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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科8巻3号

1973年03月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 9—横紋筋肉腫 4

著者: 金子仁

ページ範囲:P.186 - P.189

 横紋筋肉腫のうち,embryonal typeは小型円形細胞が主体である。細胞の密在している所では診断がつけ難い。疎開部で索状配列,干し柿像等が出てくる。時にリボン状細胞や,多核巨細胞が出現する。Pas染色によるグリコーゲンは多量に認められる場合が多い。この種の細胞が蜂巣状に並んだのがalveolar typeである。また膀胱,中耳,腟等,内腔のある臓器にembryonal typeの横紋筋肉腫が発生すると,肉眼的に葡萄の房のようになるのでbotryoid typeと呼ぶ。一般に幼児に多い。
 今回はembryonal typeの横紋筋肉腫を掲載する。

視座

歩行研究の進歩におもう

著者: 鈴木良平

ページ範囲:P.191 - P.191

 最近歩行の分析が各方面で行なわれるようになり,著しい成果をあげつつあるのは喜ばしいことである.整形外科,とくに下肢の疾患を取り扱う場合には,歩行の研究は必要欠くべからざるものであることは勿論である.
 歩行に関する科学的研究がいつごろから始められたか詳らかでないが,1680年Borelliはすでに,De motu animaliumという書物を著し,この中であらゆる運動の研究を記載したといわれる.約2世紀おくれてMareyはchronophotographieなる方法を用いて,はじめて歩行を研究し,これが現代の映画技術を用いての研究の端初を開いたという.

論述

人工股関節手術の合併症—とくに骨セメントによる血圧下降について

著者: 長井淳 ,   岡正典 ,   伊藤鉄夫 ,   渡辺良 ,   白井希明

ページ範囲:P.192 - P.201

 1970年より京大整形外科において32関節のCharnley型人工関節手術,岐阜市民病院において31関節のWeber-Huggler型人工関節手術を経験した.人工関節置換術は症例を選べば非常に秀れた結果を得ることができるが,一方では従来みられなかつた特殊な合併症が観察されるようになつた.我々の例は,症例数も少なく,術後年数も短いので,統計学的な価値は少ない.しかし,経験した合併症を十分に分析し,同じ合併症を二度と繰り返さないように対策を立てなければならない.今回は我々が経験した合併症を,術中,術後早期,晩期に分けて報告する.

頸部椎間板症に対するわれわれの診療方針

著者: 平林洌 ,   佐々木正 ,   竹田毅 ,   金子弥

ページ範囲:P.202 - P.215

いとぐち
 頸部椎間板は,変性によつてその運動機能に破綻を生じ,前後屈における回転の中心が前後に偏位したり,「ずれ」が過大になるいわゆる不安定性(instability)を招来する.この不安定性がまた椎間板変性に拍車をかけ,悪因果が循環することになる.
 この時期にすでに線維輪の外層およびその周囲軟部組織を支配する脊椎—洞神経(N. Sinu-vertebralis)の刺激状態,すなわち項部痛や肩こりなどの愁訴が生ずるものと思われる.脊髄症状や神経根症状と並んでわれわれはこれを局所症状と呼んでいる.

義肢適合に対するX線撮影法とその意義

著者: 沢村誠志 ,   阿部健三 ,   高木繁 ,   堂前茂

ページ範囲:P.216 - P.224

I.はじめに
 義肢の適合は,通常次のような検査により判定される.すなわち
 a)義肢を装着した場合の疼痛,不快感または,シビレ感等の切断者の主訴.
 b)義肢ソケットを除去したときにみられる断端皮膚の状態,特に,発赤,浮腫,断端ソックスによる断端皮膚上の網の目のくいこみ状態.さらに,義肢装着時に断端およびソックスにパウダーを用いて装着後のその残存程度の状態.
 c)ソケットの上縁部と断端との適合状態.特に,下腿切断の場合における義足側の立脚中期におけるソケットの外内壁の適合.
 d)義足の場合,歩行中におけるソケット内での断端のピストン運動の有無等
 以上の点が適合判定の参考基準となる.ところが,実際の適合判定に際しては,装着感が不良である場合には,それが義肢の不適合によるものか,断端自体に問題があるのか,判定に苦しむことが少なくない.また案外,アラインメントの不良に起因することも少なくない.このように適合判定の困難な場合は,義肢の正しい装着感をまだ得ていない新しい切断者にみられることが多い.このような場合に,ここでのべるX線撮影法によるソケットの適合判定法が補助的診断として有用であることが少なくない.

