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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科9巻1号

1974年01月発行

雑誌目次

巻頭言

第47回日本整形外科学会開催への案内

著者: 柏木大治

ページ範囲:P.7 - P.8

 去る6月,札幌市の第46回日本整形外科学会総会において私が会長に指命せられ,第47回総会を新設の神戸文化ホールで来たる4月4,5,6日の3日間開催する事に決定した.
 私および教室員一同にとつてはこの上もなき光栄であるとともにその責任の重大さを痛感している.

視座

人工関節について思うこと

著者: 諸富武文

ページ範囲:P.9 - P.9

 関節が何らかの原因,例えば種々の種類の炎症あるいは外傷によって解剖学的,機能的に荒廃した場合,さらには腫瘍の進展による関節障害の存在または,招来されるであろう生命の危険と障害が予想される場合には,これらの関節に対して如何に対処するかはわれわれにとつて大問題である.関節機構の荒廃の場合には関節の三大特性である支持性,運動性,無痛性のほとんどが同時に冒されていることが多い.この場合,運動性を犠牲にして固定術を施行することにより,他の二大特性を最大限に発揮させるのも重要な対応策であり,これにより患者も満足している例も多い.一方患者も医師も関節の特性をすべて満足させられる手術法があれば何らかの関節形成術を望むしまた当然の欲求である.そこで先人の創意工夫によつて固定術に対して関節形成術の種々の術式が考案されてきた.
 我邦においても,J. K.膜,OMS膜の考案により幾多の成功例が挙げられている.しかし一方これのみに頼られない場合もあり,1938年Smith-Petersonのcup arthroplastyが開発されたが,まだ満足すべき成績が得られず,ついでMooreらは1943年人工骨頭を始めて用い,骨頭置換に成功している,この場合それに使用する金属の選択が重要である.一方1946年Judet兄弟のacrylic prosthesisも開発され,実用に供され我邦でも片山教授,橋倉らの報告があるが,今や金属によるものが圧倒的に使用されている.

論述

減圧症と骨関節の変化—1.潜水病—その全般的考察

著者: 林晧 ,   川島真人 ,   鳥巣岳彦 ,   加茂洋志 ,   天児民和

ページ範囲:P.10 - P.18

減圧症と骨関節の変化に関する研究発表にあたりて
 潜水病と整形外科とは長い間あまり関係がないように思つていた.しかし最近になり潜水夫の中に関節障害を起していることが案外多いことにわれわれは驚いた.そしてこれは潜水夫だけでなく高圧下に作業する人たち,すなわちケイソンで建設作業に従事している人たちにも同じような変化が起つていることが明らかになつてきた.これらは主として高圧下から急速に減圧するための障害で,これを一括して減圧症といつているが,ただそれだけではないようである.すなわち長時間の高気圧下の作業が1つの外傷として作用される可能性もある.すなわちbarotraumaであるが,このようなものは減圧下に長時間さらされた場合にも起りうる可能性がある.すなわち航空機による急速な上昇等もこの中に入ってくる,これらは新しい職業病の領域である.そこで九州労災病院高圧医療研究部が中心になり潜水病とそれによつて起る骨関節の変化を数回にわたり解説的な論文を掲載することにした.最初は直接骨関節に関係のない論文であるが,これをご理解願えればその後の論文が理解しやすくなるものと思う.

高周波電流切除鏡を応用した膝関節滑液膜切除術

著者: 有富寛 ,   山本真

ページ範囲:P.19 - P.30

I.緒言
 慢性関節炎特に関節リウマチに対する治療は古来いろいろ試みられてきたがその限界があり関節変形へと進行することが多いことから全身性疾患にもかかわらず外科的アプローチが試みられてきた.その一つとして滑液膜切除術がある.
 滑液膜切除術は1887年Schüllerらにより報告されて以来多く報告されてきたが術後著しい機能障碍を残すことから一時下火となつたが,術後療法訓練法の進歩,薬物療法の限界と相まつて再び広くその価値を認められてきた.近年組織化学,電子顕微鏡,免疫組織学,核医学などの発展により関節滑液膜局所における関節リウマチなどの病理が解明されるにつれ滑液膜関節液の役割やその変化が次第に明らかになつてきた.

