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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科9巻10号

1974年10月発行

雑誌目次

視座

関節疾患とTryptophan代謝

著者: 猪狩忠

ページ範囲:P.799 - P.799

 本年5月初旬の3日間,イタリアの古都パドバのPadua大学において第一回国際Tryptophan研究会議が開かれた.
 Tryptophan(Try)はHopkinsおよびCole(1901)らにより発見され,その代謝はindole核を有するアミノ酸特有の複雑で特異的な代謝patternを示すことが明らかとなり,基礎医学,薬学は勿論臨床医学の多くの分野においての研究が数多くみられるようになつてきた.

論述

膠原線維の細胞内形成とその意義

著者: 井村慎一 ,   田中重男 ,   高瀬武平

ページ範囲:P.800 - P.807

はじめに
 生体における膠原線維形成機序については,線維芽綿胞,骨芽細胞,軟骨芽細胞のごとき膠原線維形成細胞が,collagen分子を細胞内で合成し,これが細胞外に分泌されたのち重合が行なわれ,周期性横紋を有する膠原線維が形成されるといわれ,広く内外の学者によつて支持されている.
 一方膠原線維が細胞内に証明されるか形成されるという報告もあり,細胞内で形成されたとする報告には,Meek(1965),Welsh(1966),Cullen(1972)らの報告があり,それぞれHerix Aspersaの線維芽細胞内に,desmoid fibromatosisの細胞内に,ratの実験的関節炎の線維芽細胞内に膠原線維がみられたと報告している.これらの線維はいずれも正周期膠原線維てあり.長周期性の横絞を有する線維が細胞内にみられたという報告はSheldon & Kimballの報告しかない.

ボルトによる膝関節固定術の考案

著者: 小林勝 ,   沢村誠志 ,   村田秀雄 ,   中島咲也 ,   藤田久夫

ページ範囲:P.808 - P.812

はじめに
 膝関節の固定術式は極めて多彩である.その中でもKey(1932)の圧迫固定の方法から発展したCharnley(1948)法が今日では頻用されている.この方法のすぐれた成績は広く認められているが,術後四週間の臥床を余儀なくするということは致命的な欠点といえる.そこで術直後より移動動作が簡便で,しかもCharnley法と同様のすぐれた成績をえることを目的として本法を試みるに到つた.
 本法は強靱なbolt 2本で交叉圧迫する簡単な方法である.

第47回日本整形外科学会総会より

強直性脊椎炎<総合討議>

著者: 山本真

ページ範囲:P.813 - P.820

 第47回日本整形外科学会における総合討議"強直性脊椎炎"は4月5日(第2日目)の午前,第2会場にて行われた,Chairman阪大七川歓次助教授,福島医大松本淳教授のもとで4題の演題によつて組立てられたものである.強直性脊椎炎の臨床病態と早期診断について—北兵庫整形外科センター栗原章,強直性脊椎炎の診断の問題点について—阪大整形辻本正記,強直性脊椎炎の経過について—大阪成人病センター小松原良雄,強直性脊椎炎の臨床的検討—東人整形関寛之,演者は上記の4先生である.
 私はintroductory speakerとして紹介役をした関係で本誌よりこの総合討議について書くようにいわれた.本疾患は甚だ古くから知られているわりには,わが国では症例が少いという印象もあつてかあまり一般の興味をひかず,意外にその内容が知られていないという感じがする,したがつて総合討議の内容を折りこみながら本疾患の現在の知識の概略を記することで責を果したいと考える次第である.なお文中に挿入した簡潔にまとめた英語の要約はLondonのDr. Huskissonの著Joint Disease;All the Arthropathies(1973)7)より引用したもので,総会においても使用した,ここにお断りしておく.

ペルテス病<総合討議>

著者: 島津晃

ページ範囲:P.821 - P.825

まえがき
 ペルテス病はWaldenström,Legg,Calve,Perthesによつて独立した疾患として取扱われるようになり,60余年を経過し,多くの臨床経験,病理組織学的知見が積まれたが,その間,いろいろの立場から多様な治療法が行なわれてきた.その目標は罹患骨頭を,変形を起こすことなく,いかに早く修復させるかにあり,これが修復能の盛んな年齢の疾患である関係上,成長期のおわるまでの長期の観察によつて評価するのが適切であることは言をまたない.今回の整形外科学会総会には,こうした考慮のもとに10年以上の経過を追跡した成績にしぼつて演題が募集され,その8題を一括して,西尾教授の座長,上野助教授の副座長のもとに,私が紹介発言を行なつて総合討議が行なわれた.
 本症の本態に関する知見は,最近の20年間に急速に増加し,とくにここ10年間には骨頭核の虚血からはじまる一連の病理変化が明確にされてきている.各演者の10年以上の経験は,それを生む足掛りを提供したことになつたが,新しい観点に立脚した治療法ではないことを,まずことわつておく必要がある.総合討議であるからには,最近の知見に当然ふれなければならず,これを紹介発言のなかに述べた.

