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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科9巻11号

1974年11月発行

雑誌目次

特集 脊椎外科(第1回脊椎外科研究会より)

上位頸椎疾患(先天性奇形)

著者: 津山直一

ページ範囲:P.880 - P.881

 頸椎上部から大後頭孔にかけての頭蓋脊柱結合部には腰仙椎移行部同様種々の奇形や移行形の存在がまれではない.しかし奇形や変形の程度と臨床症状や機能障害は一致しないことも多く,無症状から重篤な症状を来たすものまで多様であり,先天性奇形でありながら成人年齢になつて徐々に症状の出現することも稀ではなく,そのため他種神経疾患と誤診される可能性も少なくない.またその発現する神経症状も単に骨格奇形によるもののみでなく,小脳延髄下垂転位,脊髄空洞症,椎骨脳底血行不全そのほか脳延髄脊髄内に内在する病理所見を伴うこともあり,脳神経外科や神経内科との境界領域でもあり,診断上にも治療上にも種々の重要な問題を含んでいる.今回は東大整形外科で過去約10年間に経験した症例のうちの32症例を中心にいくつかの問題点を論ずることとする.

上位頸椎部の外傷について

著者: 小林慶二

ページ範囲:P.881 - P.883

 82例の上位頸椎損傷の治療成績を検討したので報告する.
 症例の損傷部位別,性別頻度は第1表のとおりである.このうち,10例は受傷後数10時間以内に死亡している.

第2頸髄神経根に発生したSchwannomaの3例

著者: 福田真輔 ,   下村裕 ,   大田寛 ,   網谷克正 ,   天野敬一 ,   加藤次男

ページ範囲:P.884 - P.885

 1965年から1973年までの9年間に我々は6例の頸髄神経根に発生したSchwannomaを手術したが,そのうち3例は第2頸髄神経根から生じたdumbbell tumorであつた.脊髄のもつとも頭側に位置するこのような腫瘍は比較的みのがされやすく,我々も3例中2例に最初診断を誤つた.しかし検討してみると臨床症状,X線所見などに一定のパターンがあるように思われる.

慢性関節リウマチ患者の頸椎のX線学的検討

著者: 酒匂崇 ,   大原中行 ,   宝亀玲一 ,   前原東洋 ,   森永秀史 ,   今給黎尚典 ,   富村吉十郎 ,   川村英俊 ,   平部久彬

ページ範囲:P.886 - P.887

 慢性関節リウマチ(以下RAと略す)の病変により,頸椎に変化をみることは多くの報告により指摘され,特に環軸関節部の変化について近年関心が寄せられている.今回われわれはRAの頸椎変化を調査する目的で入院中の症例20例とRAクリニックの症例で頸,肩に疼痛や不快感を訴える33症例に対し,頸椎のX線学的検査を行い,臨床症状との関係について検討を加えたので報告する.
 対象症例:検討を加えた53例の年齢は21歳より75歳におよび平均50.5歳で,50歳以上の症例が60%と過半数を占めている.性別は男子5例,女子48例で女性が大部分である.罹患年数は1年より23年におよび平均8年で15年以下の症例が多くを占めている.病型別ではClassical 41例,Definite 12例であり,StageではStage ⅢとIVが62%と多くを占める.

頸椎損傷例に対するHalo牽引療法の改良点について

著者: 美馬精一 ,   山田憲吾 ,   山本博司 ,   手束昭胤 ,   米沢元実 ,   森浩 ,   和田昇 ,   北上靖博

ページ範囲:P.888 - P.889

 我々はHalo法が頸椎損傷例に対し,観血的非観血的たるを問わず,一貫して整復,固定,機能訓練を安全かつ確実に行え得る一つの良い方法であると報告してきた.頸椎損傷5症例に対するHalo牽引治療の経験において,症例ごとに遂次本装置に技術的改良を加えてきた.今回はその改良点の実際について述べ,本法の治療的意義について検討を行なうこととする.
 症例I:第5第6頸椎脱臼骨折例,脱臼頸椎に対し整復固定術を行なう際,特に,脊髄に対する術中での安全性と術後のより確実な整復位保持を考慮し,術前よりRancho方式によるHalo-Castを装着せしめその固定下における安全性のもとに前方固定術を行なうことができ,一応満足すべき成果をあげることができた.しかし,この手術の際Halo-RingとCastを結ぶ前方2本のRodが手術操作を妨げるのが一つの難点であつた.またこの方式のHalo-Castでは頸椎部の前後屈位を得さしめることがほとんどできなかつた.

