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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科8巻5号

1973年05月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 11—平滑筋肉腫

著者: 金子仁

ページ範囲:P.362 - P.365

 定型的な平滑筋腫でも,時にH. E.染色のみだと診断のむつかしいことがある.まして,平滑筋肉腫となると甲論乙駁で,病理医の間でも意見の一致を見ない例も少なくない.しかし標本のアチラコチラを見て行くと,平滑筋性腫瘍の特長像が出てくる.
 今回は本腫瘍の最好発部位である子宮に発生した,異論の無い平滑筋肉腫を中心に論述する.これで眼を馴らすのが先決と思うからである.

視座

指屈筋腱断裂に対する治療法の変遷に学ぶ

著者: 田島達也

ページ範囲:P.367 - P.367

 手の外科におけるハイライトの一つであるno man's land内指屈筋腱断裂に対する治療法は今一つの曲りかどにきている.すなわちS. Bunnellが確立したもつとも輝かしい業績である遊離腱移植術が大きな挑戦を受け直接縫合法の成功が大きくクローズアップされつつある.この興味ある問題の治療法の変遷をまず概観してみよう.
 古典的直接縫合のみじめな失敗に挑戦したBunnellは1920年ころからK. Biesalski,L. Mayerらによつて基礎固めされた遊離腱移植術に着目しこれを応用し技術を精密化することによつて画期的な成果を挙げたことは周知のとおりである.しかしこれで問題がすべて解決されたわけではなくJ. Boyesが1950年信頼すべき遠隔成績を発表しているとおり,どんな熟練者によつても優れた成績は70%前後しかえられない.まして神経血管損傷や瘢痕拘縮の合併例などにおける成績は遙かに劣つている.

論述

人工骨頭置換術後の追跡調査

著者: 柏木大治 ,   高原伸雄 ,   原田寛 ,   大森明夫 ,   桜井修

ページ範囲:P.368 - P.378

緒言
 大腿骨頸部骨折は老人に多発する外傷性骨折であるが,ある意味ではosteoporosisによる病的骨折と考えられる.このosteoporosisと大腿骨頸部の血行状態および力学的弱点から,骨癒合を完成させるためには解剖学的整復よりは,むしろ力学的に良好な整復位を得て,且つ強固な固定を必要とする骨折である.また,骨癒合が完成してもavascular necrosisの発生する頻度が高いため,骨折治療法の進歩した現在でもなお治療の困難な骨折の1つとされている.この骨折に対する骨接合術の治療成績はその56%に理想的な治療成績を得たという報告(Boyd)もあるが,大部分の治療成績は必ずしも満足しうるものではない.さらに老人は疼痛に対して抵抗が弱く,長期臥床による肺炎,老人性痴呆などの合併症の発生を防止するには,受傷後できる限り早期に疼痛を軽減し,離床と早期運動を開始することが必要である.このような条件を満足し,かつnon-union,avascular necrosisの発生を防止する治療法が見当らない現在,人工骨頭置換術は本骨折に対する最適の治療法という事ができよう.

新生児先天股脱のレ線学的検討とその問題点

著者: 井村慎一 ,   森田聖一 ,   林信治

ページ範囲:P.379 - P.386

はじめに
 先天股脱の早期発見については最近新生児検診が一般化しつつあり,Ortolani,Palmén,Barlowらの手技により先天股脱はほとんど捕捉しうるとさえいわれている.
 一方レ線診断についてまだ解決されるべき多くの問題がある.Hilgenreiner,Faberらの研究以来,KopitsのParallerogram,Ravelli,von Rosenらの特殊肢位撮影,本邦では水野の相関図,飯島の函数による判定法,さらに高木らによる動態撮影診断法などいろいろ試みられてきたが,近年飯野,野崎,今田,小沢らの指数による判定法が一般的である.

