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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科8巻12号

1973年12月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 18—メラノーマ

著者: 金子仁

ページ範囲:P.976 - P.979

 メラノーマは皮膚腫瘍であるが,往々軟部腫瘍としての臨床症状を示す場合がある.
 メラニン色素を形成する細胞から発生する悪性腫瘍で,現在,神経性オリヂンと考えられている.

視座

関節生物学の進歩

著者: 伊藤鉄夫

ページ範囲:P.981 - P.981

 近年,関節のbiologyの研究が基礎医学や工学の方面から強力に進められている.摩擦の研究の歴史は工学の分野では非常に古く,ルネッサンスに始るが,生物の関節摩擦の研究の歴史は浅く,重要な研究の多くは1960年以降に発表されている.研究はようやく始つたばかりである.
 関節軟骨・滑液膜・滑液からなる関節の潤滑機構については今までにhydrodynamic lubrication,boundary L.,weeping L.,elastohydrodynamic L.などについて論ぜられているが,最近またboosted lubrication説が提唱された,生物の関節運動においては,荷重面に薄い液層(10-4-10-3cm)が形成されて潤滑作用を行うのであるが,潤滑液としてはヒアルロン酸分子団と蛋白分子団の複合体が重要な役割を果している.ムコ多糖であるヒアルロン酸はThixotropyなる特性を有することで有名である.この物質は静置状態では多数の分子が結合して高い粘性を示すが,攪拌すると直ちに個個の分子に分散して,粘性が低下する.

論述

関節軟骨の栄養経路

著者: 二ノ宮節夫

ページ範囲:P.982 - P.990

 関節軟骨が血管をもたない組織であることは18世紀半ば,Hunter, W.によつて記載されて以来疑う者はいない.それでは血管をもたない軟骨組織がどのような経路で栄養を得ているのかという疑問が出てくるのは当然である.この問題に関しては,それ以来200年以上にわたり,数々の推測と議論がなされてきた.
 関節軟骨細胞の栄養源に関する論文をみると数多くの未解決の問題が示されている.解決されるべき問題点のいくつかは,
 (1)関節液が栄養の主要供給源としてどの程度,また関節軟骨のどの層まで働いているか.
 (2)もし存在するとすれば,軟骨下骨血管腔からの拡散が栄養の面で軟骨各層にどの程度の役割をもつているか.
 (3)これらは成熟度にもとづく関節軟骨の顕微鏡学的構造の変化に従い,どのように変つてくるか,等である.

慢性関節リウマチにおける足のレ線学的変化について

著者: 武部恭一 ,   細見壮太郎 ,   小林郁雄 ,   柏木大治

ページ範囲:P.991 - P.996

 慢性関節リウマチは多発性関節炎を主病像としており,手部12)のみならず,足部にも炎症が高頻度に発生する3〜6).しかしながら,足部の障害は手部のそれに比し,歩行時痛がない限りは日常生活動作に支障をきたすことが少ないためか,疼痛や変形により歩行が困難になつてはじめて治療の対象となることが多く,その初期の病態は充分に把握されていない.
 我々は今回,慢性関節リウマチ患者の足関節ならびに足部のレ線像を観察して,本症にしばしば認められる骨侵蝕像(bone erosion)1)の好発部位ならびに発生頻度を調査し,その病理解剖学的意義について考察したので報告する.

外傷後急性腎不全について—急性腎不全をきたした骨盤骨折の症例から

著者: 並木脩 ,   白須敞夫 ,   上田礼子 ,   戸松成 ,   矢尾板孝子 ,   太田和夫 ,   須田昭夫

ページ範囲:P.997 - P.1003

 骨盤骨折は,強大な外傷による関係上,整形外科的処置とともに,全身の管理方法が重要視されるが,ショック期を脱した後に急性腎不全をきたし易いことについては,意外に看過されているように思う.最近,自動車の激増とスピード化による交通事故や,労働災害による事故の発生頻度が増加し,重症の骨損傷も多くなり,整形外科的処置とともに全身の管理方法が重要視されてきている.急性腎不全は,従来死亡率の高い合併症であつたが,人工透析法の急激な進歩により,かなりの成績向上がみられるようになつてきた.このことは裏返していえば,急性腎不全を早期に発見し,適切な処置をほどこすことが,より重要になつてきたということができよう.ここでは外傷後急性腎不全に対する診断と処置を,われわれの症例を中心にして考えてみたいと思う.