上位頸椎の先天異常—環椎を中心として

著者: 大井利夫 ,   平野彰三 ,   鍋島和夫 ,   小林紘一 ,   土川秀紀

ページ範囲:P.889 - P.891

 環椎は系統発生学的には,Basal plate直下の脊椎原基の5〜6番目より形成され(始めの4〜5コのいわゆるOccipital sclerotomeは後頭骨の底部を形成),Tönduryによると環椎外側塊および後弓と前弓部では発生由来を異にしており,いずれにしても,このmesenchymal massの軟骨化の時期には既にその形をなし,胎生7週に外側塊より骨化が始まるとされている.
 環椎は,後頭骨,軸椎を含め,その発生学的な複雑さより,先天異常が少なくなく,文献上様々な形の報告が見られ,しかもそれらが合併して存在することが多いという特徴がある.これら先天異常の形につき,従来,種々な名称がつけられ統一されていないが,演者は第1表のごとき分類を試みている.第1表の右側はTorklusらの分類の対応するものを示している.

破壊的病変に対する後頭骨・頸椎間固定症例について

著者: 小野村敏信 ,   渡辺秀男 ,   浜本肇 ,   古田貢一

ページ範囲:P.891 - P.893

 脊椎の破壊的病変による脱臼や不安定椎に対しHaloを用いた牽引により,同部の整復あるいは固定保持を計ると,装着直後より安全に体位変換,起坐が可能となり,以後の治療ならびに看護上に多くの便宜がもたらされる.
 我々は上位頸椎に病変を持つ例にHalo-castを装着し,後頭骨,頸椎間固定術を施行し,良好な経過をたどつている2症例を経験した.

上位頸椎疾患5例の経験

著者: 木村功 ,   新宮彦助 ,   嘉本崇也 ,   益田紀志雄 ,   那須吉郎 ,   塩谷彰秀 ,   山脇洋志

ページ範囲:P.893 - P.895

 我々は,最近,頭蓋内陥入症2例,第2頸椎椎弓骨折,第2頸椎歯突起骨折兼第1頸椎脱臼骨折,第2頸椎椎体骨折例,おのおの1例ずつ経験したので報告した(第1表).

環軸椎脱臼骨折に対する後方固定術の経験

著者: 宮崎和躬 ,   桐田良人 ,   林達雄 ,   野坂健次郎 ,   嶋充浩 ,   山村紘 ,   笠原勝幸 ,   玉木茂行

ページ範囲:P.895 - P.897

 我々は,昭和45年10月以来,3例の環軸椎脱臼骨折に対し後方固定術および骨移植術を施行した.
 手術方法は,まず術前に透視下で脱臼が整復される姿位を確めてから,その位置で腹臥位とし第1表のごとくC1の椎弓と弓間靱帯の間を剥離し,C1の椎弓の正中線部に鋼線をとおし,それをC2の棘突起にかけて,環軸椎を固定し,同部の脱臼が整復できたことをレ線的に確認した上で,2個の長方形の腸骨片を採取し,腸骨片に2ヵ所穴をあけ,環軸椎の椎弓にとおした鋼線で椎弓と腸骨片を固定し,同部に海綿骨を添加する方法である.

上位頸椎損傷について

著者: 倉持英輔 ,   蓮江光男 ,   田島健 ,   星野亮一 ,   中村武 ,   国分和四郎

ページ範囲:P.897 - P.899

 昭和38年より昭和48年までに,福島医大整形外科および関連病院において,上位頸椎脱臼骨折61症例を経験した.
 今回は,予後の判明した56症例について検討を加えた.

Gallie変法による環軸椎固定術について

著者: 片岡治 ,   栗原章 ,   打村昌一

ページ範囲:P.899 - P.900

 環軸椎固定術には前方法と後方法とがあるが,後方固定術の一つとして,わが国ではまだ報告されていないGallie変法を紹介し,併せてその適応と他の固定法との優劣につき述べる.

上位頸椎疾患の手術経験

著者: 小山正信 ,   服部奨 ,   早川宏 ,   森脇宣允

ページ範囲:P.900 - P.902

 上位頸椎障害例に対して手術療法を行う場合,進入路,手術術式に種々な方法があり,症例により適切な方法を実施すべきかと思うが,最近私共は上位頸椎の障害例で手術的治療を行なつたのは15例であるが,15例の内訳はX線所見で先天性奇形を認めるもの7例,その内5例は外傷の既往がなく,他の2例は外傷例である.非外傷例はいずれも脊髄症状を呈し,外傷例の2例の内1例は外傷直後より高度の運動,知覚障害を呈していた.歯突起骨折の5例はいずれも偽関節例で,その内3例は遅発性の脊髄症状例である.第2頸椎椎弓骨折の2例も陳旧例であり,リウマチ性環軸関節脱臼例は脊髄症状を呈していたので手術的治療を行なつた(第1表).
 先天性奇形7例の奇形のX線上の病態は,①後頭環椎関節の形成不全により後方への亜脱臼の症例,②歯突起陥入にC2〜C3の癒合を伴い環軸関節の高度な亜脱臼を呈した例,③歯突起陥入に上位頸椎の著明な後彎変形を呈した症例,④上位頸椎部に先天性癒合を有し,脊椎管腔が狭く,隣接の椎間板部で後棘を認め,その部位でミエロでクモ膜下腔のブロックを認めた例などで,これらはいずれも高度の脊髄症状を呈していた.外傷例でX線所見で先天奇形を認めた2例はいずれも,環椎が後頭骨とassimilationを呈し大孔の狭小化を認め,更に第2頸稚と第3頸椎の癒合が合併し,環軸関節の高度の亜脱臼例である.