痙性内反尖足に対する後脛骨筋前方移行術の筋電図学的臨床的考察

著者: 井上和郎 ,   高橋公 ,   沼崎邦浩 ,   藤原正敏 ,   蓮江光男 ,   鬼満雅 ,   鈴木良平

ページ範囲:P.387 - P.394

はじめに
 痙性内反尖足に対する手術法の1つとして,内反要因をなす後脛骨筋を前方に移行するBarr法がある.その臨床的成績は,諸家の報告の通り比較的良好であるが,また種々問題も指摘されている.
 今回われわれは,移行筋の機能転換の有無を筋電図を中心として検索したので報告する.

シンポジウム 顔面外傷

交通事故と顔面外傷

著者: 藤野豊美

ページ範囲:P.395 - P.400

 生物はすべて運動している.人間が他の生物との差を創り出したのは,この運動を代償する智恵をもつたからである.その1例として,人間は歩く代りに自転車を発明し,さらに自動車,汽車,飛行機,ジェット機と交通機関を発達させた.この流れをp=mvの立場からみると,質量と速度は時代と共に大きくなり,その結果運動量も巨大化する傾向をとつている.限定された人生の時間を有効に使える利点の反面に,まかり間違えば人間の統禦できる以上の運動量が暴走し,一瞬にして多量の死をもたらすおそれを含んでいることは日常経験する現実である.
 こうした交通機関のなかで,われわれ誰もが容易に入手し利用できるのが自動車である.人間の歩行する道路ならどこでも走行できるこの大きな運動量をもつ鉄塊は,カンと経験のくるつた操作を行えば一瞬にして走る凶器となる(アメリカでは走る棺桶という).事実,警察庁の統計によれば,年間の死亡例は2万人をこえ,負傷者は100万人に近く,しかも年々と増加する傾向にあるという.

顔面外傷の救急処置

著者: 塩谷信幸

ページ範囲:P.401 - P.406

はじめに
 物事を成し遂げるには手順が大切である.近年自動車の普及とともに,自動車事故も激増した.交通外傷の特色は,一言にいえば多発性である.一度に多数の死傷者が発生する.そしてまた,それぞれの負傷者にしても,必ずしも損傷が一部分に限局してくれない.いわゆるmultiple injuryの形をとる.この際救急治療として動員される個々の知識技術は外科学の常識である.問題は,それぞれの知識がいかに手順よく行なわれるかにある.
 現代は医学の細分化の時代である.一つの科にとつてはルーティーンな事柄であつても,他の科の専門医には疎遠な事柄も多い.したがつて多発性の事故に対しては各科のteam workが理想であろう.しかし,そうばかりもいつていられない.救急室に外傷患者が,かつぎ込まれてきた時,そこにい合わせている医師がまず患者の全身状態を把握し,直ちに適切な処置を行なわなければならない.

顔面骨折の診断と治療

著者: 牧野惟男 ,   那須耀夫

ページ範囲:P.407 - P.415

はじめに
 近年自動車数の急激な増加およびその高速化につれて高度の顔面外傷,なかんずく顔面骨折が多くみられるようになつてきた.
 自動車交通の最も発達しているところの米国においてBraunstein7)(1957)の報告によれば交通事故の負傷者の72.3%が頭部および顔面外傷を受けており,そのうち7.7%に頭蓋骨折,7.2%に顔面骨折をうけている.また1972年田島5)の報告によれば神奈川交通救急センターの交通事故入院患者の約5%に顔面の骨折を認めており本邦においても交通事故による顔面骨折患者が予想以上に多いことを示している.このことは従来は交通事故による歩行者の負傷者が大部分であつたのが最近の自動車の異常なまでの増加によつて自動車の運転者あるいは乗客の負傷者が増加したためであろうと考えられ社会経済的因子とそれに伴うところの傷害の発生頻度とが密接な関係を持つていることを示すものと考えられ興味深い.

