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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科8巻6号

1973年06月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 12—血管腫

著者: 金子仁

ページ範囲:P.444 - P.447

 血管腫の大部分は血管の内皮細胞から発生するもので,細血管または毛細血管から発生するものが多い.
 Capillary hemangioma(毛細血管性血管腫),Cavernous hemangioma(海綿状血管腫)と分ける.前者は毛細血管より成る腫瘍であり,後者は洞状に広がった血管より成り,壁に平滑筋線維を有する場合が多い.

視座

酸性ムコ多糖と関節リウマチ

著者: 池田亀夫

ページ範囲:P.449 - P.449

 酸性ムコ多糖蛋白複合体は結合織の重要な構成成分の1つであると共にコラーゲン線維形成,物質の透過,輸送,とくにCaイオンの平衡と沈着,水分の保持,浸透圧の維持,細菌感染に対する防禦などの機能を司どるとされ,結合織代謝の重要な担い手である.その基本単位は1個の蛋白部分とそれより枝状にのびた多糖鎖部分からなり,両部分の結合方式としてO-グリコシド結合とN-グリコシド結合が既に立証されている.多糖鎖部分の構成は酸性ムコ多糖の種類により異なるが,基本的には2糖くり返し構造で,2糖に1個の割合で硫酸基を有する.またアミノ酸と結合する糖部分については一般に2分子のガラクトースと1分子のキシロースが存在する.このように酸性ムコ多糖の一次構造はかなり明らかにされているが,個々の酸性ムコ多糖における構造の不均一性や多様性についてはなお不明の点が多く,前述の生理機能と共に今後具体的に解明すべき課題である.
 酸性ムコ多糖の各種疾患における研究は,周知のように1957年Meyer, Dorfmanらによって始められ,Hurler症候患者尿にデルマタン硫酸の過剰排泄を発見以来,急速に進歩し,尿中酸性ムコ多糖パターンによる病変分類が可能となり,最近では治療えの応用が試みられている.しかしHurler症候を中心とした酸性ムコ多糖代謝異常症におけるめざましい発展に比べ,その他の結合織疾患における酸性ムコ多糖代謝の研究はいまだ少なく,その知見は寥々たる現状である.日本健康成人における尿中酸性ムコ多糖の排泄パターンは既定のことのように一般に考えられているが,事実はそうでなく報告者により区々で,最近教室の新名はこれを明らかにした.しかし乳幼児,老人におけるそれはいまだ決定的なものはない.

論述

骨折と脂肪塞栓

著者: 猪狩忠

ページ範囲:P.450 - P.464

 体内にある脂質が何かの原因によつて,脂肪滴(fat globule)となり,栓子化し,血管を閉塞せしめる脂肪塞栓(fat embolism)の症候群の存在については,すでに1669年Lower1)の論文で指摘され,以来いろいろの疾患で発生することが知られてきている.すなわち本症は火傷,骨髄炎,糖尿病などの疾患でも発生することが報告されている.
 しかし,外傷に伴つて脂肪塞栓が発生することについてはZenKer(1862)2)の剖検例についての報告が最初のようである.また臨床的に,骨折や軟部組織の損傷に伴つて脂肪塞栓の発生することが多いということが判つてきたのは,第一次大戦においてであり,しかも戦傷者においては,脂肪塞栓がしばしば重要な死因をなしていることが認められた(Watson Jones)3)

長管骨骨折の閉鎖性髄内釘骨接合術の新展開(螺子横固定と髄内圧迫固定法)について

著者: 山本真 ,   真角昭吾 ,   轟木碩也

ページ範囲:P.466 - P.479

まえがき
 骨折癒合のための固定は"骨折端は骨が癒合するまで正しい位置に固定しておかねばならない"というBöhlerの原則として知られている."骨片間のnon unionの原因は不適当な固定である(Watson-Jones)""non unionは骨片の不完全な固定の例にもつとも多い(Cave)""骨折端における新骨形成は可能な限り絶対的に近い固定が重要である.骨片のすべての動きは仮骨を損傷する(Key & Conwell)""delayed unionのもつとも通常の原因は骨折部の回旋と剪力を生ずる不適当な固定と,骨癒合が完全になるまでの適当な固定が行なわれないことである(De Palma)""骨折部の固定が不充分で動揺する場合は癒合し難い(神中)""骨折治療にとつてもつとも大切なことは骨折部を整復し,immobilizationを完璧にすることである(天児)"と骨折部の固定の重要さが教えられてきた.