当教室における上位頸椎疾患手術例の検討—Air-myelographyを中心として

著者: 三浦孝雄 ,   今給黎篤弘 ,   呉盛光 ,   古瀬清司 ,   関口信人 ,   嘉陽宗俊

ページ範囲:P.902 - P.905

 頸椎柱の中でも上位頸椎は解剖学的にも環椎後頭関節,環軸関節等の特有な脊椎連合があり,また脊椎柱の中でも最も運動性に富むという特徴がある.
 一方,臨床面ではこの部位には特有な脊椎外傷やcranio-vertebral anomalyのあることも良く知られているところであるが,解剖学的に脊椎管腔が広いためにそれらの臨床症状が軽微なものが多く,一般に上位頸椎疾患の診断は困難なものが多いとされている.そのため従来,本症の診断法として種々のレ線検査法が研究されているが,しかし単純レ線所見と臨床症状とは必ずしも相関しないものが多いことも知られている.

頸椎後縦靱帯骨化と糖尿病

著者: 森山明夫 ,   原田征行

ページ範囲:P.906 - P.907

 最近,頸椎後縦靱帯骨化の病因を究明する一手がかりとして,炭水化物代謝異常特に糖尿病との関連が論議されているが,我々も糖尿病患者217名につき頸椎側面単純レ線撮影を行い種々の角度より検討してみた.
 本調査の結果,糖尿病患者における頸椎後縦靱帯骨化の発生は,217名中135名で,うち男21名,女14名で,男女比は3:2であり,発生率は16.1%(男18.4%女13.6%)であつた.

Ankylosing Spondylitisにみられた頸椎後縦靱帯骨化症の一剖検例

著者: 都築暢之 ,   東博彦 ,   今井卓夫 ,   近藤徹 ,   長島親男

ページ範囲:P.907 - P.909

 〔症例〕51歳男子.職業肉体労働者.
 主訴:四肢麻痺
 既往歴:S. 42.自動車運転中追突され,項部痛のため某医に3ヵ月入院,四肢に神経症状はなかつた.
 S. 42〜43にかけて,腰部次で頸部の曲りが悪くなつたことに気付いているが,特に痛みを感じたことはない.

広汎椎弓切除後の頸椎不安定性について

著者: 原田吉雄 ,   金田清志 ,   越前谷達紀 ,   大西英夫 ,   藤谷正紀

ページ範囲:P.909 - P.911

 頸椎広汎椎弓切除後に起こつてくる頸椎柱の変形は子供に生じ易くかつ急速に進行し,程度もひどいことは周知のとおりである.今回の発表の目的は大人に対して行つた頸椎広汎椎弓切除後の合併症について検討しその予防,治療について述べることにある.
 昭和48年12月まで桐田法による同手術は34例で頸椎後縦靱帯骨化症(以後骨化症と略す)19例,頸椎変形性脊椎症(以後頸椎症と略す)15例である.年齢は35歳から73歳平均54歳で男子30名,女子4名である.

第3頸椎右下関節突起に発生したOsteoid Osteomaの1例

著者: 高瀬武平 ,   真鍋昌平 ,   細川外喜男 ,   樋口雅章 ,   山内四朗 ,   高田宗世

ページ範囲:P.912 - P.913

 頑固な右側頸部痛と頸椎の運動制限を主訴として初診し,レ線上腫瘍陰影を確認できず,血沈値の亢進から炎症性疾患を疑つた第3頸椎右下関節突起部Osteoid Osteomaの1例についてその概略を報告した.
 症例:15歳,男子.

腰部椎間板ヘルニアに対する椎弓切除術の検討

著者: 桐田良人

ページ範囲:P.914 - P.915

 本症手術1216例中,1177例について術式別内訳は骨形成的部分的椎弓切除術および同法とLove法併用435例,Love変法717例,骨破壊的椎弓切除術25例である.Love変法を昭和44年4月より全面的に採用した.当初よりの骨破壊的椎弓切除術は腰椎上部のヘルニア,馬尾神経腫瘍を疑つたもの,または巨大ヘルニアかヘルニア周囲の高度癒着のため手術中途よりこの方法に切りかえたものである.また昭和37年神経学的高位診断法を発表して以来鑑別診断困難な少数症例以外ミエロは全く行わない.
 本法の好発部位はL4-5間55.6%,L4-5,L5-S1間Double Herniation 19.6%,L5-S1間15.0%でL4以下の下部椎間板に95%をみ,左側に多い(1.3:1).男子に多く(3.3:1),好発年齢は男女とも同じ傾向を示し,20歳代が37.9%で最も多く,ついで3O歳代,40歳代,最少年齢は14歳,最高78歳であつた.発症の誘因を54.9%にみとめ,重量物拳上時が最も多い.腰痛および下肢への放散痛を主訴とするもの86.7%,腰痛または下肢痛のみはそれぞれ7.9%,4.4%,膀胱直腸障害7例,腓骨神経麻痺5例,菓子脱力感を5例計17例が特殊な主訴を示し1.2%あつた.