変形性股関節症に対する骨頭骨切り術(Went)—その効果と適応について

著者: 広畑和志

ページ範囲:P.1004 - P.1010

はじめに
 最近の人工関節の目ざましい進歩は変形性股関節症の患者に大きな福音をもたらした,しかしこの全置換術の発達のかげには以前から行なわれてきた種々の骨切り術が大きく寄与したとも考えられる.McMurray,Pauwelsなどの転子間骨切り術は現在でもなお,変形性股関節症のconventionalな手術法の重要な部分を占めている.その上,人工関節の出現によつて骨切り術の適応例が厳選されるために,その治療成績はかえつて向上して来たと言う人もある.著者も多数の症例にこれ等の骨切り術をおこなつて諸家と同じく優れた成績を得ている.
 一方1964年Wentによつてはじめて異色とも言える関節内での骨頭骨切り術が発表され,その後1972年に到るまで,次々とその変法による治療成績が報告されてきた.この手術のアピールする特徴は,手術時間が20分で短くてすみ,内固定は不要で而も術後数時間後に起立と歩行が可能な点にある.従来の骨切り術には,長期間の後療法が必要なところから,試みとして著者は高度の変形性股関節症を選んで,この骨頭骨切り術をおこなつた.それ等の症例が現在すべて4年以上を経過したので追跡調査の成績を報告し,この手術の有用性や適応などについて著者の見解を述べたい.

脊柱側彎症における広範囲脊柱固定術の日常生活動作に及ぼす影響

著者: 山中力 ,   大木勲 ,   井上駿一

ページ範囲:P.1011 - P.1016

まえがき
 脊柱側彎症治療における成績向上の最大要点は,他の諸疾患の治療と同様に,早期発見,早期治療にある。これらの実現は,観血的矯正ならびに脊柱固定術適応症例の,激減を招来することは想像するに難くはない.即ち我々の側彎症治療方針は第1図のごとくであり,側彎症患者の75%以上が非観血的治療の対象で,その数は200以上を越すが,これらの治療成績も満足すべきものを得ているからである.しかし現在,なお当科初診患者の25%は高度側彎症であり,観血的治療の対象である.1962年Harrington1)により提唱されたinternal rodによる側彎矯正固定術式は,確実なる矯正効果と保持効果により,現在最も優れた術式である.我々は観血的治療の第一選択術式として,いささかこの術式に改良を加えて実施している2,3).我々は基本的にはButte4)よりGoldstein5)の固定範囲の決め方を採用しており,これらに従えぽ可動域の少い胸椎を中心にするといえども広範囲の脊柱固定術を施行することになる.しかしHarrington instrumentationは臨床成績,即ち矯正率(Percent corection6)),脊柱固定,遠隔成績などいずれをとつても満足すべきものを示している.

検査法

新しい水溶性造影剤Meglumine Iocarmate(Dimer-X)によるLumbar Myelographyについて

著者: 中川一刀 ,   鼓敏光 ,   小田義明 ,   谷掛駿介 ,   望月與弘 ,   早石雅宥 ,   七川歓次

ページ範囲:P.1017 - P.1026

はじめに
 Myelographyは脊椎・脊髄外科における補助診断法として,その欠点を万人が認めつつも,有用性を否定し去ることはできないといえよう.先人の幾多の努力は,理想的な脊髄造影剤—①副作用のない,②完全吸収可能な,③良好な造影能をもつ—の発見に向けられたが,現在なお完全に満足し得る造影剤が開発されたといはいい難い事実も認めざるを得ない.
 特に完全吸収可能な水溶性造影剤の開発に力が注がれ,Arnell and Lidström(1931)の発表ののち各種の造影剤とその巧罪が論じられている.近年Campbellら4)はmeglumine iothalamate(Conray-60,Contrix-28)が刺激作用が少なく,腰椎麻酔を必要とせず,腰仙椎部に限定すれば十分に使用できると報告した,その後,多数の臨床例が重ねられるにつれて,多くの研究者からConray-60の副作用が真剣に論じられている2,5).今回新しく開発された水溶性造影剤Dimer-XはConray-60よりも刺激作用が少ないことが確認され,腰仙椎部に限定してではあるがヨーロッパにおいてもっぱら使用されている3,7,13).私たちはその使用経験を得たので,ここに実施手技と造影のコツを中心とし,併せて動物実験を行なつてその刺激性を追求したので報告する.

臨床経験

左大腿部に原発した線維黄色肉腫"Fibroxanthosarcoma(Kempson and Kyriakos)"の1剖検例

著者: 湯本東吉 ,   市原冏一 ,   木村平八 ,   前山巌 ,   山本吉蔵 ,   古瀬清夫

ページ範囲:P.1029 - P.1036

緒言
 組織球と線維芽細胞よりなる腫瘍類似の増殖性病変に対して,StoutおよびLattes10)は線維性組織球腫fibrous histiocytomaと総括した.このような増殖性病変は多くの臓器にみとめられている.また,そのみいだされる部位によつて腫瘤が呈する組織像はそれぞれ異つており,幾つかに分類されている2,8).従つて,その分類や診断には多くの問題があることがKempsonら6)によつて指摘されており,なかでも特に悪性腫瘍の判定には慎重でなければならぬとされている.線維性組織球腫の悪性腫瘍に対しては,従来,悪性線維性組織球腫malignant fibrous histiocytoma10)と呼んでいたが,すでにのべたようにfibrous histiocytomaには種々の亜型がみられることから,この名称は不適当である.KempsonおよびKyriakos6)は花むしろ状線維性間質storiform fibrous stromaと異型性の著しい組織球および巨細胞をともなう30例の軟部腫瘍について,その臨床像と病理組織像を総説し,このような症例は肉腫と診断すべきで,線維黄色肉腫fibroxanthosarcomaと呼ぶことを提唱している.GuccianおよびEnzinger4)は類似した腫瘍に対して軟部組織悪性巨細胞腫瘍とも呼んでいる.

