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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科8巻2号

1973年02月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 8—横紋筋肉腫 3

著者: 金子仁

ページ範囲:P.94 - P.97

 ここでは横紋筋肉腫のうち,pleomorphic type(多形細胞型)を示す。
 特徴は好酸性の強い細胞形質を有する,大小不同性のある細胞の不規則な増殖である。時にリボン状,丸型,不規則型等奇怪な形(bizarre)を示す細胞が出現する。細長い細胞質だけ切れて,核の出ていない細胞を木村教授は"赤物(あかもの)"と呼んでいた。

視座

両前腕切断に対するKrukenberg形成術

著者: 佐藤孝三

ページ範囲:P.99 - P.99

 30歳を少し越した公務員のTさんは,事故で左手首から切断され,将来が真暗になつたと感じていた.私は先日都内の某病院でTさんにあつたのだが,彼は創の痛みよりも心の悩みに耐えかねて,周囲の者の慰めの言葉に全く耳をかさぬ様子であつた.
 私はムンテラのために,私の古い患者I君にTさんとあつてもらうことにした.I君は戦争で両前腕切断,左眼失明という悲運にあい,終戦直後に私がその右前腕にKrukenberg形成手術を行つて,橈骨と尺骨との間で物がはさめるようにしたのである.爾来27星霜,I君はさまざまの困難をのりこえて,現在はさる会社の外交員としてはたらき,一家の生活を支えている.

論述

早期滑膜切除術の問題点—特に膝関節滑膜血管の微細構造について

著者: 児玉俊夫 ,   近藤泰紘

ページ範囲:P.100 - P.108

I.文献から
 この10年来,関節リウマチに対する手術が世界的に盛んになつたが,その中でもつとも歴史が古く,またその対象も多い膝関節の滑膜切除術について検討してみたい.
 関節リウマチに対する外科的療法の目的は
 a.局所の機能改善
 b.局所の炎症症状の鎮静
 c.全身生体反応の好転
 に大別されよう.

新しく改良を加えたBone Cement(MMA-TBB)

著者: 飯田勝 ,   古屋光太郎 ,   河内貞臣 ,   樽見二郎

ページ範囲:P.109 - P.117

 現在Bone Cementとして使用されているacrylic cementは優秀な固定力と生体におよぼす影響の少ないことにより,Charnley1,2,3)はじめ多くの人により関節置換術に広く応用されつつある.その歴史は1890年Glückがはじめてドイツ外科学会においてcolophony resin pumice powder plasterよりなるcementで象牙製の球関節を股関節と固定する考えを発表したことに始まる.その後1940年にZander30)が人の頭蓋骨の欠損部に始めてacrylic cementを使用し,以来脳外科領域では広く用いられ,最近のCabanelaら31)の報告によれば組織障害のないことが判明している.整形外科領域では1951年にHaboush6)がはじめて人工股関節に使用して以来,Henrichsen7)さらにWiltseら29)が実験的にacrylic cementの組織反応の少いこと,体重圧にも充分耐え得ることを証明し,臨床応用の基礎を築いた.しかし同時にacrylic cement使用上の不安と危惧もこの時以来すでに述べられている.

シンポジウム 乳幼児先天股脱の手術療法

先天股脱観血整復の適応と問題点

著者: 山田勝久

ページ範囲:P.119 - P.138

 先天股脱の治療は古くから行なわれているが,その歴史は苦難にみちたものであつた.盲目的かつ暴力的な整復により得られたものの結果はみじめであり,関節を開いて直視下に整復することを試みだしたのは当然の成り行きであろう.しかしAdams,Rosen,Poggi,Hoffa,Lorenzらにより行なわれた観血整復も感染や強直などの合併症が多く,整復したという自己満足的な結果のみに終つたようである.
 Paci(1988),Lorenz(1895)が独自の徒手整復法を発表し,観血整復より非観血的整復が勝つていることを強調して以来非観血的療法がひろく行なわれるようになつた.さらにGalloway(1920,1926)はこれら非観血的整復は,あまり確実な方法でも,合理的でもないが安全かつ簡単で,ある程度の結果は得られると述べている.このように20世紀初期より後半世紀にわたり一世を風びしたかの感があつたLorenz法とてGallowayと同じような考えで他に良い方法がないのでやむを得ず行なつていたのではなかつたかと推察される.