後方侵襲による椎体固定術Cloward変法について

著者: 山口義臣 ,   土方貞久 ,   中山喬司

ページ範囲:P.915 - P.917

 腰部椎間板ヘルニアの手術にさいし,固定術併用の要否については,今日もつとも論議の多いところである.われわれは,ヘルニア手術にさいし,全例に固定を要するとは考えず,症例に応じて適応をえらぶべきだとしているが,現在わが国でもつとも広く愛用されているラヴ法については,術後の腰部症状の遺残の問題があり,また再脱出などによる再手術例の多くが,このラヴ法後の症例であることから,必らずしも満足すべき手術法であるとはし難く,症例によつては,はじめから固定を併用する方がよいと考えている.
 また,固定方法については,椎体固定がより理論的であり,その侵襲経路については,ヘルニア腫瘤を直視下におさめることができる後方経路がのぞましいと考え,独自の手術法を工夫し,施行していることは,すでにたびたび報告して来たところであるが,今回の機会に,この術式の生まれ来たつた経緯について,またその後の改良点と,その結果さらに成績の向上をみたことを報告する.

腰部椎間板ヘルニアの治療—とくにAnterior approachの立場より

著者: 井上駿一

ページ範囲:P.917 - P.919

 私共の教室において故鈴木次郎教授によつて腰椎椎間板ヘルニアに対する経腹的椎間板切除・前方固定法が創始せられたのは1955年10月であり,以来1974年2月までの前方法による手術症例は407例である.この間の後方法手術例は86例であり,その比は4.7:1となつている.前方法の年間手術例は30例内外であり1966年から一部に腹膜外路法も導入されている.教室の前方手術は診断法,術式,後療法に数度かのmodificationが行われているが,強調すべきことは術前の診断法としてMyclography,Discographyが第1例より一貫して行われたことである.両者に対するウエイトのおきかたには時期的にも変化があつたがいずれも術前診断にあたり不可欠な手段と考えている.Discogramは椎間板病態の直接的描写法であり,Myelogramは椎管内病変の診断・鑑別に有用であり両者は相互補完的なものと考えられる.ヘルニアのMyelogram解読にあたり,教室では i)完全ブロック,ii)砂時計様高度狭窄,iii)部分欠損,iv)神経根嚢欠損および異常の5つに病的所見をわけている.

陰萎および膀胱直腸障害を来した腰椎椎間板ヘルニアの治療法について

著者: 栗原章 ,   松田俊雄 ,   南久雄 ,   片岡治

ページ範囲:P.920 - P.921

 陰萎や膀胱直腸障害が腰椎椎間板ヘルニアによつて惹起されることは知られてはいるが,その発生頻度は0.3〜8%と報告者によつてまちまちであり,とくに陰萎などの外陰部障害の発生はきわめて稀れなこととされている.このような症例には観血的治療が絶対適応とされているが,その予後は決して満足なものでない.森,蒲原の報告によると,椎弓切除術を行い,髄核剔出とともに硬膜を開いて癒着した馬尾神経に対しても処置を加えたが,その予後は不良であつたとしている.我々は,外陰部障害(陰縮,外陰部の知覚鈍麻〜脱出),膀胱直腸障害を来たした6例の腰椎椎間板ヘルニアに対して腰部脊椎管狭窄症と同様に硬膜切開を加えずに十分な除圧椎弓切除術と髄核剔出術を行い,満足な結果を得たので報告した.
 症例は,男5例,女1例の6例で,年齢分布は32歳〜48歳である.神経学的症状は症例によつて異なるが,Wasserman現象は全症例陰性,Lasegue症候では両側陽性2例,片側陽性4例で,交叉性Lasegue症候は2例に認められた.膝蓋腱反射は4例に片側性の低下が認められ,アヒレス腱反射は全症例に両側性の減弱ないしは消失がみられた.徒手筋力テストでは,大腿四頭筋筋力低下2例,前𦙾骨筋筋力低下5例,長拇指屈筋筋力低下6例などが認められ,2例は下垂足による愁訴を有していた.

腰椎部正中型ヘルニアの治療経験

著者: 吉田徹 ,   加藤晋 ,   見松健太郎 ,   鈴木竑俊

ページ範囲:P.921 - P.922

 手術所見でヘルニアが正中位にあり,主として硬膜嚢に影響をおよぼしていたと考えられたものを正中型ヘルニアとして分類し,これらのミエログラフィー所見や臨床症状について調査した.
 水溶性造影剤によるミエログラフィーで診断し,手術で椎間板ヘルニアを摘出した103例の年齢別発生頻度は,10代が14例で,そのうち17歳が1例,他は18歳および19歳である.特にring epiphysisのずれが原因したと思われるものはみられなかつた.最も症例の多いのは20代で全体の40%であり,正中型は20歳以上の各年齢層に分布しているが,女性に比較的多くみられた.