先天股脱観血的整復術<総合討議>

著者: 坂口亮

ページ範囲:P.826 - P.831

はじめに—総合討議
 先天股脱の治療法の中で,観血的整復はひとつの重要な役割をもつもので,今度の学会ではテーマにとり上げられた.シソポジウムというほどの扱いではないが,総合討議という形式である.すでに演題募集の段階で,「10年以上経過したものの成績」という条件がつけられ,そこに集つた5演題をまとめて,座長・副座長の進行によつて討論を進める.先天股脱に関しては,別に「Riemenbügel法の成績-5年以上」もテーマに採り上げられ,他の疾患でもそのような形式で総合討議されたものがいくつかある.会長の柏木教授の下で企てられた新しい試みのひとつで,各演者の口演時間は4分程度で短いが,切りつめた時間を討論にふり向け,また最初にIntroductory Speaker(紹介者)というのがいて,10分程度各演者の内容を要約して紹介することになつている。国際学会などではよく採られる方式であるが,わが整形外科学会では今回が初めての試みである.「先天股脱,観血的整復術」のグループでは,前述の5演題を中心に討論を進める座長・副座長はそれぞれ河邨教授,柏木教授が当り,そして紹介者は私に決められた,どのような経過で決められたのかは知らないが,紹介の大役を仰せつかつた.

脊椎分離・辷り症<総合討議>

著者: 片岡治

ページ範囲:P.832 - P.838

 第47回日本整形外科学会学術集会のプログラミング上の特徴の一つとして,本学会で初めて総合討議が採用されたことが数えられる.
 年々応募演題数は増加の一途をたどり,限られた学会期間中に全演題を採用して消化するためには,学会場数を増やすこと,および誌上発表を採用すること,などの考慮が払われてきた.しかし,会場数の増加により会員の出席したい項目の重複という不硬や会場確保の困難という問題が生じ,また誌上発表はそのoriginarityは別としても,抄録のみでは充分に発表者の意図する問題点が理解できない.このため,近年はプログラム委員会による応募演題の選出が行われるようになつた.だが,これとてもその選抜技術上に種々の問題点を含んでいる様である.

膝内障と類似疾患<シンポジウム>

著者: 渡辺正毅

ページ範囲:P.839 - P.844

まえおき
 昭和49年の第47回日本整形外科学会総会で主題の1つとして「膝内障と類似疾患」がとりあげられたが,これは非常に古くてまた新しい問題である.膝内障は今日の整形外科医が最もつよい関心をもつ問題の1つであろう.このテーマはすでに昭和48年夏の東日本整形外科学会においても主題としてとりあげられ,古谷誠,森義明,松井宜夫,守屋秀繁,松原統,今井望および中島寛之の諸氏によつて討議されたが,そこでは半月板と靱帯損傷の診断についての報告と討論が主な事項で,治療面の論議が十分でなかつた憾みがあつた.2度の主題の座長を依嘱されたわたくしは,今回は診断のみに片寄らないように心がけたつもりである.
 次に今回の主題の担当者の選択については,この方面のexpertが多いために,かえつて非常な苦労をした,また,このような多彩な問題を2時間そこそこで論議することは無理な話で,会長の柏木教授と相談の結果,6人の担当者にしぼり,各自15〜20分でしやべつてもらうことにした.そして発言者には,日本における膝内障のpioneer天児名誉教授と膝関節外科の権威者森教授をお願いした.そして幸にも6名の元気のいいexpertと上記発言者が決定したので,座長の役目は「しやべらぬこと」ときめこんだ次第である.

臨床経験

Freeman-Sheldon症候群(Cranio-Carpo-Tarsal Dysplasia)について

著者: 山口雅成 ,   小野里一郎 ,   北村憲治

ページ範囲:P.845 - P.850

いとぐち
 Freeman-Sheldon症候群は,1938年英国のFreemanおよびSheldon7,8)が,顔面,手,足に特徴的な変形を有する先天奇形の2症例を報告し,Cranio-Carpo-Tarsal Dystrophyと命名したのを嗃矢とする.以後.Ottoが1953年3例目を報告し,現在まで約30例が報告されているに過ぎないが,その診断的興味のためか,主として小児科医による報告が多い.
 今回われわれは,典型的なFreeman-Sheldon症候群と思われる症例を経験したので,考察を加えて報告する.

