおかす,しかも自己免疫的色彩の強い疾患群で,病因,病態もきわめて類似しているが,治療を中心として考えた場合かなりの相違がある.たとえばrheumatoid arthritis(慢性関節リウマチ・RA)の場合は内科では全身症としてとらえながらももっともおかされる標的臓器が関節であるので,内科的疾患でありながら現実としてこの疾患をもっとも広く取りあつかつているのは整形外科であることも事実であるが,全身症という観点に立てば内科においてもRA患者を内科疾患として別な観点に立つてたちむかうべきと思うし,整形外科でないと治療し得ない分野もあり,欧米でみられるごときリウマチ科といつたものが今後科の壁をはずして治療さるべきであろうと信ずるものである.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(15)

著者: 阿部光俊 ,   骨腫瘍症例検討会

ページ範囲:P.79 - P.83

35歳男性の右肩関節痛
 A 症例は35歳男性,職業ハンドバック加工業,主訴は右肩関節痛です.1972年4月16日鉄棒にぶらさがろうとして突然,ボキッという音がして右肩関節運動制限を訴え,救急病院にてギプス固定施行後,4月24日当科外来を受診しました.受診時右肩関節上腕部の腫脹,圧痛,運動制限があり,X線所見にて右上腕骨に異常陰影が認められたので精査のため同日入院いたしました.

臨床経験

慢性関節リウマチとL. E.細胞現象

著者: 池田一郎 ,   前田晃

ページ範囲:P.84 - P.87

緒言
 1948年Hargravesらにより検出された,L. E.細胞は全身性エリテマトーデス(以下SLE)に特異的な所見とされ,このことはそれ以後の検出者によつても強調された2,3).従つてL. E.細胞陽性の慢性関節リウマチ(以下RA)はRAでなくSLEの部分現象とさえ考えられていた.一方1950年頃より悪性貧血1),粟粒結核,溶血性貧血,ハイドララジン長期投与例10),肝硬変などにも少数例ながら検出され,RAにも同様に報告されるに従い,L. E.細胞現象は決してSLEに特異的な現象でないことが認識されはじめ,それと同時にこの細胞を中心としてSLEとRAの関連が論議されるようになつてきた.RAにおけるL. E.細胞現象陽性率に関する外国の文献は多いが,本邦においては極めて少ない18)
 今回,著者らは62症例のRAとその他の症例16例につき,L. E.細胞を検討したのでその結果を報告するとともに,その意義について論じた.

Jefferson骨折(環椎破裂骨折)

著者: 鈴木国夫 ,   安江謙二 ,   井上禎三

ページ範囲:P.88 - P.91

 環椎は,上部を頭蓋骨に,側方を乳様突起に,後方を厚い軟部組織に保護され,その解剖学的特性により,直達外力を殆んど受け難いと考えられているが,環椎単独骨折は,1925年Jefferson7)が46症例を検討報告して以来,諸外国では交献上180余例を数え,近年その関心の高まりと共に,報告例も増加している.しかしながら,我国での報告は意外と少なく,特に典型的な環椎破裂骨折の報告は3例に過ぎない.
 Jeffersonの報告によると,頭頂部への外力が,両後頭顆を通して環椎の両外側塊に伝えられ,環椎々弓の弱点部にtension fractureを生ずる,と述べている.そして,この型の骨折は,以来,Jefferson骨折とも呼ばれている(第1図).

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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