腰部椎間板ヘルニアの手術成績について

著者: 木下孟 ,   吉中正好 ,   杉本欣也 ,   楠正敬 ,   平田宗興 ,   中本達郎 ,   相原芳彦

ページ範囲:P.923 - P.924

 昭和40年から47年末までの間に,われわれの附属病院および高津病院において,腰部椎間板ヘルニアと診断され観血的治療を受けた症例は男性80例女性31例の計111例である.
 このうち,アンケート回答の16例を含め,今回followupできた症例は男性35例女性18例計53例である.

腰椎椎間板ヘルニアの手術症例の検討

著者: 池本和人 ,   山崎尭二 ,   上平用

ページ範囲:P.924 - P.925

 我々は最近,教室において腰痛や下肢への放散痛,知覚障害などを来たし,臨床症状および各種検査の結果,腰椎椎間板ヘルニアと診断されて,手術的療法を受けた64症例について検討したので報告する.
 手術症例数は64症例で男子が47症例,女子が17症例.最高年齢は66歳の男子,最少年齢は17歳の男子であつた.各年代別にみると,30歳代が最も多く17症例(男子12症例,女子5症例),40歳代が14症例(男子9症例,女子5症例),20歳代が13症例(男子9症例,女子4症例),10歳代が9症例(男子7症例,女子2症例),50歳代が8症例(男子7症例,女子1症例),60歳代が3症例(男子3症例),である.手術部位ではL4/5間が39症例,L5/S1間が19症例,L4/3間が4症例,L5/6間が2症例であつた.手術方法に関しては,部分的椎弓切除術が60症例、偏側椎弓切除術が2症例,全椎弓切除術が2症例であつた.このうちで椎間板ヘルニアがみつかつた症例は64症例中,54症例である(83.5%).検出されなかつた症例が10症例(16.5%)であつた.椎間板ヘルニアと誤診された10症例に関してみると,黄靱帯肥厚と癒着の合併したものが5症例,静脈瘤が2症例,骨棘による圧迫が2症例,原因不明が1症例であつた.腰椎椎間板ヘルニア剔出のあと,ただちに脊椎後方固定術を受けた症例は,64症例のうち6症例であつた.

腰椎椎間板ヘルニアの術後遠隔成績

著者: 角田信昭 ,   竹光義治 ,   脇田吉樹 ,   徳久俊雄 ,   熊谷洋行

ページ範囲:P.926 - P.928

 腰椎椎間板ヘルニアに対する手術的療法(特にlove法を中心とした)が,術後長期間経過中に如何なる影響を及ぼすか,術後の愁訴は如何なるものであり,如何なる程度のものであるか,また術前の条件および手術時の局所の状態が如何なる影響を及ぼすか等を検討することを目的として,昭和30年から昭和43年まで,九大整形外科で手術を施行した腰椎椎間板ヘルニア213例についてアンケートおよび直接検診による調査を行つた.
 調査に応じた症例は,84名(男性64名,女性20名)であつた.

腰椎椎間板ヘルニアに対する手術的治療法の経験—特にLove法施行例について

著者: 田島宝 ,   嘉本一幸 ,   浅井冨明 ,   小早川裕明 ,   倉知明彦

ページ範囲:P.928 - P.929

 各種脊椎脊髄疾患は,最近整形外科と脳神経外科の境界領域として問題にされつつあるが,主訴が腰痛,歩行障害で来院する,腰椎椎間板ヘルニアは,なお整形外科で扱う疾患と考えられている.
 我々の外来において,腰痛を主訴とする患者はほぼ40%を占めているが,外来担当者が多人数になるために,できる限り一定の所見が得られるように,外来用特殊チャートを使用し,予診において,発症時期,外傷の有無,疼痛の性質を記入し,初診時所見においても,別のチャートを用いて,できる限り他覚的に所見を把握できるように務めている.

Love法を主体とした腰部椎間板ヘルニア治療状況

著者: 矢野楨二 ,   成田郁五郎 ,   原紘 ,   津田堯夫 ,   平野博史 ,   永田見生

ページ範囲:P.929 - P.931

 われわれが常用している腰部椎間板ヘルニアの手術的療法は,マイオジール2.5〜3.0ccを用いてミエログラフィーをおこなつた上で,腰麻下にLove法をおこない,術後静臥は1週間,ギブス床,装具などの使用は原則として一切おこなつていない.過去10年間に椎間板ヘルニアを疑つて手術をおこなつたものは301例である.Love法施行例は281例(93.4%)で,ヘルニア摘出は247例(87.9%)である.この中には脊椎分離症,辷り症が合併し,後方固定術を併用したものが15例,過去にヘルニア摘出術をうけたことがあり再手術としてLove法をおこなつたもの10例が含まれている.この間の椎弓切除術は僅か20例(6.6%)で,ヘルニア摘出は13例(65.0%)である(第1表).

