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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科8巻11号

1973年11月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 17—神経性腫瘍・4

著者: 金子仁

ページ範囲:P.888 - P.891

 四肢に発生するのは極めて稀であるが、末梢神経から発生する腫瘍に神経芽細胞腫(neuroblastoma)がある.
 悪性腫瘍としては決して稀でなく,小児の副腎髄質,交感神経節に好発する.ウイルムス腫瘍とともに小児悪性腫瘍の代表的存在である.

視座

追悼文を書いて

著者: 天児民和

ページ範囲:P.893 - P.893

 考えてみると,今年の正月から私は3人の整形外科の先達の追悼文を書いた.LeoMayer,Kuntsher,Böhlerの3人である.もう1人英国のWatson-Jonesも昨年の8月に亡くなつているが,これはあまり親交がなかつたので遠慮をした.しかしWatson-Jonesは英国の骨折治療では不朽の名著を残している.あの書物をその後改訂するといいながらとうとう改訂ができなかつたようである.このように4人のすぐれた整形外科医が亡くなつたということは非常に残念であるが,いい替えると,いよいよ世代が変つてきたといえるのである.日本の整形外科学会も創立以来48年になる.アメリカの整形外科学会は第1回が1887年に召集せられているので86年になる.ドイツの整形外科学会はそれよりもずつと遅れて,1902年に結成せられた.この遅れた理由は外科側から整形外科の独立することに対する強い反対があつた結果であるが,伝統のないアメリカはその点自由であつたようである.考えてみると日本の整形外科学会ももうすぐ50年を迎える.その50年の間の40数年をその学会と共に過してきたわれわれは,学会の歴史をよく整理して残しておく責任を感じている.ドイツ整形外科学会の結成のいきさつとその歴史はPeter Badeが1939年に詳しく書いている.アメリカの方では,A. R. ShandsがThe Early Orthopedic Surgeons of Americaに書いている.

論述

示指MP関節背側脱臼について—特に整復障害因子についての考察

著者: 津下健哉 ,   渡捷一 ,   吉村理 ,   平松広夫

ページ範囲:P.894 - P.901

 示指におけるMP関節の背側脱臼は比較的稀であるが,しかし本脱臼が発生するとその徒手整復はきわめて困難で,多くの場合観血的整復が必要となる.その原因としてKaplanは井桁構造による骨頭の絞扼をのべ,手術としては掌側切開を用いて整復すべきことを述べた.この考えはその後多くの人に受け入れられ,最早疑う余地のないものとして今日に至つているかのようであるが,われわれは最近経験した本脱臼の2,3の症例からこの考えには多少の修正を要するのではないかと考えるに至つたのでその大略につき報告したい.

Silicone rod使用による手指屈筋腱再建について

著者: 中村蓼吾 ,   前田敬三 ,   三浦隆行 ,   木野義武 ,   駒田俊明

ページ範囲:P.902 - P.907

 重度の手指屈筋腱損傷に対し通常のfree tendon graftを行なうと癒着が強く,指関節の可動性がほとんど得られないことが多い.この問題を解決するため,手術手技,手術方法あるいは術後管理などに色々の工夫が試みられてきたが,手術方法については現在行なわれている主なものに 1)silicone rodを挿入し,その周囲に形成された,いわゆるpseudosheath内へfree tendon graftを行なう方法.2)浅指屈筋腱と深指屈筋腱を一次的に手掌部で縫合し,二次的に浅指屈筋腱を用いて,free tendon graftを行うtwo stage tenoplasty9),3)1)2)の両者を組み合わせた方法などがある.
 著者らもこれらの方法を臨床的に試みてきたが,今回,家兎を用いsilicone rodにより形成されるpseudosheathの形成過程や,その癒着防止効果の有効性や限界を検討するため,実験的研究を行ない,あわせて,1968年以来行なつてきた,silicone rodを用いた手指屈筋腱再建術の臨床成績を検討した.

