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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科8巻7号

1973年07月発行

雑誌目次

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 13—血管肉腫

著者: 金子仁

ページ範囲:P.532 - P.535

 血管肉腫の大部分は血管内皮細胞から発生する悪性腫瘍と考えてよい.
 血管内皮紬胞の良性腫瘍である血管腫の特徴は,腫瘍細胞が管腔を作る傾向があり,好銀線維は「輪像」を作ることであるが,悪性になってもこの特徴はどこかに保たれている.血管肉腫の組織学的診断にはこのことが最も大切である.また血管を中心として放射状に腫瘍細胞が増殖する場合もある.

視座

運動単位の増大

著者: 津山直一

ページ範囲:P.537 - P.538

 運動器官の疾患を対象とする整形外科医は,より良い成績を上げ得る診断,治療上の歩みを常に把握する一方,骨,関節,筋肉の生理,病理や運動を合目的的に遂行する神経の機構などについても新しい知識の基礎的事項は常に吸収に努める必要がある.後者に関しても問題は数々あるが神経成長因子や運動単位の増大の問題もその一つであろう.新生あるいは再生する神経線維の伸び行く方向を決定する何らかの因子が存在し,それが外的環境因子と神経線維自体が有する内的因子により規定されることはWeiss(1949)の研究以来多くの発展があり,積極的に神経成長を促進させる因子(Nerve Growth Factor, NGF)の本態の追求もわれわれには魅力のある問題であるがこれと同様運動単位(Motor Unit)の増大の現象も神経筋系の再建,再構築のための生体の持つ,陰にかくれたしくみの不思議を物語つて尽きない.運動単位とは周知のごとく,一個の脊髄運動細胞とその軸索が末端で分枝して支配を与える何個かの筋線維群からなる単位であつて,これらの筋線維群は運動細胞のインブルスを受けて同時に収縮する悉無律に従うグループであつて,筋収縮力が増加するのは活動に参加する単位数がふえることが主な因子である.運動単位一個に含まれる筋線維の数すなわち神経支配比はSherrington(1892)の研究以来四肢筋では数百から千前後と推定されて来た.

論述

脊柱側彎症の成因に関する研究—特に特発性側彎症に対するneuro-humoral approach

著者: 山田憲吾 ,   山本博司 ,   中川幸夫 ,   木下勇 ,   手束昭胤 ,   田村大司 ,   川田尚二 ,   和田昇 ,   仲井間憲成 ,   岸浩 ,   森浩

ページ範囲:P.539 - P.550

いとぐち
 我が国の側彎症は半世紀前に考えられていたほど珍らしい疾患ではない.千葉大1)初め我々2)の行なつた最近の野外調査で本症が小中学童の約1%にも発見されたという事実は正に驚きといわねばならない.その上,本症が成長に関係する病気であるという点で,学童身長の近来の加速現象は特に注目さるべきである(第1図).したがつて,我々整形外科医にはこのような現実問題のほかに,将来に対する次のような重要課題が投げかけられていることを思いみる必要がある.
 ところで,本症の治療は極めて困難であり,整形外科治療界の癌3)ともみなされている疾患である.この一端には本症の多くがその原因が不明で,対策を講じ難いと言う点にもあるかも知れない.事実,我々の経験も含め従来の統計では側彎症の約80%は原因不明であり,いわゆる特発性側彎症に属せしめられている.したがつて,本症の原因究明に一歩でも近づこうとする努力を惜しむならば,本問題の解決は遷延され,整形外科医として患児の持つ現実のニードに対応できないばかりでなく,お座なりの治療は平均寿命の伸びた今日永くその無責任さを追求されることにもなりかねない.

転跡線移動方式断層撮影法(Roulettes tomography)による慢性関節リウマチ患者の環軸関節の観察

著者: 所忠 ,   住田篤彦 ,   久野孝幸 ,   井島章寿 ,   今泉司 ,   丹羽滋郎 ,   棈松紀雄

ページ範囲:P.551 - P.560

はじめに
 慢性関節リウマチ(RA)患者の大部分は,何らかの頸肩腕部の痛みおよび肩凝りなどの愁訴を有するものが多い.また,稀ではあるが,脊髄や延髄の損傷により死の転帰をとる場合がある.これらの臨床像とRA患者の頸椎のレ線変化についての研究は多くなされているが,従来の研究方法では,RA患者の頸椎の可動性制限,骨粗鬆症,開口不全,義歯の存在などにより十分なレ線所見が得られない場合が多く,詳細なる検索がなされていない.ことに断層撮影による環軸関節のレ線変化についての報告は少ない.
 我々は,環軸関節のより詳細な変化を追求する目的で,転跡線移動方式断層撮影法(以下Roulettes Tomography)により観察し,臨床症状との関連並びに骨関節の変化の推移の把握を企画し研究を行なつているが,今回は断層撮影所見を中心に報告する.