椎間板ヘルニア摘出(Love法)と後側方固定の併用による治療法

著者: 田口厚 ,   麻生英保 ,   管尚義 ,   田島直也

ページ範囲:P.931 - P.933

はじめに
 腰部椎間板ヘルニアの手術的療法は,我が国ではLove法による椎弓切除,ヘルニア摘出術が最も愛用されその優秀性も種々報告されているが,単にヘルニアの摘出のみでは腰痛が残存したり,またかえつて腰椎不安定症状を呈ける例をしばしば経験するところである.かかる例には椎間板の切除とその椎間を固定することがより根治的な方法であると考える.
 これには前方進入による椎間板切除と椎体固定法の優秀性が報告され,我々も45年より同法を採用し,112例139椎間の術後成績をさきに報告したが,2椎間固定,腰仙間固定に骨癒合不全例,腰痛遺残例がみられ,また副作用として,血栓性静脈炎,肺塞栓,無精子症,採骨部位の変形,大血管の損傷,麻痺性イレウス等の症例を経験し,技術的な問題もあるが必ずしも満足できない点があるため,最近3年間はWatkinsが提唱した後側方固定法を採用し現在まで100余例に施行している.この際ヘルニア様所見がある症例には,水溶性ミエログラフィーディスコグラフィーを適宜施行した後,Love法による椎弓切除,ヘルニア摘出術を併用し良好な成績を得ている.

ヘルニア剔出と後側方固定術の併用法—筋動作学的検討

著者: 田島直也 ,   森貞近見 ,   河合尚志 ,   乗松敏晴 ,   篠田侃 ,   千々岩博文 ,   平野英二 ,   田口厚

ページ範囲:P.933 - P.934

はじめに
 不安定椎を伴う腰部椎間板ヘルニアに対して我々は昭和46年からLove法によるヘルニア剔出術を行い,その後直ちに同一侵入路を用いて後側方固定を行い,ほぼ満足すべき結果を得ている.
 我々は第46回日整総会,第46回西日本整災で腰仙椎固定術に対しての筋動作学的研究を発表したが,今回は術後7カ月以上経過し,且つ臨床的成績良好のもの7例と正常成人6例に対し,同じ動作筋電位同時同調記録装置を用いて脊椎運動と筋活動について検査し比較検討を行つた.

われわれの腰部椎間板ヘルニア手術療法の変遷について

著者: 土方貞久 ,   藤村祥一 ,   若野紘一 ,   石名田洋一 ,   平林冽

ページ範囲:P.934 - P.936

 慶大整形外科における椎間板ヘルニア手術の歴史は,昭和8年,頸部椎間板ヘルニアに対してなされた1例で始まるが,腰部のそれは,翌9年,硬膜外腫瘍として手術されたものが第1例となる.戦災による資料の喪失のため,今回,昭和20年以後の症例を調査したが,われわれの腰部椎間板ヘルニア手術療法の歴史をふりかえることは有意義なことであると考え,報告する次第である.調査しえた症例は,昭和23年の椎弓切除6例に始まり,昭和47年末までに総計681例である.その内訳けは,椎弓切除法91,ラヴ法269,後方固定法122,クロワード変法103,前方固定法96例となり,第1図のごとく,術式の変遷が明らかとなるが,これは,われわれのヘルニア手術に対する考え方の変遷を物語つていると考えられるため,その根拠につきのべる.
 昭和26年までは,椎弓切除法が唯一の手術法となつているが,27年になり,椎弓切除後の,脊椎,椎間板への影響を考慮して,後方固定を同時に賦与せしめている.しかしこれとて全例に対して行つている訳ではない.昭和30年は後方固定が26例と,もつとも多く行われた年であるが,同時に2例のラヴ法が導入されている.ラヴ法はその後次第にヘルニア手術療法の主流となり,36年30例,37年52例,38年31例とそのピークに達した.

腰椎椎間板ヘルニア摘出術後の予後不良例の検討

著者: 山下守昭 ,   森健躬 ,   石川道雄 ,   小林浩 ,   小野令志 ,   古田康興 ,   荒木聡

ページ範囲:P.936 - P.938

 腰椎椎間板ヘルニア摘出予後について,これまで数多くの報告があり,私達も主に椎間板摘出後の椎体不安定性の点から観察し,脊椎固定術の有効性について報告したことがある.今回43年11月より48年3月までの手術症例に対して,術後6ヵ月以上経過し何らかの愁訴を残した症例について,手術方法,術後残存した他覚症状,自覚症状,発生から手術までの期間,再手術症例の経過および手術適応等を中心に検討した.
 手術総症例数は,第1表のごとく295例でラブ法113例,ラブ法+後方固定133例,前方固定43例,椎弓切除6例である.20〜29歳120例(47%),30〜39歳78例(27%)とこの年代に70%以上多くみられた.