先天股脱における腸腰筋の意義とその移行術

著者: 浜田博朗 ,   吉岡康裕 ,   下村裕 ,   広島和夫 ,   市岡侔 ,   高瀬忠

ページ範囲:P.139 - P.147

はじめに
 Pavlik(1958)の提唱したRiemenbügelの普及により,本邦における先天股脱の治療体系は大きな変革をとげ,その治療成績は飛躍的に向上した.Riemenbügelによつても整復されない症例に対しては,over-head tractionを中心とする保存療法が試みられ,その不成功例に対しては観血的整復術が行なわれる。
 手術療法についてみると,はじめ単なる関節切開と臼内への骨頭整復,すなわち単純な観血的整復術が試みられたが,症例経験が積まれるにしたがつてそれのみをもつてしては不十分であるとして,種々の手術的整復が諸家によつて提唱されるにいたつた.

先天股脱における減捻骨切り術

著者: 泉田重雄

ページ範囲:P.148 - P.153

 先天股脱における大腿骨頸部前捻に関しては古くから多数の論議のあるところではあるが,頸部前捻の実態,生力学的意義の把握においては相異つた見解,意見が錯綜しており,理論的根拠に確実なものが少く,たとえば『何度以上の頸部前捻に対して,何度の頸部減捻を行うべきか』といつた.最も基本的であり,また具体的な疑問に対して人々を首肯させ得る解答を得難い現況といつてよい.
 試みにCampbellのOperative Orthopaedicsを繙いてみると減捻骨切り術に関して1976頁から約3頁にわたる記載をみるが,その中には簡単な導入,二三の歴史的条項につづいて『実際的な見地からいえば,大腿が中間位または軽度の外旋位において,股関節の亜脱臼や脱臼をおこす程に頸部前捻が高度であるならば,その前捻は矯正されなければならない…….骨切りの高位や,骨片の固定法などはほとんど問題でない……』と,はなはだ素気ない論述の後にPlatouの転子下骨切り,とCregoの髁上骨切りの記述をみるに過ぎない.先天異常に関するCampbellの記載は他の部分に比較して簡略であるが,高名な手術書の記述としてはなはだ物足りない,とはいえ他の多くの成書の記述も,大同小異であつて,頸部前捻を単に大腿骨上端部の形態異常として把握する限り,楯の一面を論ずるに過ぎないのである.以下頸部前捻の実態,意義およびこれに対処すべき方途について自家見解を述べる.

Salter手術の検討—特にその手術手技と適応限界について

著者: 香川弘太郎 ,   岩本守右 ,   大野修

ページ範囲:P.154 - P.168

はじめに
 Salterが1961年,Innominate osteotomyを発表してより,内外において多くの追試と秀れた成績の報告がなされてきた.
 これらの広い普及をみた背景には,本法創始者の抜群の着想と,医師達のよりよきものへの追求があつたことも見逃がせぬが,その他に従来のいわゆる臼蓋形成術が種々の点で諸家の要求を満たしていなかつたことも大きな原因になると思われる.

検査法

骨軟骨の病理組織学的観察法(Ⅴ)—大切片のTopographical Samplingによる電顕的検索法

著者: 三友善夫

ページ範囲:P.169 - P.178

はじめに
 骨軟骨の電顕的検索法の一般法についてはすでに本誌の"骨軟骨の病理組織学的観察法(IV)1)"の中で詳述した通りである.骨軟骨組織に限らずいずれの病変の電顕的観察法についても同様であるが,その試料作製法が1〜2mm3の細切片に始まり,200〜500Åの厚さの超薄切片までの極めて小切片を用いて行なう点に特徴があり,当然その小切片に含まれる病変は限られてくる.しかもその限られた病変は試料作製時には任意に観察,選択できない.病変が小試料の中に偶然に含まれる僥幸を期待しながら試料作製が行なわれる.その上含まれた病変が,検索を意図する病変であるか,またはすべての病変の代表像として認められるかどうかも疑問である.限られた小部分に含まれた病変がすべての病変の代表として見なして異論のない例は稀である.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(16)

著者: 福間久俊 ,   広田映五 ,   骨腫瘍症例検討会

ページ範囲:P.179 - P.183

60歳女性の左鼠径部腫瘤
 A 60歳の女性で左鼠径部の腫瘤形成を主訴として昭和46年11月26日受診しました.
 12〜3歳の時に右の足背,それから膝窩部の小さな腫瘤に気づき17〜8歳の時に2回にわたつて,その小腫瘤の剔出を受け血管腫と診断されています.10年くらい前から左の坐骨神経痛を生じその時にX線像で異常所見を指摘されたとのことです.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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