骨髄炎のX線鑑別診断—特に悪性腫瘍との鑑別について

著者: 立石昭夫

ページ範囲:P.480 - P.489

緒言
 骨髄炎と腫瘍との鑑別が臨床上問題となることが多いことはこれまで諸家の指摘するところである.特に近年骨髄炎の起炎菌の変化,抗生物質の変遷とその耐性菌の出現などの諸因子が相互に影響しあい,非定型的な臨床所見,X線像を示す症例の増加が目立つている.
 一般に骨髄炎と腫瘍とがX線鑑別診断上問題となる場合は大きく分けると次の4つの場合が多い.すなわち第一には瀰慢性に不規則な骨破壊をきたした汎発型の骨髄炎と骨の細網肉腫の鑑別である.第二には長幹状骨の骨幹端部,骨幹部あるいは扁平骨に生じた限局性の骨髄炎,あるいはいわゆるBrodie型の骨髄炎と良性骨腫瘍との鑑別である.この場合,腫瘍としては,non-ossifying fibroma,eosinophilic granuloma,chondromyxoid fibromaなどとの鑑別が問題となる.第三は小児の長幹状骨の骨幹端部に生ずるeosinophilic granulomaが時に強い骨破壊と同時に強い骨膜反応を示し,骨髄炎およびEwing肉腫との鑑別が問題となる場合である.

脊椎外科におけるHalo-Pelvic Traction(Pelvic-Hoop,Pelvic-Brace Pelvic-Cast)の応用について

著者: 井上駿一 ,   大木勲 ,   山下武広 ,   寺島市郎

ページ範囲:P.490 - P.503

 脊椎外科へHalo-Tractionが導入されたのは第1表に示すようにLos angelsのRancho Los Amigos病院のJ. PerryおよびV. Nickel(1959)1,2)をもつて嚆矢とする.彼らは第1図のごときHalo-Castを使用し1955年より1967年の11年間にポリオなどの麻痺性疾患を主体とする頸部のUnstable Spineなど204例に使用した.彼らは 1)三次元的に正確な位置のコントロールが可能であること,2)強固な固定力,3)装着簡易 4)合併症,とくに胸部合併症の防止 5)装着による不快感が少ない,などをHalo-castのもつ大きな特徴点としてあげた.第2図は筆者が1967年彼らの病院を訪れたときに見学したnursing careに便利なために作成されたHalo-castのmodificationたるcircle frameである.

検査法

整形外科領域におけるScanning Electron Microscopyの応用—IV.腱および腱鞘

著者: 井上一

ページ範囲:P.504 - P.513

IV.腱および腱鞘
 腱は,滑膜組織である腱鞘によつて包まれ,特に手や足の運動機能にとつて重要な役割を果している。しかし,腱および腱鞘の微細構造とその生理的機能との関連については,余り検索されていない8).ここでは,腱鞘内腔面を,腱をおおう部分(visceral layer)と側壁の部分(parietal layer)に分け,その表面の滑膜表層細胞を走査型電子顕微鏡(以下SEMと略す)下に検鏡し紹介する.さらに,腱の垂直切断面における線維構築をも観察したので紹介する.他方,腱の再生,癒着の問題は,臨床的に深い関心がもたれているが,著者らの切断腱縫合後における再生過程のSEM観察を一部紹介して考察する.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(20)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   古屋光太郎

