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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科8巻10号

1973年10月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 16—神経性腫瘍・3

著者: 金子仁

ページ範囲:P.796 - P.799

 軀幹に発生する神経性腫瘍の大部分はシュワン鞘細胞の腫瘍化である.
 他には,中枢神経原発腫瘍を除くと,神経芽細胞腫,ガングリオノイローマ(Ganglioneuroma),パラガングリオーマ(Paraganglioma)がある.

視座

骨腫瘍命名の不思議

著者: 松野誠夫

ページ範囲:P.801 - P.802

 骨腫瘍に関する研究は,その基礎的あるいは臨床的なものを問わず,わが国においてはこの十数年来極めて盛んになり数多くの立派な業績が発表されている.
 これは第2次世界大戦により隔絶されていた欧米,特に米国の骨腫瘍に関する論文が終戦と同時に次々と紹介されたことが刺激になつたことにもよるが,日本整形外科学会に骨腫瘍委員会が設けられ,その活発な活動,特に骨腫瘍登録制の確立,毎年の骨腫瘍研究会における熱心な討論,あるいは文部省,厚生省の科学研究費による研究班の努力が骨腫瘍研究の進歩に大きな貢献をしてきたことは確かである.

論述

臼蓋形成不全による股関節症の治療法としての臼蓋形成術—特に筋移行術との併用について—伊藤

著者: 山本潔 ,   伊藤鉄夫 ,   田中清介 ,   長井淳 ,   森英吾

ページ範囲:P.803 - P.815

はじめに
 臼蓋形成不全に起因する股関節症に対する観血的治療法としては大腿骨および骨盤骨切り術,臼蓋形成術,筋解離術さらにカップ関節形成術,全人工関節置換術など多くの方法が報告され,それぞれに優れた成績が得られている.
 これらの治療法のうち,臼蓋形成術の歴史は最も古く,19世紀末のKonig(1891)の報告を嚆矢とする.その後,Albee(1915),Spitzy(1921),Lance(1925),Schede(1933)らによつて種々の術式が考案されて現在に至つている.その間,本邦においても神中,片山,河邨,水野,伊藤(鉄),飯野各教授らの研究によつて先天股脱および2次性股関節症の治療法として確立されたものとなつた.しかし,臼蓋形成術は全ての症例に応用することはむずかしく,従来の成績は必ずしも予期したような良成績を挙げることはできず,これに反対する人もまた少なくない.

特発性大腿骨頭壊死の手術成績—有茎骨釘挿入術を中心として

著者: 泉類博明 ,   浜田博朗 ,   小瀬弘一 ,   市岡侔 ,   田原武雄

ページ範囲:P.816 - P.824

はじめに
 人工股関節全置換術の発達は股関節外科に一大変革をもたらし,股関節疾患に悩む人達への福音となつた.しかし人工股関節(人工骨頭をも含めて)にはなお多くの改善されるべき問題点(特に耐久性の問題)が残されている現在,特発性大腿骨頭壊死に対するfirst choiceの手術法とはなりがたい.その理由は特発性大腿骨頭壊死が40歳から50歳の男性に多く発症し,50%に近い両側発症がみられるからである.

リスフラン関節の脱臼および脱臼骨折

著者: 浦野良明 ,   脇田吉樹 ,   加茂洋志

ページ範囲:P.825 - P.834

 リスフラン関節の脱臼および脱臼骨折は,比較的まれであるが最近,自動車事故,産業災害の激増により,増加の傾向を示している.我々は1958年から1972年までの14年間に14例の症例を経験したので,その発生機序,治療,合併損傷などについて検討し,文献的考察を加え報告する.リスフラン関節脱臼は,いわばAnatomic Entityであり,その解剖学的構築が,発生機序・治療法・予後に大きな意義をもつ(第1図).

シンポジウム 移植皮膚の生態

移植皮膚の感覚獲得

著者: 難波雄哉

ページ範囲:P.835 - P.840

緒言
 皮膚の感覚は,皮膚がもつ種々の生理的機能の中でも,量も重要なものの一つで,これにより物の性状を判断したり,外的刺激にたいする防御を可能にしている.
 したがつて,移植された皮膚の感覚獲得については,感覚出現の速度,感覚獲得に影響する諸因子,移植皮膚への神経支配の機転等々,多くの臨床的,実験的研究がなされているが,これらの中には,いまだ,統一的見解に達していないものもある.