高年齢に見られる膝関節内持続性出血について

著者: 広畑和志

ページ範囲:P.31 - P.38

はじめに
 日頃,われわれは膝関節に貯溜した滲出液を採取してその外観や性状によつて,ある程度の疾患を鑑別することが必要である.たとえば溷濁している場合にはリウマチ,結核,感染症などの炎症疾患を疑い,透明である場合には変性疾患,半月損傷,あるいはinstabilityなどによる単純な滑膜の刺激性反応を考える.そして,爾後の臨床検査によつて診断が確定され,適切な治療がおこなわれる.
 一方,穿刺液が血性である場合には,もしも病歴に外傷があつたり,出血素因となる血液疾患が認められれば,診断もそれほど難しくない.然し日常の診療で原因の摑めない持続性出血のある症例に遭遇することも少なくない.この場合には往々にしてbiopsyや関節を開いて診断せねばならない.

CP児の外反扁平足変形の治療—Grice-Green手術の経験

著者: 安藤忠 ,   高松鶴吉 ,   佐竹孝之 ,   柴田玄彦

ページ範囲:P.39 - P.47

はじめに
 この論文は,CP外反扁平足に対するGrice-Green6,7)法(以下G-G法)に関してのものであり,ここに含まれる経験は,肢体不自由児施設足立学園で,1965年より1972年までの間に行なわれたものである.
 既にその効果の優秀性を認められているG-G法は,Griceが予言したごとくCP児にも応用されるようになり,1958年のBaker & Dodelin1)による17人の患者についての報告を嚆矢とし,1962年Mortens12)(27足),1964年Baker & Hill2)(56足)同じくPollock & Carell14),1965年Hunt9)(5足),1969年Tohen17)(12足),1970年Keats10)(63足),同じくChigot4)(43足)等が諸観点からの意見を述べているが,それ等の成績は概してわれわれを勇気づけるものである.われわれの病院でも,このG-G法はCP外反扁平足の治療に積極的に応用され,過去6年間においては,CP児の下肢手術経験372足のうち53足(14.2%)を占めている.

整形外科の疼痛疾患におけるハリの経験

著者: 前田敬三 ,   金子孝

ページ範囲:P.48 - P.54

 私たち整形外科の外来で疼痛疾患が占める範囲は非常に大きく,特に五十肩,腰痛などは患者が多いが故に臨床医にとつては大切な疾患である.しかし"腰が痛い","肩のだるやみがする"などと訴える時,必ずしも常に整形外科医を訪れるわけではなく,何割かの人達はまず針灸による治療に通い,そのうちの何割かはそのまま痛みがなくなつて「治癒」してしまうのが現状である.
 痛みの機構と鎮痛作用についてはまだ十分な解明がなされていないようであるが,臨床面ではpain clinicの発展が著しく,痛みをなくして患者を苦痛から解放することが神経ブロックを中心にして行なわれている.一部ではその中に東洋医学による鎮痛法が取り入れられ3),最近は中国ブームも手伝つてかさらに関心が高まつている.私たちも古くから行なわれている東洋医学的鎮痛法に興味を抱き,どの程度の効果と応用範囲があるものかと考え,特にハリを使用して症例を重ねているので,現在までに経験した症例を反省し,その適応と限界の決定の一助になればと考えた.