四肢軟部悪性腫瘍の治療成績

著者: 大橋光伸 ,   高瀬武平 ,   真鍋昌平 ,   三秋宏 ,   山内四朗 ,   西島雄一郎

ページ範囲:P.851 - P.854

緒言
 軟部腫瘍は,臓器および細網内皮系を除く軟部組織に発生した,非上皮性腫瘍の総称であるが,その悪性腫瘍は,症例が比較的少なく,病理組織学的にも多彩であり,また診断に異論を伴なうことの多い疾患である.
 我々は,当教室における四肢軟部悪性腫瘍の診断を再検し,治療と予後との関連について検討を加えたので報告する.

偏側肥大症

著者: 岩倉博光 ,   曾我恭一 ,   立石昭夫 ,   伊藤維朗 ,   東博彦 ,   赤坂嘉久

ページ範囲:P.855 - P.862

 身体の偏側に形態の異常や成長の異常を認める疾患は種々存在するが,いわゆる偏側肥大症もその一つと考えられる.これは身体の偏側の過成長であると定義できるが,その左右の不均衝の程度は極めて軽度のものから,すなわちほぼ正常と認められるものから,臨床的に左右差の著明なものまて相当の幅が存在する,そしてこの偏側肥大症には四肢の一部に限局する部分的偏側肥大症と顔面及び体幹の非対称を含む完全偏側肥大症に分類できるが,ここでは少くとも一肢全体の肥大症以上のものを偏側肥大症とした.

脊髄損傷患者の慢性浮腫下肢に発生した血管肉腫の1例

著者: 三井宜夫 ,   福居顕宏 ,   佐野貞彦 ,   玉井進 ,   増原建二 ,   北村旦

ページ範囲:P.863 - P.867

はじめに
 慢性リンパ性浮腫に合併したリンパ管肉腫の症例はStewartとTreves1)が"lymphangiosarcoma in postmastectomy lymphedema"として最初に報告して以来,数多くの症例が追加され,Schiemer2)は90例以上の報告例があると記載している.一方,慢性リンパ性浮腫の四肢から発生した血管肉腫の症例は少なく,とくに国内における報告例は見あたらない.
 最近われわれは長期間両下肢にリンパ性浮腫が存在した脊髄損傷患者の左麻痺肢に発生した血管肉腫の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

カラーシリーズ 整形外科手術・3

上位胸椎に対する前方侵襲法

著者: 池田亀夫

ページ範囲:P.794 - P.797

 前回において胸鎖乳突筋前縁に沿う切開で頸椎から第2胸椎まで展開できることを述べたが,今回は胸椎柱中央より高位の胸椎侵襲法について述べる.
 半側臥位ないし側臥位にて対側に枕をおき手術側を伸張する,脊椎棘突起列と肩甲骨椎骨縁のほぼ中央で第2肋骨高位からメスをいれ,下行し,肩甲骨下角直下を巡り,前腋窩線に至る.必要に応じて皮切の上・下端は短縮あるいは延長する(後側方切開または後方切開)(第1図).僧帽筋,菱形筋,闊背筋を切離し,肩甲骨とともに前上方へ排する,このとき注意して頸横動脈の本幹を損傷せずに各分枝を確実に結紮する.切離せる筋断端を肩甲骨とともに前上方へ,固有背筋群を後内方へ排すると肋骨面が露出する.肋骨を移植骨として利用するので肋骨切除,開胸する.普通第3肋骨を,第4胸椎以下に対しては1〜2椎高位の肋骨を骨膜下に切除する(第2図).肋骨裏面の骨膜を切離すると半透明の胸膜を透して直下に肺の運動を認める.胸膜内または胸膜外(胸内筋膜下)で剥離を進めて椎体に達する.呼吸能に及ぼす影響,術後管理の容易さなどの点から後者を愛用する.とくに胸膜癒着の存するときは胸膜外剥離は容易である(第3図).右側浸襲は心臓に与える影響が小で,視野が広く,一方左側侵襲は胸大動脈が手術遂行上好個の示標となり,肋間血管を捕捉し易いなどの利点をそれぞれ有するが,要は開胸による呼吸障害や残存呼吸能の良否を考慮して侵襲側を決定する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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