遊離植皮片の成長—実験的研究

著者: 倉田喜一郎

ページ範囲:P.841 - P.849

I.成長とは
 小児に移植した植皮片が周囲の皮膚と同じように成長するかどうかは,小児に植皮術をおこなうときの重要な問題であり,だれもが知りたいことである.そして,まだはつきりした結論もでていない.
 1.幼小児に遊離植皮術をおこない,成長にしたがつて植皮片が周囲の皮膚と同じように拡大したとき,この拡大は,
 植皮片自身の成長によるものか?
 周囲組織の成長によりひつぱられたものか?
ということが日本形成外科学会総会で真剣に議論されたこともあつた.

移植皮膚のメラニン色素の動態

著者: 塚田貞夫 ,   赤羽紀子

ページ範囲:P.850 - P.857

はじめに
 有色人種において,遊離植皮術後,移植された皮膚に色素沈着が発生する1〜4).この色素沈着はおよそ1.5〜2年の経過で消褪する1),しかし,なかにはかなり長期間(3年以上)にわたり存続するものもみられ,整容的に不満足な結果を与えている.従つて,移植皮膚とその周囲の皮膚との間において,良好なcolor matchならびにtexture matchを得ることが重要な問題である.
 臨床的に人の皮膚の色素沈着は,主にケラチノサイトに含まれるメラニン色素に関係することは一般に知られている5).このメラニン色素はメラノサイトと呼ばれる特別な分泌細胞において合成される.メラニンによる色素沈着の発生機序に関して,Fitzpatrickら5〜7)はメラノサイトとそれを囲むケラチノサイトからなる細胞群を一つの共同体とみなし,これを構造的・機能的単位(epidermal melanin unit)として扱い,次の生物学的過程を想定した.(1)melanosomeの生成,(2)melanosomeのメラニン化,(3)メラノサイトからケラチノサイトへのmetanosomeの移行,(4)melanosomeの崩壊の4つの過程である.

移植皮膚の血行

著者: 藤野豊美

ページ範囲:P.858 - P.865

 移植皮膚を,筆者は遊離植皮と有茎植皮(以下,皮弁とよぶ)と血管柄つき皮弁の3つに大別する(第1図).
 遊離植皮は,いうまでもなく母体から一旦完全に遊離する.したがつて血行は完全に移植床からの毛細血管の新生・開通に依存する.

臨床経験

習慣性肩関節前方脱臼の手術成績

著者: 山本竜二 ,   片山国昭 ,   片山雅宏 ,   田那村宏 ,   下島治 ,   鈴木純一 ,   矢橋健一

ページ範囲:P.867 - P.876

はじめに
 習慣性肩関節前方脱臼の病態については欧米では古くから諸説があり,また本邦でも諸家の報告をみるが,いまだ定説はない.また手術法についても多くの報告があり,結局原因除去のものと原因の如何にかかわらず脱臼の防止を計るものに大別される.しかし数多くあつた従来からの手術法も最近はかなり厳選されてきているとはいえ,実際にはどの手術法を選ぶかの基準がまだ決定していないのが現状である.
 我々は昭和36年1月より現在までに習慣性肩関節脱臼25例26関節にBankart法14例,Oudard法の岩原変法8例,Eden-Hybbinette法1例,Bristow-McMurray法3例を行ない,今回術後1年以上を経過した21例22関節の成績を検討し報告する.

先天性総指伸筋欠損の治験例

著者: 井口傑

ページ範囲:P.877 - P.880

 手の伸筋群の先天異常は稀な疾患であり特に総指伸筋が欠損した症例は非常に少い.著者は,両側総指伸筋,ならびに固有示指伸筋欠損の症例を経験したので,ここに報告する.

2ヵ月乳児の背筋内に生じた脂肪肉腫の1例

著者: 佐藤舜也 ,   蒲原宏 ,   堀田利雄 ,   小林邦作 ,   内海治郎

ページ範囲:P.881 - P.884

 小児の悪性腫瘍は数多いものではなく,成人の悪性腫瘍とはいろいろ異なつた点がみられる.小児の悪性腫瘍の大半を占めるのは急性白血病である.ついで脳腫瘍と腎,肝,副腎などの腹部腫瘍がこれにつぎ,軟部腫瘍は骨腫瘍とともに稀である.軟部悪性腫瘍では横紋筋肉腫がその半数を占める.われわれは2ヵ月乳児の背筋内に腫瘤をみて手術を行なつたところ,比較的稀と思われる脂肪肉腫であろうと診断された症例を経験したので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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