境界領域

骨病変のモデルとしてのosteolathyrismにおける骨コラーゲンの変化

著者: 林泰史 ,   五十嵐三都男 ,   松浦美喜雄 ,   吉野槇一

ページ範囲:P.55 - P.63

I.Lathyrismの概略
 Lathyrismは体重減少,骨格異常,血管異常を伴う疾患で,病因はコラーゲン,エラスチンの脆弱性の増加,抽出性の増大に起因している.本症は19世紀の科学者Cantaniがスイートピーの一種,lathyrus odoratusの種を摂取することにより発病することを発見して以来,lathyrismと名づけられた1)).ヒトにおいては本症はインド,アルジェリアで往々みられ,罹患率は人口の7%に達することがある1).実験的lathyrismは幼若ラットにlathyrus odoratusの種の挽いたものを50〜70%の割合でえさの中に入れ,飼育することにより,コラーゲン含有量の多い組織,すなわち骨,腱,皮膚等に異常をきたすことをGeiger(1933)等が観察したのが最初である2)
 Lathyrism発症に有効な成分をβ-aminopropionitrile(以後βAPNと略す,NH2・CH2・CH2・CN)であることを確認したのはSchilling(1954)等である3)

臨床経験

Massive Osteolysis

著者: 植木壽一 ,   中村克己 ,   鳥飼高嗣 ,   山本吉蔵 ,   石崎文子 ,   和田光久

ページ範囲:P.69 - P.78

 骨溶解をきたす疾患として骨原性腫瘍,骨転移がん,骨転移肉腫およびそのほかの腫瘍性疾患あるいは副甲状腺機能亢進症などが知られている.そのほか骨の一部が進行性に完全に吸収され,その吸収部には毛細血管が多数認められるが,一般にみられる骨の血管腫の骨吸収態度とは異なる特異な骨溶解過程を示す稀な疾患がacute spontaneous absorption of bone1),disappearing bones2)あるいはmassive osteolysis3)などの名称のもとに報告されている.このような特異な骨吸収像を示す症例はBullough(1971)4)によれば52例が報告されているが,本邦ではその詳細な報告はほとんどみられない.
 われわれは最近massive osteolysisと思われる症例を経験し,剖検を行なう機会を得たので,文献的考察とともに検討を加えた.

脊髄または馬尾神経症状を呈した硬膜外悪性腫瘍症例の治療—主として除圧効果の検討

著者: 小林勝 ,   片岡治 ,   梁復興

ページ範囲:P.79 - P.85

はじめに
 脊髄硬膜外悪性腫瘍による圧迫の症状はほとんどが対麻痺と疼痛であり,その治療は照射と抗癌剤の投与以外は対症療法に終始する傾向にある.
 今日種々の抗癌剤が開発されたが,いまだ決定的効果をもたない以上,除圧手術(全椎弓切除と可及的腫瘍摘出)で麻痺の緩快,激痛の消退がたとえ一時的にもえられるならば,この外科的治療の併用は治療成績向上を期待する上で合理的であろう.

母趾腓側種子骨の無腐性壊死の1例

著者: 浦野良明

ページ範囲:P.86 - P.89

 1736年Nesbittによつて母趾中足骨頭下面に存在する一対の"種子骨"が報告され,1892年Pfitznerがこの種子骨は短母趾屈筋腱内に形成されることを指摘し4),その後1924年Renanderは外傷の既往がなく,歩行時第1中足骨頭の足底部に疼痛を訴え来院し,X線的・病理組織的に脛側種子骨の壊死と診断した2例を"Typical osteochondropathy of the medial sesamoid bone of the first metatarsal"として報告して以来12),"Osteochondritis3)","Osteochondrosis","lokale Malazien10)","Sesamoiditis7)","typical disease of the sesamoid bones6,7,10)"さらに本邦では"母趾種子骨痛14)","母趾種子骨無腐性壊死511)"などとよばれ,病因についても骨軟骨の炎症・骨栄養不良・血栓形成・内分泌の異常など種々の説がある.しかし一般的には"Perthes病","Köhler病","Kienböck病"など国の骨軟骨疾患と同一の発生機序によつて起こると考えられている.
 最近,われわれは外傷の既往もなく歩行時第1中足骨頭足底部に疼痛を訴え来院し,母趾腓側種子骨の無腐性壊死の診断で,腓側種子骨を摘出し,良好な結果をえた症例を経験したので文献的考察を加え報告したい.