四肢軟部組織間葉系腫瘍の臨床病理学的検索

著者: 光田健児 ,   西法正 ,   金子仁 ,   堀口親男

ページ範囲:P.1037 - P.1044

はじめに
 日常の整形外科,外科,皮膚科などの診療において四肢の軟部腫瘍に接する機会は,非常に多い.しかし,軟部組織腫瘍,特に悪性腫瘍は,診断および治療面で問題点を残しており,生命に対する予後も不良で,診断および治療法の進歩が一層望まれる分野である.整形外科領域において,生命に対する予後が不良である疾患として,骨悪性腫瘍があるが,骨腫瘍においては,全国的に登録制が普及し,診断,治療の面で有力な情報となり得るが,軟部組織腫瘍に関しては,未だ整備されておらず,全国的な登録制が望まれる,私達は四肢原発の軟部組織腫瘍を国立第一病院及び国立王子病院において集録し,臨床病理学的検討を行ない,併せて少数例ではあるが,直接検診,アンケートにより知り得た追跡調査の結果を報告し,若干の文献的考察を行なつた.

肘関節のpersistierender Knochenkernについて

著者: 鳥巣岳彦 ,   加茂洋志 ,   川嶌真人

ページ範囲:P.1045 - P.1050

 手根骨や足根骨部には多くの種子骨が存在し,しかも多くのvariationがあることはよく知られており,全て先天性の発育異常であると考えられている.
 一方発育期の肘関節には多くの骨端核が存在することは衆知の事実であるが,平素我々が成人の肘関節のレ線写真を見ていて,極く稀に上腕骨内顆と滑車との間に小さな骨片が存在することに気付くことがある.一般にpersistierender Knochenkernと呼ばれるものがこれである.この骨片は形が時に大きかつたり,小さかつたりで,丸味を帯び骨梁が明らかである.

特発性大腿骨骨頭無腐性壊死のレ線所見と病理所見

著者: 片山雅宏 ,   山本龍二 ,   片山国昭 ,   田那村宏 ,   下島治 ,   鈴木純一

ページ範囲:P.1051 - P.1063

 成人における大腿骨々頭の無腐性壊死は,頸部内側骨折,脱臼などの後にしばしばみられるが,特発性の骨頭壊死は比較的稀なものとされる.諸外国では,1924 Schmorlの報告があつて以来Freund5),Coste2),Patterson19),d'Aubigne15)等によりかなりの症例数をみる.本邦ではこの数年来,発生原因・病理組織・動物実験・治療法などにつき詳しい論文が次第に多くみられるようになつた.我々も,最近,4例7関節を経験したので,そのレ線像病理所見を主にして報告する.

含毛嚢胞(Pilonidal cyst)の3症例

著者: 斎藤篤

ページ範囲:P.1064 - P.1069

はじめに
 19世紀中葉に(Anderson 1847),Warren(1854)らにより仙尾部に嚢胞が先天性に発生すると記載されて以来,1880年Hodgesによりpilonidal cystまたはsinus(含毛嚢胞)と命名された.
 本症は尾骨部裂溝正中線上皮下に生じ,毛髪を含んでいるものが多く,欧米ではさほどめづらしくなく,軍隊ではJeep diseaseとして一般的に知られている.

追悼

Güntz教授逝く

著者: 天児民和

ページ範囲:P.1027 - P.1028

 今年になつてすでに何人かの海外の優れた整形外科医の追悼文を書いてきた.今回はからずもFrankfurt大学の教授であつたEduard Güntzの死亡通知書を受けとつた.今年の6月28日に彼は亡くなつたのである.奥様からの手紙であるが,ご慰問の来訪はご遠慮願いたい.霊前に花を贈られるならばその代金を身障者センターに寄附してほしいということまで記入してあつた.
 Güntz教授は36歳でポリオにかかり不自由な体に鞭打つて教授としての職責を全うしてきた特異な生活力を持つた人である.1903年Erfurtの近くで生れた.父は保健官であつた.元来彼の家系は医家であつて彼の曽祖父は精神病学者で,当時精神病患者の多くは鎖につながれていたのを解放して治療した最初の医師であつたことはGüntz教授ご自身から直接聞いたことがある.そこの高等学校を卒業して1922年Marburg大学に入った.その後ドイツの大学生がするようにWürzburg,Münchenの大学を遍歴し,1927年に医師試験に合格した.その後彼はDresdenの市立病院で臨床修練を行なつた.そして当時Dresden市立病院の病理部長であつたSchmorlの所で2年間病理解剖の勉強をした.その後一時内科の勉強もしたことがあつたが,1932年にはSchmorlの所のOberarztに迎えられた.

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基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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