腰椎椎間板ヘルニアの再手術症例の検討

著者: 渡貞雄 ,   馬場逸志 ,   進藤明 ,   村上弓夫

ページ範囲:P.938 - P.940

 過去約17年間に当教室で手術を行つた腰椎椎間板ヘルニア症例は434例でその術式は主として当初は骨形成的部分的椎弓切除術,最近ではLove法によるヘルニア剔出術を行つて来た.その成績を桐田の分類に準じて示すと優240例,良125例,可26例,不可13例となり優良例は合計365例(90.3%)とほぼ満足すべき成績を得ている.このうち当科で再手術が行われたもの12例(2.8%),他病院で再手術が行われたもの3例,再手術のみ当科で行われたもの1例計16例について検討を行つた.
 これら再手術症例の性別は男14,女2例,職業の別では重中労働者が10例となつている.再手術の原因別では他椎間レベルに生じたもの7例,初回手術部位のとり残し2例,いわゆるdevelopmental spinal canal stenosisにヘルニアを生じLove法で剔出術を行つたものの反対側に根症状を遺し椎弓切除を行つたもの2例,術後変形性脊椎症を来たし馬尾神経症状を生じて椎弓切除をを行つたもの,ヘルニア剔出部位の不安定性を来たし脊椎固定術を行つたもの各1例,他病院で再手術が行われ原因不明のもの3例となつている.即ち再手術の原因の明らかな13症例中4例は初回手術時に注意をすれば再手術は行われずにすんだと考えられる.これら再手術症例の成績は優6,良5,可3,不可2例で優良例の合計は11例(68.7%)と明らかに成績が劣つている.

腰椎椎間板の立体微細構築について

著者: 武田哲明 ,   井上一

ページ範囲:P.941 - P.943

 近年,走査電子顕微鏡(以下SEMと略す)の出現により,生物組織の立体観察が可能となり,関節組織における立体的な機能構築も検索されるようになつた.共同研究者の井上はSEMにより動物における椎間板の立体微細構築について報告したが,本研究では,ヒトの腰椎椎間板の立体線維構築を髄核,線維論,および軟骨板に分け,偏光顕微鏡およびSEMで研究した.特に,椎間板の荷重緩衝装置としての機能構築を検索し,また,加齢的な変化について考察した.
 材料は,病理解剖における胎児3体,成人4体,老人2体,計9体の第3-4および第4-5腰椎椎間板を採取した.

局在性腰椎後縦靱帯骨化症について

著者: 富永積生 ,   繁富頼雄 ,   年光隆幸 ,   柴田輝明

ページ範囲:P.943 - P.946

はじめに
 腰椎後方椎管内の椎間位に一致した局在性の後縦靱帯骨化をきたし,腰部症状,あるいは下肢症状を呈した症例を種々の角度から分析し,本症のもつ臨床的意義を考察する.

上位腰椎椎間板ヘルニヤを疑わせた硬膜外腫瘍の一例

著者: 円尾宗司

ページ範囲:P.946 - P.947

 腰椎椎間板ヘルニアの疑いで手術を行ない術中意外な所見を見出すことは稀でない.また,臨床症状,ミエログラフィー等の所見が一致せず,試験的椎弓切除術ということで手術に踏みきることも稀でない.今回,私は臨床的には,上立腰椎椎間板ヘルニアを疑いながらも高位診断に頭を悩まし,結局試験的椎弓切除術を行ない興味ある所見を得た症例を経験したので報告する.
 〔症例〕39歳,女性.

腰部椎間板ヘルニアとして治療された硬膜外静脈瘤の12症例の治験例

著者: 中野昇 ,   和田仁 ,   冨田達也

ページ範囲:P.947 - P.949

 腰痛や下肢痛といえば,すぐ腰部椎間板ヘルニアとして治療されることが多いようであるが,よく注意して診察すると,同じ腰痛・下肢痛でも必ずしもその程度や性質が同じでないことがわかる.
 長い間,腰部椎間板ヘルニアといわれ治療を受けていたが,その効果がなく当院を受診した患者に対して,ミエロ検査を行なつたところ,椎間板ヘルニアの像よりは脊髄腫瘍を疑わせる像を呈する症例のあることを経験する.しかし,手術では脊髄腫瘍は発見できずに,硬膜上の脂肪組織の中の静脈の拡張だけが認められ,それを切除することにより症状が消失することを知つたが,現在までに12例経験しており,これらについて2〜3の症例について述べるが時間の都合他の機会でその詳細な報告したいと思う.