環椎前弓単独横骨折の1例

著者: 黒田宏

ページ範囲:P.91 - P.93

 環椎骨折は,1920年Jeffersonが,損傷に関する3つのMechanism(後述)を発表して以来,別名Jefferson's Fractureとして知られている椎弓縦骨折が報告されているが,前弓単独横骨折に関しては,著者の渉猟し得た範囲では,Boni R.(1957)の1例を見るに過ぎない.
 最近著者らは,外傷によつて惹起された環椎前弓単独横骨折の症例を経験したので,その受傷機転および症状経過と,診断および治療上の留意点について若干の考察を加えて報告する.

外傷性大腿神経麻痺の1例

著者: 戸嶋浩 ,   山広健三

ページ範囲:P.94 - P.97

はじめに
 大腿神経麻痺は,末梢神経麻痺のうちでも,きわめて稀であり,その多くは,腸腰筋損傷に随伴して認められる一症候としてとりあげられているにすぎない,最近われわれは,腸腰筋損傷が関与しない大腿神経麻痺の1例に遭遇したので,ここに報告する.

Melorheostosisの1例

著者: 船橋建司 ,   田中偉生 ,   世古口公宏

ページ範囲:P.98 - P.101

 Melorheostosisは,レ線上特異な骨硬化性変化を示す骨系統疾患で,1922年Leri & Joannyにより初めて報告されたが,本邦での報告例は多くない.私達は最近本症と思われる症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

カラーシリーズ

四肢の軟部腫瘍 19—Alveolar soft part sarcoma

著者: 金子仁

ページ範囲:P.2 - P.5

 日本語にすると蜂窩性軟部肉腫であるが,alveolar soft part sarcomaの方が通りがよい.下肢の筋肉内または筋膜に接して発生するのが最も多い.
 その名の示すように蜂窩状を呈す.しばしば癌と間違える.PAS陽性穎粒が認められるが唾液で消化されないといわれる.

学会印象記

第4回西太平洋整形外科学会(WPOA)ならびに第5回シンガポール整形外科学会に出席して

著者: 津山直一

ページ範囲:P.64 - P.68

WPOAとマレーシアの印象
 西太平洋整形外科学会(Western Pacific Orthopaedic Association,WPOA)は今年8月20日より22日の間,新興マレーシア国の首府クアラランプールにおいて開催された.会長はマレーシア整形外科学会長でもあり,今日では同国の厚生行政全般に重きをなす政府要人でもあるDr. H. A. M. Ismailであり,副会長として実際に総会運営に当つたのはマレーシア大学の整形外科教授Prof, J. F. Silvaである.WPOAは第1回1965年日本,第2回1968年香港,第3回1970年マニラと今回は4度目を迎えるわけであるが,前回フィリッピンで開催の際会長争いがあつたのが災いして本学会の衰微が懸念されたが,今回は参会者150名,総演題数94と盛会で日本,韓国,香港,マレーシア,シンガポール,フィリッピン,台湾,インドネシア,タイ,オーストラリア,ニュージーランドのほかインド,アメリカ合衆国からも参加があり,古くからの会員はアジアの整形外科同志の旧交を温め,日本から新しく参加した諸氏もアジアの整形外科の現況を認識する良い機会を経験されたことと思われる.

整骨放談

唯思起死回生術

著者: 河野左宙

ページ範囲:P.90 - P.90

 ここに写したのは華岡青洲先生(1760〜1835)自筆の書であるが,昭和38年,大阪での日本医学会総会のおり,和歌山県立医大関係者のご好意で配られた青洲先生肖像画の上にのせられていたものである.私はその肖像画を表装して新潟以来ずつと自室に掲げている.
  竹屋は粛然として烏雀喧し,風光自適
  寒村に臥す,唯思うは起死回生の術
  何ぞ望まん軽裘肥馬の門

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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