検査法

肩関節機能評価法

著者: 井上義夫 ,   中根邦雄 ,   加藤泰弘 ,   鈴木信治 ,   山路兼生

ページ範囲:P.908 - P.916

はじめに
 肩関節の機能障害を来たす疾患は非常に多い.いわゆる五十肩を筆頭に,腱板,末梢神経損傷および骨折などの外傷性のもの,あるいは神経,筋肉疾患などがある.いずれの疾患にせよ,機能障害は社会生活ならびに日常生活において重要な意味を有し,その中でもつとも問題になることは疼痛と可動制限であろう.したがつて疼痛の程度ならびにR. O. M.に特別な考慮が払われなければならないが,しばしば部分的な診断をするための手段に終りやすく,また統一性を欠いており,正確さ,客観性が不足しがちである.いかなる治療が行なわれたとしても,治療効果の判定はもちろん,治療プログラムの作製に対しても,合理的で正確な機能評価を行なうことは不可欠である.われわれは,主にいわゆる五十肩を対象に,数量的に表わせる機能評価表を作製したので,現在迄に報告されている肩関節機能評価法と比較検討すると同時に,いわゆる五十肩の代表的な症例について機能評価を行ない,種々なる問題点について論じてみたい.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(23)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   鳥山貞宜

ページ範囲:P.917 - P.921

31歳女性の右前腕痛
 A 症例は31歳の女性で家庭の主婦,主訴は右前腕痛です.1971年10月末に通りすがりに人にぶつかつた時,右前腕痛が起り,湿布で間もなく痛みは消失しました.翌11月7日に洋傘を広げようと力を入れた瞬間にボキッという感じがして,急に右前腕に疼痛をきたし,翌日某医を訪れ,右前腕骨腫瘍を疑われて11月9日当科に紹介されてまいりました.受診時右前腕は外見上とくに異常なく,腫脹,発赤,静脈怒脹等はみられませんが,前腕橈側中央よりやや遠位に圧痛があり,手関節運動でも同部に軽い疹痛を訴えておりました.X線像から骨腫瘍とくに良性骨腫瘍が疑われ,翌年1月4日入院致しました.
 家族歴・既往歴に特記すべきことはなく,入院時所見では,全身状態に異常なく,局所所見では右前腕遠位1/3の僥側がやや膨瘤し,軽度の圧痛をみますが,発赤・静脈怒脹・熱感等はありませんでした.右肘および手関節運動は正常で,前腕の回旋運動はやや制限されていました.

学会印象記

バイオメカニクス研究会

著者: 小谷勉

ページ範囲:P.922 - P.928

はじめに
 大阪市大・整形外科学教室開講25周年記念事業の一つとして,数名のエキスパートを欧米から招待して,biomechanics and orthopaedicsということでseminarを大阪でやることにしましたが,日整会の河邨会長にお話ししたところ,札幌でもpre-congress seminarの形で,日整会会員で興味のある人たちに参加してもらつてはどうかと申され,総会第1日目の前夜に研究会がひらかれることになりました.
 プログラムは第1表のごときものです.

思い出

神中正一先生の思い出

著者: 岩原寅猪

ページ範囲:P.929 - P.931

 今日はわたくしの最も尊敬していた神中先生の20年祭にお招きいただきましてまことにありがとうございました,たいへんうれしく,かつありがたく存じます.
 20年前に先生が亡くなられたときに会葬もしませんで欠礼し,いつも頭のすみに気にかかつておりましたが,今日この機会を得ましたてなんだかほつとした思いがいたしております.その上に,きてみますと,ただいま西尾教授から友人としてというお話でありましたが,そうではなしに,わたくしは弟子を僣称しておりますが—弟子として思い出話をさせていただきたいと思います.教室以外の方はだれも見えておらないのに,岩原一人が列席できたこの光栄と感激を深くかみしめております.

臨床経験

減圧症で入院した潜水士の骨壊死について

著者: 川島真人 ,   林晧 ,   鳥巣岳彦 ,   重藤脩

ページ範囲:P.933 - P.943

はじめに
 潜水作業や潜凾作業を行なうにあたつて,高圧環境に曝されたものが,常圧(大気圧)にもどる時に,体内で溶解していた窒素ガスが気泡化して様々な症状をひきおこすことを減圧症(潜水病あるいは潜凾病)という.減圧症の中でも,減圧後比較的早期に症状が出現するものを急性減圧症と呼ぶが,この急性減圧症とは別に,潜水士や潜凾工に慢性減圧症と考えられる無腐性骨壊死が発症することは,1911年,Bornstein,1941年,Grutzmacherの報告以来知られていた.
 近年,特発性大腿骨頭壊死が注目されているが,潜水士に発症する骨壊死は,大腿骨のみならず他の骨にも高頻度に発生することが特徴であることが,その後の研究により明らかになつてきた.しかも近年海洋開発が本格化してきている現在,職業病の一種として社会的な問題でもあり,その本態の解明と予防法の検索が必要と考えられる.