ページ範囲:P.514 - P.516

22歳女性の右大腿外側軟部腫瘍
 A 患者は22歳の女性です.昭和36年12歳の頃に右大腿外側皮下に母指頭大の腫瘤のあるのに気付いておりましたが,痛みもないため放置しておりました.昭和38年14歳の頃に腫瘤もピンポン球大になつたため摘出手術を受けました(第1図).この腫瘤は外側広筋内にあり,筋膜とは癒着していないが血管に富み,境界が不鮮明であつたそうです.その後症状は全然なかつたのですが,昭和45年21歳頃からまた同じ部位に,鶏卵大の腫瘤としてふれるようになりました.そして歩行時に軽い跛行も現われてきたため昭和47年1月に当科に入院してまいりました.入院時所見では,全身状態に異常なく,X線所見以外の一般臨床成績はすべて正常でした.局所では,皮膚の色は正常で,血管の怒張や炎症性変化はまつたくありません.腫瘤は前回の手術瘢痕に接した皮下にあり,境界も比較的明瞭で移動性もあり,皮膚や骨との癒着はありません.

学会印象記

第28回米国手の外科学会に招待されて

著者: 津下健哉

ページ範囲:P.518 - P.520

 この1月30日,31日,2月1日午前中の3日間第28回米国手の外科学会がネバタ州ラスベガス開催されました.会長はChicagoのDr. Bell,会場はCaeser's Palace Hotelで私はFounders Lectureをするようにとの招待をうけ,この学会に出席する機会を得たのでその印象記ともいうようなものを書いてみたいと思います.Founders LectureというのはもともとDr. Bunnellのmemorial lectureということで行なわれていましたが,その後Founders Lectureと名前を変えたもので,手の外科に貢献したものということで,これに指名されると自動的に米国手の外科会の名誉会員になるというしきたりがあり,今日までの名誉会員であるSeddon,Pulvertaft,Verdan,Vainio,Tubiana等10数名の方と並べられることであり非常な名誉でありました.
 さて学会に先だつた29日の午前中をかけて学会々員のみのcloscd meetingという型で,“The use of silastic Implants in tcndon Surgery”についての討議が行なわれました.Duke大学のDr. Goldnerが司会を行ない,Dr. Carroll,Dr. Hunter,Dr. McFarlandその他が臨床経験を,またDr. Urbaniakらが基礎的研究を発表,これに対して自由討議の型でディスカッションが行なわれました.Rod挿入の手技,後療法については未だ一定の方針が確立されているわけでなく,各人各様の使用方法が行なわれているようでありますが,たとえばHuntcrは術後5日目頃から運動をはじめ腱のいれかえは3週から3ヵ月とするようであり,その成績もいわゆるBoyesの腱移植術前所見でgoodの症例には腱移植が行なわれてよいが,その他の場合にはrodを使用して二次的に腱移植を行なつた方が良結果が得られるというような意見でありました.しかしGoldnerらからはその失敗例,問題点などが指摘され,またDr. Tuppcrから自分は移植腱のaseptic necrosisによる断裂例を経験したがそのような経験の方はないかとの質問に対して8名ばかりの人が挙手していたのは印象的でした.しかしいずれにしても本法が瘢痕の強い腱損傷例に対する治療法の1つとして絶対的な地位を確保しつつあることは確実であり,今後われわれもこの方面の確立に積極的に取り組む必要があることを痛感した次第であります.そしてこれに関する報告は学会演題の中でも取り上げられ,人工腱と骨との固定法など以前にわが国でも報告されたような演題が再び取り上げられていました.

臨床経験

血友病性偽腫瘍の手術治験例

著者: 細谷俊彦 ,   宇沢充圭 ,   石井良章

ページ範囲:P.521 - P.529

はじめに
 血友病性偽腫瘍の外科的処置は,従来禁忌とされていたが,今世紀に入りStarker(1918)は,14歳男子に発生した大腿部偽腫瘍に対し穿刺,吸引を行ない.外科的処置の先鞭をつけた.しかし今日までの報告は欧米でも数十例,本邦ではわずか数例を数えるに過ぎず,しかも予後を明記しているものは非常に稀である.われわれは最近,大腿に生じた巨大な血友病性偽腫瘍の摘出術を行ない,3年3ヵ月の経過を観察する機会を得たので,本症の外科的処置を行うにあたり,細心の注意と周到な準備とをもつてすれば道の開かれることを指向するとともに,血友病患者における手術侵襲の問題を中心に論述する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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