軟部組織の修復

著者: 谷太三郎

ページ範囲:P.416 - P.423

はじめに
 顔面の外傷後の瘢痕や変形に対して形成手術を希望して来院する患者は,年々増加してきているが,それらの患者の診療を行なつて私たちの感じることは,受傷当時の最初の処置がもつと適切であれば,修正手術の必要はなかつただろうと思われるものや,少なくとも修正や再建手術がもつと容易であつただろうと思われるものが,決して少なくないということである.
 もつとも人目につく顔面の損傷ということで,2次的な修正手術や再建手術の必要な場合が少なくないことも事実であるが,それでも場合によつては初回の処置の際には可能な修復が,2次的には著しく困難あるいは不可能にさえなることもある.また顔面の組織は他にかけがえのないものであつて,それが初期治療の際に不注意に切除されてしまつたり,あるいは余分な損傷をつけ加えられることによつて,2次的手術が著しく困難になることもある.

手術手技

我々の行なつている股関節圧迫固定術

著者: 藤田久夫 ,   沢村誠志 ,   村田秀雄 ,   中島咲哉 ,   前野耕作

ページ範囲:P.424 - P.428

 股関節固定術は無痛の骨性支持が恒久的に得られることで,関節形成術の進歩のめざましい現在でも,種々の股関節疾患に対して有用な治療方法であることに変りはない.従来より極めて多くの方法が考案され,更に工夫と改善が行なわれて来たが,その手技の難しさ,骨性強直の得難いこと,長期間にわたつて外固定の必要なことや,これに続発する膝関節拘縮などのために障害を来たし,しばしば患者の社会復帰が遅延する.
 我々はこれらの問題を解決するために,股関節を2本のboltによつて圧迫固定する方法を採用してみた.これによると,術後は外固定を用いることなく,比較的早期より運動が開始でき,しかも目的とする関節強直は予想外に早く,優れた成績を得る事ができたので,その方法を紹介し,諸賢の追試をお願いしたい.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(19)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   立石昭夫

ページ範囲:P.430 - P.433

32歳主婦の左大腿部痛
 A 次の症例は32歳の家庭の主婦で,家族歴に特別のことはありません.
 既往歴で3年前に某大学病院でバルトリン腺炎というような診断を下された事があります.分娩を2回経過しております.

臨床経験

経験例からみたMallet Fingerの予後

著者: 上山征史郎 ,   江川巌

ページ範囲:P.434 - P.437

 Mallet Fingerはしばしば遭遇する外傷であるが,その治療は各自まちまちで必ずしも統一されていない.そこで如何に治療するのが最も好ましいかを知る目的でわれわれが過去数年間に加療した症例の成績を調査してみた.症例は50例で,そのうち男子38例(76%),女子12例(24%)で,男子が2/3以上を占めている.その受傷原因は,スポーツ外傷18例,機械による挾激16例,指尖よりの強打12例,刃物等による切創4例で松崎1)らのいうように野球以外の球枝にも多くみられた.受傷指の分布において,Stark2)等は,第3指が多く,5,4,2指の順であるが,われわれでは,右側に第3,4指が多くみられた.これらは素手でボールを受けるスポーツによるものが多い.また,左手では切創およびバレーボール等による突指が多い(第1図).
 年齢分布では,Stark2)等は30歳台,20歳台,50歳台の順に多いが,われわれの場合,20歳台が30%で最も多く,10歳(24%),40歳(18%)の順である.これからみるとMallet Fingerはスポーツ等による外傷を受け易い年齢層に多いことが解る(第1表).

尺骨神経麻痺時に発生した長母指伸筋腱脱臼

著者: 前田敬三 ,   三浦隆行

ページ範囲:P.438 - P.440

 指伸筋腱の脱臼はしばしば報告されているが,長母指伸筋腱(EPL)の脱臼はあまりないようである.私たちは尺骨神経麻痺時に発生したEPLの脱臼例を経験し,治療には短母指伸筋腱(EPB)を利用して良い結果を得た.
 患者:25歳,男.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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