両側股関節に対する全置換術

著者: 渡辺良 ,   赤坂靖三 ,   琴浦良彦 ,   蒲公洋

ページ範囲:P.944 - P.948

はじめに
  骨切り術の適応とならない高度の両側性変形性股関節症に対する手術的治療法としてはSmith-Petersón,Aufrancらによるcup arthroplastyをはじめMilch,Batchelor,Hackenbrochなどによるrescetion-angulation-osteotomy,股関節固定術などが知られているが,resection-angulation-osteotomyにおいては脚の著るしい短縮を招く欠点があり,股関節固定術は一側のみにしか行なうことができないばかりでなく,強直脚が必ずしも支持脚とならないため,反対側股関節の免荷が行なわれにくいという欠点を持つている.cup arthroplastyはAufranc1)らによれば,除痛効果のみならず良好な運動性,歩行能力をも獲得できる優れた治療法であるが,長期間にわたる免荷と,慎重なリハビリテーション・プログラムが必要であり,術後のプログラムが適切に行なわれなければ不満足な結果に終わる可能性が大であるといわれる.
 近年,人工股関節による全置換術が行なわれるようになつて,本法が両側例に対する治療手段としても優れた方法であることが認識されてきた5).しかしながら全置換術の歴史が十年余に過ぎないことから,効果の永続性については他の治療法と比較することはできないが,今後慎重に症例を選んで手術を行なうことによつて,優れた成績をあげうるものと期待される.

軟部血管性腫瘍について

著者: 福嶋泰夫 ,   古瀬清夫 ,   池本和人

ページ範囲:P.949 - P.954

緒言
 軟部組織腫瘍に関する統計については,組織像の多様性によるための診断の困難性,報告者による診断基準の不一致,組織学的分類法の多様性などにより著しい相異がみられる.良性軟部組織腫瘍のなかでもつとも多いものの一つに血管性腫瘍があげられる.軟部組織腫瘍研究班における遠城寺らの統計によると,昭和48年の良性軟部腫瘍の全国登録は7,720例であり,そのうち血管性腫瘍は1,965例(25%)でもつとも多かつた.昭和29年1月から昭和47年12月までに教室を訪れた良性軟部腫瘍患者で組織学的に確認された症例は,ganglionを除けば72例であり,そのうち血管性腫瘍は10例(13.9%)であつた.それら教室の血管性腫瘍の症例について報告し,若干の考察を述べたい.なお組織学的分類法としてはWHO分類を用いた.

家族性発生をみた先天性橈骨小頭脱臼について

著者: 羽根田純

ページ範囲:P.955 - P.959

 先天性僥骨小頭脱臼は比較的まれな疾患で,殊に家族性発生例の報告は少ない.われわれは最近父とその娘にみた先天性橈骨小頭脱臼の興味ある症例を経験したので報告する.

正中位ならびに両側性腰椎椎間板ヘルニアの造影像と手術所見

著者: 片山國昭 ,   山本龍二 ,   片山雅宏 ,   田那村宏 ,   下島治 ,   鈴木純一 ,   矢橋健一

ページ範囲:P.960 - P.967

 腰椎椎間板ヘルニアの補助診断として,ミエログラフィーは,その存在部位確認の重要な方法の1つであることは,多言を要しない.しかしミエログラフィーにより,もつとも一般的な偏在性ヘルニアの高位や大きさを確認することは.比較的容易であるが,両側性や正中性を判断するにあたつては,しばしば困難を覚えることがある.
 私どもは,臨床検査でヘルニアと診断し,手術が必要なものには,術前に補助診断として,全例にミエログラフィーを施行し,その存在部位や大きさの確認を行なうが,今回臨床所見でヘルニアではないかと診断したが,ミエログラムで判断に苦しんだ10例を経験した.いずれも,十分に検討を重ねた結果,ヘルニアと診断して髄核剔出術に踏み切つたところ,比較的希れと思われる両側性ヘルニア3例と正中性ヘルニア7例を確認したので報告する.

水溶性造影剤Methylglucamine IothalamateおよびMethylglucamine Iocarmateによるミエログラフィーの副作用について

著者: 杉浦皓 ,   吉田徹 ,   加藤晋 ,   見松健太郎

ページ範囲:P.968 - P.973

はじめに
 最近我が国においても水溶性造影剤による腰仙部ミエログラフィーが普及の徴を見せてきた.
 本法の最大の利点は繊細でかつ十分な濃度の像,殊に腰神経根レリーフが得られることであり,次に完全に吸収されることが挙げられよう.一方主な欠点としては造影剤が完全に無毒ではないために術後6〜8時間の半坐位を余儀なくされ,このために腰椎穿刺後頭痛(Post lumbar puncture headache)が高頻度に見られること,および時として主に下半身のつつぱりないし痙攣を見ることが挙げられよう.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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