腰部椎間板ヘルニヤと骨盤外坐骨神経障害の鑑別点

著者: 本間光正 ,   吉森喜徳郎 ,   木下行洋

ページ範囲:P.949 - P.951

 腰痛を訴える代表的な疾患として腰部椎間板ヘルニアがあるが,この治療方法について種々の面より検討され,ほぼ確立したかの感がある.しかし観血的療法については保存的治療に抵抗するという理由から安易に髄核剔出術が行なわれ,しかもそれらの術後の成績は必ずしも満足すべきものではないようである.術後成績の報告でも80%の治癒をみているが残りの20%については診断・手術適応の不適確さと技術的問題も予想される.我々は腰部椎間板ヘルニアなど腰痛を訴える疾患の症状を腰部痛と下肢痛に分けて考えた.この下肢痛がいわゆる症候性坐骨神経痛である.この疼痛の原因を骨盤外坐骨神経の走行と周囲組織との解剖学的な関連性に求め治療を行つている(第1図).一般に骨盤外に出た坐骨神経は坐骨と梨状筋腱の間で圧迫固定され,更に内閉鎖筋腱により外側凸の屈曲が強いられている.一方梨状筋腱の破格についてはBeatonらの報告(1973年)のごとく5種類あり,症例によつてはこれらの破格による坐骨神経の絞扼も起こり疼痛の原因となる.この破格の発生頻度は欧米では15%前後といわれている.日本では福本の報告(1935)のごとく34.6%と高率にみられる.更に,臀筋部は本人の記億の有無にかかわらず,転倒・打撲などによる直達外力を受け易い所で,内出血などによる神経周囲の線維性変化が容易に起こることが予想される.

頑固な腰痛・坐骨神経痛のある症例に対するディブカインによる硬膜外腔differential blockについて

著者: 大塚訓喜 ,   山岡弘明 ,   寺内芳郎

ページ範囲:P.951 - P.953

 1972年より次のような条件のもとに選び出した症例に対してdibucaineを用いてdifferential blockを行つている.①頑固な腰痛・坐骨神経痛を有し,著しく日常生活が制限されているもの.②1ヵ月以上にわたる保存的治療法がほとんど無効で,③しかも手術的治療の対象とならないもの.つまりわれわれが日常の診療活動で最も治療に苦慮するたぐいのものである.④また硬膜外腔の癒着のあるものは適応にならない.
 〔症例〕20歳,女,工員.

若年者における腰椎椎間板ヘルニヤ

著者: 葉梨之紀 ,   小林昭 ,   藤原克彦 ,   鈴木峻

ページ範囲:P.953 - P.955

はじめに
 昭和39年から48年までの10年間に扱つた19歳以下の腰椎椎間板ヘルニア91症例について予後調査を行い,その臨床的特徴について検討を加えた.

視座

長命は善か

著者: 天児民和

ページ範囲:P.877 - P.877

 先日九州大学の池田学長にあつて雑談をしていたら学長がこんなことを言われた.「この間ある会合でお隣の文学部の先生が一体お医者さんは人間をいくつまで生かそうと考えているのですか」と質問せられた.さあ何と答えてよいか一瞬戸惑つたということである.
 現在の臨床医学の救命の技術はあらゆる可能性を動員して強力に行われている.そのために人間の寿命はたしかに長くなつた.私の父が40年前に亡くなつた.満60歳であつた.その時に60歳まで長生きせられたのだからという皆様の挨拶を聞いてそうかなあと思つたが,今日では60で死亡することは若死である.しかし人間の命を長くすることが果して善と言つていいのであろうか.私は折々その壁につきあたつて当惑する.今は分業の世の中である.医師はただ救命にだけ努力すればよいのである.あとの問題は社会科学者が処理するべきである.そう割り切れば甚だ簡単ではあるが,では誰が社会科学者にこの問題を提議するべきであろうか.飯野先生もこれと同じようなことをどこかに書いておられたが,科学の進歩と人類の福祉,幸福というものがどこかでくい違つてゆくのにローマクラブのメンバーではないが不安を感じざるを得ない.

カラーシリーズ 整形外科手術・4

胸椎に対する前方侵襲法(除上位胸椎)

著者: 池田亀夫

ページ範囲:P.872 - P.875

 胸椎に対する前方侵襲法は炎症(カリエス,化膿性骨髄炎など),腫瘍,椎間板ヘルニア,形態異常,脱臼骨折などに適応され,開胸法によって病巣へ到達する.この場合,肋骨は移植骨として利用するので切除する.また,術前に選択的脊髄動脈撮影を行い,大前根動脈を確認しておく.侵襲側は前回述べたように決定する.
 側臥位で前方は乳腺から肋骨に沿い,側胸部を弓状に横切り,後方は傍脊椎線に至る皮切を加える.肋骨は斜走しており罹患椎に相当する肋骨を切除して侵入すると,病巣は高位にすぎ,視野は狭隘となるので1〜2椎高位の肋骨を切除して侵人する.所要高位の肋骨を骨膜下に切除し(第1図).胸膜内または胸膜外式に開胸する(第2図).呼吸能に及ぼす影響,術後管理の容易さなどの点から多少時間を要し,出血量もやや増すが後者を愛用する.鈍的に胸膜外式に剝離を進め病巣部を露呈する(第3図).病巣高位の肋間動,静脈を結紮,切断する.肋間神経,大・小内臓神経は可及的温存し損傷をさける.もし手術野に大前根動脈を分岐する肋間動脈が存在するときは—かなり太くて識別容易—椎体から充分に剝離し移動し易い状態におく.決して切断してはならない.前縦靱帯および骨膜を縦切し,さらに必要に応じて横切を加えて骨膜下に椎体を露呈する(第4図).病巣切除後(第11図).椎間開大位で骨移植する(第12図),骨膜,前縦靱帯(胸膜内開胸のときは胸膜も)で患部を被覆,縫合する(第13図).

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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