検査法

整形外科領域におけるScanning Electron Microscopyの応用—II.関節軟骨

著者: 井上一

ページ範囲:P.225 - P.233

II.関節軟骨
 1.結果
 一般的な試料作製については,すでに前回概略を述べたので,ここでは個々の観察結果にその試料作製を補足して記すことにする.関節軟骨は,その自由表面と垂直破断面の立体観察により,より詳細な構築を検討しうる.

装具・器械

Hanausek装具の使用経験—先天性股関節脱臼の機能的保存的療法

著者: 柏木大治 ,   矢野悟 ,   梁復興 ,   香川弘太郎 ,   岩本守右

ページ範囲:P.234 - P.239

 Hanausek装具は,Lorenz法による先天性股関節脱臼の治療が満足なものでなかつたためにZahradnicek教授の首唱により作製されたものであり,1942年にHanausek教授がこの装具で先天性股関節脱臼の治療をはじめたのがおこりであるといわれている.現在ではチエコスロバキア,東ドイツ,西ドイツ等において使用されており,本邦においては鈴木良平教授の著書「先天性股関節脱臼とその機能的療法」の中で本装具が紹介されはしたものの使用されるまでには到つていない.著者の一人矢野はデュッセルフドルフ大学整形外科に留学中にHanausek装具による治療法を習ぶ機会を得,これをわが国に導入した.著者らはその使用法について述べ,若干ではあるが本装具を使用した症例を供覧し,考察を加えてみた.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(18)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   鳥山貞宜

ページ範囲:P.241 - P.243

31歳女性の骨折
 A 患者は31歳の女性ですが,28歳の時すなわち昭和41年9月に転倒し右上腕骨遠位端に病的骨折を起して私共の病院を訪れました.初診時の所見では,右肘の強い腫脹・疼痛および運動制限がありますが,全身状態は良好で血清Ca,P,アルカリフォスファターゼ等の臨床検査はすべて異常ありませんでした.
 初診時のレントゲン像では上腕骨顆上部から関節軟骨の近くまで多房性に嚢腫様陰影が広がり,滑車の部分は病的骨折を起こして陥凹しております(第1図).

臨床経験

骨原発性多発脂肪肉腫の1例

著者: 山脇慎也 ,   後藤守 ,   石垣一之

ページ範囲:P.257 - P.266

はじめに
 軟部組織の脂肪肉腫は,稀なものではなく多数の症例が報告され,臨床的にも病理組織学的にもよく研究されている.Shuman(1966)によれば,軟部組織の悪性腫瘍の約20%を占めるという.組織学的にはStaut,EnterlineおよびEnzingerらによって分類された.現在では粘液状脂肪肉腫,分化型脂肪肉腫および多形性脂肪肉腫の3型に分類されている.
 一方骨原発の脂肪肉腫は,骨組織が多量の脂肪組織を髄内に有するにもかかわらず稀である.文献的には1931年Stewartの3例以来24例にとどまる.これらは内容を更に吟味すると,その発生部位,病理組織学的診断について不確実な症例もあり,すべてを骨原発の脂肪肉腫とは断定できない.

von Recklinghausen病悪性化の1例

著者: 楢林好隆 ,   吉田博利 ,   奈良崎保男 ,   保野浩之 ,   杉原甫 ,   福田英彦

ページ範囲:P.267 - P.270

 von Recklinghausen病に関する報告は皮膚科,整形外科領域において数多くみられる.われわれは馬尾神経腫瘍症状を呈して来院し,急速に高度の骨破壊像を示した仙骨部神経線維肉腫の教訓的1例を経験した.

学会印象記

イスラエルのSICOT 12

著者: 天児民和

ページ範囲:P.245 - P.246

 昨年10月9日から13日までイスラエルで開催せられました第12回の国際整形外科災害外科学会に出席して参りました.普通この学会のことをSICOTと呼んでいます.そもそも本会は第1回が1930年にパリで開かれております.それから戦争で一時中断致しましたがその後復活し,今回で第12回になつた訳です.世界の整形外科が分化し,発展してまいりましたのと歩調を合わせてこの学会も大きく発展して参りました.総会は3年目毎に開かれておりますが,そのたびに参加者も多く世界各国の一流の学者が集まります.本年はイスラエルで開催されましたが丁度その前にミュヘンオリンピックでアラブゲリラの襲撃があつたり,またその前にテルアビブ空港で日本人の乱射事件があつたりして参加を躊躇する人が多くなりました.日本人も最初は180名申し込んでおりましたが約100名がキャンセルして実際に学会に参加せられたのは100名を下回つておりました.しかしドイツ,フランスの参加者も少なく,その上にアラブ諸国からは1名も参加しておりませんし,ソビエトからも1名も参加がなかつたようです.