特発性大腿骨頭無腐性壊死骨頭骨髄静脈造影について

著者: 石垣一之 ,   安藤御史 ,   大脇康弘 ,   近沢良 ,   長谷川充孜 ,   藤田正光 ,   斎藤克登之 ,   加藤哲也

ページ範囲:P.561 - P.568

 近年,特発性大腿骨頭無腐性壊死患者は,増加の傾向にある.しかも,外来を訪ずれる患者は中期,末期が多く,collapseが大きいものまたは,広範な関節軟骨の剥離,亀裂が起つているものが,大半を占め,しばしば治療に困難を覚える.これは,自覚症状がレ線所見に遅延するためである.それ故に我々は,特発性大腿骨頭無腐性壊死の骨頭骨髄静脈造影の特徴的所見を分析することにより,本検査法が早期発見の手段となり,かつ治療の選択の指針になりうるかを追求した.

このごろの化膿性脊椎炎について

著者: 大谷清

ページ範囲:P.569 - P.576

はじめに
 一般に,化膿性骨髄炎は長管状骨に頻発し,脊椎のような短扁平骨には比較的稀有な疾患である.
 Wilensky(1929)14)によると化膿性脊椎炎の最初の報告は1879年Lannelogueであり,本邦では1903年佐藤の1例報告がある6).化膿性脊椎炎に関する臨床研究は1895年Hahnの論文が最初である14).彼はその中で本症は稀有な疾患であるが,きわめて重篤な予後の不良な疾患であると述べ,早期診断,早期治療の必要性を強調している.

境界領域

ヒトの骨格の正常および異常発生

著者: 西村秀雄 ,   田中修

ページ範囲:P.577 - P.595

いとぐち
 運動器系統の疾病の治療に当つたり,その予防についての助言を行なつたりするに際して,この系統の正常または異常発生に通暁していることは必須であろう.ことに骨格系統の先天異常は比較的頻度が高く,また多くは機能障害を伴なうばかりか,外観上目立つため本人や家族に精神的な苦悩をもたらすものであつて,現代医学の重要な課題といえる.従来,奇形の発生は遣伝的であると思われて来たが,現代では胎生期における環境因子の影響も大であると考えられるようになつた.多くの骨の異常発生は各骨原基の発現期に成立すると考えられるから,環境因子の働く時期と異常の型との相関性を調べることも大切であろう.
 骨格の発達は先ず胎芽における骨発生の初発組織たる間葉細胞の濃縮から始まり,思春期頃に亘つて続けられるが,ここでは胎生期に行なわれる骨発生における正常ないし異常に限定して,今日の知識を整理してみよう.

カンファレンス

四肢腫瘍—これはなんでしょう(21)

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   金子仁

ページ範囲:P.597 - P.600

33歳男子,右glutealの腫瘍
 A 関連病院でたまたまみた患者さんですので,いろんな検査データも揃つておりません.
 患者さんは33歳の男の方,土木関係の労務者で非常に体格の良い患者さんで,右足関節の捻挫で,外来を訪れて,数日間治療を受けていました.

臨床経験

先天性尺骨欠損症について

著者: 宇沢充圭 ,   三笠元彦 ,   山屋彰男 ,   沖永明 ,   月村泰治

ページ範囲:P.601 - P.606

 先天性尺骨欠損症は長管骨の欠損の中でも上腕骨に次いで稀であり,1698年にGoellerが報告したのが最初と思われる.その後欧米では比較的多くの報告があり,1950年にLaunseckerは80例を集録している.しかしわが国では杉立の1例,牛込の2例,高宮の1例等を見るにすぎない.われわれは最近4例を経験したので報告する.

特発性上腕骨内反症

著者: 村上敬朋

ページ範囲:P.607 - P.613

はじめに
 上腕骨内反(Humerus varus,以下H. v.と略す)とは上腕骨上端部が異常な内反位彎曲を呈するもので,いわば内反股と同様の変形である.H. v.には各種のものがあるが,Weil(1959)32)はこれを 1)H. v. symptomaticus,2)H. v. congenitus,3)H. v. adolescentium essentialisの3型に大別している.表題に用いたH. v. idiopathicus(以下H. v. i.と略す)はChrysopathes(1936)6)の命名によるものでWeilのいうH. v. adolescentium essentialisに相当する.このH. v. i.は14歳前後の発育期に肩関節運動制限と上腕短縮をきたし特有なX線像を呈する極めて興味深い疾患で,いまだ本邦においても25例の報告しかみられない.H. v. i.はその特徴ある病像より一独立疾患として取扱われてはいるが,その病因に関しては今なお問題が多い.われわれはここに2例のH. v. i.を追加報告すると共に,本邦における報告例の調査結果をもとにH. v. i.について総括的なことを述べてみたいと思う.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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