第4回先天股脱研究会印象記—症例検討ならびに臼蓋形成術(骨盤骨切り術)について

著者: 香川弘太郎

ページ範囲:P.247 - P.251

 第4回先天股脱研究会は,8月14日の午前10時半より午後6時迄,柏木教授ならびに神大整形外科教室の方々の御厚意により大学病院講堂において開く事ができた.
 8月の暑さに茹だる神戸は,学術会を持つには御世辞にも適当とはいえないが,それでも当日は150名近くの熱心な専門家諸氏の参加があつた.またそれも近郷の先生方はもとより,遠路遙々長崎や北海道からの来席をみた事はこれからの本会の発展を占うものであろうし,また反面この大世帯になりつつある研究会をどの様に育てていくかは,今後に残された課題であろう.

追悼

Küntscher教授の思い出

著者: 天児民和

ページ範囲:P.253 - P.254

 Küntscher教授は昨年12月18日突然急死せられた.机に向つたまま倒れて遂に回復しなかつた.彼は1903年の生れで,まだもう少し働ける年齢であるとは思うが,これも彼の天命であろう.彼と私とは長い間の交友である.彼は親もなく,1人の兄は東独に去り,終生結婚もせず全く孤独な生活であつた.ただ自分の仕事に精魂を打ちこんだ.
 元来彼は絵を画いたり,機械をいろいろ工夫したりすることが好きである.ドイツでも彼のことをInstrument Spielerei(機械道楽)という人もある位である.彼は元来外科の出身である.Kiel大学の外科学教室の骨折病棟の主任をしている時にSmith-Petersenの三翼釘がようやく欧州でも盛んに用いられるようになつてきたが,その操作の簡単なこと,その固定力の優れていることに彼も感嘆をした.このアイデアを長管骨に用いたいと考えたのが最初である.そして大腿骨折に対して大転子から骨髄を通して釘を打つ方法を考え出した.それを1940年に発表した.丁度第2次世界大戦が始まる直前である.この方法を彼は戦傷患者に大いに利用したが,彼がこのような大きな釘を骨髄内に打ちこむことができたのは不銹鋼の発達のためであるが,前記のごとく図を書くのも趣味の一つで釘の打込む方法も苦心して考案した.その論文,著書の図は全部彼の自筆であるが,太い力強い線で要点を正確にかく技術は専門画家も一寸彼にはかなわないだろう.

Lorenz Böhlerと近代骨折治療学

著者: 天児民和

ページ範囲:P.255 - P.256

 昨年末にProf. Küntscherが亡くなつたが,本年1月20日WienのLorenz Böhlerが88歳の高齢で亡くなつたことを新聞で知った.ドイツの整形外科学会にはいつも欠席したことのない人であるが,昨年のBerlinの学会には彼は欠席していた.災害外科の優れた先達が亡くなつてゆくことは淋しい思いがする.
 Lorenz Bohlerは1885年Austriaの生れで父は建具師であつた.彼が骨折の整復,ギプス包帯に細かい技術を要求するのもこの父の影響ではあるまいかと思われる.Wienの大学で勉強し医師になつたが,数年は田舎の病院を転々としていた.そして船医になつて米国に渡り,Mayo Clinicでしばらく滞在していた時に第1次世界大戦が勃発した.ここから彼の新しい運命が開けてきたのである.やがて彼も陸軍に応召しItaly戦線の第1線で働いた.そしてAustriaとItalyの国境の山岳戦で多くの骨折患者に遭遇し,その治療法に関して彼は考えさせられた.やがて彼は病気になつて第1線を退き後方の病院に勤務するようになつた.そこでも彼は骨折の治療に専念し,ただ骨折が癒合するというだけではなくその後の機能に重点をおいた治療法を考えsystematicな体系を作つた.そして従来外科医によつて扱われていた骨折を外科から切り離してしまつて災害外科という新しい専門分科を作ろうと考えたのである.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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